「リモートセンシング(RS)とRS技術の自然エネルギー普及・管理に向けた利用」

「リモートセンシング(RS)とRS技術の自然エネルギー普及・管理に向けた利用」
リモートセンシングとは?

部屋の温度や明るさ、モノと人の距離などを計測するセンサーは、自動ドアやエアコン、テレビのリモコン、ロボットなどに使われていて、われわれの日常生活で必要不可欠となりつつあります。

このようなセンサーを使ってモノの状態や状況(物体や現象)に関する情報を取得する技術は「センシング技術」と広く呼ばれています。特に、対象となる物体と物理的に接触することなく、伝搬信号(例えば電磁波など)に基づいて人から遠くに離れた場所にあるモノ(物体)や現象に関する情報を取得する技術をリモートセンシングと呼んでいます。

リモートセンシングの技術は進化し、人が計測しきれないような広い範囲や離れたモノの状態や現象を効率的かつ正確に把握できるようになりつつあります。そのため、社会インフラなどの普及や管理にとって不可欠な技術になりつつあります。

本文ではその中でも特に、自然エネルギーの普及・管理におけるリモートセンシングの重要性を述べます。

 

リモートセンシングは基本的に波のデータを取得して解析する技術です。波は波長域という、波の細かさ(波の幅の大きさ)によって様々な特徴を示します(図1)*1。波長域が細かく(波の幅が小さく)なるほど反射しやすいですが、あまり遠くまで飛ばない特性を持っています。逆に、粗く(波の幅が大きく)なるほどモノを避けて飛んでいくので透過されやすく、遠くまで飛ぶ特徴があります。波長域が細か過ぎてもあまり遠くまで飛ばないので遠くからデータを取ることができませんが、波長域が粗すぎても色々なところから情報が入ってくるので情報量が多くなり過ぎて解析できず、リモートセンシングに向かなくなってきます。

図1 リモートセンシングで取得する波の種類
(上方向が細かく(波の幅が小さい)、下方向が粗い(波の幅が大きい))
出典:NASA*1

 

よくリモートセンシングで使用される波長域は、いわゆる可視光と呼ばれる人の目で判別できる青や黄色や赤を示す波長域のデータから、マイクロ波と呼ばれる人の目では判別できない、細かい地形を判別するような波長域のデータまでがよく用いられます。

可視光のような波長域のデータは、太陽光を受けた物質が反射した波のデータを受動的に取得するので、パッシブセンサーと呼ばれるセンサーで取得されます(図2上)*2。一方、マイクロ波のような波長域のデータはアクティブセンサーと呼ばれるセンサーで取得されます。太陽光が反射した情報ではなく、衛星等で直接レーダーを照射して、返ってきたマイクロ波をセンサーで収集します。そういう意味では、人の視神経はパッシブセンサーで、脳は解析プログラムのような関係です。


図2 パッシブセンサー(上)とアクティブセンサー(下)のデータ取得プロセスの違い
出典:Chowhan & Dayya (2019)*2

センサーは特殊な物質や配列で作られていて、その波長域のデータだけを取得できます。そのため、パッシブセンサーもアクティブセンサーも、受け取った波を数値化して、人がわかるように解析する必要があります。例えば、人の視神経は青から赤の波長域を取得できるセンサーで、脳でそれぞれRGB(赤、緑、青)を255の数値にして色付けする解析を行なっています。

取得したデータは取得した場所や時期によって、同じ数値でも異なる状況を示したりします。そのため、リモートセンシング解析・分析と呼ばれる技術で、通常は専門家がプログラムやソフトウェアを用いて解析・分析します。

 

例えば、衛星から撮影した写真は、写真の四隅や地形が歪んでいる状態なのでそのままでは地図に載らず、幾何補正という処理が必要になります。例としてGoogle Earthで東京タワーを見ると、ほぼまっすぐ上から撮影したように補正されていますが、スカイツリーは横たわっているようになってしまっています(図3・図4:2019年6月現在)。スカイツリーの例のように、衛星・航空写真はある物体に対して斜め上から撮影している画像が多いので、幾何補正処理は今でも高い技術力が要求されます。

近年では、すでに解析されたデータがわかりやすく一般性をもって分析できるように提供されることも多いです。例えばGoogle Earthは世界中の衛星写真や航空写真がすでに解析されたデータとして一般向けに提供されています。また、JAXA・環境省・国立環境研究所が提供する温室効果ガス衛星「いぶき」のデータ提供サイトでは二酸化炭素の値を色付けした地図が一般向けに提供されています。*3

図3 Google Earth上の東京タワーの航空写真
(出典:Google <https://goo.gl/maps/UnFn1j4yXw2GH5Jf9>)

図4 Google Earth上の東京スカイツリー
(出典:Google <https://goo.gl/maps/kbfdjEMzZ6DGZdyG8>)

