廃棄物削減と循環型社会を目指す ごみ分別の重要性 100%

ごみ問題は私たちにとって非常に身近な環境問題です。リサイクルの推進やエコバックの普及など、ごみ削減の取り組みは私たちの暮らしに密着してます。
最も身近で最も深刻な環境問題のひとつ、ごみ問題の解決に直結するごみ分別の重要性ついて紹介します。

ごみ分別の必要性 〜なぜごみを分別するのか〜

ごみ分別の推進が始まった最初のきっかけは1960〜70年代の高度経済成長期です。家電の普及や消費活動の活発化により人々の暮らしが豊かになるとともに、ごみの排出量が急増しました。さらに廃棄物処理に伴う公害問題、埋立地の確保など新たな問題も顕在化しました。これらの背景からごみの分別収集、適正処理、廃棄物処理施設の処理能力の向上が推進されました。

2000年代以降はペットボトルの普及などでプラスチックの大量廃棄も問題になりました。図1で示すとおり、プラスチック容器の生産量は、1990年と比較して2005年には3倍以上に増加しています

 


図1 プラスチック容器の生産量の増え方
*出典1:環境省「平成19年度版 こども環境白書 行き場をなくしたごみ」(2007)
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/kodomo/h19/pdf/10step2-4.pdf

 

プラスチックは土に埋めても自然に還らず、焼却すると有害なガスなどを排出するものもあるので、処分は非常に難しいのです。
再利用や焼却のできないごみを埋め立てる最終処分場容量の逼迫も深刻なごみ問題のひとつです。さらに現在日本ではリサイクル処理のために人件費の安い海外に廃棄物を輸出しているという問題があります。国際的な輸出規制や脱プラスチックの流れもあり、日本国内で完結するプラスチック処理および排出抑制が必要です。

 

図2 ごみのリサイクルと埋め立て
*出典2:九都県市首脳会議廃棄物問題検討委員会HP 「第1話 ごみ問題の現状」
https://www.re-square.jp/eco/kids/01.php

 

ごみが増えることで問題となるのはそれだけではありません。焼却するごみの量が増えることで、収集や焼却時に排出される二酸化炭素が増え地球温暖化を加速させてしまいます。さらにごみの大規模な不法投棄とそれに伴う土壌汚染なども問題になっています。

このような深刻化するごみ問題の解決の糸口として、3R:発生抑制(Reduce)再使用(Reuse)再生利用(Recycle)という考えが2000年以降広まりました。
これまでの大量消費、大量廃棄の社会システムから脱却し、3Rを軸とした環境に優しい循環型社会への転換が求められています。

 

図3 循環型社会と3R
*出典13:経済産業省「いま、地球のためにできること」(2004)p6
https://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/data/pamphlet/pdf/3r_sun200403.pdf

 

図3 大型消費社会から循環型社会への転換
*出典3:環境省 「日本の廃棄物処理の歴史と現状」(2014)p10
https://www.env.go.jp/recycle/circul/venous_industry/ja/history.pdf

 

3Rの考え方の前提として、まずは発生抑制(Reduce)「ごみを減らす」ことが最も大切です。再使用(Reuse)、再生利用(Recycle)をすることでごみの量を減らすことは可能ですが、これらを行うためにもエネルギー消費は必要ですし、大気汚染や温暖化などの環境問題への影響がゼロになるわけではありません。

上記のことからも、リデュースを徹底した上で、リユースやリサイクルを推進する必要があります。そのためには一般家庭での一人一人のごみ分別の意識の向上が重要です。ごみを正しく分別すること、綺麗な状態で出すこと、自治体ごとのルールを守ることによって、ごみを有効に再生利用することができるのです。

図4は廃棄物総排出量の推移です。このグラフを見ると廃棄物総排出量は2000年代後半をピークに減少していることがわかります。これは分別回収の定着、リサイクルの推進による影響によるものです。

 

図4 廃棄物総排出量の推移
*出典3:環境省 「日本の廃棄物処理の歴史と現状」(2014)p15
https://www.env.go.jp/recycle/circul/venous_industry/ja/history.pdf

 

ごみを正しく分別しリサイクルすることは、地球温暖化抑制の効果も期待できます。
リサイクルすることで減らせるのは、ごみ処理時に発生する温室効果ガスだけではありません。リサイクル製品を作ることで、いちから製品を作り出す時に発生する温室効果ガスも減らすことができるのです。

