電力自由化で電気料金はどう変わった? わたしたちが毎日使う電気の仕組み

電力自由化で電気料金はどう変わった? わたしたちが毎日使う電気の仕組み

私たちの生活は電気抜きには考えられません。

電力自由化が導入されて以来、さまざまな電力サービスが登場し、ライフスタイルや価値観に合わせて電気の売り手やプランを自由に選べるようになりました。

では、プランによって電気料金が異なるのはどうしてなのでしょうか。
そもそも私たちが毎月、支払っている電気料金はどのようにして決まるのでしょうか。

電気料金設定の仕組みをわかりやすく解説します。

電力自由化とは

電力自由化の歴史は意外と長く、1995年にまでさかのぼります。1990年代からの世界的な規制緩和の流れを受け、1995年に電気事業法の改正と共に、まずは発電事業の自由化が行われました。その後、2000年には特別高圧、2005年には高圧を対象とした小売の自由化が開始。

そして2016年4月1日には家庭や商店といった低圧向けの電力自由化が導入され、さまざまな企業が電力の販売に参入できるようになり、そのことによって、電気料金の設定方法にも変化が生じました。

ここでは、この低圧向けの電力自由化の概要をみていきます。

~電力自由化とは~

電力自由化が導入される前は、家庭や商店向けの電気は、図1のような各地域の電力会社だけが販売していて、家庭や商店はどの会社から電気を買うか選ぶことはできませんでした *1-1。

図1 各地域の電力会社の供給区域
出典:*1-1 経済産業省資源エネルギー庁「電力の小売全面自由化って何?」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/electricity_liberalization/what/

電力自由化とは、電気の小売業への参入が全面的に自由化されたということです。

図1で示したような地域の大手電力会社以外にもさまざまな電力会社が参入しました。

そのことによって業者間に競争が起こり、全ての消費者が、さまざまな電力会社が提供する多様なサービスや料金プランを自由に選択できるようになりました *1-2、*2(図2)。

 

図2 電力自由化によって実現したさまざまな料金メニューとサービス
出典:*1-2 経済産業省資源エネルギー庁「電力の小売全面自由化でどう変わる?」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/electricity_liberalization/merit/

たとえば、時間帯別の電気料金などのさまざまな料金プランや電気とガスのセット割引、ポイント付与、家庭の省エネ診断などの多様なサービスが提供されています。

また、再生可能エネルギーを中心に発電を行う会社から、電気を購入することも可能ですし、近くの自治体が運営する事業者から電気を買って電気の地産地消をすることもできます。

さらに、小売事業者が特定の発電所との紐づけを行うことで、消費者は住んでいる地域外で発電された電気を購入することも可能になりました。

こうしたさまざまな料金プランやサービスについては、後ほど詳しくみることにします。

~電力自由化の進捗状況~

では現在、小売電力事業者の参入はどの程度進んでいるのでしょうか(図3)。

図3 小売電気事業者登録数の推移
出典:*3 経済産業省資源エネルギー庁(2020)「将来の電力産業の在り方について」 p.11
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/028_07_00.pdf

新規参入した小売電気事業社(以降、「新電力」)は着実に増え、2020年10月に679社に達しました *3:p.11。
新電力が販売する電力量は、2020年6月時点で全販売電力量の約17.8%です。

電気料金設定の仕組み

ここでは、以上のような電力自由化をふまえ、電気料金設定の仕組みをみていきます。

~電力自由化による料金設定の変化~

電力自由化の前と後とでは料金設定の仕組みが違います。
まず、その違いを確認しましょう(図4)。

図4 電力自由化による電気料金設定の変化
出典:*4-1 経済産業省資源エネルギー庁(2020)「電気料金の仕組み:電力自由化で料金設定はどうなったの?」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/fee/stracture/liberalization.html

電力自由化の前まではビルや工場など、特別高圧・高圧で電気を使用する消費者【自由化部門】の電気料金だけが、小売事業者と自由交渉して、電気料金を決めることができました。

一方、一般家庭や商店など低圧で電気を使用する消費者【規制部門】は、先ほどみたように地域の電力会社から電力の供給を受け、その料金は、法律で定められた方法によって決められていました。

