地球環境を守りながら世界を変える! SDGsのしくみと自然エネルギー

  「誰一人取り残さない」(no one left behind)を謳い文句に、2015年、国連のサミットでSDGs(持続可能な開発目標)を含む「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」(以下、「2030アジェンダ」)が採択されました。この「持続可能な」とはどのような意味でしょうか。2030年までに達成されるべき「開発目標」とは何でしょう。 そして、自然エネルギーとの関連は・・・?

SDGs(持続可能な開発目標)とは

ここではSDGsの概要についてお話しします。

~「持続可能な開発」とは~

2015年9月の国連総会サミットで、SDGs(持続可能な開発目標)が採択されました。
まず、「持続可能な開発」(Sustainable Development)とはどのようなものでしょうか。

この概念は、「環境と開発に関する世界委員会」が1987年に公表した報告書‘Our Common Future’の中心的な考え方で、その報告書では将来の世代の欲求を満たしつつ,現在の世代の欲求も満足させるような開発」1) と定義されています。

原語である英語の‘Sustainable’ は、「維持できる」、「持続可能な」という意味と、「(地球)環境を破壊しない」、「地球にやさしい」という意味を併せ持っています。つまり、「環境と開発は両立することができるものであり、環境保全を考慮しながら、節度ある開発をすることが重要である」という考えを表しているのです。

さて、SDGsの理念と目標は「2030アジェンダ」に詳しく記されています。

外務省が日本語に仮訳した「2030アジェンダ」2) には、「極端な貧困を含む、あらゆる形態と様相の貧困を撲滅することが最も大きな地球規模の課題であり、持続可能な開発のための不可欠な必須条件である」(pp.1-2 [2])と書かれています。

~SDGs採択の背景:「ミレニアム開発目標」(MDGs)の後継~

次にSDGsが採択された背景についてみていきましょう。

SDGsの前身は2001年に策定された「ミレニアム開発目標」(Millennium Development Goals:MDGs)です。このMDGsは、開発途上国を対象とした開発目標として、以下の8つの目標を設定しました。

図1.ミレニアム開発目標(MDGs)の8つの目標
出典:外務省HP「ミレニアム開発目標」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/doukou/mdgs.html

これらの目標の達成期限は2015年でしたが、以上の目標のうち、目標1「極度の貧困と飢餓の撲滅」や目標6「HIV/エイズ、マラリア、その他の疫病の蔓延の防止」は達成したものの、目標4「乳幼児死亡率の削減」や目標5「妊産婦の健康の改善」は未達成だったり、地域によって達成が遅れたりました。

そこで、MDGsの後継として、残された課題を含む新たな目標を定めたものがSDGsで、その達成期限は2030年に設定されています。

SDGsのしくみと特徴

SDGsは画期的な目標であるといわれています。それはなぜでしょうか。
ここでは、SDGsのしくみと特徴をみていきましょう。

~目標・ターゲット・指標の3重構造~

まず、しくみについてお話しします。
SDGsには17の「持続可能な開発目標」が設けられています。以下はその目標を表した公式ロゴです。


図2 SDGsの「持続可能な開発目標」ロゴ
出典:国際連合広報センターHP(2018)「SDGsのロゴ」
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/sdgs_logo/

これらの目標について、「2030アジェンダ」2)に以下のように記されています。
※公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)作成による仮訳をベースに編集

 

持続可能な開発目標 

SDGsの「持続可能な開発目標」
出典:外務省HP「仮訳 我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」p.14
 https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000101402.pdf

SDGsはこれらの目標ごとに、より具体的な下位目標である「ターゲット」を全体で169設けていますが、これについてはエネルギーに関する「目標7」を例に後でみることにします。

こうした多くの目標達成にむけた取り組みの進捗を測定するためには「指標」が必要になります。2017年7月、国連総会で244(重複を除くと232)の指標が採択されました3)。この指標に関しても後ほど「目標7」を例に見てみましょう。

以上のように、SDGsは、目標、ターゲット、指標の3重構造になっています。この重層的なしくみが目標達成に向けた取り組みを促すと同時に、進捗を測って評価した上で取り組みを見直すなどのフォローアップに役立っているのです。

~5つの優れた特徴~

ここでは、SDGsの優れた特徴について、外務省の資料4) を基に、先に触れた「2030アジェンダ」2) の記述を引用しながらお話しします。

まず、ひとつめは「普遍性」です。
「2030アジェンダ」には、「このアジェンダは前例のない範囲と重要性をもつものである」、「このアジェンダは・・・すべての国に受け入れられ、すべての国に適用されるものである。これらは、先進国、開発途上国も同様に含む世界全体の普遍的な目標とターゲットである」(p.2 [5])と述べられています。

