「ジェンダー・ギャップ指数」はどのように算出されている?指数の高い国は何が違うのか

「ジェンダー・ギャップ指数」はどのように算出されている?指数の高い国は何が違うのか

「ジェンダー・ギャップ指数」という言葉をニュースで見かけたことはないでしょうか。
世界経済フォーラムが毎年、153か国の男女格差についての指数を算出し公表しているものです。

ジェンダー平等の実現はSDGsのひとつでもあります。ジェンダー・ギャップ指数はどのように算出されているのか、また、指数の高い=男女完全平等に近い国は他の国とどのように違うのでしょうか。様々なデータを見ていきましょう。

ジェンダー・ギャップ指数と算出方法

世界経済フォーラムが発表した2020年のジェンダー・ギャップ指数(GGI)は以下のような順位でした(図1)。

図1 2020年ジェンダー・ギャップ指数上位国(出所:「共同参画」内閣府)
http://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2019/202003/202003_07.html

ジェンダー・ギャップ指数は0から1で表され、0が完全不平等、1が完全平等です。「経済」「教育」「健康」「政治」の4分野、下の14項目での男女格差データから算出されています。

<経済参加>

・労働参加率

・同一労働での賃金格差

・収入格差

・管理職の人数

・専門家や技術職の男女比率

<教育>

・識字率

・初等教育(小学校)進学率

・中等教育(中学・高校)進学率

・高等教育(大学・大学院)進学率

<健康>

・出生時の男女比率

・健康寿命

<政治参加>

・国会議員の男女比

・閣僚の男女比

・過去50年の首相の男女比

分野別で見ると、日本の場合はこのようになっています(図2)。

図2 ジェンダーギャップ指数各分野の比較(出所:「共同参画」内閣府)
http://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2019/202003/202003_07.html

日本の場合は「教育」や「健康」の項目では男女平等のスコアは高いものの、「経済参加」「政治参加」での男女格差が大きく、特に「政治」に関しては完全不平等(=スコア0)に近い状態です。

ジェンダー平等に近い国の特徴

ジェンダー・ギャップ指数ランキングでは、ジェンダー格差の低さで11年連続1位を獲得しているのがアイスランドです。
どのような取組でジェンダーギャップが解消されているのか、ジェンダー格差の低い国について見てみましょう。

ジェンダークオータ制と男性の育休取得率

アイスランドのジェンダー・ギャップ指数を項目別に見ると、図3のようになっています。


図3 アイスランドのジェンダーギャップ指数(出所:Global Gender Gap Report 2020)
http://www3.weforum.org/docs/WEF_GGGR_2020.pdf p183

青の線で描かれているのは世界の平均値です。
経済参加・政治参加の面において、世界平均を大きく上回っていることがわかります。
実際、個別項目を見ても、経済や政治への女性の参加比率の高さがうかがえます(図4)。

アイスランド 日本
企業役員・管理職  41.5% 14.8%
専門職・技術職 55.5% 40.5%
国会議員 38.1% 10.1%
閣僚 40.0% 5.3%
過去50年の首相在任期間 21.9年 0年

図4 経済・政治項目での女性の比率(「Global Gender Gap Report 2020」より作成)
http://www3.weforum.org/docs/WEF_GGGR_2020.pdf p183、201

アイスランドではジェンダー格差解消に向けて様々な政策が実施されています。

そのうちのひとつは「ジェンダークオータ制」というもので、国の男女人口比に基づいて企業役員や議員などの一定割合を女性に振り分けるという制度です。
アイスランドの場合は、4名以上で構成される上場企業の取締役会や公共の委員会は、メンバーの40%以上を女性とすることが定められています。

そして、アイスランドは男性の育児休暇取得率の高さでも名高い国です。
父親の育児休暇取得率は74%にのぼっています*1。
男性が育児休暇を取り、その間女性が会社で働くということも珍しくありません。
なお、日本での男性の育児休暇取得率は、平成30年度で6.16%でした*2。

