太陽光発電やIoT技術を使った進化型エコキュートって? その仕組みから事例を紹介

ヒートポンプの原理を利用した給湯システム「エコキュート」は、高い省エネ性とCO2排出削減効果が期待できるとして、近年急速に普及が進む製品です[*1]。

実際、2001年に世界で初めて商品化されて以降、2022年3月末までで、累計出荷台数は800万台を突破しました。

既に高い環境性を誇るエコキュートですが、近年、太陽光発電と組み合わせることでさらなるCO2削減効果が期待できる製品など、進化型が登場しています。

それでは、エコキュートとはそもそもどのようなものなのでしょうか。また、近年どのような進化型エコキュートが登場しているのでしょうか。詳しくご説明します。

 

エコキュートの仕組み

エコキュートとは、大気の熱を利用し、わずかな電気を使い高効率にお湯を沸かすことができる給湯機です。屋外の空気から熱を集めるヒートポンプユニットと、作ったお湯を貯めておく貯湯ユニットから構成されています[*1, *2], (図1)。

図1: ヒートポンプユニットと貯湯ユニット
出典: 一般財団法人 ヒートポンプ・蓄熱センター「家庭用自然冷媒ヒートポンプ給湯機”エコキュート”の累計出荷台数 800万台突破について」
https://www.hptcj.or.jp/index/newsrelease/tabid/1931/Default.aspx

ヒートポンプユニットでくみ上げられた空気の熱は、圧縮によってさらに温められ、その高温の熱を水に伝えることで、お湯を作ることができます[*2], (図2)。

図2: エコキュートの仕組み
出典: 三菱電機株式会社「エコキュートとは?」
https://www.mitsubishielectric.co.jp/home/ecocute/introduction/about.html

エコキュートの環境性

温室効果ガス排出量の削減効果

  
冒頭でも紹介したように、環境面で様々なメリットがあるエコキュートは、例えば、従来の給湯機器と比較して、温室効果ガスの排出量を抑えることができます[*3]。

エコキュートは、自然冷媒(一般に自然界に存在する物質で、高温沸き上げに適している可燃性・毒性のない冷媒)を採用しています。そのため、従来のフロン系冷媒と異なり、オゾン層にダメージを与えず、地球温暖化係数もフロン系冷媒の約1,700分の1です。

地球温暖化係数は、CO2を基準にして、他の温室効果ガスがどれだけ温暖化を進める能力があるかを表した数字です。フロン類はCO2と比べて数千〜1万倍温暖化能力があり、少量でも大きな悪影響を及ぼすため、フロン系冷媒から自然冷媒に代替することによって温室効果ガス排出量の削減につながります[*4]。

また、エコキュートはCO2自体の排出削減にも貢献します。燃焼式給湯システムと比較して、CO2排出量を約60%程度削減可能な業務用エコキュートも商品化されています[*5]。

国内では、家庭内のエネルギー消費の約3割が給湯由来と試算されているため、エコキュートの活用はCO2排出削減につながると言えるでしょう[*3]。

高い省エネ性能

  
電気エネルギーだけでお湯を沸かすのと比較して、エコキュートは消費電力量が低く、省エネ性能に優れている点もメリットの一つです[*6]。

エコキュートでは、電気エネルギーは動力として使用されますが、お湯を沸かす時にも、室外から汲み上げた熱と一緒に使われます。つまり、お湯を沸かす熱の効果は、外気からの熱とヒートポンプが使った電気の熱の合計になるため、より少ない電力でお湯を作ることができます[*3, *6], (図3)。

図3: エコキュートの省エネ性能
出典: パナソニック株式会社「エコキュートのしくみ」
https://sumai.panasonic.jp/hp/1mech/

夜間電力活用によるピークシフトへの対応

  
電力需要のピークシフトに貢献できるという点も大きなメリットです[*3]。

平均的な家庭において、一日のうち午後から夕食時が電気を最も多く使用する時間帯と言われています。エコキュートは電力需要の多い時間帯を避け、割安になる夜間にお湯を沸かせられるため、ピークシフトに対応可能であるとともに、給湯コストを大幅に削減することができます[*3], (図4)。

図4: 電力需要のピークシフトへの貢献
出典: パナソニック株式会社「エコキュートのしくみ」
https://sumai.panasonic.jp/hp/1mech/

近年注目を集める進化型エコキュート

太陽光発電と組み合わせて活用するエコキュートとは

  
エコキュート自体も高い環境性を誇りますが、近年、より環境に優しい進化型が登場しています。例えば、太陽光発電と組み合わせて活用できる「おひさまエコキュート」です[*7]。

現在、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーの導入拡大が進んでいます。例えば、電力会社があらかじめ決められた価格で電力を買い取る「FIT制度(固定価格買取制度)」によって、太陽光発電の導入量は急増しました。しかしながら、買い取り開始から10年を経過して固定価格での買い取り期間が満了する住宅用太陽光発電の数が増加しており、卒FIT後の電力の活用が課題となっています[*8]。

卒FIT後は売電単価が下落するため、電力の販売だけでなく、自家消費を促進することが不可欠です。そこで、自家消費の促進に有効な手段として、太陽光発電の余剰電力をエコキュートに活用するシステムが期待されています[*7]。

おひさまエコキュートの仕組み

  
おひさまエコキュートの仕組み自体は、既存のエコキュートと変わらず、お湯を作る時間帯が異なるだけです[*7], (図5)。

図5: おひさまエコキュートの仕組み
出典: 三菱電機株式会社「おひさまエコキュート新登場!」
https://www.mitsubishielectric.co.jp/home/ecocute/special/ohisama-ecocute/index.html

