国際協力も後押し! 再生可能エネルギーを推進するケニア共和国

国際協力も後押し! 再生可能エネルギーを推進するケニア共和国

ケニアときいて、何を連想しますか。
マサイ族? マラソン選手? サバンナ? 野生動物?
ステレオタイプなイメージとは違う、新しい情報があります。
現在、ケニアでは再生可能エネルギーが急速に普及しつつあるのです。
それはなぜでしょうか。その背景と現在の状況、そして今後の展開とは……?

ケニア共和国とは

エネルギーの話をする前に、まず、ケニア共和国(以下、「ケニア」)とはどのような国なのか、みていきたいと思います。

ケニアは、1963年にイギリスから独立した共和国です *1。

図1 ケニアの国旗
出典):外務省HP「ケニア共和国」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/kenya/index.html

ケニアの地理と気候

図2 アフリカ地図
出典:駐日ケニア共和国大使館HP「基本情報」
http://www.kenyarep-jp.com/kenya/basic_j.html

図3 ケニア共和国の位置
出典):外務省HP「ケニア共和国」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/kenya/index.html

ケニアは、アフリカ大陸の東海岸に位置する国で、赤道が国土を二分しています。東はソマリア、北はエチオピアとスーダン、西はウガンダ、そして南はタンザニアと隣接しています *1。

上の図2と図3は、ケニアの位置を表しています。
以下の図4は首都ナイロビの写真です。

図4 首都ナイロビ
出典:駐日ケニア共和国大使館HPトップページ
http://www.kenyarep-jp.com/tourism/park_j.html

国土の大半は標高1,200m以上の高原です。内陸部にはサバンナが広がり、その一帯には、ゾウ、ライオン、キリンなどの野生動物が多数、生息しています *2。

赤道直下のケニア山は、アフリカ大陸で2番目に高く(標高5,199m)、ユネスコの世界遺産に登録されている火山です *3。
ケニア山は約300万年前、アフリカ大地溝帯と呼ばれる大規模な火山活動によって生まれました。この大地溝帯は、ケニアの北から南を縦断していますが、この地帯の地下には地球内部の熱が溜まっています *2。
このことは、再生可能エネルギーという側面からみると大きな意味を持ちますが、それについては後ほど詳しくお話しすることにします。

図5 ケニア山
出典:駐日ケニア共和国大使館HP「基本情報」
http://www.kenyarep-jp.com/kenya/basic_j.html

ケニアの人口

2017年の人口は、4,970万人です *3。ケニアでは年々人口が増加していますが、その増加率は低下傾向にあります。
以下の図6は、ケニアの人口推移と将来推計を表しています。

図6 ケニアの人口推移と将来推計
出典:経済産業省 産業技術環境局地球環境連携室HP(2017)
「平成28年度二国間クレジット取得等インフ
ラ整備事業(JCM実現可能性調査)成果報告書
ケニア共和国における、太陽光発電技術の導入に
よる精米工場の電力最適化事業」(委託先:株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所)p.13
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H28FY/000748.pdf

経済状況と主要産業

ケニアの経済状況をみてみましょう。

図7 ケニアのGDPと経済成長率
出典:経済産業省 産業技術環境局地球環境連携室HP(2017)
「平成28年度二国間クレジット取得等インフ
ラ整備事業(JCM実現可能性調査)成果報告書
ケニア共和国における、太陽光発電技術の導入に
よる精米工場の電力最適化事業」(委託先:株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所)p.13
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H28FY/000748.pdf

上の図7は、2012年から2015年までのケニアのGDPと経済成長率を表しています。
その後、2016年の実質GDP成長率は5.8%と、前年の5.6%を上回りましたが、2017年は総選挙の混乱や政治的不安定性が経済に悪影響を与え、4.9%にとどまりました。
2017年のGDPは792億米ドル、1人あたりのGNIは1,440米ドルでした *3。

2008年、ケニア政府は「ビジョン2030」を公表しました。このビジョンは、2030年までに毎年、平均経済成長率10%以上を達成し、中所得国入りを目指すというものです *3。

