1字違いでも、大きな違い! 太陽熱発電と太陽光発電

太陽熱発電と太陽光発電―たった1字違いのことばです。共通なのは、「太陽」と「発電」、そして違うのは「熱」と「光」―。違っている漢字1字の意味さえ、なんとなく似ていますね。
では、太陽熱発電と太陽光発電にはどのような共通点があるのでしょう。そして、どこが違うのでしょうか。そもそも、それらの原理とは……?

太陽熱発電と太陽光発電の共通点と違いとは

最初に、太陽熱発電と太陽光発電の共通点と違いを簡単に押さえておきましょう。

まず、共通しているのは、どちらも太陽光をエネルギー源とする自然エネルギーであり、CO2を排出しないクリーンなエネルギーである点です。

次に、根本的な違いは、それらの発電システムにあります。そのことが、発電のためのコストや発電設備、用途、気象条件など、さまざまな面での違いを生み出し、その結果、導入状況にも大きな影響を与えています。

では、それらの違いとは、どのようなものなのでしょうか。

 発電システムの違い

まず、それぞれの発電システムをみていきましょう。

太陽熱発電の発電システム

太陽熱発電は、太陽光をレンズや反射鏡で集め、それにより生じた熱で蒸気タービンを回して発電するという発電システムです。

太陽熱発電は太陽光を一旦、熱に変えて発電するため、発電量の変動が少ないという特徴があります *1。
以下の図1は、アメリカ南西部にある太陽熱発電プラント(蓄電システムなし)と、それに隣接する太陽光プラントの発電量の変化を表したものです。したがって、気象条件も観測日も同じです。

図1 太陽熱発電と太陽光発電の発電量の経時変化(曇天日)
出典:NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構) HP(2014)
「再生可能エネルギー技術白書
第2版 第 5 章 太陽熱発電・太陽熱利用 」 p.5
https://www.nedo.go.jp/content/100544820.pdf

図中の青線(CSP)が太陽熱発電、赤線(PV)が太陽光発電です。
この日は曇天でしたが、太陽光発電の発電量が雲の影によって小刻みに変動する一方、太陽熱発電の変動は少なく、安定した運転ができていることが伺えます。
また、太陽熱発電は、蓄熱システムの導入や、化石燃料やバイオマスなどを燃料とするボイラを組み込んだハイブリッド化も可能です。
これらのことから、太陽熱発電は、曇天日でも、また日没から夜半までの電力需要が多い時間帯にも、電力の安定供給が可能だという優れた特徴があることがわかります *1。

この太陽熱発電は、集光・集熱技術により、次のような4種類に分類することができます *1。

  1. ハルボラ・トラフ型(以下、「トラフ型」)
    放物線形状の曲面反射鏡集光ミラーを使って集光し、熱媒を加熱し,蒸気を作って発電するシステムです。以下の図2はトラフ型の発電システムを表しています。


図2 パラボラ・トラフ型太陽熱発電システム
出典:NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構) HP(2014)
「再生可能エネルギー
技術白書 第2版 第 5 章 太陽熱発電・太陽熱利用 」 p.6
https://www.nedo.go.jp/content/100544820.pdf

このトラフ型は高度な集光技術が不要で,構造が単純であるため,システム価格が比較的安価です。
また、1980年代からアメリカのカリフォルニア州で商用運転の実績があり,技術が確立していて信頼性が高いことから、太陽熱発電では、現在、このタイプが主流になっています。

  1. リニア・フレネル型(以下、「フレネル型」)
    上でみた、トラフ型と似た技術です。わずかに凹面の細長い集光ミラーの角度を少しずつ変えて並べ,数メートル上方にある集熱管に集光して,蒸気を作ります。以下の図3は、フレネル型の発電システムを表しています。

図3 リニア・フレネル型太陽熱発電システム
出典:NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構) HP(2014)
「再生可能エネルギー
技術白書 第2版 第 5 章 太陽熱発電・太陽熱利用 」 p.7
https://www.nedo.go.jp/content/100544820.pdf

このフレネル型は、トラフ型と比較してシステム効率は低いのですが、設備が簡易で軽量であるため、システム価格はトラフ型より安価です。
また、風が強い地域でも発電することができます。

さらに、土地利用率が高いため、土地の値段が高い場合や土地面積が小さい場合に適しているというメリットがあります。
ただ、まだ実績が足りないため、今後、大規模なプラントの実績を積み必要な検証を行う必要がありますが、コストがさらに低くなれば、普及が進む可能性があります。