また、保育施設の充実も女性の社会での活躍を後押ししています。
アイスランドでは2歳児の95%が、日本での保育園や幼稚園にあたるプレスクールに通っています*3。

ジェンダー平等までの「二度のうねり」

アイスランドで男女平等を大きく進展させるきっかけになったのは、女性による大規模ストライキが行われた1975年のことです。
アイスランドは、それまでは男女格差の大きい国でした。
女性は専業主婦か、家事の傍でパートタイム労働をするのが一般的で、所得格差も大きなものでした。

そうした中、政党や女性団体の呼びかけで、女性による大規模ストライキが実行されました。
成人女性の9割が家事も仕事も実際に放棄したことで、女性の労働力がなければ社会が回らないという危機感は一気に広がり、同時に国民の半数を占める女性票を取り込むために政治も動きました。

結果、翌1976年にはジェンダー平等法が採択されました。
雇用主によるジェンダー差別や、求人や広告での女性差別を禁止するものです。

さらにストから5年後の1980年には、初の女性大統領が誕生するまでに至っています。

そしてアイスランドのもうひとつの転換期は、リーマンショックだと言われています。

通貨暴落で財政が破綻していく中、金融界に女性がいなかったことが取り沙汰され、その後2009年には初の女性首相が誕生しています。

なお、アイスランド初の女性首相となったヨハナ・シグザルドッティル氏はLGBTQとして世界初の首相でもあり、2010年には長年のパートナーである女性作家と正式に結婚しました*4。

女性活躍推進の経済価値

実は、女性の社会進出や活躍の経済的価値を数値化した調査結果がいくつかあります。

女性取締役のいる企業は株価指数などで好成績

ゴールドマン・サックスは女性の就業率について、「女性就業率が男性就業率と同じレベルまで上昇すればGDPは10%押し上げられる」と推計しています*5。

また、世界的コンサルティング会社であるアメリカのマッキンゼー・アンド・カンパニーは、役員に女性がいる企業のパフォーマンスは高い傾向にあるとしています(図5)。

図5 女性役員と企業パフォーマンス(出所:「女性活躍の加速に向けて」内閣府資料)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2020/0310/shiryo_08.pdf p1

さらに、クレディ・スイスの調査によると、アイスランドで女性首相を誕生させるきっかけとなった2008年のリーマン・ショック時に、全世界の企業のなかで女性取締役を1人以上有する企業はそうでない企業に比べて良い業績を残していることがわかっています。
その後6年間の回復度合いも、女性取締役のいる企業の方が早い回復を見せています(図6)。


図6 リーマンショック前後の企業株式パフォーマンス(出所:「成長戦略としての女性活躍の推進」経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen/practice/pdf/2014november.pdf p14

図6の上のグラフは青線が女性取締役のいない企業、赤線が女性取締役のいる企業の「株価パフォーマンス(=その企業に投資した場合の収益の高さ)」を示したものです。

リーマンショックの落ち込み後、女性取締役のいる企業の方が、投資家により良い業績をもたらしています。

また、下のグラフは、日本を含む主要国の株価指数のひとつである「MSCIワールド指数」について見たものです。
青線は女性取締役がいる企業の株価指数をそうでない企業のものと比較した数字の推移です。

女性取締役がいる企業は2006年から2011年までの間に、女性取締役のいない企業に比べて株価指数を26%上昇させていることがわかります。
2008年のリーマンショックもものともせず、成長路線を維持していたのです。

また、他の経営効果についても調査結果が報告されています。

経済産業省が、企業内での女性の働き方とその企業の利益率について調べた結果、男女の勤続年数格差が小さい企業、女性管理職の比率が平均より高い企業、女性の定年前再雇用制度がある企業の方が、そうでない企業に比べ利益率が高い傾向にありました*6。

ジェンダーギャップと幸福度指数

また、ジェンダーギャップ指数と幸福指数にも相関がありそうです。
下の図7は、2020年のジェンダーギャップ指数ランキングと、国連が2020年に公表している幸福度ランキングを並べてみたものです。

