ノーベル平和賞受賞、マララ・ユスフザイさんの訴えた女子教育の重要性

ノーベル平和賞受賞、マララ・ユスフザイさんの訴えた女子教育の重要性

世界では女子というだけで教育を受けられない子どもたちがたくさんいることを知っていますか。
2014年に史上最年少でノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんは、現在も女子が教育を受ける権利を訴え続けています。
この記事では世界の女子教育の現状に目を向け、なぜ女子教育が必要なのかをご紹介します。

女子教育の大切さ 〜マララ・ユスフザイさんが訴えたこと〜
マララ・ユスフザイさんの訴え

女性と子どもの教育の権利を訴える活動家のマララ・ユスフザイさんは2014年に史上最年少17歳でノーベル平和賞を受賞しました。

パキスタン出身のマララさんは、女子教育を禁止するタリバンの武装勢力の破壊活動を告発し、女子が教育を受ける権利を訴えたことで、11歳の時にタリバンのメンバーに狙われ銃撃を受けました。
事件後マララさんは「マララ基金」を立ち上げ、女子が安心して学べる環境の実現に向けて、世界中で支援活動をしています。

2013年の国連本部でのスピーチでは教育に平和が必要であること、女性や子どもの教育の権利がテロや暴力によって奪われることは許されないことを世界中に強く訴えました。

以下はマララさんが行ったスピーチの一部抜粋です。

「私たちは世界の指導者たちに、どのような和平協定も女性と子どもの権利を守るものとせねばならないと訴えます。

女性の権利に反する取決めを受け入れることはできないからです。

私たちはすべての政府に対し、全世界であらゆる子どもに無償の義務教育を与えるよう呼びかけます。

私たちはすべての政府に対し、テロや暴力と闘い、残虐行為や危害から子どもたちを守るよう呼びかけます。

私たちは先進国に対し、開発途上地域の女児の教育機会拡大を支援するよう呼びかけます。」

引用:国際連合広報センター「マララ・ユスフザイさん国連本部でのスピーチ」(2013)
https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/4790/

マララさんのスピーチやノーベル平和賞の受賞は、世界の指導者たちへ女子教育について問題提起しただけでなく、発展途上国の女子教育の現状についてわたしたちに考えるきっかけを与えてくれました。

女子教育がもたらすものとは

女子教育の重要性はマララさんの活動によって、発展途上国と先進国共通の課題として認識されました。

発展途上国において女子教育を促進することは、社会全体の生活改善や経済発展につながります。

図1は女子教育の改善と子どもの死亡率の推移を表したものです。


図1 子どもの死亡率の推移
*出典2:ユニセフ基礎講座「なぜ女子教育を推進するのか」
https://www.unicef.or.jp/kodomo/teacher/pdf/fo/fo_54.pdf

女子の教育機会が改善されることは、子どもの死亡率の改善につながります。
教育を受けることは女子の早婚による社会からの孤立を防ぐだけでなく、保健・衛生・栄養などを学び妊娠出産や子育てについて正しい知識を得ることにつながるためです。

次の表は日本と発展途上国の女子の就学率などの現状比較です。

表1 数字で見る女の子の現状
*出典3:世界の子供に教育をキャンペーン2011「数字で見る女の子の現状」(2011)
http://jnne.org/gce2011/camp2011.html

データを見てもわかる通り、初等教育・中等教育の就学率が高い方が、5歳未満児死亡率と妊産婦死亡率が下がっています。
なお、初等教育は日本の小学校、中等教育とは初等教育と高等教育(大学・大学院)の間に位置する中学校、高等学校にあたります。

図2は女性の一日あたりの無報酬労働時間の世界比較です。


図2 世界の女性の無報酬労働時間
*出典4:国際通貨基金「女性の労働を過小評価」(2019)
https://www.imf.org/ja/News/Articles/2019/10/15/blog-the-economic-cost-of-devaluing-women-work

家事や育児などの無報酬労働にかける時間は、発展途上国、先進国にかからわず女性は男性と比較して多いのは周知の事実です。

しかし発展途上国などでは女子が教育の機会が奪われることで、経済活動への参加が阻まれ無報酬労働時間が過度に多くなっています。

教育機会以外にも水道や電力などの生活インフラの不足などの原因はありますが、女子教育を保証することは女性を無報酬労働から解放し、労働市場への参加を後押しするでしょう。

