発電の環境負荷をはかる「CO2排出係数」とは

発電の環境負荷をはかる「CO2排出係数」とは

電力会社は、一定の電力を作り出すのにどのくらいCO2を排出したかを、毎年環境省に報告する義務があります。

そして、環境省に報告された温室効果ガス排出量は一般に公表されます。

 

このとき、CO2の量を実際に測定することはできませんので、「CO2排出係数」を使って計算する方式が取られています。

CO2排出係数とは

「CO2排出係数」は「CO2排出原単位」とも呼ばれ、電力会社が1kWhの電力を作り出す際に、どれだけの量のCO2を排出したかを表す指標です。

「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」では、電力会社の事業者に、温室効果ガスの排出量を報告するよう義務付けています。

燃料によって異なるCO2排出量

CO2排出係数の実際の単位は「kg-CO2/kWh」または「t-CO2/kWh」です。

一つの電力会社でも、様々な燃料を使って発電している企業がありますが、燃料ごとに排出するCO2の量は異なります。

そのため、燃料ごとのCO2排出量の算出基準は、経済産業省および環境省の省令で、発熱量(GJ=ギガジュール)をもとに参考数値が決められています。

例えば、石炭(一般炭)と原油と液化天然ガスが排出するCO2の量を比較した時、

石炭(一般炭) : 原油 : 液化天然ガス = 10 : 7.5 : 5.5

と定められています。この3つの中では、液化天然ガスがもっともCO2排出量が少ないというわけです。

 

電力会社は燃料ごとにCO2排出量を計算し、合算して「電力会社としてのCO2排出係数」を環境省に毎年報告しなければなりません。

図1 燃料別の二酸化炭素排出量の例(出典:環境省資料)
※tC/GJ=1ギガジュールの熱量を得るために排出される炭素(トン)。燃料の単位はトンもしくはキロリットル。https://www.env.go.jp/council/16pol-ear/y164-04/mat04.pdf

CO2排出係数には「調整前排出係数」と「調整後排出係数」の2種類があります。

これは、自然エネルギー発電の場合は、基本的にはCO2排出係数は「ゼロ」ですが、例えば一般家庭の太陽光発電など第三者が作り出した自然エネルギー電力を買い取って一般利用者に販売した場合は「ゼロ」として計算できない仕組みになっているためです。

このため、評価がある程度平等になるように計算と調整を加えた最終的な数字が、「調整後排出係数」として算出されます。

ですので、指標としては「調整後排出係数」の方が環境負荷としては現実に即した数字であり、一般的な参考対象になっています。

全電力会社のCO2排出係数は環境省によって公表されていますが、いわゆる新電力会社の中には、大手電力会社よりもCO2排出係数が低い企業も存在しています。

電力会社以外でも温室効果ガスの測定・提出義務が

省エネ法で指定された運送事業者や、全事業所でのエネルギー使用量が年間1,500kl(キロリットル)を超える事業者、その他、温室効果ガスの発生に関わる企業などを対象に、CO2だけでなくメタン、一酸化二窒素などの温室効果ガスについて排出量を算定しなければなりません。

そして、温暖化への寄与度をCO2の温暖化係数に換算した計算結果を報告する義務があります。

対象になっている温室効果ガスは、二酸化炭素、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、六フッ素硫黄(SF6)、三フッ化窒素(NF3)です。

報告義務を守らなかったり虚偽報告を行ったりすると、罰金などの罰則があります。

この際、電力使用で発生するCO2については電力会社のCO2排出係数が反映されるため、CO2排出係数の少ない電力会社や買電メニューを選べば、その分、排出係数は小さくなります。

 

なお、温室効果ガスの種類ごとに「温暖化係数」が異なります。

量としては少なくても、例えば六フッ化硫黄(SF6)の地球温暖化係数は、CO2を1とした場合、22,800という数字です*1。CO2の2万倍以上の温室効果があるということです。

同じ排出量でも温暖化に寄与する度合いは異なるため、詳細な算出が必要です。

海外のCO2排出係数と報告制度

海外にも、温室効果ガスの排出量に関する報告制度があります。

まず、世界各国で排出されているCO2の量は、下の図2のようになっています。

図2 主要各国・地域の電源構成とCO2排出係数(出典:「電気事業における
地球温暖化対策の取組み」経済産業省資料)
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/chikyu_kankyo/shigen_wg/pdf/h30_001_04_01.pdf

このように見ると、電源構成の違いはありますが、フランスやカナダ、イタリアは世界的にCO2排出係数の低い状態です。
これらの国に比較すると日本の場合は高めですが、化石燃料の比率を減らすことで、排出係数を下げることも可能になりそうです。

「京都議定書6ガス」とは

海外では、1997年に京都で開催されたCOP3での「京都議定書」が削減対象としている6つの温室効果ガス、二酸化炭素(CO2)、亜酸化窒素(N2O)、メタン(CH4)、HFC、PFC、六フッ化硫黄(SF6)について、報告義務を課している制度が見られます。

各国、名称は異なりますが、アメリカの「温室効果ガス報告プログラム(Greenhouse Gas Reporting Program)」やカナダの「温室効果ガス排出量報告プログラム(Greenhouse Gas Emissions Reporting Program)」、オーストラリアの「国内温室効果ガス&エネルギー報告制度(National Greenhouse & Energy Reporting Scheme)」は、この6ガスを報告の対象としています。

中国では省によって異なり、主にCO2のみを対象としていますが、重慶ではこの6ガスが採用されています。

EUでは91物質に関する報告義務

EUでは、有害物質全般を報告する制度になっています。

欧州汚染物質排出登録制度(E-PRTR)では、京都議定書の6ガスだけでなく、有機塩素化合物や重金属を含む50の有害物質*2について排出量の報告義務があり、EU28か国に加え、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、セルビア、スイスといった国が参加しています。

また、EU加盟国は、虚偽報告に対しては、それぞれ罰則を設けるように決められています。

電力会社選びの材料にも

今後、各電力会社で、CO2排出係数を下げるための様々な努力が進むとみられます。

また、電力会社の中にはCO2排出係数が異なるプランを複数用意している電力会社もあります。企業が自社の運営を自然エネルギーで100%賄うことを宣言する「RE100」の動きが欧米を中心に高まる中、国内の企業にとっても電力会社のCO2排出係数は、自社の事業運営や戦略を考えるうえで非常に重要になってきています。また、エネルギーを大量に使う企業だけでなく、わたしたち一人ひとりも、でんきを選ぶことができる今、自分の使っている電気のCO2排出係数を知っておくことは、消費者としての責任とも言えるのではないでしょうか。。

<引用・参照>

図1 「燃料別の二酸化炭素排出量の例」(環境省資料)

https://www.env.go.jp/council/16pol-ear/y164-04/mat04.pdf

 

参考1 「 温室効果ガス排出量の算定方法」(環境省)pⅡ-13

https://ghg-santeikohyo.env.go.jp/files/manual/chpt2_4-4.pdf

 

図2 「電気事業における地球温暖化対策の取組み」(経済産業省資料)

https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/chikyu_kankyo/shigen_wg/pdf/h30_001_04_01.pdf

 

参考2 「List of pollutants to be reported if threshold value is exceeded」

https://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2000:192:0036:0043:EN:PDF