なお、ケニアの通貨はケニアシリング(Ksh)で、2018年4月の為替レートは [1米ドル≒100Ksh ]です *3。

次に産業についてお話しします。
以下の図8は、ケニアの産業部門別経済規模を表しています。

図8 ケニアの産業部門別経済規模
出典:経済産業省 産業技術環境局地球環境連携室HP(2017)
「平成28年度二国間クレジット取得等インフラ整備事業(JCM実現可能性調査)成果報告書
ケニア共和国における、太陽光発電技術の導入に
よる精米工場の電力最適化事業」(委託先:株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所)p.14
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H28FY/000748.pdf

この図からもわかるように、主要産業は農業で、2016年には農業がGDPの約36%を占めました。主な農産物は、コーヒー、紅茶、園芸作物、サイザル麻、綿花、とうもろこしなどです *3。

農業に次ぐ産業は製造業で、アフリカの中では工業化が進んでいます。主な工業製品は、加工食品、ビール、タバコ、セメント、石油製品、砂糖などです *3。

2017年末,ケニア政府は今後5年間の重点経済政策として「BIG4」を掲げましたが、その中に製造業の振興が挙げられています *3。

 ケニアのエネルギー状況

では、ここからエネルギーの話に移りましょう。

以下の図9は、2009年におけるケニアの各カウンティ(「州・県」に該当する行政区分)の家屋電化率を表しています。

図9 ケニアの各カウンティにおける家屋電化率(2009年)
出典:JICA(独立行政法人国際協力機構)HP(2015)
「ケニア共和国 再生可能エネルギーによる地方電化モデル構築プロジェクト 事業完了報告書」
http://open_jicareport.jica.go.jp/pdf/12229399.pdf

図の白い部分が電化率5%未満、ピンクの斜線部分が5%以上10%未満、緑の部分が10%以上15%未満、薄い青部分が15%以上22.7%以内、そして、濃い青色部分が22.7%以上です。

ケニアの電化率には地域格差があり、最も電化率が高いのは首都のあるナイロビ・カウンティの72.4%であるのに対して、最も電化率が低い地域では2.4%でした。
また、全国の平均家屋電化率は家屋数の22.7%で、47カウンティの中で40カウンティがこの平均以下となっていました *4。

このような状況をうけて、ケニア政府は「Vision 2030」の中で、2030年までに電気への接続を100%にすることを、国家目標の一つとして掲げています *4。

では、ケニアの発電はどのような状態なのでしょうか。

以下の図10は、ケニア国家統計局による「エコノミック・サーベイ(Economic Servey) 2019」を基に、JETROが作成したもので、ケニアの総発電量と電源の推移を表しています。

図10 ケニアの発電状況の推移
出典:JETRO(日本貿易振興機構)HP(2019)「ケニアの電源は再生可能エネルギーが8割超、日本企業も貢献
添付資料『ケニアの総発電量の推移』」*ケニア国家統計局
「Economic Servey 2019」を基にJETROが作成
https://www.jetro.go.jp/view_interface.php?blockId=28590840

この図をみると、2010年から2018年の8年間で、総発電量は約1.6倍に増加していることがわかります。
電源の割合も大きく変わりました。全体的にみると、2010年には火力発電が全体の32%を占めていたのに対し、2018年は、地熱、風力を合わせた再生可能エネルギーが全体の49%と約半分を占め、それに水力発電を加えると、85%に上っていることがわかります。
個別の電源をみると、火力の割合が18%下がって14%になる一方、地熱が25%増と、大幅に増加しています。
地熱による発電量は、2015年に水力を上回り、2018年には約5,128GWhで、全体の46%を占め、最大の電源になりました *5。

このような急激な変化は何に起因するものでしょうか。
その背景には、国際協力があります。
これから、そのことについて詳しくみていきたいと思います。

 ケニアにおける再生可能エネルギーの推進と国際協力

ここでは、ケニアにおけるエネルギー状況が急速に変化しつつある、その背景をみていきたいと思います。

ケニアにおける地熱発電のポテンシャル

先ほどお話ししたように、ケニアは順調に経済成長しつつあり、電力需要は増加することが見込まれています *6。

JICA((独立行政法人国際協力機構、以下「JICA」)は、1900年代からケニアのディーゼル発電、水力発電への円借款を供与し、ケニアの電力供給量の増加に貢献してきました *6。さきほどみたように、以前は水力発電が中心だったためです。
しかし、近年、干ばつが頻発し、水力発電もその影響を受けて、不安定な状況にありました。また、水力発電に次ぐ電源である火力発電は、その燃料輸入が経常赤字の要因のひとつになっていました *6。

