二酸化炭素排出量の少ない社会のために 次世代移動手段はどう世界を変える?

二酸化炭素排出量の少ない社会のために 次世代移動手段はどう世界を変える?

次世代移動手段は、従来の交通の枠組みを大幅に変えることで、持続可能かつ利便性の高い社会へと進化させてくれるものと期待を集めています。

ところで、この次世代移動手段とよばれるもの。
具体的にはどのようなものなのでしょうか。
そして二酸化炭素(以下、CO2)排出量削減など持続可能な社会の実現にどのように貢献するのでしょうか。

今回はCO2排出量の削減という観点から次世代交通手段について見ていきます。
大きく分けてサービスとしての交通手段「MaaS」と、電気自動車(EV)と燃料自動車(FCV)といった次世代モビリティの2つのテーマを深く掘り下げていきます。

次世代移動手段とは何か

次世代移動手段(次世代モビリティ)という用語自体は、政府や官庁が発行する白書に記載されていません。
ただし令和元年度の交通政策白書*1にも記されているように、MaaS(Mobility as a Service)によるモビリティ革命を念頭に置いた概念です。
MaaSに関する国際機関「MaaS Alliance」*2によると、クルマや電車、船舶や飛行機など個別のモビリティを統合して取り扱うサービスを指すと記されています。

AIやIoTなどの技術革新がMaaSを可能にしたという側面もありますが、その目的は、自家用車などから公共交通機関へのシフトにより持続可能な社会を実現するという環境問題の解決にあります。

そこで最初に、MaaSの目的を統計データに照らし合わせて考察していきましょう。

環境省*3によると、燃焼で発生する「エネルギー起源CO2排出量」の18%が「移動・輸送」、そのうちの半数が乗用車(自家用車)から排出されています(図1)。

 

図1:移動・輸送(運輸部門)のCO2排出量(2014年度)
*出典:環境省HP「エコカーを選んでみませんか?」
https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/kaikae/ecocar/

CO2を含めた温室効果ガスの削減目標を定めた京都議定書により、日本でもCO2の削減に向けた努力が続けられました*4。

令和元年度交通政策白書によると、貨物自動車のCO2排出量はピークだった1996年の1億200万トンから2017年の7,800万トンへと推移するなど、大幅な削減が実現しました(図2)。
主力であるトラックから鉄道へと輸送手段をシフトしたことがこうした削減の背景にあります。

図2:輸送モードごとのCO2排出量の推移
*出典:国土交通省HP「令和元年度交通政策白書」p.134
https://www.mlit.go.jp/common/001294516.pdf

他方、CO2排出量がもっとも多い自家用車は2001年に2億6,200万トンとピークに達し、2017年には2億1,300万トンと減少。
同白書はクルマの燃費が改善したことが原因だとしています。

この考察のように、さらなるCO2削減のためにはガソリンなど化石燃料に依存するクルマから電気で走る鉄道など公共交通機関へのシフトや、ガソリン車からEV(電気自動車)、FCV(燃料自動車)へのシフトが重要だと読み取れます。
MaaSはこうしたCO2削減を実現する仕組みです。

その一例がライドシェアです。
セダンなどの自家用車は最大で4人乗車できますが、通勤の場合1人で乗車します。
こうした効率的でない自家用車の利用は交通量を増やし*5、結果としてCO2排出量を多くします。
そこで登場したのがライドシェアです。
ユーザーはクルマや自転車を購入することなく、他のサービス登録者と「共有」することで、モビリティを効率的に利用できるようになります。
こうしてCO2排出量の削減が実現されます。
また、自家用車から自転車や、後述するグリーンスローモビリティ、LRT(次世代型路面電車システム)といった公共交通機関など、化石燃料に依存しないモビリティへと利用をシフトさせることもMaaSでは可能です*6。

CO2排出量削減に必要なもうひとつの方策である燃費の改善はどう実現されるのでしょうか。

ここで登場するのが、化石燃料への依存を抑えた「エコカー」です。
現在、研究・開発中のエコカーとしてEV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッドカー)、FCV(燃料自動車)等が挙げられます*7。
これらのエコカーは全部あるいは一部の動力を電気にすることで、ガソリン車等の化石燃料に依存するモビリティへの依存が抑えられます。
FCVは水素による発電でCO2を排出しませんし、EVもまた自然エネルギーへの依存を強めればCO2排出量削減に貢献します。
これはエコカーのメリットの1つでもあります。

