地域密着型の自然エネルギーを産み出す ミニ水力発電

地域密着型の自然エネルギーを産み出す ミニ水力発電

現在、導入が広がりつつある自然エネルギーのひとつにミニ水力発電があります。この発電は河川や用水路など身近なところに設置できる、持続可能な循環型の電源です。
このミニ水力発電とは、どのようなものでしょうか。
その特徴は? メリットは? そして、今後の展望とは・・・?

ミニ水力発電とは

ミニ水力発電とはどのようなものでしょうか。

ミニ水力発電の定義と割合

水力発電は規模によって、以下の表1のような区分があります。

表1 発電規模による呼称

区分 発電出力(kW)
大水力 large hydropower 100,000 以上
中水力 medium hydropower 10,000 ~ 100,000
小水力 small hydropower 1,000 ~ 10,000
ミニ水力 mini hydropower 100 ~ 1,000
マイクロ水力 micro hydropower 100以下

出典:環境省「小水力発電情報サイト:小水力発電とは」
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/shg/page01.html

 

この表にはありませんが、1kW未満の非常に小規模な発電は「ピコ水力発電」と呼ばれることがあります *1。

表1の区分は世界的に統一された定義というわけではありませんが、本稿では基本的に表1の区分にしたがい、発電出力が100~1,000kWの小規模な水力発電を「ミニ水力発電」と呼ぶことにします。
ただし、1,000kW以下を「小水力発電」と呼ぶ資料や組織もありますので *2-①:「『小水力発電』とはどのような電源なのか」、*3-①:「小水力の規模は何kW?」、それらの資料については「小水力発電」を「ミニ水力発電」と読み替えることにします。

水力発電において、この「1,000kW以下」というのは大きな意味をもちます。
新エネルギー法(「エネルギーの利用等の促進に関する特別措置法」)が2008年に改正され、「未利用水力を利用する水力発電(1,000kW以下)」が追加認定されたからです *4。

では、このミニ水力発電はどのくらいの割合を占めているのでしょうか。
以下の図1は、全国の小水力発電施設の分布です。

なお、図中のオレンジ部分のタイトルは「小水力発電施設」となっていますが、図1には1,000kW以下のものも含まれています。そのため、ここでは表1の基準に従い、「小水力発電施設」とは表記せず、図下のキャプションも含め「水力発電施設」と表記しています。

2019年3月時点で小水力発電施設は全国に135施設ありましたが、その大半をこのミニ水力発電が占めています *5。

図1水力発電設備の整備状況
出典:農林水産省(2019)「農業農村整備事業等による小水力発電の整備状況」(整備完了:2019年3月末時点)
https://www.maff.go.jp/j/nousin/mizu/shousuiryoku/pdf/suiryoku.pdf

 

別のグラフでも確認してみましょう。
以下の図2は1,000kW以下の発電規模別施設数の割合を、図3は規模別出力を表しています。

図2 1,000kW以下の発電規模別施設数の割合
出典(図2・図3)NEDO独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(2014)
「再生可能エネルギー技術白書第2版:第8章 中小水力発電 (図2:p.20,図3:p.21)
https://www.nedo.go.jp/content/100544823.pdf

 

図3 1,000kW以下の発電設備の規模別出力の割合

 

これらの図をみると、ミニ水力発電(100~1,000kW)は1,000kW以下の発電施設数の87%を占めていることがわかります。また、規模別出力は98%と、ほとんどを占めています。

なお、小水力発電(1,000~10,000kW)の出力合計は4.2万kWで、年間約2億510万kWhの発電が可能です。これは約68,000世帯の年間消費電力量に相当します *5。

よって、この「1,000kW以下」の水力発電施設の中でも、ミニ水力発電が非常に重要になってくると言えるでしょう。

地理的条件

日本はミニ水力発電に適しているといわれます。
ミニ水力発電の発電量を決めるのは、水の高さと水が流れるときの流量ですが、日本は山々に恵まれているため、川の高低差が大きいという地理的な利点があります。
また、日本は稲作が農業の主流で、ミニ水力発電に利用しやすい用水路が発達していることも、この発電方法に適している点です *2-①:「『小水力発電』とはどのような電源なのか」。