以下の図は、アジア各国における1人当たりGDP(国内総生産)と中等教育就学率です。


図3 各国一人当たりGDPと中等教育就学率
*出典5:大和総研「ASEANにおける教育の充実と経済成長」(2014)p7
https://www.dir.co.jp/report/research/economics/emg/20140611_008636.pdf

グラフのように中等教育就学率と1人当たりのGDPは比例します。

次にご紹介するのは、女子の中等教育の確保から得られる潜在的利益に関する表です。


表2 女子の中等教育の確保から得られる潜在的利益
*出典6:世界銀行報告書「「失われた機会:女子の教育機会の欠如が招く巨額の損失」」(2018)p54
https://openknowledge.worldbank.org/bitstream/handle/10986/29956/HighCostOfNotEducatingGirls.pdf?sequence=6&isAllowed=y

表にあるように世界銀行は、女子の中等教育の修了が妨げられることによる経済損失(Potential economic cost)は15〜30兆ドルに上ると指摘しています。
また女子教育は、将来母親となった時の子どもの健康状態や教育観にも良い影響を与えます。
女子が教育を受けられないことの次世代への影響を考慮すると、経済損失はさらに大きくなります。

教育機会を得て知識や技術を習得した女性たちが経済市場に加わることは、国の経済成長に大きく貢献するでしょう。

世界の女子教育の現状と問題点
女子の就学状況と識字率の国際比較

女子教育の重要性をお伝えしてきましたが、ここでは世界の女子教育の現状をみていきましょう。
図4のグラフは世界全体の小学校へ通っていない子どもたちの数の推移です。


図4 小学校へ通っていない子どもたちの数
*出典2:ユニセフ基礎講座「なぜ女子教育を推進するのか」
https://www.unicef.or.jp/kodomo/teacher/pdf/fo/fo_54.pdf

男女格差はゆるやかに解消されていますが、依然として男子と比較しても女子の方が就学率が低いのです。

さらに地域による格差も大きく、一旦入学できたとしても貧困や家事労働などの理由から多くの女子たちが中退や退学をしています。

図5 都市部と農村部における小学校の出席状況
*出典7:ユニセフT.NET通信 「女子教育 厳しい現状」
https://www.unicef.or.jp/kodomo/teacher/pdf/sp/sp_54.pdf

図5は都市部と農村部における小学校の出席状況です。
グラフによると農村部の女子が最も小学校への出席率が低いことがわかります。

特に西アフリカのブルキナファソでは農村部と都市部で学校の出席率に大きな隔たりがあります。
性差だけでなく地域格差も加わり、女子が教育を受ける機会は公平ではありません。

これは識字率にも影響しており、サハラ以南のアフリカ諸国では若い女子(15歳-24歳)の識字率が50%に満たない国が7ヶ国もあります。


表3 若い女子の識字率が低い国 上位10ヶ国
*出典2:ユニセフ基礎講座「なぜ女子教育を推進するのか」
https://www.unicef.or.jp/kodomo/teacher/pdf/fo/fo_54.pdf

次に中等教育における女子の就学状況を見ていきましょう。

図6 中等教育における男女平等
*出典:公益社団法人プラン・インターナショナル「女の子と教育」p19
https://www.plan-international.jp/about/pdf/data_pdf_14_02.pdf

前項でも触れたように、女子の中等教育は将来の職業選択や経済参加において重要な役割を担うものです。
しかし現状では中等教育の進学機会が男女平等である国は世界の国々の半数にも満たないのです。

女子教育が受けられない原因とは

女子教育が受けられない原因は貧困や水汲みなどの家事労働の負担、児童労働などさまざまな理由があります。

特に女子は家事をするべきで教育は最低限で良い、金銭的余裕がない場合は男子を優先するといった考えや文化が根強いサハラ以南のアフリカでは、女子が教育を受ける権利自体に理解が得られず女子教育の促進が難しいとされています。