  1. タワー型
    平面状の集光ミラー(ヘリオスタット)を多数、配置し、タワーの上部に置かれるレシーバー集熱器に集光・集熱し,その熱で蒸気を作るシステムです。以下の図4は、タワー型の発電システムを表しています。

図4 タワー型太陽熱発電システム
出典:NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構) HP(2014)
「再生可能エネルギー技術白書 第2版 第 5 章 太陽熱発電・太陽熱利用 」 p.8
https://www.nedo.go.jp/content/100544820.pdf

このタワー型は、トラフ型よりも集光度が高く,高温の蒸気を作り出すことができます。したがって、タービン効率を上げて、より多くの電力を得ることが可能なため、システム効率はトラフ型より高いとされています。そのため、将来的にはさらにコストが下がり、トラフ型に代わって主流になる可能性が高いと予想されています。
ただ、現在はまだ導入実績が少ないため、その技術もさらに検証していく必要があります。

  1. ディッシュ型
    放物曲面状の集光ミラーを用いて集光し,焦点部分に設置されたスターリングエンジンやマイクロタービンなどによって発電するシステムです。以下の図5は、ディッシュ型の発電システムを表しています。

図5 ディシュ型太陽熱発電システム
出典:NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構) HP(2014)
「再生可能エネルギー
技術白書 第2版 第 5 章 太陽熱発電・太陽熱利用 」 p.9
https://www.nedo.go.jp/content/100544820.pdf

このシステムは、全体のサイズが直径5~15mで、他のシステムと比較して小規模であるため、分散型発電システムに適していますが、多数台をまとめて配置してMW級の発電プラントにすることも可能です。

ディッシュ型は発電効率が高く,冷却時に水が不要であるなどのメリットがありますが、まだ導入実績が少なく,引き続き技術改良が必要です。

以下の表1は、これまでみてきた4種類の特徴をまとめたものです。

表1 太陽熱発電の集光・集熱技術別比較

トラフ型フレネル型タワー型ディッシュ型
用途・系統連系型・系統連系型・系統連系型・小規模独立型
・系統連系型
システム効率15%8~10%20~3-%(試算)25~30%
土地利用率*25~40%60~80%20~25%25~30%
冷却水使用量3,000L/MWh
(または空冷式)
3,000L/MWh
(または空冷式)
2,000L/MWh
(または空冷式)
不要
商用実績
蓄熱開発中
火力発電等とのハイブリット事例あり可能可能未定

*土地利用率[%]=反射鏡の投影面積/設置する土地面積
*NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構) HP(2014)「再生可能エネルギー技術白書 第2版  第5章 太陽熱発電・太陽熱利用」 p.10 表5-1 https://www.nedo.go.jp/content/100544820.pdf を基に、筆者が加工。

なお、表中の用途にある「系統連系」とは、発電した電気を一般送配電事業者の送電線、配電線に流すために、電力系統に接続することです *2。
表をみると、ディッシュ型のみ、小規模独立型と系統連系型のどちらにも対応可能で、他のタイプは系統連系型であることがわかります。

太陽光発電の発電システム

次に太陽光発電の発電システムをみてみましょう。

先にみた太陽熱発電は、太陽光を反射鏡やレンズで集め、それにより生じた熱で蒸気タービンを回して発電するというものでした。
一方、太陽光発電は、シリコン半導体などに光が当たると電気が発生する現象を利用し、太陽の光エネルギーを太陽電池(半導体素子)により直接電気に変換して発電するシステムです 3)。

以下の図6は、太陽光発電のシステム構成を表しています。

図6 太陽光発電のシステム構成
出典:NEDO HP(2014)「再生可能エネルギー技術白書 第2版 第2章 太陽光発電」p.6
https://www.nedo.go.jp/content/100544817.pdf

図中の構成要素をひとつずつ、左側から順にみていきましょう *3。

まず、図の一番左、「太陽電池モジュール・アレイ」とはどのようなものでしょうか。
「太陽電池モジュール・アレイ」は、「太陽電池セル」を大量に接続したものといえます。
太陽電池とは、光エネルギーを直接、電力に変換する電力機器ですが、その太陽電池の最小単位が「太陽電池セル」です。
その「太陽電池セル」を電気的に接続したものが「太陽電池モジュール」(図中の青いパネル)です。

「太陽電池モジュール・アレイ」とは、「接続箱」を使って、その「太陽電池モジュール」を必要な枚数、並列に接続したものです。そうすることで、目的の電流、電圧を得ることができるようになります。