エコカー、とくにEVのメリットとして、電力需要の負荷平準化に貢献することも挙げられます。
発電所で作られる電力は、二次電池なしには貯蔵が困難なのが現状です*8。
これはムダになる電力があることを意味します。
仮にEVが普及すれば、いままでムダになってしまった電力をクルマに蓄えることが可能になります*9。
また負荷の少ない夜間にEVに充電させることで、ピーク時とボトム時の電力負荷の差を縮めることが可能になります。

次世代移動手段に関する海外の状況

京都議定書やそれを前進させたパリ協定など、CO2削減に向けた取り組みは、日本以外でも行われています。
そこで、環境問題への取り組みで先陣を切る欧州におけるMaaSとエコカーの現状について述べていきましょう。

欧州でMaaSの代表事例として挙げられるのがフィンランドです。
MaaSの位置づけが明確化されています。

運輸通信省は2045年までに移動手段によるCO2の排出量をゼロにするという法律を作成しています。
その一手段として「More efficient goods transport(効率的な交通)」が挙げられています*10。
鉄道などの化石燃料に依存しないモビリティに国民の利用を仕向けるというのは、まさにMaaSのことです。

たとえば首都ヘルシンキの都市圏では、目的地までの移動手段を提示する「Whim」というアプリがあります*11。

図3:Whimアプリ
*出典:Tampere UniversityのHP「Mobility as a Service – The End of Car Ownership?」p.14、MaaS Globalが作成
http://www.tut.fi/verne/aineisto/B1_Hietanen.pdf

LRTやバス等の公共交通機関や、レンタカーやシェアサイクル、タクシーまで、サブスクリプション制で乗り放題なのがWhimの特徴です。
こうしたアプリの普及により、自家用車から公共交通機関へのシフトが実現しました。
一般の公共交通機関の利用率が48%なのに対し、Whimユーザーは公共交通機関の利用率が63%まで上昇しています*12*13。
また「もっとも早いルート」や「環境にやさしいルート」などを選択でき、環境への配慮という点でも考えられています。

一方、欧州で現在普及しているエコカーはディーゼル車です。
ガソリン車よりもCO2排出量が少ない(図4)反面、窒素酸化物(以下、NOx)を排出する問題がありました。

図4:Well to WheelのCO2排出量の比較
*出典:経済産業省HP「燃料電池自動車について」(2014)p.8
https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy/suiso_nenryodenchi/suiso_nenryodenchi_wg/pdf/003_02_00.pdf

転機を迎えたのが2015年。
独大手自動車メーカーがテスト用のNOx排出量の計測で不正を働いていたことが、米国環境保護庁に指摘されました*14。
その結果、欧州の自動車メーカーはディーゼルカーからEVへとシフトしました。

ディーゼル車の新車販売台数は2016年に49.2%だったのが2019年には30.5%に落ち込む一方、EVの新車販売台数は同じ3年間で1.1%から3.0%に伸びています(図5,7、表6)。

図5:欧州での自家用車の燃料タイプ(2016年)
*出典:The European Automobile Manufacturers’ Association (ACEA)
https://www.acea.be/statistics/article/Share-of-diesel-in-new-passenger-cars

 

Petrol 46.6%
Diesel 49.2%
Electrically-chargeable 1.1%
Hybrid 1.9%
Alternative fuels 1.2%

表6:欧州での自家用車の燃料タイプの比率(2016年)
*The European Automobile Manufacturers’ Association (ACEA)より筆者が作成
https://www.acea.be/statistics/article/Share-of-diesel-in-new-passenger-cars

図7:欧州での自家用車の燃料タイプ(2019年)
*出典:The European Automobile Manufacturers’ Association (ACEA)
https://www.acea.be/statistics/article/Share-of-diesel-in-new-passenger-cars

ただし、後述するようにエコカーの割合は日本と異なります。

表8:2017年の各地域・国のEV(バッテリー車・プラグイン・ハイブリッド車)販売台数、販売シェア、EVの内訳(%)
*出典:自然エネルギー財団HP「EV普及の動向と展望」(2018)p.9
https://www.renewable-ei.org/activities/reports/img/pdf/20180627/REI_EVreport_20180627.pdf

表8で記されているEVは、外部から充電可能かつ電気とガソリンの両方で走行可能なPHEV(プラグインハイブリッドカー)と本稿でEVと呼んでいる、電気のみで走る「BEV」を足し合わせたものを指しているので注意してください。
この表によると、日本のEVの台数は5万4千台で、そのうちBEVは33%です。
それに対し、ドイツではEV5万5千台のうちBEVの割合は46%、フランスではEV3万5千台のうちBEVの割合は75%であるように、動力源をガソリンにまったく依存しないEVの割合が高くなっています*15。

