日本における「再生可能エネルギーの発電割合」を増やすためにできること:洋上風力発電

日本における「再生可能エネルギーの発電割合」を増やすためにできること:洋上風力発電
日本の再生可能エネルギー割合

先進国はもとより、新興国のエネルギー使用量の爆発的な拡大が予想されています。資源エネルギー庁がまとめた、2016年から2040年までの主要各国における推測データによると、中国は現在のアメリカ合衆国の総エネルギー量、インドはヨーロッパの総エネルギー量、東南アジア地域では現在の日本の総エネルギー量とほぼ同等の増加が見込まれています(*1)。

石炭、石油、LNGなど有限なストック資源のみに頼り続けながら、すべての人類が現状の生活水準を向上、または維持し、豊かに共存していくことは難しいといってよいでしょう。資源戦争を起こさないため、世界で協同した取り組みが必要です。

*出典:資源エネルギー庁
平成30年「エネルギー情勢懇談会提言 ~エネルギー転換へのイニシアティブ~ 関連資料」

2015年9月、ニューヨークの国連本部で行われたサミットでは、持続可能な社会の実現に向けて、17の開発目標を掲げるアジェンダ「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が193の国連加盟国によって採択されました(*2)。

17の持続可能な開発目標(SDGs)のなかには、「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」という目標が掲げられています。「すべての人に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する」ことがメインテーマです(*3)。

国連開発計画(UNDP)は「2030年までに手ごろな電力を完全に普及させるためには、太陽光や風力、地熱などのクリーンなエネルギー源に投資しなければなりません」とも明言しています。再生可能エネルギーの割合を増やしていくエネルギーミックスの考えは、大きなうねりとなって、世界中で推進されています。

*出典:国際連合広報センター

2015年のパリ協定に合意した日本は、脱炭素化社会の実現に向けて、2030年には2013年度比でエネルギー総量を26%削減することを目標に設定しています。具体的には「エネルギーミックス」による電源構成を理想としており、再生可能エネルギーの割合を22%~24%程度まで押し上げる考えです(*4)。

 

<エネルギーミックスにおける2030年の電源構成>

  • 再生可能エネルギー 22%~24%
  • 原子力発電 20%~22%
  • LNG 27%程度
  • 石炭 26%
  • 石油 3%

 

さて、日本の現状はどうなのか確認してみたいと思います。2017年のデータではヨーロッパ諸国と比べると、再生可能エネルギーの割合は低い状態です。日本が14.5%なのに対し、ドイツは30.6%、スペインが35.3%、イギリスが25.9%、フランスが16.3%となっています(*5)。なかでも原子力発電利用0%のイタリアでは、政府主導で再エネが推進されていることもあり39.8%と高水準です。日本も福島第一原発の事故により、原子力による発電割合は1.7%ですが、原子力発電所の稼働ストップ分を天然ガス(LNG)の輸入でカバーしています。天然ガスも有限なストック資源の一つであるため、再生可能エネルギー割合22%以上の目標達成に向けてできることを検討していく必要があります。


*出典:経済産業省 資源エネルギー庁
2017年 日本のエネルギー「エネルギーの今を知る20の質問」

再生可能エネルギーとしてポテンシャルの高い洋上風力発電

日本の再生可能エネルギー割合を増やすために推進したい発電方法の一つが「洋上風力発電」です。谷あいに立つイメージの表現でよくみられる「陸上風力発電」とは異なり、海上に風車を設けるタイプの風力発電です。陸上風力発電と比べると、以下のようなメリットがあります(*6)。

*出典:国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
「洋上風力発電について」
https://www.nedo.go.jp/fuusha/haikei.html

  • 風の乱れが少ないため、陸上風力発電に比べると安定した電力供給が可能
  • 陸上風力発電とは異なり、用地制約が少ないため大型風車を導入しやすい
  • 海上にあるため、居住・観光観点での景観問題が発生しにくい
  • 陸上風力発電に比べて、騒音被害を出しにくい