先ほどみたMDGsは発展途上国が対象でしたが、SDGsではこのように先進国も含むすべての国が対象であり、目標達成のための行動主体でもあるのです。こうした普遍性は、それまでにはなかった画期的なことです。

2つめは「包摂性」です。
「2030アジェンダ」には、冒頭でふれたフレーズ、「我々は誰一人も取り残さないことを誓う」と書かれています。さらに、目標とターゲットがすべての国、すべての人々及び社会のすべての部分で満たされることを望む」(p.2 [4])とも明記されています。

3つめは「参画性」です。
「2030アジェンダ」には「すべての国及びすべてのステークホルダーは、協同的なパートナーシップの下、この計画を実行する」(前文)と書かれています。

この「ステークホルダー」とは利害関係者全体を指します。例えば、外務省のホームページではSDGsの取り組み事例を紹介していますが5)、それらの事例は、企業、自治体、NGO/NPO、教育・研究機関、メディア、その他(法人など)などのジャンルに分類されています。

また、国際連合広報センターのホームページで公開されている「持続可能な社会のために ナマケモノにもできるアクション・ガイド(改訂版)」6) では、日常生活で個々人が取り組める小さな行動が紹介されています。例えば、髪や衣類はドライヤーを使わずに自然乾燥させるとか、電気洗濯機は容量がいっぱいになってから使う、使ってない電気器具は完全に電源を切る、などです。

このように、SDGsでは、目標達成のために、規模の大きさを問わずすべてのステークホルダーが参画し行動することが求められています。

4つめは「統合性」です。
これは、経済、社会、環境の3つの分野の統合を指します。上記の開発目標とターゲットは、これら3分野にわたっています。

「2030アジェンダ」2) には、「これらの目標及びターゲットは、統合され不可分のものであり、持続可能な開発の三側面、すなわち経済、社会及び環境の三側面を調和させるものである」(前文)、「我々は、持続可能な開発を、経済、社会及び環境という三つの側面において、バランスがとれ統合された形で達成することにコミットしている」(p.2 [2])と書かれています。これらの分野は相互に関連していますから、複数の開発目標やターゲットも相互に関連しているという特徴があります。

では、ここで、この「統合性」という特徴を示す事例を紹介したいと思います。
先にふれた外務省のホームページにはさまざまな行動主体による多様な取り組み事例が掲載されていますが5)、その中から、長崎大学の取り組み7) を見てみましょう。

図4 長崎大学の取り組み
出典:長崎大学HP「長崎大学のSUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS  日本における課題先進地域である島での取り組み」
http://global.nagasaki-u.ac.jp/sdgs/

この事例では、島における課題解決に向け、目標3、4、7、8、11、13、14という複数の目標を掲げ、さまざまな側面から統合的に取り組んでいます。さらに、同じ事業に対して目標7と13、目標8と11というように2つの目標が並立しています。
このように、ひとつの問題解決のために複数の分野が関連し、また開発目標自体も関連し合っているのです。

さて、最後の5つめは「透明性」です。
先ほどSDGsのしくみでふれたように、SDGsはターゲットごとに指標を設け、定期的に評価をし、報告書を出してフォローアップしています。

~5つのP~

国際連合広報センターのホームページでは、「アジェンダ2030」をわかりやすく説明するために、国際連合広報局が2016年に英語で作成したパワーポイントのスライドを日本語に翻訳し、公開しています8)。その中でSDGsを支える要素として、次のような「5つのP」を挙げています。   

         

図5 SDGsを支える「5つのP」
出典:国際連合広報センターHP「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェダ」(PPT) p.4
https://www.unic.or.jp/?s=SDGs+PPT

この「5つのP」の説明と各要素に関連する目標を以下にまとめます。

エネルギーと関連する「目標7」およびその意義

では、最後に、SDGsの大きな柱である経済、社会、環境のすべての分野に関係する、エネルギーについて見ていきましょう。

これまで見てきたように、持続可能な開発目標は相互に関連しています。したがって、エネルギーに関する目標も「目標7」を中心に、「目標9」、「目標12」、「目標13」など複数の目標と関連していますが、ここではエネルギーに特化している「目標7」につい考えていきたいと思います。

~「目標7」の意義~

ここでもう一度、「目標7」の内容を確認してみましょう。

 目標7:すべての人々の、安価で信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する

国際連合広報センターの資料9) には、この目標に関する説明が事実やデータとともに記されています。また、同じく国際連合広報センターからの別の資料10) には、手ごろな価格のクリーンエネルギーの普及がなぜ大切なのかさらに詳しい説明が載っています。