 

図5 紙やペットボトルをリサイクルする場合としない場合の比較
*出典4:国立環境研究所 地球環境研究センターHP 「ココが知りたい地球温暖化」
https://www.cger.nies.go.jp/ja/library/qa/19/19-2/qa_19-2-j.html

 

私たち消費者はリサイクル商品を積極的に利用することでも社会全体のエネルギー削減に貢献し、循環型社会に参加することができます。
リサイクルを推進していくためにも、家庭から出されるごみを正しく分別することが必要な第一歩となります。

世界各国のごみ分別事情

ごみ問題は日本だけでなく、世界規模で解決すべき課題となっています。

図6は世界の廃棄物量の将来予測です。ごみの排出量はGDP(国内総生産)との相関関係があるため、今後はアジアなどの発展途上国の経済発展や人口増加とともに廃棄物の増加が予想されています。

 

図6 世界の廃棄物量の推移(将来)
*出典5:環境省 環境白書「静脈産業で世界の循環型社会の構築を」(2011)
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h23/html/hj11010402.html

 

それでは、世界各国のごみ分別はどのようになっているのでしょうか。

まず環境問題への意識が高い環境先進国の一つであるスウェーデンでのごみ処理について見ていきましょう。
スウェーデンでは家庭から排出されるごみに関しては、排出量の99%を地域のエネルギー源や原料としてリサイクルしています。2013年のごみ処理の内訳では、50.3%を熱利用、33%を原料リサイクル、16%を肥料化・バイオガスの生産、残りの0.7%を埋め立てしています。

スウェーデンでは容器リサイクルステーションの設置、リサイクル料金を商品価格に上乗せすることで、積極的なリサイクルを進めています。家庭での生ごみは自宅やアパートなどの家庭菜園などの肥料にすることが一般的で、コンポストという堆肥として利用されています。さらに生ごみをバイオガスにすることで市バスや暖房の燃料にするなど地域のエネルギー源として有効利用しています。

 

図7 スウェーデンにおけるバイオガスの利用
*出典6:一般社団法人 資源・リサイクル促進センターHP「世界のごみ、リサイクル」
http://www.cjc.or.jp/study/world_recycle.html

次に紹介するのは、ゼロウェイストを進めているアメリカ、サンフランシスコです。ゼロウェイストとは、ごみを再利用または土に返しごみの埋め立てを完全になくすことです。
サンフランシスコでは2015年時点でゼロウェイストを80%まで達成しています。
ゼロウェイストの達成のためにサンフランシスコではごみ分別をリサイクル、コンポスト、埋め立ての3種類に分類しています。そのため、廃棄物焼却施設はなくごみを全く燃やしていません。
リサイクルに分類されるのはプラスチック、ガラス、缶、紙です。レジ袋は機械の故障原因となるため別に回収することを徹底されています。

 

図8 サンフランシスコのごみの分別(リサイクル)
*出典7:一般社団法人 資源・リサイクル促進センターHP「外国はどうしているのかな?」(2015)
http://www.cjc.or.jp/j-school/c/c-8-9.html

 

次に、アジア各国のごみ分別やリサイクルを巡る現状はどうなっているのでしょうか。

アジアは中国を始めとして急速な経済成長を遂げている国が多く、廃棄物処理に伴う公害問題やプラスチックごみの増加などといったかつての日本と同じ問題を抱えています。
アジア各国では現在、廃棄物適正処理とリサイクルの推進、エネルギー回収をおこなう廃棄物焼却施設の導入などが進んでいます。廃棄物処理やリサイクル制度の法整備も進み、市民レベルでの意識も高まっている状況です。

 

表1 アジア各国の廃棄物処理・リサイクル制度の概要
*出典8:環境省 公開シンポジウム「アジアの循環産業をとりまく状況」(2017)p10-11
https://www.env.go.jp/recycle/circul/venous_industry/pdf/symposium/06.pdf

 

日本の廃棄物処理産業をアジア各国への展開をすることで、環境保護への役割を担っています。さらに3Rの定着といった環境教育、人材育成も行なっています。

 

図9 廃棄物処理産業の全輸出高を占める各国の比率
*出典5:環境省 環境白書「静脈産業で世界の循環型社会の構築を」(2011)
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h23/html/hj11010402.html

 

