蓄電池の現状と可能性

エネルギーの未来を考えていく場合に切っても切れない存在となってくるのが蓄電池です。

電池の起源は古くは1780年にイタリアのガルバーニがカエルの足に2種類の金属を触れさせると足が独りでに動き出したのを確認したことから原理が発見されました。

1800年にボルタが亜鉛と銅を電極に使い異なる金属の電位差から銅から亜鉛に電流が流れることを紹介し、世界で初めて電池をこの世に出しました。今も尚、エネルギーで重要な役割を担っている蓄電池が、自然エネルギーとどのように関わり、今後どうなっていくのか(将来性)について紹介していきます。

・蓄電池とは? 特徴・メリット

そもそも蓄電池とは何でしょうか?

蓄電池とは簡単に言うと「電力を蓄えて使いたいときに電力を取り出すもの」と定義されており、二次電池とも呼ばれます。

電池は一次電池と二次電池に分かれており、一次電池は使い捨てタイプの電池を意味しており、マンガン乾電池や、アルカリ乾電池、コイン電池といったものが該当します。
一方で二次電池は、充電をすることで再度使用できる電池のことです。鉛蓄(ニッカド)電池や近年パソコンや携帯電話で使用されているリチウムイオン電池が該当します。

蓄電池は、自然エネルギーに不足している機能を補う特徴及びメリットあります。

まず一つ目に、電力を蓄えられるという機能を活かして、太陽光や風力などで発電した電力のうち余った電力を蓄電池に蓄えて必要な時に取り出して使用することが出来ることです。最近では家庭の屋根に太陽光発電用のパネルを設置して日中に発電した電力で余ったものをリチウムイオン電池に蓄電するシステムが注目されています。

二つ目は、天候に左右されずに電力を安定的に供給できることです。

電力系統(電力を供給するために必要な発電ユニットや送電線などを含めたシステムのこと)に自然エネルギーが投入されると、自力で発電量をコントロールできないため、需給バランスを維持するために現在は火力発電による調整が行われています。ただ、火力発電による調整にも限界があるため、自然エネルギー(特に太陽光発電)による電力供給が需要を大幅に上回りそうな場合、出力抑制という形で自然エネルギーの電力系統への投入が制限され、その際の余剰電力は捨てられることになります。このような状況を防ぐために蓄電池に余剰電力を貯めておき、不足の時に取り出すといった電力の平滑化の役割があります。

3つ目は電力のピークシフトとして使用できることです。

夏や冬は冷房や暖房の使用により発電ユニットの負荷は高くなります。その時の消費電力を抑えるために蓄電池に貯めておいた電力を使用するといった「ピークシフト」として使用できます。適切な調整がされることで、電気代が高い時間帯は蓄電池の電気を利用し、電気代が安い時間帯は充電する、といったことも今後想定されます。

4つ目は、自動車のエネルギーデバイスとして使用できることです。

近年、電気自動車や、プラグインハイブリッド(PHV)に蓄電池が使用されることが多くなってきました。電気自動車は蓄電池に充電しておいた電力で走行することができ、PHVは家庭用のコンセントで充電し、電池の残量がなくなったらガソリンで走行することができます。また、防災の観点でも蓄電池が搭載されているので緊急時に使用できます。

その他のメリット

蓄電池には、その他環境や経済の活性化にも大きいメリットがあります。
以下の図1に蓄電池の環境負荷低減及び経済効果を示します。

図1. 蓄電池の環境負荷低減及び経済効果
出典:NEDO HP 「革新型蓄電池実用化促進基盤技術開発」(2018)

蓄電池が自動車用のエネルギーデバイスとして拡販していくと2030年には市場の2割から3割がPHEVやEVになりCO2の低減量は2715万トン/年となり経済効果は約19.2兆円/年となる試算となっています。

蓄電池の需要・さらなる普及に向けて

2003年ごろ、アメリカでスマートグリッドと呼ばれる電力の安定化を計るために高度なIT技術で制御する構想が提案されました。

以下の図.2にスマートグリッドの国際標準化のモデルを示します。

図2.スマートグリッドの国際標準化モデル
次世代エネルギーシステムに係る国際標準化に関する研究会『次世代エネルギーシステムに係る国際標準化に向けて』(http://www2.iee.or.jp/ver2/honbu/jec/jec100/doc/jec100-13.pdf)