 

特に期待される理由は地理的条件です。日本は大陸全体を海に囲まれた島国なので、設置可能な面積が広く、発電ポテンシャルが格段に大きいのが特徴です。

 

環境省が提示した各自然エネルギーの発電ポテンシャル総量は以下の通りです(*7)。

 

<各電力の可能性(ポテンシャル)>

  • 住宅用等太陽光発電:21269万kW
  • 公共系等太陽光発電:14,689万kW
  • 陸上風力発電:2.8億kW
  • 洋上風力発電:14.1億kW
  • 中小水力発電(河川部):901万kW

 

2013年頃より太陽光バブルが過熱していましたが、2019年よりFIT制度が段階的に収束していくことも考えると、政府主導で洋上風車の設置に注力していくことの方が、効率的といえるでしょう。

 

国際エネルギー機関(IEA)の報告書「技術ロードマップ:風力エネルギー-2013年版」では、2013年から2050年比で、世界の全電力供給量のうち風力発電が占める割合が18%にまで引き上げられることが推測されています(*8)。日本でも風力発電の設置は積極的に推進されており、2000年以降、うなぎのぼりに設置基数が増加しています(*6)。

*出典:国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
「日本の風力発電」
https://www.nedo.go.jp/fuusha/haikei.html

近年、とくに2017年から2018年にかけては、国内外で洋上風力発電のビッグイヤーでした。日本政府が2018年に発表した「第5次エネルギー基本計画」のなかで、2050年までに再生可能エネルギーを“主力電源化することを目指す”と明言しています(*9)。今まではエネルギーミックスの1ポジションとして再生可能エネルギーの割合を増やす考えが表明されるに留まっていました。そうした経緯を踏まえると、第5次エネルギー基本計画の発表はエポックメイキングだったといえるでしょう。第二セクターでも、洋上風力発電に向けた活発な動きがみられました。

 

  • 2017年1月に第一生命が、SDGsの「目標7: エネルギーをみんなに そしてクリーンに」の取り組みの一環として、ドイツにおける洋上風力発電設備建設プロジェクトへ約35億円を投資(*10)
  • 2018年6月に三菱商事が、オランダ沖合の洋上風力発電事業(総事業費1800億円)に現地の子会社Diamond Generating Europe社を通して参画したことを発表(*11)
  • 大手投資会社(三井住友海上キャピタル、THK)が台風による風力発電を行う機器会社・株式会社チャレナジーにESG投資(*12)
  • 2018年9月、イングランド北西部の沖合に建設された世界最大の洋上風力発電基地が稼働を開始(*13)

このように活況がみられる昨今ですが、将来の展望については、やや慎重になる必要がありそうです。現在のところ、日本の風力発電の割合は全電力比で0.6%程度と過少にとどまっています(*14)。

*出典:認定NPO法人環境エネルギー政策研究所
「2017年暦年の国内の全発電量に占める自然エネルギーの割合(速報)」
https://www.isep.or.jp/archives/library/10930

さらに、日本の風土に根差したエネルギー効率の高い風車の研究開発を推進していくことも喫緊の課題です。洋上風力発電の開発を先駆的に進めてきた欧米諸国では風力発電コストが急激に下がっており、10ユーロセント/kWhをを切る事例も出ています(*15)。

 

一方、日本では風車の建築費、維持管理費、電力を通す海底ケーブルなどが高いことなどが懸念されています(*6)。そういった要因もあり、洋上風力発電の発電コストが割高になっています(*16)。

 

<再生可能エネルギーの調達価格(2018年比較)>

  • 事業用太陽光発電 18円/kW
  • 住宅用太陽光発電 26円~28円/kW
  • 風力発電 19円/kW
  • 風力発電 20円/kW
  • 洋上風力発電 36円/kW
  • 地熱発電 26円~40年/kW
  • 水力発電 20円~34円/kW
  • バイオマス発電 13円~39円/kW