電力自由化後は、家庭や商店も含む全ての消費者が、電力会社や料金プランを自由に選択できるようになりました。

ただ、電力自由化が始まって各電力会社が自由に料金を設定できるようになっても、すべての消費者がすぐに新しい料金プランに切り替えるわけではありません。また、電力会社間の競争が活発化しなければ、「規制なき独占」状態となり消費者にとって好ましい料金がすぐに実現しないおそれもあります。

そこで、「規制なき独占」状態とならないよう、小売電気事業者間の競争が十分に進展するまでの間は消費者を保護するため、「料金規制経過措置」がとられています *4-1。

この措置は、一般家庭や商店などの規制部門を対象として、従来と同じ料金体系が「経過措置料金」(規制料金)として、各地域の大手電力会社から引き続き提供されるというものです。

「料金規制経過措置」は2020年4月以降も続けるか解除するかが検討されていましたが、2020年4月時点では、全国すべての地域で規制料金を存続することになりました *4-1。

その理由は、2019年4月1日時点で、新電力の自由料金に移行した消費者が約1割しかいなかったことによるもので、今後、自由料金への移行が概ね半数を越えるまでは、この措置を続けることになっています *5:pp.2-4。

~規制部門の料金設定とは~ *4-2

各地域ごとに選べる電力会社が1社のみの状況だった電力自由化以前では、規制部門の電気料金には、「総括原価方式」が適応されてきました(図5)。

図5 総括原価方式の仕組み
出典:*4-2 経済産業省資源エネルギー庁(2020)「電気料金の仕組み:料金設定の仕組みとは」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/fee/stracture/pricing/

 

この方式は、図5のように、「総原価」と「電気料金の収入」が同額になるように設定するものです。その独占的地位により電力会社が不当な料金設定をすることを防ぐために、原価に一定の利益が乗せられる仕組みで、先ほどみたように、料金は法律によって定められていました *4-2。

「総原価」とは、電気を安定的に供給するために必要な費用に利潤を加えた額を指します。

「事業報酬」とは、発電所や送電線など電力設備を運用するために調達する資金に対して発生する支払い利息や配当金を指します。

「控除収益」とは、電気料金以外で得られる収入のことです。

次に、「総原価等」の内訳をみてみましょう(図6)。

図6 総原価等の例(東京電力平成24年料金改定ベース)
出典:*4-2 経済産業省資源エネルギー庁(2020)「電気料金の仕組み:料金設定の仕組みとは
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/fee/stracture/pricing/

図中の「燃料費調整制度」とは、電気を作るために使う燃料(原油・液化天然ガス(LNG)・石炭)の価格変動に応じて、毎月、自動的に電気料金を調整するシステムのことです *4-3。

~電力自由化後の料金設定の仕組み~

次に、電力自由化後の料金設定の仕組みをみてみましょう(図7)。

図7 電力自由化後の料金設定の仕組み
出典:*4-2 経済産業省資源エネルギー庁(2020)「電気料金の仕組み:料金設定の仕組みとは」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/fee/stracture/pricing/

 

電力自由化後の小売事業者が定める料金は、「事業者の裁量で算定される費目」(図左側)と、「法令等によって算定される費用」(図右側)の合計です *4-2。

まず、事業者の裁量で算定される費目には以下が含まれます。

  • 自社電源から調達する場合に必要な費用
  • 他社電源から調達する場合に必要な費用
  • 人件費
  • その他の経費

次に、「法令等によって算定される費目」の「託送料金」について説明します。

託送料金とは、小売電気事業者が電気を送る際に、その送配電を請け負う一般送配電事業者が、送配電網の利用料金として設定するものです。

この料金設定には経済産業大臣の認可が必要ですが、新電力だけではなく、既存の大手電力会社の小売部門が送配電網を利用する際にも、販売した電気の量に応じて託送料金を負担します。

託送料金には以下が含まれます。

  • 電源開発促進税

一般送配電事業者が納税する国税で、電気料金の一部として消費者から徴収します。発電施設の設置促進や運転の円滑化、利用促進、安全確保、電気の供給の円滑化に必要な費用に充てられます。