次世代移動手段の国内での進展

日本における次世代移動手段への取り組みは、国内の特殊事情と関わってきます。
それが、低い労働生産性や少子高齢化や過疎化による労働者不足等の問題です。

交通政策白書にも記載されているように、次世代移動手段は環境問題だけでなくこういった社会問題解決の一手段だと捉えられています。
政府が主導する「Society 5.0」*16では、収集データによりエネルギー問題や医療・健康、地方との格差是正などに取り組み、その一部を構成するのがMaaS等の次世代移動手段です*17。
具体的には、三大都市圏と地方における交通利便性のギャップをどう埋めるかが課題になります。
首都圏や関西圏を除き、世帯当たりの自家用車の保有台数が1台を超えるなど、クルマは国民生活に不可欠なモビリティです(図9)。

図9:乗用車の保有台数
*出典:国土交通省HP「令和元年度交通政策白書」p.21
https://www.mlit.go.jp/common/001294519.pdf

その一方で、免許返納などにより車を運転できない後期高齢者が年々増加しています(図10)。

図10:高齢者の免許返納の推移
*出典:新たなモビリティサービスの実現に向けて(2019)p.5
http://www.ecomo.or.jp/environment/bus/pdf/bus-22th_seminar_miura.pdf

CO2排出量削減に取り組みつつ、自家用車をもてない過疎地域などの後期高齢者でも不自由なく移動ができるようにするには、化石燃料に依存しない公共モビリティの整備と、そうしたモビリティを運用できる街づくりの両方に取り組む必要があります。

地方都市の場合、地元の「脚」として利用可能なLRT(次世代型路面電車システム)の整備が必要と言われています*18。
他方、LRTを整備できない過疎地域での公共モビリティとして有力視されているのが、「グリーンスローモビリティ」と呼ばれる4人乗り程度の低速電気自動車です*19。
ただし、こうしたグリーンスローモビリティは長距離移動には不向きなため、「コンパクトシティ」と呼ばれる、居住地を集中させることでグリーンスローモビリティなどを利用しやすい「街」づくりが必要になってきます*20。

他方、大都市におけるMaaSの取り組みとして特筆すべきが、民間主導の日本版Uberです。
米国などではライドシェアサービスが普及していますが、日本ではタクシー事業は免許制のため事情が異なります*21。
そこで開始されるのがUberタクシーと呼ばれるサービスです。
Uber自体はクルマとユーザーとのマッチングを行うことでクルマをタクシーのように利用できるサービスで、クルマの効率的な運用や交通量の削減が実現できます*22。
ところが日本では法律の壁でUberの運用はできないため、マッチング可能なクルマをタクシーに限定し、ユーザーとタクシーとのマッチングを行います。
品川、浅草、秋葉原で計600台のタクシーを東京で運用し、空車が少なくなるようタクシーの最大限の活用を図ります*23。

図11:日本の次世代自動車の年間販売台数推移
*出典:「EV/PHV普及の現状について」p.2
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/sho_energy/jidosha_handan/pdf/2018_007_01_00.pdf

続いて日本のエコカー事情です。
先述のように、大都市圏では公共交通機関の整備により、化石燃料に依存しない移動手段が豊富です。
地方の場合、確かに近距離移動はLRTやグリーンスローモビリティで賄えます。
しかし、EVやPHEV、FCVなどのエコカーなしには長距離移動は困難です。

日本で一番普及しているのが旧来のハイブリッド車(HV)です。
先述のようにPHEVが外部から充電可能で電気とガソリンで走行可能なクルマであるのに対し、HVは電動部分はあるものの外部充電できず動力の大半がガソリンのクルマです*24。

エコカー以外のクルマの割合は過半数を超えているのが現状です(図11)。

またFCVの開発が盛んで、米国や中国に引けを取らない普及台数を日本は誇っています*25。
しかしながら2030年段階でFCVが次世代のクルマに台頭するまでにはいきません。

図12:次世代自動車の普及の見通し
*出典:環境省HP「エコカーを選んでみませんか?」
https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/kaikae/ecocar/

EVとPHEVを足した割合が16%、HVの割合が29%なのに対し、FCVは1%に過ぎないと、環境省は予測しています(図12)。
ともかく、FCVを含めたエコカーを増やすことがCO2排出量削減のために急務になっています。

次世代移動手段で将来どう変わる?