ミニ水力発電はさまざまな場所で行われていますが、以下の図4はその例です。

図4 さまざまな小水力発電
出典(図4・図6-図13):J-WatER 全国水利用推進協議会
(図4:「導入事例」、図6-13:「どんなところでできるか?」)
http://j-water.org/result/index.html

ミニ水力発電の特徴

次に、ミニ水力発電の特徴をみていきましょう。
ミニ水力発電には、次のような特徴があります。

環境にやさしく持続可能

まず、環境にやさしい持続可能な発電方法であるということが挙げられます。
後で詳しくみますが、大規模ダムや中規模ダムとは異なり、河川の水を貯めずにそのまま利用する循環型の発電方式です。
また、現在、利用されず無駄になっている水のエネルギーを有効利用するため、持続可能でクリーンです *3-①:「小水力とは?」 。

地域密着型

ミニ水力発電は地域の天然資源である水を利用するため、事業主も地方自治体、地元の土地改良区、NPO、個人などです。
このうち、土地改良区とは、都道府県知事の認可を受け「土地改良事業を行政に代わって実施する農業者の組織」を指します *6。この組織は用水路の管理をおこなっていて水を利用しやすい立場にあるため、土地改良区が事業主となっている例が多くみられます *2-①:「小水力発電はどのように運営されているのか」。

また、設置や運営は、ふつう地元のコンサルタントや施工業者、管理者が中心になって行います。
そのため、地域の活性化、地域の雇用促進にも有効です *2-①:「小水力発電はどのように運営されているのか」、*3-①:「小水力とは?」。

地域による差異

ミニ水力発電には地域によってさまざまな違いがあります。

まず、普及度が地域によって異なります。
ミニ水力発電の設置が多い都道府県は、富山、静岡、長野、岐阜などです。
これは、「包蔵水力」と呼ばれる、エネルギーとして利用可能な水のエネルギー量が地域によって異なるからです。包蔵水力が大きいのは主に雪が降る地域です。それは、雪解け水が得られるため、一定量の水をコントロールしながら、長期間、発電に利用できるという事情によります。
一方で、一時に大量に降る雨を利用する場合には大型ダムが必要となってしまい、ミニ水力発電には向きません *2-①:「『小水力発電』とはどのような電源なのか」。

次に、建設単価にも地域差があります。
NEF(新エネルギー財団)の調査でも、kWhあたりの建設単価には、50円/kWh~1,000円/kWhと約20倍の開きがありました。
したがって、同じ容量の設備であっても、地域によって建設費には大きな差が出ることがあります *3-①:「小水力開発の特徴とポイント」。

独自の技術

ミニ水力発電には、大規模ダムの技術とは異なる独自の技術を用います。
規模が小さく、原理も非常にシンプルであるため、地域の人々が取り組みやすいという特徴がありますが、詳しいことは後ほど「発電方式・場所・資源」のところでお話ししたいと思います。

風力発電・太陽光発電との違い

次に、種類の違う自然エネルギーである、太陽発電・水力発電との違いを、メリットとデメリットに分けて考えてみたいと思います。

まず、メリットとして次の点が挙げられます *3-①:「小水力の特徴 太陽・風力との違い」。

  • 昼夜、年間を通じて安定した発電が可能
  • 設備利用率が50~90%と高く、太陽光発電と比較して5~8倍の電力量が発電できる
  • 出力変動が少なく、系統の安定性や電力品質に影響を与えない
  • 一般的に経済性が高い
  • ただし、先にみたように、地域によって経済性が異なります。
  • ポテンシャルが高い
  • 未開発の包蔵量がまだたくさんあります。全国小水力利用推進協議会による概算では、1,000kW以下の未開発包蔵水力は300万kWとされています。
  • 太陽光と比較して、設置面積が小さい