女子教育が受けられない原因の一つとして特に問題視されているのは、早すぎる結婚と妊娠です。
途上国では15歳未満での早すぎる結婚を強いられている女子が多くいます。

図7 早すぎる結婚を強いられる女の子の割合
*出典8:公益社団法人プラン・インターナショナル「女の子と教育」
https://www.plan-international.jp/about/pdf/data_pdf_14_02.pdf

女子の早すぎる結婚の背景には法律の機能不全や古くからの慣習など複数の要因があります。
早すぎる結婚は女子から教育機会を奪うだけでなく、学校という社会から孤立させます。
それにより無報酬の労働負担や、保健衛生の知識を持たず妊娠出産することよる健康被害などの多数の問題が指摘されています。

日本の女子教育の歴史

現代の日本では進学機会という点においては、男女格差はほぼなくなっています。
ここでは日本での女子教育の変遷を明治時代からさかのぼって見ていきましょう。

明治時代の日本では就学は男子が優先され、女子は子ども時代から炊事洗濯などの家事労働を担うことが一般的でした。
当時の学校教育には裁縫や家政などの女子の役割とされていた分野はなく、女子に教育は不要という考えが根強かったのです。
しかし、1890年代末の富国強兵政策により日本全体の基礎学力の底上げを目指したことで、女子教育にも変化が訪れました。

図8は1894年から1910年にかけての小学校就学率の推移です。
1894年には50%未満だった女子の就学率は、1910年には90%以上になり飛躍的に伸びています。

図8 小学校就学率の推移と男女格差の縮小(1894年-1910年)
出典9:国立教育政策研究所「教育における男女間格差の解消――日本の経験」(2014)p140
https://www.nier.go.jp/kankou_kiyou/143-300.pdf

日本では明治時代以降も男子は労働、女子は家事という性別的役割分業は依然として続きました。
しかし女子教育においては「良妻賢母」を育成するという日本特有の理念が、結果として女子の中等教育を全国的に定着させることとなります。
そして実科高等女学校という家事や裁縫の授業を行う学校が都市部や農村部で広まりました。

さらに日露戦争後に産業が発展することで、軽工業の分野での女性の働き手の需要が増えます。
それにより商業高校などの実業学校においても女子の在籍者が徐々に増えていきます。


図9 中等教育期間の男女別在学者数の推移
出典10:文部科学省HP「教育の普及と社会.経済の発展」https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpad196201/hpad196201_2_012.html

戦後の日本では中学校までの義務教育化と男女共学の原則が確立され、高等学校への進学率の男女格差も縮まります。

進学が比較的容易で低コストな短期大学の普及も手伝い、高等教育に進む女子の数は増加しました。
そして1995年以降は、女子でも4年制大学への進学志向がより強くなっています。

図10 女子学生数の変化(四年生大学と短期大学)
出典9:国立教育政策研究所「教育における男女間格差の解消――日本の経験」(2014)p147
https://www.nier.go.jp/kankou_kiyou/143-300.pdf

このように進学機会においては男女格差はほぼなくなっている日本ですが、高等教育における専攻分野別の進学人数は男女間の隔たりがあります。

特に、理工系の分野おける女子の割合はOECD(経済協力開発機構)加盟国の中でも最下位であり最も低い数字です。

図11 OECD諸国の高等教育入学者数に占める女性の割合
出典11:JRIレビュー「女性の活躍推進に向けた高等教育の課題」(2018)p123
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/jrireview/pdf/10385.pdf

女子の理工系進学者が少ない理由として男女の性別的役割分業から脱却できていないこと、理系の授業料が文系と比較して高いことなどが考えられます。

「女子は理系に向かない」という固定概念を与えない初等教育や、多様なキャリア形成を実現する情報提供をすることで、進学アクセスだけでなく専攻分野や職業選択における男女格差の解消が期待できます。

女子教育普及のための解決策

女子教育の現状や問題点を紹介してきましたが、最後に教育における男女格差解消のために必要なアクションについてみていきましょう。

女子教育が受けられない要因には、先にふれたように貧困や設備不足、地域に根付く慣習などの複合的な原因があります。
教育において男子を優先するべきという考えがある地域や女子を教育から遠ざける「早すぎる結婚」が問題となっている地域では、意識を変化させるための啓発活動や法整備が重要です。
日本の女子教育普及の歴史でもみてきたように、国の政策や法整備は女子教育の発展を大きく手助けするでしょう。