ランク ジェンダーギャップ指数 世界幸福度
1位 アイスランド フィンランド
2位 ノルウェー デンマーク
3位 フィンランド スイス
4位 スウェーデン アイスランド
5位 ニカラグア ノルウェー
6位 ニュージーランド オランダ
7位 アイルランド スウェーデン
8位 スペイン ニュージーランド
9位 ルワンダ オーストリア
10位

ドイツ

ルクセンブルク

図7 ジェンダーギャップ指数と幸福度ランキング
(Global Gender Gap Report 2020 と World Happiness Report 2020を元に作成)
http://www3.weforum.org/docs/WEF_GGGR_2020.pdf p9、
https://happiness-report.s3.amazonaws.com/2020/WHR20.pdf

北欧の国々そしてニュージーランドが、ジェンダーギャップ指数ランキングでも幸福度ランキングでも上位を占めていることがわかります。

また、これは偶然かもしれませんが、2020年9月現在、アイスランド、ノルウェー、フィンランド、ニュージーランドの首相は女性が務めています。

特に2019年にフィンランドの首相に就任したサンナ・マリン氏は就任時34歳で、世界最年少の女性首相です。

「人権」問題で終わらせず、国家成長のカギに

男女差別や男女格差を解消するための呼びかけや運動は、日本でも時折見られます。
近年では、女性が職場でハイヒールやパンプスの着用を義務付けられることに抗議する「KuToo運動」がありました。

性別の違いによって服装規定を変えられるのは差別的だという主張です。

このように、ジェンダーの不平等解消とは「女性の地位向上」という、人権問題としてフューチャリングされることが多くありました。

しかし実際、市場経済で女性役員の存在感が明確になっていること、世界でも女性が国のトップとして活躍する姿が当たり前に見られるようになりつつある現代では、ジェンダー格差の解消は「国家の人材開発」であるとも言えるでしょう。

既存の枠に囚われず、男女の「機会均等」を図ることで、これまでの男性中心の枠組みには入ってこられなかった優秀な女性リーダーが現れたとしたら、それは企業や国として、一線で活躍してもらわない手はありません。

国の経済や政治の世界で男女を問わず真に優秀な人材を重役にも配置しているかどうかが、今後「伸びる国」と「そうでない国」を大きく分けることにもなりそうです。

 

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▶︎今日からできる4つのこと。「Take Action」まとめ

参照・引用を見る

図1、2  「『共同参画』2020年3・4月号」内閣府男女共同参画室
http://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2019/202003/202003_07.html

図3、4 「Global Gender Gap Report 2020」世界経済フォーラム
http://www3.weforum.org/docs/WEF_GGGR_2020.pdf p183、p201

図5  「女性活躍の加速に向けて」内閣府資料
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2020/0310/shiryo_08.pdf p1

図6 「成長戦略としての女性活躍の推進」経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen/practice/pdf/2014november.pdf  p14

図7 「Global Gender Gap Report 2020」
http://www3.weforum.org/docs/WEF_GGGR_2020.pdf p9、

「World Happiness Report 2020」

https://happiness-report.s3.amazonaws.com/2020/WHR20.pdf

 

 

 

 

*1、3 「共同参画」内閣府

http://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2019/202001/pdf/202001.pdf p4

 

*2 「男性の育児休業の取得状況と取得促進のための取組について」厚生労働省

https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/meeting/consortium/04/pdf/houkoku-2.pdf p2

 

*4 「アイスランド首相、同性愛パートナーと正式に結婚」AFPBB News 2010年6月29日

https://www.afpbb.com/articles/-/2738197

 

*5 「女性活躍の加速に向けて」内閣府資料

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2020/0310/shiryo_08.pdf p1

 

*6 「成長戦略としての女性化着の推進」経済産業省

https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen/practice/pdf/2014november.pdf p15