どうやって実現? 自然エネルギー100%をめざすRE100とは

どうやって実現? 自然エネルギー100%をめざすRE100とは

地球温暖化は気候変動の要因となり、自然環境にも私たちの生活にも大きな影響をもたらしています。地球温暖化を引き起こす二酸化炭素の排出を抑え、脱炭素社会を構築する―それは、私たちの最重要テーマのひとつといってもいいでしょう。

最近、その脱炭素社会の実現に向けて、企業に大きな動きがみられるようになってきました。なかでも、「自然エネルギー(再生可能エネルギー)100%」をめざす国際イニシアティブの存在はインパクトがあります。では、その企業グループとは・・・・・・?

RE100とは

RE100(「Renewable Energy 100%」)とは、2014年に設立した国際イニシアティブです。特徴的なのは、加盟するすべての企業が「事業運営を100%自然エネルギーで調達すること」を宣言していることです。

RE100のホームページ(2019年7月7日掲載)によると、加盟企業は185社で、メンバーは著名な大手グローバル企業です 1)。

図1 RE100のロゴ
出典:RE100 HP
http://there100.org/re100

 

設立経緯と運営組織

REを開設したのは、国際環境NGOのThe Climate Group(以降、「TCG」)で、現在はパートナーシップを組むCDPとともに、RE100を運営しています 1)。

 

では、そのTCGとCDPとはどのような組織なのでしょうか。

まず、TCGは2004年に、当時のイギリス、ブレア首相の支援を受け、ロンドンに設立されました。現在では、イギリスの他に、アメリカ、インド、中国、香港などに支部を置き、世界中から数多くの企業や政府関連組織が参画しています。

TCGは毎年9月に、国連総会の時期に合わせて年次報告会「Climate Week NYC」を開催しています。そして、2014年の「Climate Week NYC」の中で、RE100プロジェクトが発足しました。

Climate Week NYCは、TCGに参加している企業の代表が、RE100プロジェクトへの新規参入を表明する場ともなっています 2)。

 

次に、TCGとともにRE100の運営にあたっているCDPは2000年にイギリスで設立したNGOで、グローバルな情報開示システムを運営しています。それらの情報は環境影響を管理するために活用され、投資家、企業、都市・国家・地域がこのシステムを利用していて 3)、2019年3月時点で、CDPの趣旨に賛同する機関投資家数は650機関、総資産は87兆米ドルに達しています 4)。

CDPはこれまでの活動によって新しい仕組みを構築しました。独自の「CDP気候変動質問書」を使ったアンケートによって、世界の主要企業のCO2排出量や気候変動への取り組みに関する情報を収集し、それらを分析、評価するという仕組みです。その仕組みにより、世界中の大手企業の気候変動対策に関する情報と評価結果が共通の枠組みと基準で得られるため、現在、ESG投資において世界で最も参照されているデータのひとつにまでなっています 4)。

 

なお、日本では、JCLPがRE100の支援窓口をつとめています。このJCLPとは、2009年7月に設立した、「持続可能な脱炭素社会の実現を目指す」日本独自の企業グループです。

RE100の目的

では、RE100の目的はどのようなものでしょうか。

RE100のホームページによると、その目的は、以下のような4つの取り組みにより、「地球規模の脱炭素化の実現を加速させること」です 1)。

 

  • 可能な限り最短の時期(遅くとも2050年まで)に、全世界で100%再生可能電力を調達することを約束する主要企業を結束させる。
  • 自然エネルギーに関する企業のリーダーシップの基準を設定し、参画メンバーの他への働きかけや奨励に関する業績を称える。
  • 自然エネルギーに関する説得力のあるビジネス事例を、企業、公益事業者、市場運営者、政策決定者などの影響力が大きい者に伝達する。
  • RE100の加盟企業による報告から、自然エネルギーのビジネス上および経済上の利益を実現するのに障壁となるものを洗い出し、明らかにする。
  • RE100の加盟企業やその以外のメンバーとのパートナーシップにより、再生可能電力の企業調達に対する方針および市場の障壁となるものを洗い出し、それらに対処する。

 

RE100は、以上のような取り組みによって電力を自然エネルギーに切り替えることで、CO2の排出量を削減し、地球規模の脱炭素化をめざしているのです。

 

RE100設立の背景

では、脱炭素化の推進はなぜ必要なのでしょうか。

CO2排出と地球温暖化

まず、地球温暖化の状況についてお話ししたいと思います。

 

次の図2は、世界の累積総CO2量と世界平均気温上昇の相関関係を表しています。

図2 さまざまな一連の証拠による、世界の累積総CO2量と世界平均気温上昇量出典:環境省(2014)「IPCC第5次評価報告書の概要―第1作業部会(自然科学的根拠)」p.53         https://www.env.go.jp/earth/ipcc/5th/pdf/ar5_wg1_overview_presentation.pdf

IPCC同報告書は、こうした気温上昇はCO2の累積濃度とほぼ比例しているという見解を発表しています 5)。

なお、IPCCとは、世界気象機関(WMO)および国連環境計画(UNEP)により1988年に設立された国連の組織で、その任務は、科学者などが地球温暖化に関する科学的・技術的・社会経済的な評価を行い、得られた知見を政策決定者や一般に利用してもらうことです 5)。

 