「接続箱」の隣りにある「集電盤」は、発電した直流電力を一つにまとめて「パワーコンディショナ」に供給する装置です。

「パワーコンディショナ(PCS)」とは、太陽電池からの直流電力を一般の電気器具で使用できるように交流電力に変換する機器です。
また、発電した電気を売るための系統連系運転や自動運転に必要な機能も備えています。

最後に、「集電盤」と「パワーコンディショナー」の間にある「蓄電池」とは、電気エネルギーを化学エネルギーに変えて保存し,必要に応じて電気エネルギーとして取り出して使うことができるようにするための電気機器のことです。
系統連系システムに蓄電池を設置することによって、出力変動の抑制や電力貯蔵、災害時の電力供給などが可能になります。

 コストの違い

では、次にコストの違いについてみていきましょう。

太陽熱発電のコスト

発電コストは、土地代や人件費、日射量、蓄熱装置、発電規模によって異なります。

IEAは2010年に発表した太陽熱発電ロードマップで、太陽熱発電コストについて、図7のような見通しを立てています。
この予測は、各種の技術開発が進展することを見込んだものです。

図7 IEAの技術ロードマップにおける太陽熱発電のコスト見通し
出典:NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構) HP(2014)
「再生可能エネルギー技
術白書 第2版 第 5 章 太陽熱発電・太陽熱利用 」 p.15
https://www.nedo.go.jp/content/100544820.pdf

なお、図の数値は MWh あたりのものなので、KWh あたりに換算すると、その値はこの1,000分の1になります。

太陽光発電のコスト

では、次に太陽光発電のコストをみてみましょう。

太陽光発電では、太陽電池がコストを上げる要因になっていましたが、最近は技術が進み、次第に低コストになってきています。

以下の図8は、世界の太陽光発電コストの推移を表しています。

図8 世界の太陽光発電コストの推移
出典:経済産業省資源エネルギー庁HP(2018)「コストダウンの加速化について (目指すべきコスト水準と入札制)」p.3
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/008_02_00.pdf

では、日本の太陽光発電のコストはどうでしょうか。
下の図9は、日本の太陽光発電のコスト見通しを表しています。

図9 将来の日本の太陽光発電のコスト見通し
出典:経済産業省資源エネルギー庁HP(2018)「コストダウンの加速化について (目指すべきコスト水準と入札制)」p.10
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/008_02_00.pdf

この図をみると、2017年のコスト実績は、世界のコストと比較すると1KWh あたり8.6円高く、約1.9倍にも上っていたことがわかりますが、今後は次第にコストが下がり、2030年には1KWh あたり5.1円、2040年には3.7円になると予測されています。

コストの比較

まず、2017年の世界のコストを比較してみましょう。
先にみた図7は推計でドル換算、図8は実績で円換算なので、単純に比較するのは難しいのですが、図7と図8を比較すると、太陽光発電の方が太陽熱発電よりやや低コストであったと読み取れます。

つぎに、今後の推計を比べてみましょう。
図7の太陽熱発電のコスト見通しは世界のコストで、ドルで示されています。一方、図9は日本のコストで、円で示されています。

そのため、将来推計も単純に比較するのは難しいのですが、これらの図をみるかぎりでは、太陽熱発電も太陽光発電も今後、コストが低減していき、2030年から2040年の予測コストには、大きな差異がないことが読み取れます。

 設備と用途

次に、設備と用途についてみていきましょう。

まず、太陽熱発電です。
太陽熱発電は、ディッシュ型以外の方式では、発電設備のために広大な土地が必要となります。
それに対して、太陽光発電の設備は、さまざまな場所に設置でき、新たに専用の土地を用意する必要がありません。たとえば、建物の屋根や壁などのスペースにも設置できます。
また、必ずしも系統連系の必要がないため、送電設備のない遠隔地(山岳部、農地など)の電源としても活用することができます 3)。

以下の図10は、太陽光発電システムの進化を表しています。

図10 太陽光発電システムの進化
出典:一般社団法人太陽光発電協会HP(2017)「JPEA PV OUTLOOK~ 太陽光発電2050年の黎明 ~〈 脱炭素・持続可能社会実現にむけて 〉」p.12
http://www.jpea.gr.jp/pvoutlook2050.pdf

図10のように、現在、太陽光発電は第4世代に入ろうとしています。
第1世代では、系統連系から独立していたものが、第2世代で系統連系型となり、第4世代では系統電力の安定供給に貢献するまでに進化しました。
また、独立・連系が自在になることで、「ありとあらゆる場所とモノに設置・搭載が可能」 *4になっています。