では、次世代移動手段の登場で、どのように我々の生活が変化するのでしょうか。

まずはMaaSから考えてみましょう。
先述のように、都市部と地方とではMaaSの戦略が異なります。
都市圏では複数の鉄道会社が参入しています。
前述のヘルシンキ地域交通局がバスやトラムなどの運営に参画している*24ヘルシンキの事例とは異なり、各会社の利害が絡むため、1つのMaaSアプリで複数のモビリティを選択するのは困難な状況です。

大都市圏で1つのMaaSアプリを作り、複数の鉄道会社が参加するまでには、現状至っていません(図13)。

図13:日本版MaaSの先行モデル事業動向(枠内は上から地域、各モデル事業の協議会に参加する構成員、実験内容を示す)
*出典:国土交通省HP「先行モデル事業概要」p.1
https://www.mlit.go.jp/common/001293854.pdf

加えて、交通事情も異なります。
大都市ほど各鉄道会社の混雑率は高いため、「移動・輸送」のCO2排出量削減にはエコカーの普及が不可欠だといえます。

むしろ現在の日本でMaaSが効果を発揮するのは地方でしょう。
交通事情は三大都市圏ほど切迫していません。
また、ある場所から別の場所に移動する際に競合する複数の交通事業会社が存在するケースも、経済や人口の規模で勝る三大都市圏ほど多くはありません。
そのためMaaS構築には適しているといえます。
実際、MaaSの先行モデル事業に手を挙げているのは地方自治体が多いです(図13)。

課題もあります。過疎地域になるほど、クルマなしの生活は困難です。
日本の過疎地域の場合、公共交通機関が十分でないことに加え、労働者不足により「オンデマンドバス」と呼ばれる、地域住民の移動需要により運行形態を決めるバスなどの運営も困難な状況です*27。
コンパクトシティの実現により、グリーンスローモビリティでの移動で済むようにする必要があります。
ただし長距離移動に向かないため、エコカーの普及策は急務でしょう。

続いて、エコカーの将来の動向について考察してみます。
ここで欧州のエコカーを取り巻く動向が参考になります。
先述のように、欧州と日本とではガソリンにまったく依存しないEV(BEV)の占める割合に違いがありました。

図14:欧州におけるエネルギー源の比率(2019)
*出典:欧州委員会HP「Electricity generation statistics – first results」
https://ec.europa.eu/eurostat/statistics-explained/index.php/Electricity_generation_statistics_%E2%80%93_first_results#Production_of_electricity

欧州におけるEVの割合の高さは、動力源をガソリンに依存することからの脱却と自然エネルギーによる発電の割合の高さという両輪でCO2排出量削減効果を目指す政府方針の現れでしょう。

EVが普及しても電力を火力発電に依存しては、CO2排出量削減につながりません。
欧州では、旧来の化石燃料に依存した火力発電の割合は42.8%と半分を割っています(図14)。

 

図15:発電電力量に占める自然エネルギー比率の比較
*出典:資源エネルギー庁「2019—日本が抱えているエネルギー問題」(2019)
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/energyissue2019_2.html

一方で、日本の自然エネルギーの依存率は約10%と現状では高くありません(図15)。
このデータは、CO2排出量削減のためには動力源をガソリンから脱却することと自然エネルギーによる発電の比率を高めるという2段階が日本では必要なことを示しています。
事実、火力発電に依存する現状ではEVへのシフトによるCO2排出量はほとんど変わらないという試算もあります*28。

先述のように、2030年段階でエコカーの主力となりうるのはEVやPHEVです。
CO2排出量削減という目標達成には、自然エネルギーの比率を高めると同時に、EVやPHEVを増やすことが重要です。

その一方で、未来のモビリティとして再度注目され始めているのがFCV(燃料電池自動車)です。


表16:HVとFCVの価格比較
*出典:経済産業省HP「水素・燃料電池に関する経済産業省の取組について」(2019)p.6
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/suiso_nenryo_denchi_fukyu/pdf/006_01_00.pdf

現状では、HVが500万円代なのに対し、FCVは700万円代と300万円前後の価格の開きがあります(表16)。

図17:既存エネルギーと水素コストの比較
*出典:経済産業省HP「水素・燃料電池に関する経済産業省の取組について」(2019)p.8
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/suiso_nenryo_denchi_fukyu/pdf/006_01_00.pdf