グラフは、世界の廃棄物処理産業の輸出シェアの比較です。日本はアメリカやドイツなどといった環境先進国に並んで輸出シェアを競っています。

日本では経済発展とともに廃棄物問題を解決してきた経験と技術があります。日本の廃棄物処理技術やリサイクル技術を発展途上国で事業展開をすることで、世界規模での環境負荷低減に貢献することが可能になります。
一方で、日本の使い捨てプラスチックの一人当たりの使用量は、米国に次ぎ世界2位であり、年間100万トン以上ものプラスチック廃棄物を国外へ輸出している現状も忘れてはいけません。今後は国外に輸出している廃棄物を国内で資源循環する仕組みを整え、プラスチックごみの削減をすすめていく必要があります。

日本のごみ分別の現状と将来予測

次に日本国内のごみ分別の現状について見ていきましょう。

第1章でもふれたように、日本では所得増加や経済発展とともに、排出されるごみの量、種類ともに増加していきました。
図10を見ても分かる通り国内での最終処分量を大幅に減らすことに成功していますが、プラスチック廃棄物の海外輸出をしているという現状もあります。

 

図10 最終処分量と減量化量
*出典3:環境省 「日本の廃棄物処理の歴史と現状」(2014)p15
https://www.env.go.jp/recycle/circul/venous_industry/ja/history.pdf

 

さらに、1990年以降はリサイクル制度に関する法整備が進み、リサイクルへの一般層へ定着とリサイクル率の向上に一定の成果を出しています。

 

図11 一般廃棄物の資源化量とリサイクル率
*出典3:環境省 「日本の廃棄物処理の歴史と現状」(2014)p16
https://www.env.go.jp/recycle/circul/venous_industry/ja/history.pdf

 

2017年時点での日本のごみ総排出量は4,289万トン、東京ドーム約115杯分にものぼります。しかし図12を見てもわかる通り、2011年(H23)以降は6年連続で減少傾向にあります。

図12 ごみ総排出量の推移
*出典9:環境省「一般廃棄物処理事業実態調査の結果(平成29年度)について」(2017)p1
https://www.env.go.jp/press/files/jp/press/2dtgw29.pdf.pdf

また、国土の狭い日本にとっては、ごみ問題の最終処分場の確保については深刻な問題です。最終処分場の残余年数は1998年には10年を切っていましたが、ごみ分別やリサイクルを進めることで、現在は20年に伸ばすことができています。残余年数とは新しい最終処分場が整備されない場合に埋め立て処分可能な期間(年数)のことです。

 

図13 一般廃棄物最終処分場の残余容量と残余年数の推移
*出典9:環境省「一般廃棄物処理事業実態調査の結果(平成29年度)について」(2017)p13
https://www.env.go.jp/press/files/jp/press/2dtgw29.pdf.pdf

 

このように残余年数は微増していますが、依然として厳しい状況です。さらに最終処分場の建設は近隣住民などの反対を受けやすく、新規の設立や用地の確保が非常に困難な状況です。

約20年後、2040年にはごみを埋め立てる場所がなくなることを想像してみてください。このような状況を改善するためには、家庭のごみを正しく分別することでごみの削減につなげなければなりません。
そして先にもふれたようにリサイクルの前にまずは発生抑制、つまりごみを減らすこと重要です。過剰包装を断り、エコバックを持参するなど一人一人ごみを出さない行動を実践していくことが大切です。

ごみ分別・削減の先進的な施策

最後に、将来のごみ削減のヒントになる各自治体での先進的な施策を紹介しましょう。日本ではごみ収集から処理に至るまで、基本的に自治体単位で実施されています。

まず紹介するのは京都市での取り組みです。京都市では2014年度から「雑がみ」の分別およびリサイクルを全市で実施しています。雑がみとは本来燃やすごみに分類されていた、包装紙、チラシ、カタログなど、ダンボール、新聞紙以外にリサイクルできる燃えるごみのことです。
以下のグラフは2011年度の京都市の家庭ごみの内訳です。

 

図14 京都市家庭ごみの内訳
*出典10:京都市情報館HP 「「雑がみ」の分別・リサイクルに御協力ください!」(2015) 
https://www.city.kyoto.lg.jp/kankyo/page/0000172959.html

 

