アルミニウムはリサイクルの優等生 ごみ減量、CO2削減のために日本と世界の取り組みを比較

アルミニウムは、鉄と並ぶ身近な金属であり、缶やサッシ、乗り物のボディ部分など身の回りの様々な製品に用いられています。
このアルミニウムですが、新しく生産するには非常に多くのエネルギーを必要とするものの、実はリサイクルする際には少ないエネルギーで再生産することが可能です。

この記事では、アルミニウムのリサイクルに関する、世界や日本での取り組みについてご紹介していきます。

リサイクル効率に優れた「アルミニウム」

アルミニウムは、ボーキサイトと呼ばれる鉱物から生産されますが、その過程で大量の電力を消費します。
1kgのアルミニウムの生産には、約15.7kWhの電力量が必要です。
これは、約65個のアルミ缶(350ml)の製造に、一般家庭が消費する2日分相当の電力量が必要であることを意味します。[*1, *2]

一方、アルミニウムは、リサイクル効率が非常に高いとされています。
それは、アルミニウムを再溶解してインゴット(金属塊)を生産するために必要なエネルギーが原料から生産するために必要なエネルギーの約5%で済むからです。
この製造エネルギー比は、鉄鋼の約40%や銅の約16%と比べると非常に小さなものです。
[*3]

また、日常的にリサイクルする飲料容器で比較すると、アルミ缶は、スチール缶やガラス瓶、PETボトルと比べてリサイクルコストが突出して安価です。
なお、ここでいうリサイクルコストとは、容器の回収費や分別費などからリサイクル業者への売却益を差し引いたものです。
具体的には、1個当たりのリサイクルコストは、アルミ缶が0.21円で最も低く、スチール缶が2.26円、PETボトルが5.42円、ガラス瓶が8.36円と報告されています(図1)。
ただしこれは、日本全国の111自治体のリサイクルコストを平均したものです。
アルミ缶については、約半数の自治体でマイナス、つまり利益が発生していることも報告されています。[*4]

図1:飲料容器500ml当たりのリサイクルコスト
*出典:一般社団法人 日本アルミニウム協会「アルミ缶リサイクルの経済性」(2000)
https://www.aluminum.or.jp/box/junkan/keizai.htm

このように、アルミニウムはリサイクル効率が高く、それを反映して低コストでアルミ缶はリサイクルすることができるのです。

環境先進国のアルミ缶リサイクル制度

そのリサイクル効率の高さから、世界各国でアルミ缶のリサイクルが進んでいます。
特に環境先進国であるドイツでは99%、ノルウェーでは96%とリサイクル率が非常に高い水準にあります。[*5]

デポジット制度

これらの国のリサイクル率が高い理由に、デポジット制度を導入していることが挙げられます。
デポジット制度は、飲料を購入する際にデポジットと呼ばれる「預り金」を支払い、容器を店舗や地域の回収場所などに返却すると「預り金」が戻ってくるという仕組みです。

例えばスウェーデンでは、1980年代初頭、飲料容器として何度も再使用するリターナブル容器が用いられていました。
しかし、ビールをはじめとする清涼飲料の市場で、ワンウェイのアルミ缶やスチール缶を利用した商品の発売が相次ぎ、ゴミの散乱が問題となりました。[*6]

そこで、スウェーデンは1982年、生産者に75%以上のアルミ缶のリサイクル率を課すリサイクル法を制定しました。
、それを受けて、スウェーデンの飲料業界は、アルミ缶に関するデポジット制度を導入することでリサイクル率の向上を目指しました。
そして、1987年には、デポジット額を上昇させる制度を実施し、リサイクル率の基準値達成に成功しています(図2)。[*6]

図2:スウェーデンにおけるアルミ缶のリサイクル率の変遷
*出典:国立研究開発法人 国立環境研究所「経済的インセンティブ付与型回収制度の概念の再構築〜デポジット制度の調査と回収ポイント制度の検討から〜」
https://www.nies.go.jp/kanko/kenkyu/pdf/r-205-2010.pdf p35