わたしたちの日常生活は、手ごろな価格のエネルギーによってスムーズに機能しています。エネルギー・システムが確立すれば、ビジネス、医療、教育、農業、インフラ、通信、先端技術などのあらゆる部門をサポートすることができます。
ところが、2015年時点で、電気を利用できない人々は約10億人に上っていました。

一方、エネルギーは気候変動を助長する最大の要因のひとつでもあります。全世界の温室効果ガス排出量の約60%が化石燃料などエネルギーに由来するものです。

次に「目標7」のターゲットと評価のための指標をみてみましょう。
以下の表1は、総務省が国連統計部の資料を仮訳したものです。

ターゲット7.2、には、再生可能エネルギーの推進が、その7.2 の指標である7.2.1 には消費エネルギーに占める再生可能エネルギーの割合が明記されています。
また、ターゲット7.a には、再生可能エネルギーの研究や開発に関わる国際協力が、その7.a の指標である 7.a.1 には、再生可能エネルギーの研究や生成への支援に関わる発展途上国への国際金融フローが明記されています。

表1 「目標7」のターゲットと指標

            ターゲット指標(仮訳)
7.1   2030年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。

By 2030, ensure universal access to affordable, reliable and modern energy services.

7.1.1 電気を受電可能な人口比率

Proportion of population with access to electricity

7.1.2 家屋の空気を汚さない燃料や技術依存している人口比率

Proportion of population with primary reliance on clean fuels and technology

7.2 2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。

By 2030, increase substantially the share of renewable energy in the global energy mix.

7.2.1 最終エネルギー消費量に占める再生可能エネルギー比率

Renewable energy share in the total final energy consumption

7.3 2030年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。

By 2030, double the global rate of improvement in energy efficiency.

7.3.1 一次エネルギー及びGDP単位当たりのエネルギー強度

Energy intensity measured in terms of primary energy and GDP

7.a 2030年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率及び先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研   究及び技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネ ルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する。

By 2030, enhance international cooperation to facilitate access to clean energy research and technology, including renewable energy, energy efficiency and advanced and cleaner fossil-fuel technology, and promote investment in energy infrastructure and clean energy technology.

7.a.1  クリーンなエネルギー研究及び開発と、ハイブリッドシステムに含まれる再生可能エネルギー生成への支援に関する発展途上国に対する国際金融フロー

International financial flows to developing countries in support of clean energy research and development and renewable energy production, including in hybrid systems

7.b   2030年までに、各々の支援プログラムに沿って開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、内陸開発途上国の全ての人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるよう、インフラ拡大と技術向上を行う。

By 2030, expand infrastructure and upgrade technology for supplying modern and sustainable energy services for all in developing countries, in particular least developed countries, small island developing States and landlocked developing countries, in accordance with their respective programmes of support.

7.b.1 持続可能なサービスへのインフラや技術のための財源移行におけるGDPに占めるエネルギー効率への投資(%)及び海外直接投資の総量

Investments in energy efficiency as a proportion of GDP and the amount of foreign direct investment in financial transfer for infrastructure and technology to sustainable development services

出典:総務省政策統括官(統計基準担当)HP(2018)「持続可能な開発目標(SDGs)指標仮訳」
http://www.soumu.go.jp/main_content/000562264.pdf

~「目標7」に関する進捗状況と自然エネルギーの果たす役割~

国際連合広報センターは、「持続可能な開発目標報告2018」11) を公開しています。この報告書は、「2030アジェンダ」実施3年目の進捗状況を概観するものです。
では、この報告書に書かれている「目標7」の進捗状況をみてみましょう。

2000年から2016年までに、世界で電気を利用することができる人々の割合は、78%から80%に上昇し、電力なしで暮らす人の数は10億人を切りました。
再生可能エネルギーが占める割合は、2014年の17.3%から2015年は17.5%と微増しました。

また、産業の省エネの程度を測る指標として使われる、全世界のエネルギー強度(GDP/エネルギー総供給)は、2014年から2015年にかけて2.8%低下しました。これは1990年から2010年までの10年間の改善率の2倍の速度に相当します。

以上のようなことから、報告書では、この目標について「実現に一歩近づきました」と評価しつつも、「世界が2030年までにエネルギー関連の目標を達成できる目処をつけるためには、各国の優先課題と政策上の野心をさらに強化する必要があります」と述べられています。

先にみた、資料10) には、再生可能エネルギーに移行するために、持続可能なエネルギー・インフラへの投資を、現在の約4,000億ドルから2030年までに1兆2,500億ドルへと3倍に増やす必要があるとも述べられています。
「目標7」の達成のためには、各国が再生可能エネルギー源に投資し、省エネを実践し、クリーンエネルギーの技術とインフラを採用することが大切です。

以上のように、自然エネルギーがSDGsの達成において果たす役割は重要で、今後、持続可能な開発に対して大きく貢献することが期待されています。

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