さらに女子が中等教育修了まで安心して学校に通える環境を整えることも重要です。
そのためには登下校の道のりにある危険の排除や男女別トイレを設置するといったインフラ面の課題を解消しなければなりません。

図12はユニセフが行なっているアフリカでの教育支援です。


図12 ユニセフが目指すやさしい学校
出典12:ユニセフHP アフリカに教育支援が必要な理由
https://www.unicef.or.jp/sfa/report/reason.html

このような現地での支援は、日本からも寄付でサポートすることが可能です。
まずは支援団体の活動内容や寄付がどのように役立てられるのかを知ることが、女子教育普及への支援の大切な第一歩です。

まとめ

国連では、2015年までにすべての子どもが男女の区別なく初等教育を終了できることをターゲットとしたMDGs(国連ミレニアム開発目標)を掲げ、児童の就学率は著しく向上しました。


図13 1990年/2000年/2015年のサハラ以南アフリカとオセアニアにおける初等教育の就学率
出典13:国際連合広報センター「国連ミレニアム開発目標報告」(2015)
https://www.unic.or.jp/files/e530aa2b8e54dca3f48fd84004cf8297.pdf

MDGsの次の目標となるSDGs(持続可能な開発目標)では、2030年までに質の高い教育を全ての人に提供することと、ジェンダー平等を実現し女性及び女子に対する差別を撤廃することを目指しています。

女子教育の普及には学校などのインフラ面での整備も重要ですが、あらゆる面での男女の格差を解消する必要があります。
男女格差の解消は、進学アクセスにおいては平等である日本でも同様の課題です。

女子教育の普及は本人の職業選択や結婚観の幅を広げるだけでなく、その子どもである次の世代の教育にも良い影響を与えるので、次世代への好循環や経済発展など社会全体に恩恵をもたらします。

世界そして日本の女子教育の現状や課題について目を向け女子教育の大切さを理解し、私たちができる支援は何かを考えることが大切です。

参照・引用を見る

1. 国際連合広報センター「マララ・ユスフザイさん国連本部でのスピーチ」(2013)
https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/4790/
2. ユニセフ基礎講座「なぜ女子教育を推進するのか」
https://www.unicef.or.jp/kodomo/teacher/pdf/fo/fo_54.pdf
3. 世界の子供に教育をキャンペーン2011「数字で見る女の子の現状」(2011)
http://jnne.org/gce2011/camp2011.html
4. 国際通貨基金「女性の労働を過小評価」(2019)
https://www.imf.org/ja/News/Articles/2019/10/15/blog-the-economic-cost-of-devaluing-women-work
5. 大和総研「ASEANにおける教育の充実と経済成長」(2014)p7
https://www.dir.co.jp/report/research/economics/emg/20140611_008636.pdf
6. 世界銀行報告書「「失われた機会:女子の教育機会の欠如が招く巨額の損失」」(2018)p54
https://openknowledge.worldbank.org/bitstream/handle/10986/29956/HighCostOfNotEducatingGirls.pdf?sequence=6&isAllowed=y
7. ユニセフT.NET通信 「女子教育 厳しい現状」
https://www.unicef.or.jp/kodomo/teacher/pdf/sp/sp_54.pdf
8. 公益社団法人プラン・インターナショナル「女の子と教育」p19
https://www.plan-international.jp/about/pdf/data_pdf_14_02.pdf
9. 国立教育政策研究所「教育における男女間格差の解消――日本の経験」(2014)p140,p147
https://www.nier.go.jp/kankou_kiyou/143-300.pdf
10. 文部科学省HP「教育の普及と社会.経済の発展」https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpad196201/hpad196201_2_012.html
11. JRIレビュー「女性の活躍推進に向けた高等教育の課題」(2018)p123
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/jrireview/pdf/10385.pdf
12. ユニセフHP アフリカに教育支援が必要な理由https://www.unicef.or.jp/sfa/report/reason.html
13. 国際連合広報センター「国連ミレニアム開発目標報告」(2015)
https://www.unic.or.jp/files/e530aa2b8e54dca3f48fd84004cf8297.pdf

Photo by Lisda Kania Yuliani on Unsplash