再生可能エネルギーの普及と拡大に欠かせないESG投資とは

再生可能エネルギーの普及と拡大に欠かせないESG投資とは

太陽光や風力や地熱などでつくる再生可能エネルギーを普及、拡大させるにはさまざま方法がありますが、ESG投資もそのひとつです。
一般的に投資とは、自分や組織のお金を事業者に託し、一定期間が過ぎた後により多くのお金を返してもらう行為です。したがって投資には、1)自分のお金を増やすことと、2)投資先の事業者の事業を発展させることの2つの目的があります。
ESG投資にはこの2つに加えて3つ目の目的があります。それは、環境と社会と企業を改善することです。
環境改善に投資をするので、ESG投資は再生可能エネルギー事業にマッチしている、といえます。

ESG投資とは環境と社会と企業統治に投資すること

まずはESG投資についてみていきましょう。
Eはエンバイアラメント(環境)、Sはソーシャル(社会)、Gはガバナンス(企業統治)の頭文字です。したがってESG投資とは、環境問題や人権問題、地域貢献、企業統治改革などに取り組んでいる企業に投資家がお金を出す行為のことをいいます(*1)。

企業も投資家も社会的な責任を強く自覚し始めた

一般的な投資は、事業者に渡すお金より高いお金(リターン)が戻ってくることを期待しますが、ESG投資をする投資家たちはリターンだけでなく、EとSとGの3分野が改善されて社会や世界や人々の暮らしがよくなることを期待します。

ESG投資をする投資家はいわば、社会的な責任を強く意識し始めた投資家といえます。
一般の投資家は企業の利益や売上高などの財務情報や儲けに注目しますが、ESG投資家は、企業のビジネスが環境や人権や格差などの諸問題の解決につながっているかどうかに着目します。
また、企業の経営者がコンプライアンスを守っているか、ブラック企業ではないか、従業員の働き方改革に積極的か、といったことにも注目します。

ただESG投資家たちは「善行」をするために「ESGな企業」に投資しているわけではありません。結局は、環境と社会と企業統治に配慮した経営や事業をしている企業のほうが、そうでない会社より利益が出ると考えられるので投資するのです。

企業がESGに配慮すると、コストがかかるうえに非効率な会社運営を強いられるため、短期的には利益を損なう恐れがあります。しかし「ESGな企業」であることで社会や消費者の信頼が得られるので、息の長いビジネスができます。
つまり「ESGな経営」は、社会の要請でもあるのです。

一方、「反ESGな企業」は短期間であれば効率よく稼ぐことができるかもしれません。例えばパワハラと長時間残業で従業員を追い込めば、簡単に利益をあげることができます。しかし、その本性が世間に知れ渡ってしまうと消費者や顧客から見向きされなくなってしまいます。またパワハラや長時間残業が横行している会社には優秀な人材が集まらないので、生産性を上げることはできません。
したがって反ESG企業は、社会から退場を申し渡される会社となってしまうのです。

世界のESG投資額は2,500兆円

「ESG投資のほうが投資効率が上がる」という見方は世界で広がっています。
グローバル・サステナブル・インベストメント・レビュー統計によると、2016年の世界のESG投資額は2,500兆円に達します(*2)。日本の1
年間の国家予算が大体100兆円なので、その規模の大きさがわかると思います。
環境問題や人権問題に敏感な欧州が最もESG投資に熱心で、約1,200兆円になります。アメリカが約900兆円、カナダが約100兆円、日本が約56兆円となっています。
日本の金額がやや見劣りしますが、それでも2016年の56兆円は、前年の2倍になっています。

再生可能エネルギーに投資する意義

資源エネルギー庁は「再生可能エネルギーは大きな弱点がある」と指摘しています(*3)。それは、発電コストが高いことです。
同庁によると、日本の非住宅向け太陽光発電システムを構築する費用は1kw(キロワット)当たり28.9万円/kWで、これは欧州の15.5万円/kWの1.9倍になります。

ただこの数字を悲観する必要はありません。むしろ「日本の太陽光発電システムのコストは1.9分の1にできる」と考えるべきでしょう。
実際、世界の太陽光の発電コストは2009年の35円/kWhから2017年の10円/kWhへと3.5分の1になっていますし、風力の発電コストにいたっては1984年の70円/kWhから2014年の10円/kWhへと7分の1になっているのです。