以上のことから、ミニ水力発電には多くのメリットがあることがわかります。

では、次にデメリットについてもみていきましょう *3-①:「小水力の特徴 太陽・風力との違い」。

  • 設置地点が限られる
    先ほどお話ししたように、小水力発電の設置場所は水の落差と流量がある場所に限定されるため、そうした地理的条件が必須です。
  • 水の使用に関する利害関係が生じる
    ただし、風力発電の場合も、騒音、低周波音、バードストライク(鳥の衝突)、景観を損なうなどの利害に関わる問題があります *7。
  • 「落差」と「流量」という2つの要素による機器開発が必要である

導入する場合には、こうしたメリットとデメリットを認識したうえで判断する必要があります。

発電方式・場所・資源

ここでは、ミニ水力発電の発電方式・場所・資源をみていきたいと思います。

まず、主な発電方式は、「流れ込み式」と「水路式」です *3-①:「小水力とは」。
以下の図5は「流れ込み式」および、「水路式」を表しています。

図5 「流れ込み式」と「水路式」
出典(図5・図14-図17):NEDO独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(2014)
「再生可能エネルギー技術白書第2版:第8章 中小水力発電」 (図5:p.5、図14:p.19、図15:p.23、図16:p.16、図17:p.14)
https://www.nedo.go.jp/content/100544823.pdf

 

次に、場所と資源ですが、先ほどみたように、水の落差と流量のある場所なら設置することができます *3-①:「どんなところでできるか?」。
具体的には、一般河川、砂防ダム・治山ダム、農業用水路、上水道施設、下水処理施設です。
また、水資源としては、ダム維持のための放流水、既設発電所の放流水、ビルの循環水、工業用水なども利用されています。

図6 一般河川

図7 砂防・治山ダム

図8 農業用水路

図9 上水道施設

図10 下水処理施設

図11 ダム維持放流

図12 発電所の放流

図13 ビルの循環水・工業用水

 海外における取り組み

では、海外ではどのような取り組みをしているのでしょうか。

ここでは、公表されているのデータの規模に合わせて、10MW(1MW=1,000kW)以下の小水力発電を中心にみていきたいと思います。

導入状況

まず、以下の図14は主要国の小水力発電の設備容量を表しています。

図14 主要国の小水力発電設備容量(2008年)

 

この図をみると、日本やアメリカ、イタリアの稼働容量が多いことがわかります。
カナダやカザフスタンは建設・計画段階のものが多く、今後、稼働が増えることが見込まれます。

次の図15は、ヨーロッパの小水力発電の発電量を表しています。

図15 ヨーロッパの小水力発電電力量

 

ヨーロッパでは、イタリア、フランス、スペイン、ドイツなどを中心に開発・導入が行われてきました。EU27ヵ国の小水力発電は2008年時点で21,000地点以上にのぼり、発電量は43,000GWh(1GW=1,000MW=1,000,000kW)でした。これは、ヨーロッパの1,200万世帯分の需要に相当します *8:p.22。

次に、アメリカの小水力発電(10MW以下)は、2008年時点で発電量が11,973GWhでした。アメリカでは、小水力発電に改めて注目が集まっていて、アメリカ連邦エネルギー規制委員会(Federal Energy Regulatory Commission:FERC)の許認可数が急速に増加しています*8:p.22 。

目標とポテンシャル

では、今後、導入は進むのでしょうか。

図16はヨーロッパの中小水力発電(10,000~100,000kW)の導入量と目標を表しています。

図16 ヨーロッパの導入量と目標

 

ヨーロッパの設備容量は、ポテンシャルとしては、23,000MW(23GW)*8:p.14 ですが、目標は2020年に現状シナリオで16,000MW、開発シナリオで20,000MW(20GW)ですから、まだポテンシャルがあります。

次に図17は、アメリカにおける水力発電のポテンシャル分布図です。

図17 アメリカにおける水力発電のポテンシャル分布図(1~30MW)

 

ただし、アメリカでは1~30MWを小水力(Small Hydropower)と定義していますので *8:p.14、図17もその規模で表してあります。
この分布図をみると、アメリカは東部を中心にポテンシャルが高いことがわかります。