リモートセンシング技術の社会への利用範囲

最初のリモートセンシングは1800年代の中期にバルーンでパリの写真を撮影したところから始まったと言われていますが、飛躍的な進歩を遂げたのは軍事利用です。衛星でリモートセンシングを実施する場合に衛星を飛ばしても良い軌道(衛星軌道)が決まっていて、軍事衛星は地表から約160〜230kmくらいを飛びますが、民間衛星ではそれよりも高い高度を飛ばす必要があります。位置を推定するGPS衛星は約20,000kmの高度を飛んでいます。*4

リモートセンシングの技術はこのように軍事や研究分野で発展してきたので一見専門性を感じる言葉ですが、地球上の情報は波で構成されているので利用範囲は広いです。地理学、測量、地球科学の分野(水文学、生態学、気象学、海洋学、氷河学、地質学など)のように分類される学術や商業、経済、行政等の職種で利用されています。

地理学では衛星・航空写真のデータが利用されています。測量はGPS衛星や、日本で打ち上げられた「みちびき」シリーズのデータが利用されています。地球科学の分野では、日本では気象衛星の「ひまわり」、植生や地形を判読できる「だいち」シリーズ、最近では日本で打ち上げられた温室効果ガス衛星「いぶき」などのデータが利用されています。衛星データは基本的にどの国の人でも使えるように規格されていることから国内外問わず特色のある衛星・航空データを使うため、利用状況の特色は国によって大きな差はあまり見られません。さらに、最近はどの分野も衛星や航空機だけでなく、ドローンで細かい地形を作るサービスが増えてきています。

特に、私たちが日常使う天気予報は、「ひまわり」に基づく衛星解析データを気象学的に分析した予報だけでなく、地上からレーダーを飛ばして雲や水蒸気の量を分析し、ゲリラ豪雨などの突発的な豪雨を予測することも可能になってきました。もはや天気予報なしでは生活できないのではないでしょうか。

また、GPS衛星のデータをベースに、携帯の電波やWiFiなどのネットワーク電波を使って自分の距離を測れるデータ数を増やし、精度の高い自分の位置をスマホ上で示すことも可能になってきました。これに車両情報を加えると、自動車の渋滞状況やトンネル内の自分の位置も正確に把握できます。カーナビやスマートフォンのアプリなど、ナビを付けていない車は見ないほどになってきましたし、おかげで道に迷うこともなくなってきました。救急車や消防車も渋滞情報を受けながら最短ルートをナビされています。また、これに距離センサーを加えることで、事故のない完全自動運転車をメーカーも開発を進めています。

このような陸上の事例だけでなく、海でも音波を使って魚群を探知して効率的に漁業が営まれています。また、最近ではドローンで農作物の生育状況を効率的に把握する露地栽培も増えてきました。資源の探査も多様な波長域の値をセンシングして効率的に実施されています。

このように、リモートセンシングの技術なくては、世の中の産業が成り立たない社会になりつつあります。

リモートセンシング技術の自然エネルギー普及に向けた利用

自然エネルギーは名前の通り、自然界を動力源とするエネルギーですので、設置や管理において気象や気候の情報が不可欠です。

そのため、リモートセンシングの技術を用いて、自然エネルギーのポテンシャルを事前に評価して建設する動きが一般化されつつあります。

例えば、太陽光パネルを設置する場合、年間の日射量を衛星で取得したデータから推定しておくことで年間発電量を見込むことができます(図5)。*5  また、様々な太陽光パネルを衛星写真等のデータから効率的に状態(破損箇所の判別や積雪の状況など)を把握し、管理される事例も増えてきました。さらに、マイクロ波を使って地形図を作成し、影の量・架台の設置可能性といった太陽光パネルの設置条件、風向風速や植生評価による生物の生息空間(ハビタット)等の環境アセスを事前に評価することも重要になってきました。

台風や突風の影響を避ける必要のある風力発電機では、事前にレーダーで補正された異常気象の予報を元に運転を停止する管理を施すようになってきています。

これらを例にするように、リモートセンシング技術を用いてリスクを事前に把握し対策を準備することは自然エネルギーの普及で欠かせないアプローチとなりつつあります。

さらに今後、気候変動に伴う異常気象の乱立で過去にないリスクを背負っている自然エネルギー源の発電所を管理する際には、リモートセンシングで得たデータに基づくリスク予測をすることが必要不可欠な技術の一つとなります。自然エネルギーを主要電源として確立していくためには、このように予測されたリスクとそれに基づく対策によって事業リスクをどう緩和していくかの見通しについて、事業者、投資家、自治体等が情報をオープンにシェア・議論することが必要となるでしょう。

 


図5 リモートセンシングによる季節ごとの日射量の推定例(上海市)

引用文献: