節電を行うのは何のため? 原点に立ち戻り、電気と私たちの暮らしを考え直してみよう

「電気を節約する」という意識は浸透してきていますが、電気代を節約する以外の目的や具体的な効果について考えたことはありますか。

本記事では、地球温暖化問題への貢献という観点から電気を節約することの重要性を説明します。

 

電気を節約する目的とは

電気の節約には家計費の節約以外にも大きな意味があります。

まずひとつは、限りある資源であるエネルギーを大切に使うということです。電気をつくるために使用されている石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料は数億年前の植物や動物が変化したもので、量には限りがあります。

一人一人が無駄な使用をなくすことで、資源を有効に利用することができます。

そして、化石燃料の使用を抑えることは、化石燃料を燃やすことで発生し地球温暖化の原因になっている温室効果ガスを減らすことにも貢献します。

特に電力需要の約3割を占めている家庭の電力消費の節約は、二酸化炭素(以下、CO2)の削減に大きな役割を担っています。

そして、家庭からのCO2排出量の約半分は電気の使用が原因です。

図1 世帯あたりの排出量(燃料種別内訳)
*出典1:全国地球温暖化防止活動推進センターHP「家庭部門における二酸化炭素(CO2)排出の動向」
https://www.jccca.org/home_section/homesection01.html

 

つまり、家庭で電気の節約に取り組むということはCO2排出抑制につながり、地球温暖化問題の解決へ寄与します。

 

家庭での電気の節約活動

それでは家庭での電気の節約対策となる具体的な行動について紹介していきましょう。家庭でできる電気の節約には以下の図2のように、さまざまなアプローチがあります。

図2 家庭におけるエネルギー消費量の削減対策
*出典2:一般社団法人地球温暖化防止全国ネット「家庭で取り組む節電マニュアル」(2012)p7
https://www.jccca.org/about/works/img/setuden_2012summermanual.pdf

 

家庭でできる電気の節約は、省エネ家電への買い替えや省エネ住宅へのリフォームなどの方法もありますが、ここでは電気の使い方による削減について焦点を当てて説明します。

図3は家庭で使用する家電製品別の消費電力量の比較です。

図3 家電製品の消費電力量の比較
*出典3:みんなで節電アクション!HP「家庭でできる節電アクション」https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/setsuden/home/

 

家庭でのエネルギー消費が多い家電は、冷蔵庫、照明器具、テレビ、エアコンと続きます。これらの家電の使用を抑えることで、効率的な電気の節約につながります。家電のこまめなスイッチオフ、使用していない家電はコンセントを抜くことで待機電力を削減できます。

そのほか、炊飯器やポットの保温機能の使用を控えることや、洗濯のまとめ洗い、エアコンの使用を抑えるために一部屋に集まっての家族団欒など生活スタイルの見直しも電気の節約につながります。

表1 家庭あたりの1ヶ月の節電効果
*出典4:山梨市「節電を機会に地球温暖化について考えよう」https://www.pref.yamanashi.jp/eikanken/documents/059_3.pdf

 

エネルギー有効利用の観点では、家電の使用方法を調整してピークカットやピークシフトすることも効果的です。ピークシフトとは電気を使用する時間帯をピーク時からずらすこと、ピークカットはピーク時の電気の使用を抑えることです。

時間帯による電力消費のばらつきを抑えることで電気の安定供給を支え、化石燃料を使用する火力発電への依存を減らすこともできます。

 

図4 1日の電気の使われ方
*出典2:一般社団法人地球温暖化防止全国ネット「家庭で取り組む節電マニュアル」(2012)p6
https://www.jccca.org/about/works/img/setuden_2012summermanual.pdf

 

地域によってピークの形は異なりますが、冬季も夏季も夕方から夜にかけての電気の使用を抑えることが、節電対策に効果的です。

このように家庭単位でできることを一人一人取り組むことが、地球温暖化対策につながります。

 

エネルギー消費に関わる国際比較

地球温暖化は世界規模の問題であり、温室効果ガス削減のための省エネルギー対策は世界各国でも重要視されています。

図5は世帯当たりの用途別エネルギー消費の国際比較です。日本の世帯当たりのエネルギー消費は他の先進国と比較して一番少なくなっています。

これは、海外は建物の一箇所に暖房または冷房装置を設置して全体運転をしているのに対し、日本では部屋ごとにエアコンを設置する部分運転であることが要因です。

図5 家庭部門:世帯あたりの用途別エネルギー消費
*出典5:経済産業省「エネルギー原単位の国際比較、民生部門の省エネルギー課題並びに海外事例について」(2014)p9
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/sho_energy/pdf/003_03_00.pdf