デポジット制度は、スウェーデンのほか、ドイツやベルギー、デンマークなども導入しており、アルミ缶のリサイクル率向上に貢献しています。

ノルウェーの「可変税」

一方、ノルウェーでは、法的義務に基づいたデポジット制度ではなく、飲料メーカーなどが自主的に実施するデポジットシステムが構築されています。

このシステムは、ノルウェー政府により、飲料容器のリサイクル率の増加に反比例して飲料容器の税額が減額される「可変税」が導入されたことに対応して作られました。
この可変税においては、アルミ缶を含む飲料缶に対して、0~4.81クローネ(約50円)の税金を課し、リサイクル率が95%以上に達すると税額は0クローネとなります(図3)。[*6]

図3:ノルウェーの飲料用缶容器に対する税の仕組み
*出典:経済産業省「第2章 欧州における容器を対象としたデポジットシステムの実態」(2012)
https://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/data/research/pdf/121003-3_jpc_2.pdf p48

これにより、リサイクル率は、可変税の導入年(1999年)の翌年(2000年)に95%以上を達成。2001年以後もリサイクル率は維持され、可変税は0クローネとなっています。[*6]

日本国内のアルミ缶リサイクル〜現状と課題〜

それでは、日本国内では、アルミ缶のリサイクルはどのように進められているのでしょうか。

日本のアルミ缶リサイクルの流れ

日本のアルミ缶リサイクルでは、消費者や自治体などが中心となって回収・分別しています。
まず、アルミ缶は、消費者によって分別排出され、主に以下の3つのルートで回収されます(図4)。

  • 自治体による回収
  • 町内会や学校、ボランティアなどによる集団回収
  • スーパーやコンビニなどによる店舗回収

図4:アルミ缶の再生利用の流れ
*出典:一般社団法人 アルミ缶リサイクル協会「2018年(平成30年)度 アルミ缶再生利用フロー」(2018)
http://www.alumi-can.or.jp/relays/download/62/153/114/763/?file=/files/libs/763/202006231550459454.pdf p1

回収されたアルミ缶は、資源回収業者に売却され、金属リサイクル業者に引き渡されます。
そして、以下の処理を経て、再びアルミ缶となります(図5)。

図5:アルミ缶のリサイクルフロー
*出典:経済産業省「アルミ缶のリサイクル」
https://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/admin_info/committee/n/05/youri05_03.pdf p19

日本のアルミ缶のリサイクル率

このように、日本のアルミ缶リサイクルは、生産者ではなく消費者や自治体などが担っているという特徴があります。
しかし、そのリサイクル率は、97.9%(2019年)と高く、決して欧州諸国に引けを取るものではありません(図6)。

図6:2019年度のアルミ缶のリサイクル率
*出典:一般社団法人 アルミ缶リサイクル協会「リサイクル率」(2019)
http://www.alumi-can.or.jp/publics/index/65/

そして、日本のリサイクル率が高い理由としては、

  • リサイクル効率が高いため、リサイクルコストが低い
  • 消費者による分別排出が普及している
  • 回収拠点が多く、その拠点数は平成25年時点で1678ヵ所に及ぶ[*7]
  • 町内会やボランティア、学校などによる集団回収は、2015年で13.4億トン、2018年で15.2億トンと年々増加している[*8, *9]

などが考えられます。

アルミ缶リサイクルの課題

しかし、欧州でも同様のことが言えますが、回収された全てのアルミ缶が再びアルミ缶として利用されるわけではなく、一部のアルミ缶は低品位のアルミニウムとして再生されるという課題があります。

アルミ缶は、リサイクルしやすい再生資源ですが、異物が混入するとアルミ缶にリサイクルすることが難しくなります。[*10]
実際、アルミ缶からアルミ缶へリサイクルされた割合「CAN to CAN率」は、66.9%に留まっています(図7)。