そこで注目を集めたのが、地熱発電です。
地熱発電とは、地下の熱エネルギーが溜まっている「地熱貯留層」まで井戸を掘り、熱水や蒸気を汲み出してタービンを回し、電気を生産する仕組みです *7。

先ほどお話ししたように、ケニアには火山活動による大地溝帯がありますが、その地下には、マグマで温められた地下水が貯留されている「地熱貯留層」が形成されています。この「地熱貯留層」は大変、膨大で、一度掘り当てれば半永久的な利用が期待できます。
また、水力発電のように天候に左右されることもなく、稼働すれば、安定的に発電できるという特徴があります *8。

そのため、ケニアの地熱発電ポテンシャルは、1万MWh以上にのぼるとみられています。
先ほどみたように、2010年時点では、地熱発電の割合は全電源の約21%に過ぎませんでしたが、ケニア政府は2030年までに地熱発電だけで6,500MWhという目標を掲げているのです *8。

JICAによる国際協力

JICAは地熱分野においても、ケニアへの支援を続けてきました。
まず、技術面では、ケニア地熱開発公社(Geothermal Development Company Ltd.:GDC)を対象に、地熱開発に伴う技術向上を目的とした「地熱開発のための能力向上プロジェクト」(2013年9月〜2017年9月)を実施しました。
戦略面では、地熱開発計画の更新を目的とした「GDCの地熱開発戦略更新支援プロジェクト」
(2014年2月〜2016年3月)を実施しました。
さらに、2016年1月から民間資本(独立発電事業者:Independent Power Producer, IPP)の参入を促進するためのアドバイザーも派遣しています *6。

以上のような活動のために、JICAは日本の地熱発電関連企業からエンジニアを35人以上、現地派遣する一方、ケニアからも70名以上の研修員が訪日して研修を受けました *8。

オルカリア地熱発電

ここでは、ケニアの地熱発電を担うオルカリア地熱発電についてみていきたいと思います。

まず、舞台となるオルカリアとは、どのようなところでしょうか。
大規模な地熱発電所の建設が進められているオルカリアは、首都ナイロビから北西に約75kmのところにあります。この地域は、ヘルズゲート国立公園近辺の緑豊かな地域で、地熱発電に適した条件を備えています *8。

図11 オルカリア地熱発電所
出典:内閣府HP「未来を支えるインフラシステム 安定したエネルギーの供給 アフリカの電力を支える オルカリア地熱発電所(仮訳)」
https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/201412/201412_02_jp.html

では、オルカリア地熱発電の背景をみていきましょう。

2010年3月、JICAはケニアとの間で、気候変動対策円借款「オルカリアI 4・5号機地熱発電計画」に関する書簡を交換しました。これは、アフリカの地熱分野に対する初の円借款です *6。
先ほどお話ししたように、ケニア政府は2030年までの長期計画で、地熱発電だけで6,500MWhという発電目標を掲げていますが、その一環としてオルカリア地区において140MWhの地熱発電所を整備するという計画を立てていました *9。

この円借款の目的は、電力需要が増加する中で、安定した電力供給を行うことで、経済発展に寄与することでした *9。

以上のような円借款に加え、欧州投資銀行(EIB)とフランス開発庁(AFD)による協調融資により *5オルカリアI 4・5号機は2015年2月に運転を開始しました *6。

2015年2月に、JICAは、ケニアの地方電化庁の職員と広域東アフリカの参加者とともに、オルカリア地熱発電所の視察を行いました *5。
以下の図12・13は、そのときの様子です。

図12 オレカリア地熱発電所への視察:試験井戸    図13 オレカリア地熱発電所への視察:制御室
出典: JICA(独立行政法人国際協力機構)HP(2015)
「ケニア共和国 再生可能エネルギーによる地方電化
モデル構築プロジェクト 事業完了報告書」
http://open_jicareport.jica.go.jp/pdf/12229399.pdf

こうした国際協力はその後も続けられています。

JICAは、2016年3月、ケニア政府との間で、「オルカリアV地熱発電開発事業」を対象として456億9,000万円を限度とする円借款貸付契約に調印しました。
この事業は、オルカリアに地熱発電所(出力70 MW×2基)と送電線(約5km)などの建設を行うものです *10。
この円借款と欧州投資銀行(EIB)との協調融資により、2018年、オルカリアI 6号機の工事を日本企業が受注しました *5。