 

一方で、右側のグラフを見ると分かる通り暖房を除いた他の家電のエネルギー消費に関しては日本は米国に次ぐ消費量です。日本では給湯器や照明などの家電製品の使用が多く、これらの使用を抑えることが重要です。

次の図は人口一人当たりのCO2排出量です。

図6 人口1人当たりCO2排出量
*出典6:一般社団法人 海外電力調査会「グラフとデータ」(2015)https://www.jepic.or.jp/data/g08.html

 

一人当たりのCO2排出量が最も多いのは、エネルギー消費も多く、石炭やガスなどの化石燃料を使用した火力発電の割合が多い米国です。

図7は発電量1kWh当たりのCO2排出量で、このグラフは発電時に使用する化石燃料消費の割合がわかります。

図7 人口1人当たりCO2排出量
*出典6:一般社団法人 海外電力調査会「グラフとデータ」(2015)
https://www.jepic.or.jp/data/g08.html

 

先ほどの一人当たりのCO2排出量では一番少ないインドですが、発電時にはCO2を多く排出しています。一方のカナダは、人口に対してエネルギー消費は多いのですが、電源構成において水力発電の割合が多いため、発電量1kWh当たりのCO2排出量はスウェーデン、フランスに次いで3番目に少ないという結果になっています。

途上国などの発電量1kWh当たりの排出量の多い国において、今後個人のエネルギー消費が増大するとCO2排出量がより増えてしまいます。

CO2排出量の削減には、個人のエネルギー消費を抑えることと、CO2排出量が少ない発電方法への転換、2つのアプローチがあることがわかります。

 

海外での電気の節約活動

次に世界で実施されている省エネ活動について紹介します。

まず紹介するのは世界でのエネルギー消費量が最も多い米国における省エネルギー対策です。米国の各州では、電気事業者に対して省エネの義務化を行っており、需要家への省エネプログラムの提供を行っています。省エネプログラムとは、専門家による家庭の省エネ診断、省エネ機器の買い替えのための資金援助などです。

例えばメリーランド州の電力・ガス供給会社BG&E社では、家庭でのピークカットの達成に対して報酬を支払うというSmart Energy Rewardsというサービスを提供しています。さらに、他の需要家の節電状況や省エネ手法の情報提供を行い、より電気を節約できるようにサポートしています。

図8 米国における省エネプログラムの具体例
*出典7:経済産業省「(参考)海外の省エネの進捗状況等について」p14
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/sho_energy/pdf/report_01_s01_00.pdf

 

次に紹介するのは、イギリスで導入されているエネルギー効率認証(EPC)です。

これは2006年から開始された省エネ性能評価制度で、すべての不動産取引に際してEPCの表示を義務付けています。EPCでは、第三者による住宅のエネルギー効率、CO2排出量の評価、CO2排出削減ポテンシャルの情報提供をしています。

 

図9 エネルギー効率認証(EPC)のサンプル
*出典5:経済産業省「エネルギー原単位の国際比較、民生部門の省エネルギー課題並びに海外事例について」(2014)p18
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/sho_energy/pdf/003_03_00.pdf

 

省エネ性能が高い住宅であれば、冷暖房などの使用を抑えることが可能です。消費者はEPCのスコアが高い住宅を選択することで、電気の節約に貢献できます。このような省エネ性能評価制度は今後日本でも拡大し、さらなる省エネ推進が期待されています。

 

日本の電力消費量と節約意識の変化

ここでは、日本の電力消費量の推移について詳しく見ていきましょう。図10のグラフは、1970年から2015年までの一世帯当たりの電力消費量の推移です。

図10 一世帯あたりの電力消費量の推移
*出典8:日本原子力文化財団HP「一世帯あたりの電力消費量の推移」(2017)https://www.ene100.jp/zumen/1-2-13

 

エアコンなどの家電製品の普及により家庭の電力消費量は増加傾向でしたが、2011年の東日本大震災をきっかけとして減少傾向にあります。

東日本大震災以降、日本では電力の供給力不足が続いたことから事業者と家庭の両方でより積極的に省エネ対策がすすめられました。

2011年以降、企業や公共施設では使用電力の見える化や空調のピークシフト運転などを実施しています。また、日本のオフィスで採用されている照度基準は欧米諸国と比較して明るすぎることが判明し、新たな見直しが実施されました。

表2 業務ビルの照度基準の比較(一般的な照度基準)
*出典9:東京都環境局 「東京における節電・省エネ対策について」(2012)p10
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/npu/policy09/pdf/20120426/shiryo3.pdf

 