また現状では水素のコストは1Nm3(ノーマルリューベ)当たり100円と高額です。
ハイオクエンジンを利用したHVと比較した場合、ガソリン税を考慮したとしても走行距離当たりのコストはFCVが1km当たり7.9円で、HVの7.0円よりも高くなっています。
このようにFCVには割高な側面があるため、2018年段階で約3,000台とまだまだ普及はしてはいません*29。

こうした事情からFCVが次世代のエコカーになりうるかについては疑問視されていました。

例えば、欧州連合(EU)は2018年段階で、2050年に水素エネルギーが大幅に利用されるシナリオは、全シナリオのあくまで1つに過ぎないと判断しています(図18)*30。
水素エネルギーの割合が増えなければ、FCVの普及はありえません。

図18:欧州委員会による地球温暖化防止戦略のシナリオ
*出典:京都大学HP「欧州連合の水素戦略と日本への影響」(2020)
https://www.econ.kyoto-u.ac.jp/renewable_energy/stage2/contents/column0201.html

ところが最近になって、日本以外にも米国や中国、韓国など、FCVに参入するプレイヤーが増えました。
中国は10年後にFCVの台数を100万台にすると2019年に発表しました*31。
一番FCVの台数の多い日本が2018年に3,000台なのと比較しても、数値目標はかなり高いといえるでしょう。

こうした流れを受けてEUも水素エネルギーへの投資を開始しています。

2020年に新型コロナウイルス感染症が世界中で大流行する中、「緑の復興(グリーン・リカバリー)」と呼ばれるCO2排出量の削減への投資が発表されるなど、攻めの戦略を採用しています*32。
その一環としてA hydrogen strategy for a climate-neutral Europeが発表されています。

この計画によると、2030年までに1,000万トンもの水素を供給できる水素ステーションを作ることが計画されています*33。
つまり、CO2排出量削減計画に水素エネルギーの活用を増やすことが組み込まれたのです。
こうした大規模な水素利用が実際に計画されたことは、2018年の段階ではCO2削減を可能にする9個のうちの1つのシナリオとして想定されていたのみだったのと比較しても、大きな前進です。

この欧州の水素戦略では、こうした大規模な水素ステーションの普及により、水素のコストが1Nm3当たり11~22円になるだろうと予測しています。逆に言えば、ここまでコストを下げるためにも、水素のコストの7~8割を占める電力コストを大幅に下げる戦略が求められており、この安価な電力として再生可能エネルギー由来の電力を使用する方針です*34。
これは日本の水素戦略で予測される1Nm3当たり30円を大きく下回る価格です。

このように水素の普及において、水素の生成でCO2を排出しない、かつ安価な方法にシフトすることが不可欠です。
各国が水素エネルギーへの研究・開発に舵を切り、FCVの実用化への道筋がみえてきました。
FCVが普及すれば、日本における「移動・輸送」が占めるCO2排出の課題への解決へと近づきます。
また、過疎地域では長距離移動にFCVが活躍するでしょう。

加えて、自家用車から公共交通機関へのシフトや、クルマのもつ運搬能力を最大限活用するMaaSの普及もCO2排出量削減に欠かせません。サービスとしての次世代移動手段であるMaaSと、EVやFCVのような次世代モビリティをうまく組み合わせていくことで、CO2排出量の削減が実現されていくでしょう。

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参照・引用を見る

*1.国土交通省HP「「平成30年度交通の動向」及び「令和元年度交通施策」(交通政策白書)」(2019)p.119
https://www.mlit.go.jp/common/001294516.pdf

*2.MaaS Alliance「What is MaaS?」
https://maas-alliance.eu/homepage/what-is-maas/

*3.環境省HP「エコカーを選んでみませんか?」
https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/kaikae/ecocar/

*4.環境省HP「気候変動枠組条約・京都議定書」
http://www.env.go.jp/earth/ondanka/column.html

*5.国土交通省HP「ライドシェアについて」(2017)p.3
https://www.mlit.go.jp/pri/kikanshi/pdf/2017/65-1.pdf

*6.MaaS Alliance「What is MaaS?」
https://maas-alliance.eu/homepage/what-is-maas/

*7.国土交通省HP「「平成30年度交通の動向」及び「令和元年度交通施策」(交通政策白書)」(2019)p.176
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/content/001313043.pdf

*8.電気事業連合会HP「電力需要の負荷平準化」
https://www.fepc.or.jp/enterprise/jigyou/juyou/index.html

*9.経済産業省HP「EV普及拡大の期待と課題」(2019)p.19
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/denryoku_platform/pdf/008_02_00.pdf