  • 賠償負担金

福島第一原子力発電所の事故に伴う賠償のために、電気料金の一部として消費者から徴収します。

  • 廃炉円滑化負担金

原子力発電への依存度を低減するというエネルギー政策の一環として、原子力発電所の廃炉のために必要な費用を電気料金の一部として消費者から徴収します。

また、「再生可能エネルギー発電促進賦課金」とは、以下のようなものです *6。

再生可能エネルギーを促進するために、再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が買い取る際に、一定価格で買い取ることを国が約束する制度があります。

この制度を「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」(以降、「FIT制度」)といいますが、「再生可能エネルギー発電促進賦課金」はこのFIT制度に則って、電力会社が買い取る費用を消費者から賦課金という形で徴収します。
単価は、2020年5月から、2.98円/kWhになりました。賦課金はこの単価に使用した電力量を掛けて計算します。

以上のように、電気料金にはさまざまなものが含まれています。

~一般的な月々の電気料金の内訳~

ここで、月々の電気料金の内訳をみてみましょう *4-3 (図8)。

ただし、この後でみるように、電力自由化後は、さまざまな料金プランが登場しています。

ここでご紹介するのは、あくまで一般的な料金です。

図8 月々の電気料金の内訳
出典:*4-3 経済産業省資源エネルギー庁(2020)「電気料金の仕組み:月々の電気料金の内訳」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/fee/stracture/spec.html

月々の電気料金は、基本料金と電力量料金、そして先ほどみた再生可能エネルギー発電促進賦課金の合計です。

基本料金は契約した容量で決まります。

契約容量とは、同時にどれだけの量の電気を必要とするかによって決めます。

電力量料金は、使用した電力量に基づいて計算した上で、先ほどみた「燃料費調整制度」による燃料費の変動によって、加算または差し引きます。

~さまざまな料金制度~

先ほど説明したように、電力自由化によってさまざまな料金プランやサービスが提供されるようになりました。
ここでは、その例をいくつかみていきたいと思います *4-4。

まず、電力自由化前の料金設定を確認しておきましょう(図9)。

図9 電力自由化前の三段階料金設定
出典:*4-4 経済産業省資源エネルギー庁(2020)「電気料金の仕組み:月々の電気料金の内訳」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/fee/stracture/ratesystem.html

この図のように、電力自由化前の電力量料金は、使った電気量によって3段階の単価を設定し、その単価に使用電気量を掛けたものでした。

その電力量料金に基本料金を加えたものが電気料金で、料金設定はこの一種類だけでした。

自由化後は、これからご紹介するように、さまざまなタイプの料金設定が提供されています。
これから、そのイメージをみていきましょう。

まず、基本料金に加えて使った分の従量課金が二段階のもの、また、基本料金なしで電気料金のみのプランです(図10)。

図10 段階別料金例
出典:*4-4 経済産業省資源エネルギー庁(2020)「電気料金の仕組み:月々の電気料金の内訳」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/fee/stracture/ratesystem.html

次に、電気を使う時間帯や季節などによって料金に差をつけるプランです(図11)。

図11 電気使用の時間帯や季節によって電気料金に差をつけたプラン
出典:*4-4 経済産業省資源エネルギー庁(2020)「電気料金の仕組み:月々の電気料金の内訳」https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/fee/stracture/ratesystem.html

ガスやインターネットなど他のサービスとセットで料金割引をするプランもあります(図12)。

図12 他サービスとのセット割引料金プラン
出典:*4-4 経済産業省資源エネルギー庁(2020)「電気料金の仕組み:月々の電気料金の内訳」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/fee/stracture/ratesystem.html

さらに、長期契約することで割引があるプランや節電によって割引が適用されるプランもあります(図13)。

図13  長期契約・節電による割引料金プラン
出典:*4-4 経済産業省資源エネルギー庁(2020)「電気料金の仕組み:月々の電気料金の内訳」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/fee/stracture/ratesystem.html