家庭向けの節電に関しては、家庭の省エネ診断員制度を運用し東京都の約33万件の家庭に節電アドバイザーによる省エネのアドバイスが行われました。

このような節電・省エネ対策によって、これまで増加の一途を辿っていた電力消費量の減少を実現することができました。供給力不足という背景ではありましたが、電気を節約するライフスタイルが身につくことは結果的に持続的なCO2排出抑制にもつながります。

現在、全国各地でも地球温暖化対策を目的とした省エネ活動をサポートする取り組みが行われています。

香川県では、地球温暖化対策の一貫として「かがわ省エネ節電所」サイトを開設し、家庭や事業所の省エネ節電行動の効果を見える化しています。このサイトでは、実際に取り組んでいる省エネ行動から電力量、CO2排出量、電気代の削減量を算出でき、削減量をエリアごとに集計しています。

個人の行動では効果が少ないように感じても、協力して取り組むことで大きな成果が得られることを実感できるという取り組みです。

図11 2019年度省エネ節電所の参加状況
*出典10:香川県環境森林部環境政策課 地球温暖化対策グループ「かがわ省エネ節電所HP」https://www.kagawa-setsuden.jp/shouene/

 

また、東京都では環境家計簿アプリというスマートフォン向け無料アプリを配信しています。このアプリを使用すれば、家庭で消費する電気・ガス・水道などのエネルギーのCO2排出量を算出できます。

図12 環境家計簿アプリの画面例
*出典11:東京都地球温暖化防止活動推進センターHP「環境家計簿アプリ(無料)のご案内」https://www.tokyo-co2down.jp/action/account/application/index.html

 

エネルギー使用量やCO2排出量が月別にデータ化されるので、私たち一人一人の生活がどのくらい環境に負荷を与えているのかを知ることができるアプリです。

電気を節約する行動の効果を見える化することで、環境問題への意識を高めることにつながります。

 

まとめ

最後に、今後の省エネ目標について見ていきましょう。

日本は徹底した省エネを実施することで、2030年度までに13%程度のエネルギー需要の削減を目指しています。産業、運輸、企業、家庭の各方面でさまざまな省エネ対策を実施していき、節電意識の持続を目的とした国民運動を推進していきます。

図13 エネルギー需要目標
*出典12:経済産業省 「長期需給エネルギー見通し」(2015)p65
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/mitoshi/011/pdf/011_07.pdf

 

2011年の東日本大震災以降、節電意識の変化があり、具体的な節約行動の啓発活動も行われてきました。電気の節約と具体的なCO2排出量を結びつける取り組みでは、自身の生活と環境とのつながりを意識することができます。

電気を節約するということは、電気代の節約だけでなく地球温暖化問題解決への貢献につながる行動です。電気も一つの資源であるという意識をもち、まずはできることから行動することが大切です。

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参照・引用を見る

1.全国地球温暖化防止活動推進センターHP「家庭部門における二酸化炭素(CO2)排出の動向」
https://www.jccca.org/home_section/homesection01.html#home2

2.一般社団法人地球温暖化防止全国ネット「家庭で取り組む節電マニュアル」(2012)
https://www.jccca.org/about/works/img/setuden_2012summermanual.pdf

3. みんなで節電アクション!HP「家庭でできる節電アクション」
https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/setsuden/home/

4. 山梨市「節電を機会に地球温暖化について考えよう」
https://www.pref.yamanashi.jp/eikanken/documents/059_3.pdf

5. 経済産業省「エネルギー原単位の国際比較、民生部門の省エネルギー課題並びに海        外事例について」(2014)
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/sho_energy/pdf/003_03_00.pdf

6.  一般社団法人 海外電力調査会「グラフとデータ」(2015)
https://www.jepic.or.jp/data/g08.html

7.  経済産業省「(参考)海外の省エネの進捗状況等について」p14
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/sho_energy/pdf/report_01_s01_00.pdf

8. 日本原子力文化財団HP「一世帯あたりの電力消費量の推移」(2017)
https://www.ene100.jp/zumen/1-2-13

9.  東京都環境局 「東京における節電・省エネ対策について」(2012)p10
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/npu/policy09/pdf/20120426/shiryo3.pdf

10.香川県環境森林部環境政策課 地球温暖化対策グループ「かがわ省エネ節電所HP」
https://www.kagawa-setsuden.jp/shouene/

11. 東京都地球温暖化防止活動推進センターHP「環境家計簿アプリ(無料)のご案内」
https://www.tokyo-co2down.jp/action/account/application/index.html

12.  経済産業省 「長期需給エネルギー見通し」(2015)p65
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/mitoshi/011/pdf/011_07.pdf

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