*10.フィンランド運輸通信省HP「Transport emissions to zero by 2045」
https://www.lvm.fi/en/-/transport-emissions-to-zero-by-2045-990384

*11.国土交通省HP「モビリティクラウドを活用したシームレスな移動サービスの動向・効果等に関する調査研究」(2019)pp.34-35.
https://www.mlit.go.jp/pri/houkoku/gaiyou/pdf/kkk151.pdf

*12.国土交通省HP「モビリティクラウドを活用したシームレスな移動サービスの動向・効果等に関する調査研究」(2019)p.37.
https://www.mlit.go.jp/pri/houkoku/gaiyou/pdf/kkk151.pdf

*13.Ramboll社「Whimpact」(2019)p.14
https://ramboll.com/-/media/files/rfi/publications/Ramboll_whimpact-2019

*14.米国環境保護庁HP「Volkswagen Violations」
https://www.epa.gov/vw/learn-about-volkswagen-violations

*15.自然エネルギー財団HP「EV普及の動向と展望」(2018)p.9
https://www.renewable-ei.org/activities/reports/img/pdf/20180627/REI_EVreport_20180627.pdf

*16.内閣府HP「Society 5.0」
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/

*17.首相官邸HP「日本版MaaSにむけて」(2019)p.12
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dourokoutsu_wg/dai2/siryou2.pdf

*18.首相官邸HP「日本版MaaSにむけて」(2019)p.3
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dourokoutsu_wg/dai2/siryou2.pdf

*19.復建調査設計HP「グリーンスローモビリティの特徴と可能性」(2019)p.6
https://www.fukken.co.jp/green-mobi/koen2.pdf

*20.国土交通省HP「総合交通体系と地域モビリティ戦略について」(2019)p.17
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/soukou/soukou-magazine/1711kenshuu01.pdf

*21.日本エネルギー経済研究所HP「ライドシェアの現状と日本における導入方法の検討」(2019)pp.6-8
https://eneken.ieej.or.jp/data/8339.pdf

*22.総務省HP「UBERのご紹介 & シェアリングエコノミーの可能性」pp.3-5.
https://www.soumu.go.jp/main_content/000377503.pdf

*23.Bloomberg「Uber Is Coming to Tokyo After Six Years in Japan」(2020)
https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-07-03/uber-is-finally-coming-to-tokyo-after-six-years-in-japan

*24.自然エネルギー財団HP「EV普及の動向と展望」(2018)p.i
https://www.renewable-ei.org/activities/reports/img/pdf/20180627/REI_EVreport_20180627.pdf

*25.大和総研「走り始めた燃料電池自動車(FCV)」(2019)p.4
https://www.dir.co.jp/report/consulting/other/20190222_020637.pdf

*26.国土交通省HP「モビリティクラウドを活用したシームレスな移動サービスの動向・効果等に関する調査研究」(2019)p.7.
https://www.mlit.go.jp/pri/houkoku/gaiyou/pdf/kkk151.pdf

*27.国土交通省HP「総合交通体系と地域モビリティ戦略について」(2019)pp.48-51
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/soukou/soukou-magazine/1711kenshuu01.pdf

*28.京都大学HP「電気自動車の完全普及による CO2排出量削減の効果を解明」(2020) p.1
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2019/documents/200219_2/01.pdf

*29.経済産業省HP「水素・燃料電池に関する経済産業省の取組について」(2019)p.12
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/suiso_nenryo_denchi_fukyu/pdf/006_01_00.pdf

*30.京都大学大学院経済学研究科HP「欧州連合の水素戦略と日本への影響」(2020)
https://www.econ.kyoto-u.ac.jp/renewable_energy/stage2/contents/column0201.html

*31.Bloomberg「China’s Hydrogen Vehicle Dream Chased With $17 Billion of Funding」(2019)
https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-06-27/china-s-hydrogen-vehicle-dream-chased-by-17-billion-of-funding

*32.欧州委員会HP「Boosting the EU’s Green Recovery: EU invests over €2 billion in 140 key transport projects to jump-start the economy」(2020)
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_20_1336

*33欧州委員会HP「A hydrogen strategy for a climate-neutral Europe」(2020)
https://ec.europa.eu/knowledge4policy/publication/communication-com2020301-hydrogen-strategy-climate-neutral-europe_en

*34.京都大学大学院経済学研究科HP「欧州連合の水素戦略と日本への影響」(2020)
https://www.econ.kyoto-u.ac.jp/renewable_energy/stage2/contents/column0201.html