もちろん、コストを1.9分の1にしたり、7分の1にしたりすることは簡単なことではありません。そこでポイントとなるのが投資なのです。

日本のESG投資が欧州並みになれば

先ほど、欧州のESG投資額は約1,200兆円、日本は約56兆円、と紹介しました。実に21.4倍の差があります。
そしてEU(ヨーロッパ連合)の2017年の1人当たりの名目GDPは33,994ドル/人で、日本は38,440ドル/人です(*4)。
つまり欧州は、日本より裕福ではないのに多額のお金を環境問題などに投じているのです。「だから」環境に優しい再生可能エネルギーのコストが欧州では安くなっている、と推測することもできます。

この推測は単なる「当てずっぽう」ではありません。投資額を増やすことによってコストが下がることは事実です。
投資をすることで高効率になったり生産性が向上したりするので、企業は「儲け体質」になります。生産コストが下がれば製品やサービスを安く販売できるので利用者が増え、ビジネスが活性化し、企業は「さらなる儲け体質」になります。
業績がよい企業には優秀な人材が集まるので、効率性と生産性はさらに向上し、さらにコストが下がります。

すると、その企業のビジネスモデルを真似する会社が現れます。これが、市場の拡大という現象です。
自動車もパソコンも携帯電話もスマートフォンも、市場が拡大したことで安くなりました。再生可能エネルギーも市場が拡大すればコストが下がるはずです。

つまり再生可能エネルギー事業こそ、この投資による好循環を必要としているのです。

日本の再生可能エネルギーへのESG投資の現状

日本における、再生可能エネルギー事業へのESG投資の実例を紹介します。

ESG投資の「火付け役」となったGPIF

日本のESG投資の火付け役となったのが、日本の公的年金事業の資金を運用している「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)です。GPIFは世界最大級の機関投資家ですので、そのインパクトはかなり大きなものでした。
そのGPIFは公式ホームページで、ESG投資に力を入れていることを大々的にPRしています(*5)。
GPIFは直接「ESGな企業」の株を購入しているわけではなく、運用会社を通じて投資しています。そしてGPIFはその運用会社に「ESGを考慮した投資」を求めているのです(*5、6)。

石炭火力発電への逆風

再生可能エネルギーへの注目が集まる一方で、環境対策や脱炭素化に逆行する石炭や石油などの化石燃料を使った発電には逆風が吹いています。
化石燃料に関連する投資を取りやめた投資家は世界で900を超え、その資産規模は700兆円にも及びます(*7)。
日本でも明治安田生命保険が、石炭火力発電向けの新規投融資を取りやめることを決めました(*8)。日本生命保険や第一生命保険もこうした動きに同調しています。
投資の撤退をダイベストメントといい、「環境に優しくないもの」からのダイベストメントは確実に広がっています。

個人でもESG投資はできる

個人も再生可能エネルギーに投資することができます。
例えばSBIソーシャルレンディング株式会社という会社が、「SBISLメガソーラーブリッジローンファンド」という金融商品を個人向けに販売しています(*9)。
ファンドとは、一般の人から広くお金を集めて特定の企業に投資をする仕組みで、このSBISLメガソーラーブリッジローンファンドは太陽光発電事業者に投資をします。
個人は1万円から投資することができます。

SBISLメガソーラーブリッジローンファンドを購入した個人は太陽光発電事業を後押しでき、もし投資先企業の事業が企業に乗れば利益を得ることもできるのです。
ただしSBISLメガソーラーブリッジローンファンドの購入はあくまで投資なので、元本保証するものではなく、リスクが伴います。

まとめ~「ただ電気を買う」から「選ぶ」へ

2016年に家庭向け電力の小売が自由化されるまで、消費者は制度上、地域の大手電力会社から電気を買うしかありませんでした。このような規制は電力事業を推進するため「当時としては」効率的と考えられていたからです。
しかしこの規制は電力会社を結果として保護することになり、国の制度で守られた電力会社には再生可能エネルギーを使うモチベーションが生まれませんでした。

現代の消費者は、大量に二酸化炭素を排出しながらつくられる電気ではなく、クリーンな再生可能エネルギーでつくられた電気を選ぶことができるようになりました。
「ただ電気を買う」時代から、「選んで買う」時代になったのです。
その流れはマネーの世界である投資にも押し寄せ、ESG投資が誕生しました。
この流れを加速させるには、消費者1人ひとりが「この電気はどのようにつくられたのか」を考える必要があるでしょう。

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