この他、再生可能エネルギーで発電された電力が一定割合以上を占めるプランなど、電源を選べるプランもあります。

電力自由化によって、現在は以上のようにさまざまな料金プランや特徴をもった電力サービスが提供され、自由に選択できるようになっています。

では、様々なプランを提供する新電力は、どのようにして電力を調達しているのでしょうか。

卸電力市場とは

図1でみたように、日本の電力事業は従来、国内の各地域で民間の電力会社が発送電(発電と送配電)を行ってきました *7:p.3。

ところが、1990年代初頭のバブル経済崩壊による大不況を契機にして、電気料金をもっと安くすることが望まれるようになりました。

その結果、電気料金を安価にするために競争原理を導入することが決められ、1995年、まずは発電部門の自由化が始まりました。

2003年には日本卸電力取引所JEPXが設立され、2004年から高圧(500kW以上)の小売自由化が実現しました。これが、先ほどみた「自由化部門」ですが、JEPXで取引が開始されたのは、2005年です。

こうした流れの中、徐々に自由化は進められ、2016年に高圧・低圧の小売業を含めるすべての発電および小売分野で電力自由化が実現しました。

~卸電力市場取引状況~

次に、卸電力市場の取引状況をみてみましょう(図14)。

図14  日本の電力総需要に占めるJEPX取引率
出典:*3 経済産業省資源エネルギー庁(2020)「将来の電力産業の在り方について」p.21
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/028_07_00.pdf

この図からわかるように、2020年6月時点で、JEPXで取引された電力量は、日本の電力需要の42.6%に上り、過去最高を記録しました。

次に、新電力はJEPXからどの程度、電力を調達しているのでしょうか(図15)。

図15  新電力によるJEPXからの電力調達量
出典:*3 経済産業省資源エネルギー庁(2020)「将来の電力産業の在り方について」p.26
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/028_07_00.pdf

2020年6月時点の調達率は93.2%で、新電力は電力の大半をJEPXから調達しています *3:p.26。

市場価格の仕組みと 市場価格連動型電気料金

JEPXから電力を調達している新電力の中には、電気量の単価を固定せずに、市場取引価格と連動させる「市場連動型プラン」を提供している企業もあります。

画期的といわれるプランですが、その価格はどのようにして決まるのでしょうか。
ここでは、市場連動型電気料金に反映される市場価格の仕組みについてみていきます。

~卸電力市場の構造~

図16は電力市場の構造を表しています。

図16 JEPXの構造
出典:*7 JEPX 一般社団法人日本卸電力取引所「卸電力取引所の仕組みと取引の現状」p.2
https://je-link.jp/pdf/04-1%20%E5%8D%B8%E9%9B%BB%E5%8A%9B%E5%8F%96%E5%BC%95%E6%89%80%E3%81%AE%E4%BB%95%E7%B5%84%E3%81%BF%E3%81%A8%E5%8F%96%E5%BC%95%E3%81%AE%E7%8F%BE%E7%8A%B6.pdf

電力の市場価格は、発電事業者が売り入札を、小売事業者が買い入札を行い、需給のバランスがとれた点で決まります。

契約上の仕組みとしては、こうした取引を経て、新電力を含む小売事業者は発電事業者から電気を買い、それに様々なサービスや特徴を付帯させて消費者に販売します。

実際の電気の流れとしては、上記の契約に伴い、発電事業者は送変電・配電を経由して、発電した電気を消費者に届けるという仕組みです。

JEPXでの電力取引と市場価格について、もっと詳しくみていきましょう。

~スポット市場(1日前市場)~

電力は大量に貯蔵することが難しいため、需要と供給のバランスによって、取引価格は刻々と変化します。

JEPXのスポット市場は翌日の24時間分を取引し、1年365日、毎日行われています *7:p.5(表1)。

表1 JEPXスポット市場の概要
出典:*7 JEPX 一般社団法人日本卸電力取引所「卸電力取引所の仕組みと取引の現状」p.5
https://je-link.jp/pdf/04-1%20%E5%8D%B8%E9%9B%BB%E5%8A%9B%E5%8F%96%E5%BC%95%E6%89%80%E3%81%AE%E4%BB%95%E7%B5%84%E3%81%BF%E3%81%A8%E5%8F%96%E5%BC%95%E3%81%AE%E7%8F%BE%E7%8A%B6.pdf