通常のエコキュートは、主に夜間の電力を使って夜間にお湯を沸かし、必要に応じて昼間に追加でお湯を沸かします。一方で、太陽光発電の余剰電力を使うおひさまエコキュートは、昼間にお湯を沸かします。

太陽光発電の余剰電力を使ってお昼にお湯を沸き上げるため、おひさまエコキュートには、後述するように環境面で様々なメリットが存在します。

おひさまエコキュートの環境性

  
太陽光発電の余剰電力を活用することで、通常のエコキュートと同様に電力需要のピークシフトに対応できるほか、CO2排出量のさらなる削減や放熱ロスの削減につながります[*9]。

通常のエコキュートは夜間に沸き上げ、貯湯するため、お湯を使用するまでの時間が長くなり、熱のロスが発生します。しかしながら、おひさまエコキュートのように当日の昼間に沸き上げることで、放熱ロスを抑えることができます[*9], (図6)。

図6: おひさまエコキュートによる放熱ロスの抑制
出典: ダイキン工業株式会社「おひさまエコキュートの特長」
https://www.ac.daikin.co.jp/sumai/alldenka/solar_ecocute_zenkoku/feature

また、太陽光発電を使うことによって、給湯光熱費やCO2排出量の削減も実現しています[*7], (図7)。

図7: 給湯光熱費の節約およびCO2排出量削減効果
出典: 三菱電機株式会社「おひさまエコキュート新登場!」
https://www.mitsubishielectric.co.jp/home/ecocute/special/ohisama-ecocute/index.html

三菱電機株式会社の試算では、通常のエコキュートと比較して、給湯にかかる光熱費は約27%削減、CO2排出量は約54%削減できるとしています。

IoT化も進むエコキュート

  
太陽光発電の活用に加え、エコキュートのIoT(Internet of Things)化も進んでいます。例えば、パナソニックホールディングス株式会社は、災害時に備えた「エマージェンシー沸き上げ」機能や、天気予報と連携した「おひさまソーラーチャージ」機能などを導入しています[*10]。

「エマージェンシー沸き上げ」とは、大雨などの災害情報・注意報が発令されている間、タンク内が常にお湯で満水になるよう自動で沸き上げを続けるなど、災害時の備えとして活用できる機能のことです[*10], (図8)。

図8: 「エマージェンシー沸き上げ」の仕組み
出典: パナソニックホールディングス株式会社「専用スマートフォンアプリで操作可能な『エコキュート』全46品番を発売」
https://news.panasonic.com/jp/press/jn200804-2

次に、「おひさまソーラーチャージ」とは、専用スマートフォンアプリが翌日の天気予報と連携し、効率的な太陽光発電の沸き上げを実現できる機能のことです。翌日の天気予報が晴れの場合、夜間の沸き上げ量を減らし、翌日の昼間に余剰電力を活かして沸き上げるため、効率的な給湯が可能になります[*10], (図9)。

図9: 「おひさまソーラーチャージ」の仕組み
出典: パナソニックホールディングス株式会社「専用スマートフォンアプリで操作可能な『エコキュート』全46品番を発売」
https://news.panasonic.com/jp/press/jn200804-2

国による支援制度を活用しよう

エコキュートの導入促進については、行政による導入支援も積極的に行われています。例えば、令和4年度補正予算では300億円を投入し、エコキュートを含む高効率給湯器の定額補助を実施しています[*11]。

本事業では、エコキュート1台につき5万円の補助を実施しています。エコキュートを設置する場合には、行政による支援制度についても情報収集を行いつつ、検討してみてはいかがでしょうか。

 

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参照・引用を見る

*1
一般財団法人 ヒートポンプ・蓄熱センター「家庭用自然冷媒ヒートポンプ給湯機”エコキュート”の累計出荷台数 800万台突破について」
https://www.hptcj.or.jp/index/newsrelease/tabid/1931/Default.aspx

*2
三菱電機株式会社「エコキュートとは?」
https://www.mitsubishielectric.co.jp/home/ecocute/introduction/about.html

*3
パナソニック株式会社「エコキュートのしくみ」
https://sumai.panasonic.jp/hp/1mech/

*4
全国地球温暖化防止活動推進センター「4-4 地球温暖化係数(GWP)について」
https://www.jccca.org/faq/15950

*5
環境省「エネルギー消費効率の高い給湯器への更新」
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/gel/ghg-guideline/business/measures/view/56.html

*6
一般社団法人 日本冷凍空調工業会「ヒートポンプ給湯機とは」
https://www.jraia.or.jp/product/heatpump/p_about.html

*7
三菱電機株式会社「おひさまエコキュート新登場!」
https://www.mitsubishielectric.co.jp/home/ecocute/special/ohisama-ecocute/index.html

*8
資源エネルギー庁「住宅用太陽光発電にせまるFIT買取期間の満了、その後どうする?」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/taiyoko_manryo.html

*9
ダイキン工業株式会社「おひさまエコキュートの特長」
https://www.ac.daikin.co.jp/sumai/alldenka/solar_ecocute_zenkoku/feature

*10
パナソニックホールディングス株式会社「専用スマートフォンアプリで操作可能な『エコキュート』全46品番を発売」
https://news.panasonic.com/jp/press/jn200804-2

*11
資源エネルギー庁「給湯省エネ事業 事業概要」
https://kyutou-shoene.meti.go.jp/about/

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