また、2018年、新たな円借款「オルカリアI 1、2及び3号機地熱発電所改修計画」が調印されました。この計画は、1980年代に建設されたオルカリアI 1・2・3号機地熱発電所(15MW×3基)を、出力約51MW(約17MW×3基)へと改修するものです。
これらの発電所の稼働率は、老朽化のために、2017年には約60%にまで低下していましたが、この事業により、2023年には約90%にまで改善することが見込まれています *11。

さらに、JICAは現在、「オルカリア−レソス−キスム送電線建設事業」(2010年12月円借款契約調印)を実施中です。この事業の実施により、オルカリア地熱発電地帯からナイロビ、キスムといった大都市へ安定的に電力を供給することができるようになり、地熱発電との相乗効果が期待されています *6。

以下の図14はオルカリア発電所の位置図です。

図14 オルカリア地熱発電所の位置
出典:外務省HP(2018)
「ケニアに対する地熱発電による電力供給安定化のための円借款及び違法漁業監
視体制強化のための無償資金協力 立案位置図」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000344137.pdf

地熱発電以外のJICAの支援

次に地熱発電以外の再生可能エネルギーに関する、JICAの国際協力について簡単にお話しします。

地熱発電以外の取り組みとして、 「JICA ケニア共和国 再生可能エネルギーによる地方電化モデル構築プロジェクト」 *4 が挙げられます。

このプロジェクトの目標は、「未電化地域における再生可能エネルギー利用による地方電化モデルを構築し、公共施設等の施設電化率向上に貢献する」ことでした *4。
そうした目標に向け、さまざまなパイロット・プロジェクトと調査が行われました。
その報告書の最後には、各種のパイロット・プロジェクトと調査結果を基に、再生可能エネルギー、太陽光発電、小水力発電、バイオガス、風力発電などについて、目標達成のための提言が記されています。
これらの提言は、今後、地熱発電以外の再生可能エネルギーを普及させる際のガイドラインとなることが期待されます。

 アフリカのエネルギー普及に貢献する世界のパートナーシップ

ここでは、アフリカのエネルギー普及に向けた世界のパートナーシップについてお話ししたいと思います。

アフリカのエネルギー状況

まず、アフリカのエネルギー状況についてお話ししたいと思います。

アフリカではまだエネルギーが普及していません。
アフリカ全体で、6億4,500万人以上の人々がまだ電力へのアクセスがない状態です *12。

以下の図15は、2015年の1人あたりの年間電力消費量を地域ごとに表したものです。

図15 世界の地域別1人あたりの年間電力消費量(2015年)
出典:経済産業省資源エネルギー庁HP(2016)「1人当たりの電力消費量 (地域別)」
*IEA「Energy Balances 2015」、World Bank 「World Development Indicators」を基に作成
http://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2016html/data/223-1-2.xlsx

この図からもアフリカの深刻な状況がわかりますが、アフリカの中でも、ケニアを含むサハラ以南アフリカは最も深刻です。
2012年、南アフリカ共和国を除くサハラ以南アフリカの1人あたり年間電力消費量の平均は、181KWh だったと推定されています *12。

これまでのエネルギー・パートナーシップ

このような状況を打開するために、現在、国際協力が行われています。

まず、JICAによる、アフリカのエネルギー支援をみてみましょう。
下の図16は、JICAによる、アフリカへのエネルギー支援を表しています。

この図をみると、JICAはケニア以外のアフリカ各国へもエネルギー支援を行っていることがわかります。

図16 JICAによるアフリカへのエネルギー支援
出典:経済産業省HP(2017)( 独立行政法人国際協力機構(JICA) 産業開発・公共政策部)「JICAによるアフリカ電力開発支援」p.13
https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment/global_energy/pdf/003_04_00.pdf