表1のように、スポット市場は1日を30分毎に48の時間帯に分割して、それぞれの時間帯で入札が行われます。

では、売買が確定した価格・量である「約定価格」と「約定量」はどのようにして決まるのでしょうか(図17)。

図17  約定価格と約定量の決まり方
出典:*7 JEPX 一般社団法人日本卸電力取引所「卸電力取引所の仕組みと取引の現状」p.5
https://je-link.jp/pdf/04-1%20%E5%8D%B8%E9%9B%BB%E5%8A%9B%E5%8F%96%E5%BC%95%E6%89%80%E3%81%AE%E4%BB%95%E7%B5%84%E3%81%BF%E3%81%A8%E5%8F%96%E5%BC%95%E3%81%AE%E7%8F%BE%E7%8A%B6.pdf

入札する発電事業者と小売事業者は、他参加者の入札動向が開示されない状態(ブラインド)で入札します *8:p.18。
入札締切後、取引所はまず、全ての入札カーブを売り・買いに分けて合成します。

次に、合成してできた売り・買い入札カーブが交わった点を約定価格・約定量とします。

入札者は入札した価格ではなく、約定価格で売買します。

したがって、約定価格より低い価格で入札された売りでも約定価格で売ることになり、約定価格より高い価格で入札された買いでも約定価格で買えることになります。

たとえば、1円で売り入札していても約定価格が15円なら、15円で売れます。
また、40円で買い入札していても約定価格が15円なら、15円で買えることになります。

こうした市場価格の変動をシンプルに反映させたのが市場価格連動型メニューです。したがって、市場価格が安いときはリーズナブルに利用することができますし、逆に市場価格が高くなるとその価格が電気料金に反映されることになります。

~当日市場(1時間前市場)~

JEPXではスポット市場の他に、当日市場(1時間前市場)があります(表2)。

表2 JEPX当日市場の概要
出典:*7 JEPX 一般社団法人日本卸電力取引所「卸電力取引所の仕組みと取引の現状」p.7
https://je-link.jp/pdf/04-1%20%E5%8D%B8%E9%9B%BB%E5%8A%9B%E5%8F%96%E5%BC%95%E6%89%80%E3%81%AE%E4%BB%95%E7%B5%84%E3%81%BF%E3%81%A8%E5%8F%96%E5%BC%95%E3%81%AE%E7%8F%BE%E7%8A%B6.pdf

これは、主に、当日の発電が不調だったときや気温変化、突発的な事故などによって売買を調整する場として電気の取引を行うものです *7:p.7、*8:p.21。

24時間開場していて、受渡の1時間前まで取引ができます。

表2は表1と同じ内容ですが、先ほどのスポット市場との違いは、スポット市場が翌日分の30分単位に区切った48商品を一斉に取引するのに対して、この当日市場は、30分単位の48商品の取引が当日の1時間前まで可能な点です *7:p.7。

市場価格変動の状況と要因

ここで市場価格が変動する要因を考えてみたいと思います。

~システム上の要因~

まず、システムによる価格変動の要因を押さえておきましょう。
約定価格は、需要が供給を上回れば高くなり、下回れば低くなります。

したがって、電力需要が供給より大きい時間帯では価格は上昇し、逆に供給が需要より大きい時間帯では価格が低下することになります。

こうした原理によって、市場価格は刻々と変化しています。

~最近の価格変動とその原因~

2020年12月中旬から、電力の市場価格がこれまでにないレベルで高騰し、年が明けて2021年になってもなお、こうした状況が続いています *9、*10(図18、図19)。

図18  JEPX システムプライス24時間平均値の推移
出典:*10-1 日経エネルギーNEXT(2021)「ニュース&トレンド 電力市場の異常な高騰はまだまだ続く? LNG供給に乱れ 現行ルールでは止められない『燃料制約』による市場高騰」https://project.nikkeibp.co.jp/energy/atcl/19/feature/00007/00044/

