営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)先進地ヨーロッパの「今」。日本の農業ファーストとの違いは?

近年日本国内でも見かけることが多くなってきた営農型太陽光発電所(ソーラーシェアリング)。既存の農地で今まで通り農業を営みながら発電も可能な夢のような技術だからこそ、拡大に向けてより注意深い制度設計と社会的な合意形成が求められています。

営農型太陽光発電の先進地と言えるヨーロッパで毎年行われてれているAgriVoltaics Industry Forum Europe。2023年11月開催のフォーラムに参加して見えてきた日本との違い、動向をJUWI自然電力株式会社エンジニアリング部の室生滉と田中翔伍がレポートします。(2024年2月取材)

左から二番目が室生滉、右から3番目が田中翔伍

世界の営農型太陽光発電をめぐる議論の的は?

室生:まず、営農型太陽光発電をめぐる議論は、持続的な営農がなされているかという点です。これは日本でもEUでも同じです。

前提として、基本的に同じ面積の土地で発電した電気を売って得る収入は、農業を営んで得る収入よりも多いという現実があります。

また、農地はどの国民にとっても欠かせない食糧生産を行う重要な一次産業のリソースですから、課される税金も他の種別で登記されている土地よりも比較的低く抑えられているのが一般的です。また、農作物を育てる土地なので日当たりは良好で、地形も平坦です。

そのため農地として登記されている土地で発電をすると、同じ発電量でも農地ではない土地で発電した場合より大きな収入を得られることになります。これを意図的に悪用すると、実際は営農がほとんど行われてない、形だけの営農型太陽光発電所になってしまいます。フォーラムの中では度々「フェイクアグリ」なんて言葉で語られていました。

日本でもEUでも危機感は強く、農業ファーストを前提にしつつ営農型太陽光発電の導入を不必要に遅らせないことも視野に入れながら、その国に合ったルールが設けられています。

AgriVoltaics Industry Forum Europe 2023の様子

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日本の現在

田中:日本の場合、農地をめぐる大きな課題は担い手不足による荒廃です。これらの解決を営農型太陽光発電所を建設することで進めようと、2050年のカーボンニュートラルを前にいくつかの規制が緩和されています。一つは、営農型太陽光発電所についてのみ農地の「一時転用」が認められ設置を進めやすくなったという点です。また、営農型太陽光発電所に限って、架台を地面に固定する面積のみの一時転用が可能です。営農型ではない太陽光発電の場合は発電に使用する土地すべての登記変更が必要なので、この点でも導入がしやすくなるよう配慮されています。

二つ目は、周辺農地の平均水準と比べて80%の収量を確保すべきという規制が、「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」を経て、2021年3月に撤廃されています[*1]。

これにより営農型太陽光発電所は、日本では数年前に比べて大幅に建設がしやすくなっています。

ただし、2023年12月に農林水産省は過度な農地転用を規制する目的で「営農型太陽光発電に係る農地転用許可制度上の取扱いに関するガイドライン」(案)を公表し、いままで一時転用の通知のみで良かったところ、地方農政局への事前の相談や毎年の現地調査、指導があった場合に改善がなければ撤去もできるといった項目が盛り込まれる見込みです[*2]。


農家と発電にかかわる側が共に作るEUの営農型太陽光発電

室生:他方EUでは、そもそも日本と異なる要件が大きく3点あります。まず、営農太陽光の入札制度等により、通常の太陽光よりも高い価格で電力が買い取られるということ。また、そもそも太陽光発電の導入に対する環境影響評価が厳しく、メガソーラーを建設することは至難の業です。次に、日本に比べて大規模な農家が多いことです。つまり、大規模農家が景観に配慮しながら営農型太陽光発電システムを導入することにより、農家の収入を増やしつつカーボンニュートラルなエネルギーを発電をすることが期待されている状況があります。

また、欧州の乾燥した地域では、太陽光パネルの下で作物を育てることで、乾燥から植物を守り、返って収量が増えるケースもあるという事例も紹介されていました。

このことを念頭に置いてフォーラムに参加して印象的だったことは、農業にかかわる側と発電にかかわる側が密に連携して、域内でどう再生可能エネルギーの割合を増やしていくかという大きな方向性に基づいたルール作りを共に行っている点でした。

例えば、今回参加したフォーラムでも、エネルギー政策を担う立場の人々のプレゼンがある中で、当然のように農家の方々のプレゼンも多くありました。自分の農地に試験的に設置した営農型太陽光発電システムがどのような見た目で、どれぐらいの電力を発電し、どのような影響が農地にあったのかを発表し、聴衆を集めていたことには驚きました。

田中:私たちは発電所を建設する立場として、普段は発電効率が良くなるために最適な設計を行うのが仕事です。大体の場合、効率とは太陽の向きとパネルの向きを適切な角度にすることに重きが置かれます。

そのため、今回のフォーラムでみたEUの事例では、太陽光パネルを農業のためのひとつのツールとして捉え、太陽だけではなく農地の状態も考慮に入れて設計していることが印象的でした。

太陽光発電設備には追尾型といって、発電効率を上げるために太陽の動きを追いかけてパネルの向きを変え続けるタイプがあります。フォーラムではパネルの下の農地に設置したセンサーからも情報を得て、太陽と農作物との両方の状態のバランスをとって方向を変える様々なシステムが紹介されていました。

これは、乾燥が激しいEU諸国の農地では、太陽光パネルが農業の一つのツールとして認識され活用されている事例と言えます。実際にパネルを設置したことにより、収量が増えたという報告もされていました。

農家と発電にかかわる側が一緒になって、よりよいシステムを開発している様子に心を動かされました。

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EUのルール作りの特徴

室生:このような状況から、EUでの営農型太陽光発電をとりまくルール作りの特徴として、データ重視の姿勢が挙げられます。例えばイタリアでは農作物への影響や、土壌肥沃度の回復度合い、そして節水についてのモニタリングシステムの導入はガイドラインで基準として位置付けられています。

また、フランスでは発電容量が250kWを超える営農型太陽光発電所は事前の建設許可と環境影響評価が義務付けられており、自然環境や景観への配慮がなされる法律もあります。

今回の参加では、そもそも営農型太陽光発電は農業を営む人がいないと開発ができないものであること、そして、よりよい営農型をつくるためには農業側の知見が必要であることを実感しました。


日本ならではの開発のヒント

田中:EUと気候風土が異なる日本ならではの開発の方法がまだまだ残されていると思います。例えば日本では乾燥よりもむしろ大雨に対する対策が求められていることも、今後の開発では視野に入ってくることでしょう。

また、山間部が多く日照時間が少ないことも考慮した設計が求められると考えています。まだまだ工夫のし甲斐がたくさんある営農型太陽光発電です。

異なる立場の人が積極的にコミットすることによって、地域にとってより意味のある営農型太陽光発電システムを生み出せることがよくわかりました。ありがとうございました。

 

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参照・引用を見る

*1
メガソーラービジネス「農水省、営農型太陽光の『単収8割以上』要件、荒廃農地には課さず」
https://project.nikkeibp.co.jp/ms/atcl/19/news/00001/01614/?ST=msb

*2
メガソーラービジネス「農水省、営農型太陽光の要件を厳格化、ガイドライン制定」
https://project.nikkeibp.co.jp/ms/atcl/19/news/00001/03872/?ST=ms

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