次に、これまでのエネルギー・パートナーシップの主な事例をみていきましょう *12。

  1. アフリカ再生可能エネルギー・イニシアチブ
    2015年のCOP21で、G7諸国はアフリカに対して、2015年から2020年までに再生可能エネルギーに少なくとも100億米ドル投資することを約束しました。目標は、2020年までに、少なくとも10GWh分の再生可能エネルギー発生容量の設備を新設したり増設したりし、2030年までに少なくとも300GWhの発電を可能にすることです。
  2. パワーアフリカ
    アメリカのバラク・オバマ大統領によって2013年に開始された、取り引き及びパートナーシップ主導型モデルです。この目標は、2030年までに電力への新規接続を6,000万件追加し、新たな発電能力を30GW追加することです。
  3. 万人のための持続可能なエネルギー(SE4All)
    潘基文国連事務総長が2011年に立ち上げたプログラムです。主要目標は、➀2030年までに近代的なエネルギーサービスへのユニバーサルアクセスを確保すること、②世界におけるエネルギー効率の改善率の倍増、③世界のエネルギーミックスに占める再生可能エネルギーの割合の倍増の3つです。
  4. アフリカ持続可能エネルギー基金(SEFA)
    2012年に設置された、マルチドナー(デンマーク、米国、英国、イタリア)の信託基金(9,500万米ドル)で、アフリカ開発銀行が管理しています。目標は、未開発のクリーンエネルギー資源の効率的な利用を通じて、アフリカにおける民間セクター主導の経済成長を支えるためです。
  5. アフリカのエネルギー・リーダーズ・グループ(AELG)
    2015年1月に発足したグループで、メンバーは最高レベルの政治的及び経済的指導者です。目標は、エネルギー貧困を解消し、アフリカ大陸の経済的未来を、持続可能な形で実現するために、改革と投資を推進することです。
アフリカのエネルギーにおける新政策「ニュー ディール」

次に、アフリカの新たなエネルギー政策、「ニューディール」についてお話ししたいと思います。

「ニューディール」はアフリカ開発銀行が主導する、これまでにない取リ組みです *12。
この「ニューディール」がこれまでのパートナーシップと違う点は、アフリカのエネルギー部門に焦点を当てた、既存のすべてのプログラムの活動をコーディネートする、というところです。

先ほどお話ししたように、現在、アフリカでは、エネルギーに関する複数のプログラムが進行中です。「ニューディール」は、それらの効果をできるだけ迅速に、また有益に実現するために、既存のプログラムと新規のプログラムの取り組みを土台にして、 互いに連携できるように、調整するという役割を果たしています。

目標は、2025年までに、アフリカにおけるエネルギーへのユニバーサルアクセス(電力への接続100%)を達成するという意欲的なものです。
アフリカ開発銀行はこの目標を達成するために、政府、民間セクター、 2国間・多国間におけるエネルギー部門の取り組みと協力して、「アフリカのエネルギーのための変革的パートナーシップ」のプラットフォームを構築しています。

この政策で重視されているのは、次の5つの主要原則です *12。

アフリカのエネルギー課題を解決する意欲を高めること
アフリカのエネルギーのための変革的パートナーシップを確立するこ と
アフリカのエネルギー部門への革新的な資金調達のために国内及び国際資本を動員すること
アフ リカ各国政府がエネルギー政策、規制及びセクター・ガバナンスを強化することを支援すること
アフリカ開発銀行のエネルギー及び気候変動ファイナンスの投資を増加させること

以上のように、「ニューディール」は、パートナーシップ主導です。このような取り組みを通じ、アフリカのエネルギー普及に貢献しようとするさまざまな取り組みが、有益に機能することが期待されています。

 ケニアの再生可能エネルギーに関する今後の展開

では、最後に、今後の展開についてみていきたいと思います。

地熱発電のさらなる推進

2016年5月に、ケニアの ERCE(nergy Regulatory Commission、エネルギー規制委員会) は“Energy Efficiency Report, Kenya: 2015 – 2035” というレポートを公表しました *13。

以下の図17は、このレポートに記載されている、2015年~2035年までの電源拡張シナリオを図にしたものです。

図17 電源拡張シナリオ(2015年~2035年)
出典:経済産業省 産業技術環境局地球環境連携室HP(2017)
「平成28年度二国間クレジット取得等インフ
ラ整備事業(JCM実現可能性調査)成果報告書
ケニア共和国における、太陽光発電技術の導入に
よる精米工場の電力最適化事業」(委託先:株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所)p.17
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H28FY/000748.pdf

この図をみると、再生可能エネルギーに関しては、今後も地熱発電を主要電源とし、地熱・水力・風力発電を中心に電源開発を行っていこうとする方針が読み取れます。

日本からの今後の支援

2016年8月に、第6回アフリカ会議(TICAD Ⅵ)がケニアのナイロビで開催されました。この会議がアフリカで開催されたのは初めてのことです。
この会議には、アフリカ54カ国から首脳級の代表者が参加し、日本からも関係省庁や市民団体などが参加して、今後のアフリカ開発についての議論が展開されました *6。