図19  JEPX 1月14日受け渡しのシステムプライス
出典:*11  JEPX 一般社団法人日本卸電力取引所ホームページ「スポット市場」
http://www.jepx.org/market/

 

なぜこのような高値が続いているのでしょうか。
その要因のひとつは、寒波による冷え込みによって電力の需要が増加したことが挙げられます。

ただ、電力需要が過去最高水準にまで高くなったわけではなく、需要が増加したという要因だけでこの価格高騰を説明するのは困難です *10-1。

今回の市場価格高騰は、火力発電の燃料であるLNGの供給が乱れたことがひとつの大きな要因と考えられています。

LNGの供給が乱れた原因のひとつは、LNG価格の高騰です *10-2。
以前から、JEPXスポット価格の変化はC重油(もっとも低規格の残渣油)やLNGなどの価格変化と同様の動きであることが指摘されています(図20)。

図20 JEPXスポット価格と燃料価格の推移( 2013年1月-2020年6月)
出典:*3 経済産業省資源エネルギー庁(2020)「将来の電力産業の在り方について」p.24
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/028_07_00.pdf

日本を含む北東アジアのLNG市場価格は2020年12月中旬以降、急に高騰しています。

こうした価格高騰の原因は、北東アジア地域の気温低下だけでなく、近隣の韓国や中国の輸入量が急増していることが主要因だといわれています *10-2。

さらに、LNGの供給も難しい状況になっています。

世界最大のLNG供給国であるカタールが11月から計画的なメンテナンスを始めているのに加えて、突発的なトラブルにも見舞われたため、カタールからの輸出量が減少しています。

アメリカからのLNG輸入も最近増加していたのですが、コロナ禍の影響でパナマ運河の通過手続きが停滞しているため、LNGを積んだ船を巡って競争が厳しくなっています。

このように、いくつかの要因が重なって、LNGが十分に調達できなかった大手電力各社は、LNGによる火力発電所の出力を絞って運転しています。

こうして発電電力が減ったため、大手電力会社は自社の小売部門に優先的に電力を供給し、JEPXに供給する電力が制約されました。その結果、市場で需要が供給を上回り、電力の市場価格が高くなった可能性が高いとみられます *10-3。

日・中・韓の間でLNGを巡る調達競争が厳しくなっていることから、今後も同様の問題が生じる可能性があり、対策が急がれます *10-2、*10-4。

なお、先ほどみたように、「料金規制経過措置」によって提供されている規制料金では、発電用の燃料が値上がりした場合は、「燃料費調整制度」によって、その分が電気料金に上乗せされます。

今後の展望
~FIP制度の導入~

2022年度からは電気料金内の「再生可能エネルギー発電促進賦課金」のベースとなるFIT制度(固定価格買い取り制度)に加えて、市場連動型のFIP(Feed-in Premium)制度を導入することが決まっています *12:p.3。

FIP制度とは、再生可能エネルギーが自立的に普及し、完全な自由競争が生じるための制度で、再生可能エネルギーの発電事業者が市場価格で電力販売する場合に、市場価格に補助額(プレミアム)を上乗せする方式です *13:p.34。

基準価格 (FIP価格)に市場価格の差額がプレミアムとして付与されます(図21)。

図21  市場連動型の支援制度 FIP
出典:*12経済産業省資源エネルギー庁(2020)「FIP制度の詳細設計と アグリゲーションビジネスの更なる活性化」 p.5
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/019_01_00.pdf

FIT制度は、価格が一定で、いつ発電しても収入は一定でしたが、FIP制度は市場価格に連動するため、市場価格が高い需要ピーク時に蓄電池などを活用することで供給量を増やせば、その分、収入が増加します。

FIP制度のこうした仕組みによって、市場への導入が促進されることが期待されています。

~おわりに~

先に説明したとおり、2016年に電力の完全自由化が実現し、新規参入した多くの新電力の大半がJEPX市場に参入しています。

現在はまだ「料金規制経過措置」が執られ、従来の固定的な電気料金も提供されていますが、今後、新電力への切り替えが進めば、電気会社間の競争が進み、さらに利便性の高いサービスや料金プランが提供されることが期待されています。