 

2018年12月にNEDOより発表されたリリースでは、2030年までに浮体式洋上風力発電の発電コストを20円/kWh以下にするべく、実証研究に着手したとの報告がされました(*17)。エネルギー効率の上昇に向けて、今後ますますの発展が期待されます。

洋上風力発電への評価レビュー

再生可能エネルギーとしての利用性向について評価レビューを試みます。評価レビューに当たっては、我が国のエネルギー政策の基本方針である「3E+S」をもとに行います。「3E+S」は安全最優先(Safety)、資源自給率(Energy security)、環境適合(Environment)、国民負担抑制(Economic efficiency)の頭文字をとったものです(*18)。「エネルギー源ごとの強みが最大限に発揮され、弱みが補完されるよう、 多層的なエネルギー供給構造を実現すること」を目指しています(*5)。

 

電力の供給においては、3E+Sに加えて、以下の観点も重要となるでしょう。そのため「安定供給(Stable supply)」もレビュー対象に加えます。

 

<安定供給性(Stable supply)>

  • 需要ピーク時にも停電を起こさないこと
  • 停電時にも、バックアップ電源が確保されていること

 

3E+2Sの観点で、洋上風力発電を評価したレビューは以下の通りです。

安全最優先、資源自給率、環境適合においては、申し分ない電力供給源として期待されますが、国民負担抑制と安定供給においては、持続的な注視が必要です。

 

国民負担抑制の改善に向けては先述の通り、NEDOほか、第二セクターが中心となってエネルギー効率の高い洋上風力発電の開発に向けて前進していくのが最善と考られるでしょう。一方、安定供給に対しては「蓄電池の導入」を一つの方向性として推進するのが望ましいかもしれません。

太陽光発電用のパワーコンディショナーを手がける田淵電機株式会社が行った蓄電池の有用性を検証する実証実験「カナダにおける太陽光+蓄電ハイブリッドシ ステムを活用したスマートコミュニティ事業に ついて(NEDO実証事業」があります(*19)。人口16.2万人のカナダのオンタリオ州・オシャワ市では、年間を通じて停電が多発している地域でしたが、実証実験を行った全30戸では、2016年に76回、2017年に40回起きた停電に対して、蓄電池による自立運転が問題なく作動し、電力供給を行うことで停電回避に成功した旨が報告されています。

 

一方、原子力発電0%(=脱原発)の国・オーストラリアにも際立った事例があります。電力の99%以上が再生可能エネルギーでまかなわれているACTおよびタスマニアほか、各州もおおむね8%~50%の高水準で再生可能エネルギーがエネルギーミックスされていますが、停電が大きな社会問題になっています(*20)。

そこで南オーストラリア州で実施されたのが、テスラ社による世界最大規模の蓄電池導入でした。その結果、停電対策はもとより、既存の発電方法からの一部リプレイスにより南オーストラリア州の電気代が75%も削減されるなど、顕著な実績を挙げています。このことは、世界的に大きなニュースになっています(*21,22)。

日本でも蓄電池の研究開発は進められており、自然エネルギーのコスト削減に一役買っています。経済産業省資源エネルギー庁は、産業用の蓄電池は2020年までに15万円/kWをめざし、家庭用では15年寿命の蓄電池において2020年までに6万円/kWhを目指す考えです(*23)。第5次エネルギー計画で発表された主力電源化の本丸の一つに蓄電池が挙げられていることからも、未来ある再生可能エネルギーといえるのではないでしょうか。

 

日本における「再生可能エネルギーの発電割合」を増やすためにできることとして、電源ポテンシャルが大きく、調達コストの低い洋上風力発電の導入と、不安定性を補うバックアップ電源の導入を推進していくことが望まれます。

 

■参考文献
■そのほか、参考文献