究極の地産地消? CO2削減に貢献する環境に優しい家庭菜園に挑戦しよう!

新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛をきっかけに、家庭菜園に興味を持つ方が増えています。
ベランダガーデニングを楽しんだり、シェア畑を借りて本格的な野菜栽培にチャレンジするなど、感染リスクの少ない新たな趣味として注目されています。
太陽の下で土に触れることは外出自粛によるストレスの解消にもつながります。

さてこの家庭菜園、実は地球環境にとっても良い意味があることをご存知でしょうか。
この記事では家庭菜園がもたらす地球環境へのメリットと環境に優しい家庭菜園の方法を紹介します。

農業が地球環境に及ぼす影響

主食である米や小麦粉をはじめ、野菜や果物などたくさんの農作物は私たちが生きていくうえで欠かせないものです。
農業と地球環境は相互に影響を与え合っています。田畑や水路など人が自然に手を入れることは、さまざまな生き物に生息場所を提供し生態系の保全に貢献します。環境と調和の取れた持続可能な農業活動は、豊かな生態系と健全な自然環境を育みます。

一方で田畑や水路でも生態系を破壊してしまう場合もあり、また不適切な農薬の利用や廃棄物の不当な処理などによる誤った農業は大気・水質・土壌に負荷を与えます(図1)

図1: 農業生産活動による環境負荷発生リスク
出典: 農林水産省「農業生産活動に伴う環境影響について(2018)」
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kikaku/bukai/10/pdf/h160514_03_siryo.pdf, p.1

世界的に見ても、過剰な農地開拓や誤った農法などによって森林減少や砂漠化などを引き起こしています。
しかし日常的に食べている農作物が、どのような方法で生産され環境にどのくらい負荷がかかっているのかを意識することは少ないかもしれません。

また、日本は先進国の中でも特に食料自給率が低く、多くの食料を海外から輸入しています(図2)。

図2: 我が国と諸外国の食料自給率
出典: 農林水産省「世界の食料自給率」
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/013.html

食料自給率はフードマイレージと強い相関を持っています。フードマイレージとは食料の総輸送量・距離を表したもので、一つの食料が地球環境に与える負荷を把握できる指標になります[ *1]。
諸外国と比較して食料の多くを輸入に頼っている日本は、フードマイレージも高くなるというわけです。

食料自給率を上げてフードマイレージを抑えるためには、地産地消が効果があります。地元で採れた旬の野菜や果物を食べることは、食料の輸送にかかるCO2排出を減らすことにつながります。

自宅で採れた野菜を自宅で消費するのであれば輸送によって発生するCO2は「ゼロ」、つまり家庭菜園は環境に優しい地産地消のひとつと言えるでしょう。

家庭菜園がエコである理由とは?

新型コロナウイルスによる外出自粛によって、世界的に家庭菜園がブームとなっています。さらに環境問題への意識が高い層を中心に「食糧危機」「自給自足」「都市型農業」などへの関心が高まっていることも、家庭菜園ブームの要因の一つでしょう。

ここでは家庭菜園がどのような点において環境に優しいのか紹介していきましょう。

CO2削減に貢献

家庭菜園は先ほどもふれたようにフードマイレージを減らすため、食料の輸送にかかるCO2削減に貢献します。
日本での食料輸入に伴うCO2排出量を一人当たりに換算すると年間約130kg、これは夏の冷房温度を27℃から28℃に上げた場合に削減されるCO2のなんと12年間分に相当します[ *1]。

また夏場のグリーンカーテンもCO2削減に有効です。グリーンカーテンとはゴーヤやヘチマ、アサガオなどのつる性の植物を窓の外や壁面に這わせてカーテンのように覆ったものです。
グリーンカーテンは夏の直射日光が部屋に差し込むのを防ぎ、熱エネルギーを約80%もカットします(図3)。

 

図3: グリーンカーテンによる日射量への効果
出典: 環境省Cool Choice「グリーンカーテンプロジェクト」
https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/green/secret.html

グリーンカーテンによって地面や壁から発せられる放射熱を防ぎ、都市部の気温上昇の原因であるヒートアイランド現象の緩和にも役立ちます。
さらに植物には根から吸い上げた水を葉の裏から蒸発させる蒸散作用があるので、周辺の熱を冷ます役割もあります。水蒸気を含んだ涼しい風を部屋に取り込めば、室内の温度も下げてくれるでしょう。

家庭菜園の一環でグリーンカーテンを設置すれば夏でも過ごしやすい快適な部屋となり、節電やCO2排出削減にも貢献します。

生ごみの堆肥化で廃棄物を減量

生ごみを堆肥化(コンポスト化)して家庭菜園で使用すると、ごみの減量化につながります。
生ごみは家庭からでる廃棄物の多くを占めており、京都市のデータでは家庭から出される燃やすごみの38.3%が生ごみとなっています(図4)。

図4: 「燃やすごみ」の組成(平成30年度
出典: 京都市「京都市食品廃棄ゼロプロジェクト」
http://sukkiri-kyoto.com/data

生ごみは約80%が水分であるため、紙やプラスチックと比較すると燃えにくく、廃棄の際にもCO2を多く排出します(図5)。
ゴミを燃やした余熱を発電に利用している場合、燃えにくい生ごみが多く含まれていると発電量が減ってしまいます。