これまでみてきたように、電気料金の仕組みは多様で複雑ですが、その基本を理解すれば、現在の契約を見直すことも可能です。

自分の価値観やライフスタイルに合った最適な料金プランやサービスを選択するためにも、電気料金の仕組みを正しく理解して、生活に役立てることが必要ではないでしょうか。

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参照・引用を見る

*1-1

経済産業省資源エネルギー庁「電力の小売全面自由化って何?」

https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/electricity_liberalization/what/

*1-2 「電力の小売全面自由化でどう変わる?」

https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/electricity_liberalization/merit/

*2

経済産業省資源エネルギー庁(2017)「資料5 今後の市場整備の方向性について」

(第1回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会(開催日:2017年3月6日))

https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/seido_kento/pdf/001_05_00.pdf

*3

経済産業省資源エネルギー庁(2020)「将来の電力産業の在り方について」(2020年10月30日)

https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/028_07_00.pdf

*4

経済産業省資源エネルギー庁(2020)「電気料金の仕組み」(2020年10月20日)

https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/fee/stracture/

*4-1

「電力自由化で料金設定はどうなったの?」

https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/fee/stracture/liberalization.html

*4-2

「料金設定の仕組みとは」

https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/fee/stracture/pricing/

*4-3

「月々の電気料金の内訳」

https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/fee/stracture/spec.html

*4-4

「使用量や時間によって変動する料金制度」

https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/fee/stracture/ratesystem.html

*5

物価統計室「(2019)「電力小売全面自由化の状況と 2020 年基準改定における取扱いについて(案)」(2019年10月2日)

https://www.stat.go.jp/info/kenkyu/cpi/pdf/014-4.pdf

*6

経済産業省資源エネルギー庁「なっとく! 再生可能エネルギー>固定価格買取制度」

https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/surcharge.html

*7

JEPX 一般社団法人日本卸電力取引所「卸電力取引所の仕組みと取引の現状」

https://je-link.jp/pdf/04-1%20%E5%8D%B8%E9%9B%BB%E5%8A%9B%E5%8F%96%E5%BC%95%E6%89%80%E3%81%AE%E4%BB%95%E7%B5%84%E3%81%BF%E3%81%A8%E5%8F%96%E5%BC%95%E3%81%AE%E7%8F%BE%E7%8A%B6.pdf

*8

JEPX 一般社団法人日本卸電力取引所「平成28年4月からの制度変更に関する説明会説明資料」(2015年12月16日)*本文中のページ番号はスライド表紙からの通し番号

http://www.jepx.org/news/pdf/jepx20151216.pdf

*9

日経エネルギーNEXT(2020)「ニュース&トレンド 年明けも続く? 長引く電力市場の異様な高騰

相次ぐガス火力の『出力低下』」(2020年12月30日)

https://project.nikkeibp.co.jp/energy/atcl/19/feature/00001/00040/

*10-1

日経エネルギーNEXT(2021)「ニュース&トレンド 電力市場の異常な高騰はまだまだ続く? LNG供給に乱れ 現行ルールでは止められない『燃料制約』による市場高騰」(2021年1月6日).1/4

https://project.nikkeibp.co.jp/energy/atcl/19/feature/00007/00044/

*10-2

同 2/4

https://project.nikkeibp.co.jp/energy/atcl/19/feature/00007/00044/?P=2

*10-3

同 3/4

https://project.nikkeibp.co.jp/energy/atcl/19/feature/00007/00044/?P=3

*10-4

同 4/4

https://project.nikkeibp.co.jp/energy/atcl/19/feature/00007/00044/?P=4

*11

JEPX 一般社団法人日本卸電力取引所ホームページ「スポット市場」

http://www.jepx.org/market/

*12

経済産業省資源エネルギー庁(2020)「FIP制度の詳細設計と アグリゲーションビジネスの更なる活性化」 (2020年8月31日) https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/019_01_00.pdf

*13

経済産業省資源エネルギー庁(2017)「再生可能エネルギーの大量導入時代における 政策課題と次世代電力ネットワークの在り方」(2017年12月18日)

https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/001_03_00.pdf