ヨーロッパにおける取り組み事例

最後にヨーロッパにおける取り組み事例をみてみましょう。

まず、技術の伝承です *2-①:「水力発電は地域活性化にも役立つ」。
ヨーロッパでは、50年以上にわたって培ってきた水車やミニ水力発電の技術が現在も継承されています。日本で現在、使われている水車の多くは、ドイツ製やチェコ製、イタリア製です。
日本もかつては水車を活用したミニ水力発電が行われていましたが、それが途絶え、技術の継承も途切れてしまいました。ヨーロッパにおける技術の継承はそれとは対照的です。
ミニ水力発電所もたくさんあり、2010年頃の調査では、100年間、動き続けている水車さえあることが確認されました。

次に、ドイツの電力会社とそれに関連した技術改革についてお話ししたいと思います。
日本では規模の小さい電力会社は大手の電力会社に統合されることが多いのですが、ドイツでは規模の小さい電力会社が統合されることなく、各地域で自前の電力をつくり、活用しています。
そうした中で、多くの技術革新が行われ、発電機器の製造や販売の市場が作り上げられてきたといわれています。それがドイツのミニ水力発電のコストが低い要因にもなっています。

日本における取り組み

次に日本における取り組みをみていきたいと思います。

エネルギーミックスに占める小水力発電の割合

まず、日本のエネルギーミックスと小水力発電の占める割合をみてみましょう。

以下の図18は2016年のエネルギーミックスを、図19は自然エネルギーと原子力発電の発電量の推移を表しています。

図18 2016年度のエネルギーミックス

図19 自然エネルギーと原子力発電の発電量推移
出典(図18-図20):isep 認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所
(図18・図19:「日本では自然エネルギーの発電量は 14.8% に(大規模水力含む)」、図20:「国内でも小水力発電の導入が進み始めている」)  

https://www.isep.or.jp/jsr/2017report/chapter1/1-2

 

図18で、円の上部「バイオマス」から左回りに「地熱」、「風力」、「太陽光」、「水力(大規模発電を含む *9)」を合計すると、日本の自然エネルギーは14.8%に上ることがわかります。

図19をみると、2016年度の小水力発電による発電量は、自然エネルギーに原子力発電の1.7%を加えた電源(全体の16.5%)の1.7%ですから、全体の約2.8%で、まだまだ推進の余地があることがわかります。

国の導入推進・支援施策

こうした状況を受け、国は小水力発電を推進するために、さまざまな施策を進めています。
どのような施策かみていきましょう。

固定買取制度(FIT)

まず、経済性をサポートするための施策として、「固定価格買い取り制度(FIT)」が挙げられます。

2012年7月、再生可能エネルギーの普及・拡大を目的とした固定価格買い取り制度(FIT)が施行されました。
以下の表2は、2017年度の水力の買取価格(税抜き)と期間です。

表2 FITにおける水力の買取価格と期間

出典:国土交通省(2017)「小水力発電の普及促進への取組 ~ 小水力発電に係る水利使用手続の簡素化・円滑化について ~」 p.4
http://www.mlit.go.jp/river/riyou/syosuiryoku/ss_pamph01_201706.pdf

 

この表をみると、発電規模が小さいほど買取価格が高く設定されていることがわかります。
このことによって、まだ高コストなミニ水力発電でも経済性がクリアでき、導入へのモティベーションが高まっています *2-②:「小水力発電の普及に向けた4つの課題」.。

次の図20は日本の中小水力発電の累積導入件数を表しています。

図20 日本の中小水力発電の累積導入件数

 

先ほどみたように、2012年、出力3万kW未満の設備がFIT制度の対象となったことで、中小水力発電の導入が徐々に進んでいます。
2016年度の新規導入量は約7.9万kWで、そのうち84%が1,000kW未満の発電です *9:「国内でも小水力発電の導入が進み始めている」。

小水力発電施設の整備に関する補助金制度

次に、発電施設の整備に関する補助金制度をみたいと思います。
以下の表3は、小水力発電施設を整備するにあたっての主な支援事業をまとめたものです。

表3 小水力発電施設を整備するにあたっての主な支援事業(2019年度)