このような状況の中、2015年12月にCOP21でパリ協定が採択され、翌2016年の11月に発効しました。先ほどみた IPCC第5次評価報告書が提供した気候変動に関する科学的知見をふまえ、パリ協定の長期目標は、「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に押さえる努力を追求すること」に決定しました 6)。

 

2018年10月にIPCC総会において採択された「1.5℃特別報告書」(正式名:「1.5℃の地球温暖化:気候変動の脅威への世界的な対応の強化、持続可能な開発及び貧困撲滅への努力の文脈における、工業化以前の水準から 1.5℃の地球温暖化による影響及び関連する地球全体での温室効果ガス(GHG)排出経路に関するIPCC 特別報告書」)は、2018年12月のパリ協定実施指針(ルールブック)策定に大きな影響を与えたことで知られています。

この特別報告書で報告されたのは、以下の4点です 7)。

 

  1. 近年にみられる進行速度で温暖化が進めば、世界の気温は2030年から2052年の間に産業革命時に比べて1.5℃上昇する可能性がある。
  2. 1.5℃上昇でも影響リスクはあるが、2℃上昇よりはリスクは低い。例えば、海面上昇は2℃上昇よりも10㎝低くなる。
  3. 1.5℃上昇に抑えるための世界のCO2排出量は、2030年までに2010年に比べて約45%削減し、2050年前後には実質ゼロにすることである。
  4. 2015年のパリ協定採択時に提出された国別目標では、気温上昇を1.5℃に抑えることはできず、社会システムを大きく改革する必要がある。
企業の責任とビジネスチャンス

これまでみてきたように、地球温暖化の要因はCO2です。また、現在、地球温暖化が進行していて、このままでは今後も進行する可能性が高く、さらに温暖化が進行した場合には大変なリスクがもたらされるであろうことが、科学的な裏付けをもって報告されています。

このような状況を打開するためには、CO2排出を抑えることが急務です。

 

では、こうした状況に対する企業の責任とはどのようなものでしょうか。

ここで、さきほどみた IPCC「1.5℃特別報告書」の産業に関わる部分の記述についてお話ししたいと思いますが、それに先立ち、その記述中に用いられている「オーバーシュート」ということばの意味について簡単にお話ししておきたいと思います。

 

人間はその活動のために、地球の自然環境から生み出される資源を多大に消費し続けています。でも、消費が増大しても、地球1個分が持つ生産力が大きく変わることはありません。人間に恵みをもたらす自然の力や、大気中のCO2を取り込む力には限りがあるのです。

ところが、消費が一方的に増大した結果、人類による「自然資源の消費が、地球の生物生産力を超過」するという事態が生じました。それが、「(生態学的)オーバーシュート」です。

このようなオーバーシュート下での消費は、さまざまな資源を生み出す母体、つまり「原資」を削り取ることによって行われます。

したがって、このような消費が続いて自然の原資が失われれば、地球の生態系は新たに命を生み出す力を失い、そこから得られる恵みもさらに減少するという悪循環に陥ることになります 8)。

CO2にかぎって考えると、オーバーシュート後はCO2を吸収する力がなくなり、排出されたCO2は大気中の濃度を増す一方になってしまいます。

 

では、同報告書(p.23-C2、C2.3)の記述をみることにしましょう。

 

  • オーバーシュートしないまたは限られたオーバーシュートを伴って地球温暖化を1.5℃に抑える経路においては、エネルギー、土地、都市及びインフラ(運輸と建物を含む)、並びに産業システムにおける、急速かつ広範囲に及ぶ移行が必要となるであろう(確信度が高い)
  • オーバーシュートしないまたは限られたオーバーシュートを伴って地球温暖化を1.5℃に抑える経路では、産業からのCO2排出量は2050年に2010年比65~90%削減され、これに比べて2℃の地球温暖化では50~80%削減されると予測される(確信度が中程度)。

 

このように、地球温暖化対策においては、産業界による取り組みが重要な役割りを果たすと報告されているのです。

このことは、企業が地球温暖化対策に大きな責任を負っていると同時に、温暖化問題の解決において、鍵となる役割を果たすことができるという可能性を示すものでもあります 9) 。

 

また、パリ協定の発効後、温暖化問題への取り組みは、企業にとってもプラスになる側面を多く含んでいます。CO2の削減は、その企業が使用しているエネルギーやそのためのコストをどう効率化するかという課題でもあるためです。

また、新たに省エネ製品の開発や普及などを行い、削減活動へと発展させることにより、企業はその社会的な責任を果たすとともに、環境に配慮する企業としてブランド力を高めることにもなります。

以上のようなことから、現在、世界の企業の間では、企業活動を支えるエネルギーのあり方を見直すことで、新たなビジネスチャンスにつなげていこうとする試みが進んでいるのです 9)。

各国の自然エネルギーによる発電実績

では、世界各国は自然エネルギーにどのように取り組んでいるのでしょうか。

次の図3は、各国の自然エネルギーによる発電実績を表しています。

図3 各国の再生可能エネルギーによる発電実績
出典:環境省「諸外国における再生可能エネルギーの普及動向調査」(2016)
https://www.env.go.jp/earth/report/h29-03/h28_chapt01.pdf

このグラフを見ると、発電量に占める自然エネルギーの割合はまだ概して低いことがわかります。でも、言い換えれば、それは今後、普及する余地が十分にあるということでもあります。