では、そのような太陽光発電導入のポテンシャルについて、もう少し詳しくみていきましょう。
以下の図11は、建物への太陽光発電の導入ポテンシャルを表しています。

図11 建物への太陽光発電導入ポテンシャル
出典:NEDO HP(2014)「再生可能エネルギー技術白書 第2版 第 2 章 太陽光発電」p.28
https://www.nedo.go.jp/content/100544817.pdf

太陽光発電の設備は、この図のように、さまざまなタイプの建物に設置することができます。

では、建物以外の導入ポテンシャルはどうでしょうか。
次の図12は、建物以外の太陽光発電導入ポテンシャルを表しています。

図12 建物以外の太陽光発電導入ポテンシャル
出典:NEDO HP(2014)「再生可能エネルギー技術白書 第2版 第 2 章 太陽光発電」p.30
https://www.nedo.go.jp/content/100544817.pdf

このように、専用の用地を占有せず、建物にも建物以外のさまざまな場所やモノにも導入することができるという太陽光発電の特徴は利便性が高く、国土が狭い日本では導入ポテンシャルが高いのです。

 気象条件

太陽熱発電は日射量が必要なため、現在は、北緯37度以南の「サンベルト地帯」が主要地域です。それらについては、後ほど詳しくお話ししたいと思います。
また、太陽熱発電は、湿度・粉塵が少ない地域が適地であり、また、、現在の技術段階では、サンベルト地帯ほど日照が強くない日本の気象条件には適しているとはいえません *1。

一方、太陽光発電は、日射が得られれば発電できるため、地域によって差はありますが、日本でも一定の発電量が期待できます。

以下の図13は、太陽光発電の都道府県別の導入ポテンシャルを、図14は都道府県別導入実績を表しています。
これらの図をみると、太平洋岸を中心に多くの都道府県で太陽光発電のポテンシャルが高く、導入実績もそのポテンシャルに概ね対応していることがわかります。

図13 太陽光発電の都道府県別導入ポテンシャル

図14 太陽光発電の都道府県別導入実績
出典(図13・14とも):環境省HP(2018)
「平成29年度再生可能エネルギーに関するゾーニング基礎情報等の整備・公開に関する委託業務報告書」p.180
https://www.env.go.jp/earth/report/h31-01/h29_chpt7-2_part1.pdf

世界と日本の導入状況

では、最後に、太陽熱発電と太陽光発電の導入状況についてみていきたいと思います。

日本における導入実績

まず、日本における導入実績についてお話しします。

太陽熱発電は、1980年代、香川県仁尾市(現三豊市)でのパイロットプラントの建設以降、日本では政策的支援がなく、導入目標もありません *1。

一方、太陽光発電は着実に普及しています。
以下の図15は、日本における自然エネルギーの設備容量の推移を表しています。

図15 日本における自然エネルギー設備容量の推移
出典:経済産業省資源エネルギー庁HP(2018)「平成29年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2018)
第3章 エネルギーをめぐる内外の情勢と課題変化 第1節2030年のエネルギーミックスの進捗と課題」

https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2018html/1-3-1.html

図15をみると、日本での太陽光発電は、2012年以降、急速に導入が進み、現在では日本における自然エネルギーに占める割合が一番高いことがわかります。

このような日本の導入量は、世界的にみても顕著なものです。
以下の図16は、2017年における世界の太陽光発電導入量の国別ランキングを表しています。

図16 世界の太陽光発電導入量の国別ランキング(2017年末)
*‘GSR2018’(「自然エネルギー世界白書2018)にisepが加筆
出典:isep 認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所(2019)「自然エネルギー白書 2018/2019サマリー版」p.5
https://www.isep.or.jp/wpdm-package/jsr2018

この図からわかるように、2017年の太陽光発電の累積導入量は、中国、アメリカについで日本は第3位でした。
なお、2017年末までの累積導入量は、1位の中国が131.1GWh 、アメリカが52GWh、日本が49GWh、ドイツが43GWhでした。

世界における導入実績

では次に、世界における導入実績をみていきましょう。

まず、太陽熱発電の導入はどのような状況でしょうか。
先ほどお話ししたように、太陽熱発電は日本では導入が停滞していますが、世界的にみると、豊富な日射量と土地に恵まれた地域を中心に、現在、数十GWh級の導入が進められています。

以下の表2は、2011年時点で稼働・計画中だった太陽熱発電プラントをまとめたものです。

表2 2011年時点で稼働中・計画中の太陽熱発電プラント
出典:NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構) HP(2014)
「再生可能エネルギー技術白書 第2版 第 5 章 太陽熱発電・太陽熱利用 」 p.25
*“World Energy Outlook 2011”(2011, IEA)を基にNEDOが作成
https://www.nedo.go.jp/content/100544820.pdf