出典:農林水産省(2019)「小水力等発電施設を整備するにあたっての主な支援事業」
https://www.maff.go.jp/j/nousin/mizu/shousuiryoku/pdf/josei_R1.pdf

 

小水力発電の技術導入に関するソフト支援

また、以下の図21のような技術に関するソフト支援もあります。

図21 小水力発電の技術導入のためのソフト支援
出典:農林水産省(2019)「小水力等再生可能エネルギー導入支援事業」
https://www.maff.go.jp/j/nousin/mizu/shousuiryoku/attach/pdf/rikatuyousokushinn_teikosuto-71.pdf

 

従属発電に関する手続きの簡素化・円滑化

先ほど、「発電方式・場所・資源」のところで、ミニ水力発電は、水資源としてダム維持のための放流水や既設発電所の放流水を活用するというお話をしました。
このように、既に水利使用の許可を受けている農業用水やダムなどから放流される流水を利用する発電を従属発電といいます。
この従属発電の登録制が実施され、手続きの簡素化、円滑化がはかられています(図22) *10:pp1-2。

図22 従属発電に関する手続きの簡素化・円滑化
出典(図22-図24):国土交通省(2016)
水管理・国土保全局「小水力発電設置のための手引き」
(図22:p.2、図23:p.4、図24:p.11)
http://www.mlit.go.jp/river/riyou/syosuiryoku/pdf/syousuiryoku_tebiki3.pdf

 

一級河川に関する手続きの簡素化

以前は、小水力発電に利用する河川の種類によって、手続きの難易度には大きな差がありました *3-①:「小水力開発の特徴とポイント」。
その要因は、それぞれの河川の性質の違いです。

まず、一番、重要度が高く、河川法上の管理が必要なのは「一級河川」で、国土交通大臣が区間を限定しています。この河川は、洪水、高潮などの災害が発生した場合、被害が大きいと想定されるため、国家的な治水が必要です。また、上水道や工業用水道、灌漑、発電など河川の利用の影響度も一地方にとどまらないほど大きいため、国の管理が必要です。

この他に、その重要度によって都道府県知事が区間を限定した「二級河川」、市町村長が指定した「準用河川」、それ以外の「普通河川」があり、「普通河川」は河川法上の制約を受けません *11。
小水力発電に河川を利用する場合、以前は河川の種類によっては手続きが難しく、小水力発電導入のハードルを高くしていました。
そこで、小水力発電のうちミニ水力発電に「一級河川」を利用する場合の許可権限を、国土交通省大臣から都道府県知事または政令指定都市の市長に移行し、簡素化をはかりました。

以下の図23は、一級河川指定区間に関する手続きの簡素化を図示したものです。

図23 一級河川指定区間に関する手続きの簡素化

 

このように、小水力発電やミニ水力発電を推進するために、国はさまざまな施策を実施しています。

取り組み事例

ここでは、土地改良区による用水路を使った事例をご紹介したいと思います。
先駆的取り組みとして知られている、栃木県の那須野ケ原における取り組みです。

以下の図24は、栃木県の那須野ケ原におけるミニ水力発電の概要を表しています。

図24 栃木県の那須野ケ原におけるミニ水力発電の概要

 

国土交通省「小水力発電設置のための手引き 」*10:pp.10-39 や農林水産省「農業農村整備事業
等による小水力発電の整備事例」 *12 には、この他にもミニ水力発電やマイクロ水力発電、ピコ水力発電のさまざまな取り組みが紹介されています。

解決すべき問題と今後の展開

最後に、今後の展開を考えてみましょう。

解決すべき問題

まず、今後、解決していかなければならない問題についてお話ししたいと思います。

コストの低減

そのひとつが、コストの低減です *2-②:「小水力発電の普及に向けた4つの課題」。
コストには技術の問題が関連しています。

ミニ水力発電は、構造的に3つの要素から構成されています。
水車と発電機や制御系などの電気系統、それに土木です。
そのうち最もコストがかかるのは土木の部分で、発電所建設費用の半分以上が土木です。