このように、雑がみは家庭から出される紙ごみの半数近くを占めていることから、分別・リサイクルを進めることでごみの減量を達成することができます。

次に紹介するのは神奈川県藤沢市で利用されているごみ分別アプリです。
藤沢市ではごみや資源の分別や収集日程カレンダーを簡単に利用できるアプリを配信しています。ごみ収集の日程や分別方法などをスマートフォンで確認できるので、ごみ分別を面倒と感じる方に分別のハードル下げ正しいごみ分別を推進しています。

 

図15 藤沢市ごみ分別アプリの画面例
*出典11:藤沢市HP「藤沢市ごみ分別アプリをご利用ください」(2019)
http://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/kankyo-j/app.html

 

このアプリはその他にごみ収集のアラーム機能やお知らせ機能もついています。ごみ分別は家庭レベルでの心がけが重要なので、分別方法をわかりやすく周知することは効果的な施策と言えるでしょう。

最後に紹介するのは、ごみ削減量日本一を達成した長野県での施策です。長野県では県内の自治体と事業者が一体となり廃棄物の減量化を進めています。2017年度の実績では一人当たりの廃棄物排出量が日本で一番少ない県となっています。
具体的な施策として、食品ロス削減や生ごみの堆肥化による排出抑制、ごみ処理有料化などを行なっています。
図16は県民1人1日あたりの排出量と有料化人口との相関関係です。

 

図16 県民1人1日あたりの排出量と、有料化人口との相関関係
*出典12:長野県 第15回県と市町村との協議の場「資料2ごみ減量化により目指す社会と効果」(2018)
https://www.pref.nagano.lg.jp/shinko/kensei/shichoson/shichoson/kyogi/documents/04_15shiryou2.pdf

 

上のグラフを見てもわかる通り、ごみ処理の有料化はごみの排出量削減に大きく貢献しています。
このように日本国内の自治体でもさまざまなごみ問題に対する施策が実施されており、一定の効果が報告されています。

ごみ問題は喫緊の課題であり市民の心がけと行動が解決に結びつくにもかかわらず、私たちの生活においては実感が伴いにくい問題でもあります。
まずは生活の中でごみを出さないという意識、行動がもっとも大切です。そしてごみ分別の重要性を認識してリサイクルを進めることで、私たち一人一人が将来の循環型社会を創り出すことができるのです。

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参照・引用を見る

環境省「平成19年度版 こども環境白書」(2007)
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/kodomo/h19/pdf/10step2-4.pdf

九都県市首脳会議廃棄物問題検討委員会HP 「第1話 ごみ問題の現状」
https://www.re-square.jp/eco/kids/01.php

環境省 「日本の廃棄物処理の歴史と現状」(2014)
https://www.env.go.jp/recycle/circul/venous_industry/ja/history.pdf

国立環境研究所 地球環境研究センターHP 「ココが知りたい地球温暖化」
https://www.cger.nies.go.jp/ja/library/qa/19/19-2/qa_19-2-j.html

環境省 環境白書「静脈産業で世界の循環型社会の構築を」(2011)
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h23/html/hj11010402.html

一般社団法人 資源・リサイクル促進センターHP「世界のごみ、リサイクル」
http://www.cjc.or.jp/study/world_recycle.html

一般社団法人 資源・リサイクル促進センターHP「外国はどうしているのかな?」(2015)
http://www.cjc.or.jp/j-school/c/c-8-9.html

環境省 公開シンポジウム「アジアの循環産業をとりまく状況」(2017)
https://www.env.go.jp/recycle/circul/venous_industry/pdf/symposium/06.pdf

環境省「一般廃棄物処理事業実態調査の結果(平成29年度)について」(2017)
https://www.env.go.jp/press/files/jp/press/2dtgw29.pdf.pdf

京都市情報館HP 「「雑がみ」の分別・リサイクルに御協力ください!」(2015)
https://www.city.kyoto.lg.jp/kankyo/page/0000172959.html

藤沢市HP「藤沢市ごみ分別アプリをご利用ください」(2019)
http://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/kankyo-j/app.html

長野県 第15回県と市町村との協議の場「資料2ごみ減量化により目指す社会と効果」(2018)
https://www.pref.nagano.lg.jp/shinko/kensei/shichoson/shichoson/kyogi/documents/04_15shiryou2.pdf

経済産業省 「いま、地球のためにできること」(2004)p6
https://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/data/pamphlet/pdf/3r_sun200403.pdf

 

Photo by Goetz Heinen on Unsplash

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