以下の図17は、太陽熱発電のこれまでの実績と見通しを表しています。

図17 太陽熱発電の実績と導入見通し
出典:NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構) HP(2014)
「再生可能エネルギー技術白書 第2版 第 5 章 太陽熱発電・太陽熱利用 」 p.29
*“World Energy Outlook 2011”(2011, IEA)を基にNEDOが作成
https://www.nedo.go.jp/content/100544820.pdf

太陽熱発電は2010年末に1.3GWh でしたが、今後、コストダウンを図り、2035年には総発電量が 80GWh になると推計されています *1。

次に太陽光発電の導入実績をみてみましょう。
以下の図18は、世界の太陽光発電の累積導入量推移を表しています。

図18 世界の太陽光発電の累積導入量推移
*‘GSR2018’(「自然エネルギー世界白書2018)にisepが加筆
出典:isep 認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所(2019)「自然エネルギー白書 2018/2019サマリー版」p.5
https://www.isep.or.jp/wpdm-package/jsr2018

図18をみると、太陽光発電は順調に普及し、2018年における世界全体の年間導入量は109 GWh、累積導入実績は 510 GWhに達していることがわかります *6。

以上のことから、現在、世界的な発電量は、太陽光発電の方が多いことがわかります。

では、最後に今後の見通しをみましょう。
次の図19は、世界の自然エネルギーの発電電力量と総発電量に占める割合の見通しを表しています。

図19 世界の自然エネルギーによる発電電力量と総電力量に占める割合(見通し)
出典:環境省(2016)「諸外国における再生可能エネルギーの普及動向」p.4
https://www.env.go.jp/earth/report/h29-03/h28_chapt01.pdf

この図で太陽熱発電と太陽光発電を比べてみましょう。
まず、太陽熱発電は今後、次第に普及していくと見込まれています。
次に、太陽光発電は今後も順調に導入が進み、風力発電に次ぐ主要な自然エネルギーとしての地位を確保すると予測されています。

このように、将来的にも太陽光発電の方が発電量が多くなると予想されているのです。

 おわりに

これまでみてきたように、太陽熱発電と太陽光発電はどちらも太陽光をエネルギー源とする、クリーンな自然エネルギーです。

ところが、発電システムの違いから、さまざまな面で違いが生じています。
太陽熱発電は、設備の規模や設置場所、気象条件などが日本に適しているとはいえず、その結果、現在は、利便性の高い太陽光発電の導入の方がより進んでいます。
また、こうした状況は近い将来も続くと予測されています。

でも、先ほどお話ししたように、太陽熱発電は、蓄熱システムの導入や、火力発電とのハイブリッド化も可能であることから、電力を安定して供給できるという、優れた特徴があります。

今後、技術開発が進み、コストが低減化すれば、日本でも太陽熱発電がより普及し、太陽光発電など他の自然エネルギーと組み合わせて使われるようになるかもしれません。

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参照・引用を見る
  1. NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構) HP(2014)「再生可能エネルギー技術白書 第2版 第5章 太陽熱発電・太陽熱利用 」
    https://www.nedo.go.jp/content/100544820.pdf
  2.  経済産業省資源エネルギー庁HP「なるほど グリッド! 系統接続について」
  3.  NEDO HP(2014)「再生可能エネルギー技術白書 第2版 第2章 太陽光発電」
    https://www.nedo.go.jp/content/100544817.pdf
  4.  一般社団法人太陽光発電協会HP(2017)「JPEA PV OUTLOOK~ 太陽光発電2050年の黎明 ~ 〈 脱炭素・持続可能社会実現にむけて 〉」
    http://www.jpea.gr.jp/pvoutlook2050.pdf
  5.  経済産業省資源エネルギー庁HP(2018)「平成29年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2018) 第3章 エネルギーをめぐる内外の情勢と課題変化 第1節2030年のエネルギーミックスの進捗と課題」
    https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2018html/1-3-1.html
  6.  isep 認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所(2019)「自然エネルギー白書 2018/2019サマリー版」
    https://www.isep.or.jp/wpdm-package/jsr2018
    経済産業省資源エネルギー庁HP「再生可能エネルギーとは 太陽光発電」『なっとく! 再生可能エネルギー』
    https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/renewable/solar/index.html
    経済産業省資源エネルギー庁HP(2018)「平成29年度 エネルギー白書 概要版」
    https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2018gaiyou/whitepaper2018pdf_h29_nenji.pdf<Photo:chuttersnap>
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