図7:2019年度のアルミ缶のCAN to CAN率
*出典:一般社団法人 アルミ缶リサイクル協会「リサイクル率」(2019)
http://www.alumi-can.or.jp/publics/index/65/

もちろん、缶材に再利用できないアルミニウムは他の用途で用いられますが、アルミ缶の需要が減少しない限り、大量の電力を使用するアルミニウムの新規生産が必要となります。

アルミ缶リサイクル率のさらなる向上のために

それでは、リサイクル率やCAN to CAN率をさらに向上させるためには、どのような取り組みが必要となるのでしょうか。

まず、私たち自身ですぐに実行できる「分別の徹底」と「異物の混入防止」に取り組みましょう。
それにより、回収されたアルミ缶のスクラップとしての価値が高まり、CAN to CAN率の向上が期待できます。[*10]

集団回収に参加するという貢献の仕方もあります。
集団回収には、リサイクル率の向上はもちろん、地域の環境意識を高めるといったメリットもあります。
さらに、団体が管理するために分別が徹底され、高品質のアルミ缶を収集しやすいという特徴があります。
それにより、CAN to CAN率の向上にも貢献することができます。[*7]

また、国や企業は、CAN to CAN率向上のため、リサイクル技術の向上を図っていく必要があります。
アルミニウムの選別・分離や不純物の除去・無害化など、アルミ缶からアルミ缶の完全再生産を目指した技術開発が不可欠です。

アルミニウムのリサイクルは、省エネルギー効果が高いことから、二酸化炭素の排出量削減にも大きなインパクトがあります。
また、これらのことは、SDGsの達成目標12「つくる責任、つかう責任」における「天然資源の持続的な管理と効率的な使用」にも繋がります。
まずは、身近なアルミ缶のリサイクルから、しっかり取り組んでいきましょう。

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参照・引用を見る
  1. 独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構「資源と経済(6)—循環型社会による持続可能な資源利用—」(2013)
    http://mric.jogmec.go.jp/wp-content/old_uploads/reports/resources-report/2013-03/MRv42n6-04.pdf p25
  2. 電気事業連合会「日本の電力消費」
    https://www.fepc.or.jp/smp/enterprise/jigyou/japan/index.html
  3. 国立研究開発法人科学技術振興機構 (JST) 「アルミニウム材料のリサイクル」(1997)
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jfes/69/12/69_995/_pdf/-char/ja p995
  4. 一般社団法人 日本アルミニウム協会「アルミ缶リサイクルの経済性」(2000)
    https://www.aluminum.or.jp/box/junkan/keizai.htm
  5. 一般社団法人 アルミ缶リサイクル協会「世界のアルミ缶リサイクル率」(2019)
    http://www.alumi-can.or.jp/relays/download/63/154/31/720/?file=/files/libs/720/2019071111123173.pdf p1
  6. 経済産業省「第2章 欧州における容器を対象としたデポジットシステムの実態」(2012)
    https://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/data/research/pdf/121003-3_jpc_2.pdf p34, p46-49
  7. 経済産業省「アルミ缶のリサイクル」
    https://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/admin_info/committee/n/05/youri05_03.pdfp11,p16
  8. 一般社団法人 アルミ缶リサイクル協会「2015年(平成27年)度 アルミ缶再生利用フロー」(2015)
    http://www.alumi-can.or.jp/relays/download/62/153/30/600/?file=/files/libs/600/201707201300105368.pdf p1
  9. 一般社団法人 アルミ缶リサイクル協会「2018年(平成30年)度 アルミ缶再生利用フロー」(2018)
    http://www.alumi-can.or.jp/relays/download/62/153/114/763/?file=/files/libs/763/202006231550459454.pdf p1
  10. 一般社団法人 日本アルミニウム協会「CAN TO CAN リサイクルのメリット」(2013)
    https://www.aluminum.or.jp/box/junkan/can.htm

 

 

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