図5: ごみの燃えやすさ(カロリー)の比較
出典: 京都市「京都市食品廃棄ゼロプロジェクト」
http://sukkiri-kyoto.com/data

生ごみを堆肥化して家庭菜園に利用すれば、環境負荷を減らすことに役立ちます。堆肥化は3R(リデュース・リユース・リサイクル)のなかのリサイクル、再資源化にあたります。
家庭での生ごみの堆肥化を推進するために、堆肥化機器購入への助成を実施している自治体も多数あります。

環境について考えるきっかけ作り

自分が口にするものを自分の手で育てることは、子どもにとっても大人にとっても学ぶことが大いにあります。家庭菜園は環境教育としての一面もあり、野菜や果物を育てることは自然や環境に関心を持つきっかけになります。

また家庭菜園はフードロスを減らす効果も期待できます。フードロスとは本来は食べることができた食品が、消費期限切れや食べ残しなどによって廃棄されることです。
愛着をもって野菜や果物を育てることは食育の一環にもなり、食べ残しを減らすことにもつながるでしょう。

北海道の小学校で実施された「おとふけ学校給食フードリサイクルプロジェクト」では、小学生が栽培した野菜を給食に使用することで食べ残しが減ったという事例もあります。
このプロジェクトでは給食の食べ残しを堆肥化して畑に還元し、その堆肥を使用して子どもたちが栽培したトウモロコシやニンジンを給食で使用しました。
プロジェクトの結果、給食の食べ残しを16.0%(0.9kg/日)減少させることに成功しています(図6)

図6: 食育・環境教育による効果評価
出典: 音更町教育委員会 学校教育課「おとふけ学校給食フードリサイクルプドジェクト」
https://www.env.go.jp/recycle/北海道音更町.pdf, p.11

環境に優しい家庭菜園のすすめ

実った野菜や果物を楽しむだけでなく環境負荷を減らすことのできる、環境に優しい家庭菜園にチャレンジしてみませんか。最後に環境負荷の少ない家庭菜園を目指す方におすすめの、自家製堆肥作りと野菜の再生栽培の方法を紹介します。

生ごみで自家製堆肥作りにチャレンジ

廃棄物の減量化や廃棄時のCO2削減に役立つ、自家製堆肥を使えばより環境に優しい家庭菜園になります。
自家製堆肥作りをするには、まず家庭で出た生ごみを一次処理として微生物や電気の力を使って発酵、乾燥させます(図7)。

図7: 生ごみの堆肥化の一次処理
出典: 相模原市「はじめよう!生ごみダイエット(2020)」
https://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/013/664/hajimeyou_2021.pdf, p.3

一次処理には電気を使わない方法と使う方法とがあり、CO2排出に着目すると前者のほうがよりエコな方法でしょう。
一次処理が終わると、二次処理に入ります。
二次処理は二つの方法があり、プランターまたは畑で土と堆肥材を混ぜ込み熟成させます(図8)。

図8: 生ごみの堆肥化の二次処理
出典: 相模原市「はじめよう!生ごみダイエット(2020)」
https://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/013/664/hajimeyou_2021.pdf, p.6

二次処理に必要な熟成期間は方法によってさまざまですが、おおよそ1〜3ヶ月で完成します[*2]。
このように手間はかかりますが、廃棄するだけだった生ごみを堆肥化することで野菜や花にとって良質な肥料に生まれ変わります。

野菜くずの再生栽培でフードロス削減

フードロス削減としても注目されているのが、消費期限切れの食材や調理の際に出たヘタや根っこなどの野菜くずを利用した再生栽培です。
これまで廃棄していた野菜くずを家庭菜園に上手に活用すれば、新たな食料として生まれ変わります。

根や葉を水につけることでもう一度再生できる野菜は再生野菜と呼ばれ、野菜の種類によっては土に植え替えて育てることもできます。
再生栽培できる野菜でおなじみなのは豆苗ですが、小松菜や水菜などの葉物野菜やネギやニンニクなどの薬味野菜でも可能です。大根や人参などの根菜もヘタの部分を使用すれば、葉を再生させて調理に使用できます。

次の図9で紹介するのは料理で使い残した三つ葉の茎を利用した再生栽培の記録です。

図9: 野菜くずで再生栽培
出典: 奈良市「リサイクルアイディア(台所編)」
http://www.pref.nara.jp/secure/27292/recyclehandbook3-2.pdf, p.36

野菜の再生栽培は水耕栽培でも可能です。水耕栽培とは土を使用せずに植物を栽培する方法で、土づくりが不要で生育が早いなどのメリットがあります。水耕栽培であれば、栽培に使用した土の処分に困ってしまうこともありません。
自宅のキッチンなど少ないスペースでできるので、気軽に始められる家庭菜園の一つです。

まとめ

ステイホームによっておうち時間が増え日々の暮らしを見直していくなかで、家庭菜園に興味を持たれる方も多いでしょう。家庭菜園は庭や畑だけでなく、マンションのベランダ、自宅のキッチンなどの少ないスペースでも十分可能です。ご自身のライフスタイルに適した方法を選べるところも家庭菜園の魅力です。
なおマンションのベランダで家庭菜園に挑戦するときは、マンションの規約やマナーを守り近隣住民へ迷惑がかからないように配慮が必要です。

CO2排出削減の手段としても効果的な家庭菜園は、家庭でできるエコ活動の第一歩としてもおすすめです。
「食の安全」と「環境に優しい暮らし」、そのどちらもかなえる家庭菜園に是非チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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参照・引用を見る

*1

農林水産省「フード・マイレージ(2009)」
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kikaku/goudou/06/pdf/data2.pdf, p.3, p.10

*2

相模原市「はじめよう!生ごみダイエット(2020)」
https://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/013/664/hajimeyou_2021.pdf, p.6

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