水車もコストがかかります。
先ほどお話したように、日本では水車の活用が途切れてしまい、水車をつくるノウハウも継承されてこなかったため、ドイツやチェコなど海外製品の輸入に頼らざるを得ないからです。

メンテナンスのノウハウ技術も蓄積していく必要があります。
日本では一般的にどの設備も1年に一度は停止して総点検をおこないます。
その他に、5年毎、10年毎に必要なメンテナンスもあります。
そうした点検作業もメーカーに依頼しているため、高コストになっているのです。
ミニ水力発電の設備はきちんとメンテナンスしていれば100年間、維持できるといわれていますので、メンテナンスは重要な意味をもちます。

ミニ水力発電を推進するためには以上のような技術を開発し、コスト低減をはかっていくことが必要です。

地域との共生

次に地域との共生もはかっていく必要があります *2-②:「小水力発電の普及に向けた4つの課題」。

ミニ水力発電は地域密着型のため、関係者間の調整が必要な場面が多々あります。そうした調整をスムーズに進めるためには、地域と利害を共有し、一体となって進めることが必要です。

今後の展望

ミニ水力発電は太陽光や風力に比較して設備寿命が数倍長いため、長期間、稼働すれば、発電コストは非常に安くなります。
もし、発電設備を50年間稼働するとすれば、確実に電力会社の系統電力の価格と同じになるか、それより安くなる可能性もあります *2-②:「小水力発電の普及に向けた4つの課題」。

はじめの方でお話ししたように、ミニ水力発電は地元に電力を供給するだけでなく、地域の活性化、地域の雇用促進にも有効です。
解決すべき問題に取り組み、地域密着型のミニ水力発電を推進していくことには、さまざまなメリットがあるといえるでしょう。

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参照・引用を見る

*1
環境省「小水力発電情報サイト:小水力発電とは」
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/shg/page01.html

*2
経済産業省資源エネルギー庁HP(2019)上坂博亨(全国小水力利用推進協議会代表理事)「日本の環境に適した小水力発電は、地域の活力を生みだすもとになる」(インタビュー)
①(前編)
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/interview11uesaka01.html
②(後編)
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/interview11uesaka02.html

*3
J-WatER 全国水利用推進協議会
① 「小水力発電とは」
http://j-water.org/about/
② 「導入事例」
http://j-water.org/result/index.html

*4
国立環境研究所(2008)「環境展望台:経済産業省、新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法施行令の一部を改正する政令を発表」
http://tenbou.nies.go.jp/news/jnews/detail.php?i=445

*5
農林水産省(2019)「農業農村整備事業等による小水力発電の整備状況」(整備完了:2019年3月末時点)
https://www.maff.go.jp/j/nousin/mizu/shousuiryoku/pdf/suiryoku.pdf

*6
農林水産省「土地改良区とは」
https://www.maff.go.jp/j/nousin/kikaku/attach/pdf/dantaisidou_riyouchousei-25.pdf)

*7
日本風力発電協会(2011)「ウインドウズ オブ Wind(風の窓):風力発電の環境影響」
http://jwpa.jp/2011_pdf/90-32mado.pdf

*8
NEDO独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(2014)「再生可能エネルギー技術白書第2版:第8章 中小水力発電
https://www.nedo.go.jp/content/100544823.pdf

*9
isep 認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所 「日本と世界のエネルギー」
https://www.isep.or.jp/jsr/2017report/chapter1/1-2

*10
国土交通省(2016) 水管理・国土保全局「小水力発電設置のための手引き 」http://www.mlit.go.jp/river/riyou/syosuiryoku/pdf/syousuiryoku_tebiki3.pdf

*11
国土交通省「川と水の質問箱 よくある質問とその回答(FAQ):Q1.一級河川と二級河川の違いは?」
http://www.mlit.go.jp/river/basic_info/iken/question/

*12
農林水産省(2019)「農業農村整備事業等による小水力発電の整備事例」
https://www.maff.go.jp/j/nousin/mizu/shousuiryoku/attach/pdf/rikatuyousokushinn_teikosuto-15.pdf

 

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