以下の図3に欧州におけるスマートグリッドモデル(WASA)を示します。WASAとはWide Area Situation Awareness :広域状況把握のアルファベットの頭文字をとったものです。監視制御を各州に置き発電所から送電線、変電所、蓄電池などの供給系統をリアルタイムに監視するシステムです。
リアルタイムに計測することにより需要と供給のバランスやピークシフト、系統の安定化などを効率的に行うことが目的です。

図3.欧米におけるスマートグリッドモデル(WASA)
出典:NEDO HP 「スマートグリッドの技術の現状とロードマップ」(2010)

日本で特に多い自然災害などを考えると、特定の発電所だけで電力を供給するのは電力の不安定さを招く可能性があります。。特に2011年に起こった東北大震災では電気自動車の電力を使う方もいるなど、家庭でも防災目的で蓄電することが増えてきました。

以下の図4に近年、計画されている分散型エネルギーネットワークのイメージ図を示します。

図4.分散型エネルギーネットワークのイメージ
出典:国立研究開発法人産業技術総合研究所HP 「蓄電池・燃料電池研究の新展開」(2009)

図4に示した分散型エネルギーネットワークとは、日本に存在する発電システムから家庭の蓄電池までを一つのネットワーク上に構築し、管理するようなシステムです。これにより日本の電力の一元管理を目指そうとしていることが考えられます。一元管理することで必要なところに必要な分だけ電力を供給するという構想です。

 

日本でも蓄電池の需要は今後大きくなっていくと考えられます。

自然エネルギーや火力発電・原子力発電によって生産した電力を高性能の電力貯蔵(高容量蓄電池)に貯めて事業者や家庭、運輸部門に供給し、家庭部門のPHV,EV自動車、などへの充電等で蓄電池が我が国のエネルギー事業の一躍を担うことが計画されています。

以下の図5は2050年までに現在の温室効果ガスを半減させるという目標達成のために構築されたエネルギー革新技術計画の内容です。18と29を見ると計画に蓄電池が組み込まれており、今後のエネルギー事業として期待されています。

図5.主要課題のロードマップ
出典:経済産業省・資源エネルギー庁 HP 「エネルギー関係技術開発ロードマップ」(2014)

続いて、近年の温室効果ガスの削減量を見ていきましょう。

以下の図6は2016年から2017年度での各部門のCO2排出量の推移を示したものです。

図6.各部門別のCO2排出量の推移
出典:環境省 HP 「エネルギー起源CO2排出量の増減要因分析」(2014)

図6より、各部門のトータルのCO2排出量は2016年比で-4,310万トンになっており減少傾向であることが分かります。また、各部門を見ていくと産業では生産量が増えたために増加していますが原単位要因(CO2排出量を電力以外、電力、エネルギーで割った値)は前年比より減少しているので省エネで生産活動をしていることが分かります。

また、家庭で蓄電池に充電し防災に備えるという考えに拍車をかけるように蓄電池の市場規模は世界中で拡大しています。

以下の図7に2025年における蓄電池の世界市場規模を示しています。

世界市場の2016年に比べて2025年では、電力貯蔵が4,000億円から10,000億円になり2.5倍に増加、次世代自動車に関しては16,000億円から64,000億円になり4倍に増加しており、自然エネルギーと同じように期待されていることが分かります。このように今後、世界市場も拡大していくと考えられます。

図7.蓄電池の世界市場動向
出典:NEDO HP 「革新型蓄電池実用化促進基盤技術開発」(2018)

蓄電池の価格

市場規模は今後非常に大きくなることが分かりましたが、日本の価格競争力は世界と比べてどうなのでしょうか?