この会議では、日本は、アフリカ開発銀行との共同イニシアティブを活用しつつ、約100億ドル (約1兆円)の質の高いインフラ投資を実施することを約束しました。
特に,経済活動に不可欠な電力供給に関して、官民合わせて発電容量を約2,000MWh増強させること、地熱発電により、2022年までに約300万世帯分の電力需要を賄うことを約束しています *14。

これらの支援はアフリカ全体に対するものですが、現在、アフリカの地熱発電はケニアが牽引していること、2016年以降も地熱発電に関連した円借款が行われていることを考えると、地熱発電は、今後もケニアでの取り組みを中心に展開していくものと思われます。

おわりに

これまで、ケニアでは、地熱発電を中心として再生可能エネルギーが急速に推進されていること、その背景には日本をふくむ国際協力があることをみてきました。

このような取り組みによって、ケニアの電力供給は安定し、発電量が増えています。それがケニアの人々の生活環境改善につながり、経済発展にも貢献しつつあります。
また、再生可能エネルギーの利用によってCO2の排出を削減し、地球温暖化の抑制に貢献することも期待されています。

ケニアにおけるこうした取り組みをモデルとし、今後も、技術力と経済力を生かした国際貢献が、再生可能エネルギー分野において発揮されていくことが望まれます。

引用・参考サイト
  1. 駐日ケニア共和国大使館HP「基本情報」
    http://www.kenyarep-jp.com/kenya/basic_j.html
  2. NHK HP(NHK for school クリップ)「ケニアの国土と自然」
    http://www2.nhk.or.jp/school/movie/clip.cgi?das_id=D0005403202_00000
  3. 外務省HP(2018)「ケニア共和国 基礎データ」
    https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/kenya/data.html
  4. JICA(独立行政法人国際協力機構)HP(2015)「ケニア共和国 再生可能エネルギーによる地方電化モデル構築プロジェクト 事業完了報告書」
    http://open_jicareport.jica.go.jp/pdf/12229399.pdf
  5. JETRO(日本貿易振興機構)HP(2019)「ケニアの電源は再生可能エネルギーが8割超、日本企業も貢献」
    https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/05/fb652cad13a4d913.html
  6. JICA(独立行政法人国際協力機構) HP(2016)「ケニア向け円借款契約の調印:地熱発電所等建設により国内の電力供給安定化と経済活動活性化に貢献
    https://www.jica.go.jp/oda/project/KE-P31/index.html
  7. NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構) HP(2014)「再生可能エネルギー技術白書 第2版 第6章 地熱発電」
    https://www.nedo.go.jp/content/100544822.pdf
  8. 内閣府HP「未来を支えるインフラシステム 安定したエネルギーの供給 アフリカの電力を支える オルカリア地熱発電所(仮訳)」
    https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/201412/201412_02_jp.html
  9. 経済産業省HP(2010)「環境展望 外務省、ケニア共和国に対する『オルカリアI 4・5号機地熱発電計画』に関する書簡を交換」
    http://tenbou.nies.go.jp/news/jnews/detail.php?i=3473
  10. JICA(独立行政法人国際協力機構) HP(2016)「オルカリア5地熱発電開発事業(Olkaria V Geothermal Power Development Project)」
    https://www.jica.go.jp/press/2015/20160310_01.html
  11. 外務省HP(2018)「ケニアに対する地熱発電による電力供給安定化のための円借款及び違法漁業監視体制強化のための無償資金協力」
    https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_005809.html
  12. アフリカ開発銀行グループHP(2016)「アフリカのエネルギー普及のための新政策『ニューディール」』2025年までにアフリカに明かりと電力を供給する変革的パートナーシップ」
    https://afdb-org.jp/wp-content/uploads/2016/03/201603_New-Deal_Japanese.pdf
  13. 経済産業省 産業技術環境局地球環境連携室HP(2017)「平成28年度二国間クレジット取得等インフラ整備事業(JCM実現可能性調査)成果報告書 ケニア共和国における、太陽光発電技術の導入による精米工場の電力最適化事業」(委託先:株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所)
    https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H28FY/000748.pdf
  14. 外務省HP(2016)「TICAD Ⅵにおける我が国取組‐ “Quality and Empowerment”‐」
    https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000183834.pdf<Photo:Adams Korir>