以下の図8に国内と海外の蓄電池のコスト比較を示します。2020年度を見ると海外の市場価格が日本より安く、日本が海外より平均で1.4倍ほどコストが高いことが分かります。しかし過去4年を見ていくと国内のリチウムイオン電池とNAS電池の価格は減少傾向で、特にリチウムイオン電池の価格減少は数年後には海外の市場価格に追いつくことが予想されます。そのため数年後には世界でも競争出来る価格帯になると考えられます。

図8.国内と海外の蓄電池コスト比較
出典:経済産業省 資源エネルギー庁HP 「再生可能エネルギーの自立に向けた取組の加速化(多様な自立モデルについて)」(2018)

以下の表1に各国のコスト低減目標を示します。
表中の本事業と記載している部分は日本を指しています。

余剰電力貯蔵用は2020年までに20,000円/kWh以下にコスト低減する目標を立てています。米国の長期目標(2023年)を見ると2023年までに13,100円/kWh以下に低減する目標を立てており日本よりコスト0.66倍になって低い目標になっています。しかし電池の性能面では日本より低く、寿命は1.4倍ほども違っています。

もし性能が同じ程度だと仮定したらほぼ同じくらいのコスト低減目標となっていますが、日本の方が3年も早い段階での目標となっていますので、日本の余剰電力貯蔵用のコスト低減は他国よりも高いと考えられます。また、短周期周波数調整用(自然エネルギーの発電ムラを調整すること)は他国よりもコスト低減目標が高くなっています。

これらの結果より、日本が他国よりも高いコスト低減となっており数年後には世界でのコスト競争で優位に立てることを示しています。

表1.日本と海外のコスト低減目標
出典:NEDO HP 「安全・低コスト大規模蓄電システム技術開発」事後評価報告書(2017)

次に、日本のコスト低減計画を見ていきましょう。

現状では短周期周波数は2017年時点で220,000~140,000円/kWで寿命が7~12年程と他国との競争で勝ち残るには厳しい状況です。また余剰電力貯蔵としても80,000~30,000円/kWhで寿命が10年~15年程と、こちらも厳しい状況です。そこから攻めたコスト低減と長寿命化に取り組み前述で述べた目標を達成しようとしていることが分かります。特に短周期周波数変動調整用のコストは2017年の半分にして寿命は倍にするという高い目標であることが分かります。

図9.日本でのコスト低減計画
出典:NEDO HP 「安全・低コスト大規模蓄電システム技術開発」事後評価報告書(2017)

蓄電池の将来性

蓄電池の将来性は、どのようになっていくのでしょうか?

まずは、今後日本の蓄電池の世界競争力は、どの程度あるのか見ていきましょう。
図10.に世界市場における日本エネルギー事業の競争力を示しています。

図10より、今後の日本が世界の競争に打ち勝つためには蓄電池は大きな市場であることが分かります。CO2削減インパクトも非常に大きく2050年には太陽電池に並ぶほどの削減数になることから、日本が世界よりも一歩先に行くには蓄電池の存在は不可欠です。また日本が世界に初めて紹介したリチウムイオン電池は、価格が高いと言われていますが、価格競争にも積極的に乗り出しており、自然エネルギーと蓄電池の協力により環境にやさしい発電システムの完成は遠くない未来だと考えられます。

図10.エネルギー技術と日本企業の可能性
出典:経済産業省 資源エネルギー庁HP 「2018年のエネルギー白書からエネルギーの今を読み解く」(2018)

次に各国の特許出願数を見ていきましょう。

以下の表2に各国の革新型蓄電池の特許出願数を示します。
日本は特許全体を見ても過半数以上が日本で占めており新規技術の開発に非常に力を入れていることがわかります。

量産化・低コスト化をクリアすることができれば日本の電池は各国で使われることになるでしょう。

表2.各国の革新型蓄電池の特許出願数
出典:NEDO HP 「車載用蓄電池分野の 技術戦略策定に向けて」(2015)

 

今後日本ではIoT(モノのインターネット:モノがインターネットを経由して通信すること)を活用したVPP(バーチャルパワープラント)という仮想発電所が普及していくことから、その中にも蓄電池は組み込まれています。

以下の図11.にVPPのイメージを載せています。

図11.VPPのイメージ
出典:経済産業省 資源エネルギー庁HP 「バーチャルパワープラント(VPP)・ディマンドリスポンス(DR)とは」(2014)

VPPとは分散型のエネルギーネットワークでは小規模だったものをIoTにより集約させて管理することにより発電所のような役割を担うシステムのことです。これにより電力の平準化や余剰分の蓄電、不足の時の供給が可能となります。また、これにより今後多く普及するであろう家庭の電気自動車も一躍を担うことになり、ますます電力事業は多角化していくことが予想されます。

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