コロナ禍で注目される「地方移住」 東京一極集中のリスクと地方の活性化を「地域おこし協力隊」の事例からも解説

コロナ禍で注目される「地方移住」 東京一極集中のリスクと地方の活性化を「地域おこし協力隊」の事例からも解説

日本国民の約3割(約3,658万人)を占める、東京圏の人口[*1]。

これまでバブル経済の崩壊や東日本大震災の後などを除いて転入超過が続いてきた東京は、「一極集中」といった大きな課題を抱えています。

ここでは国際的に見ても首都圏人口の比率が高い東京の、一極集中の問題や課題解決の糸口について見ていきましょう。

欧米諸国との比較(首都人口/総人口、%

図1: 首都圏への人口集中の国際比較
出典: 国土交通省HP「東京一極集中の是正方策について」
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001374933.pdf, p.5

東京一極集中のリスク

 世界でも突出している日本の首都人口

「東京一極集中」と言われるように、東京の人口集中は現代社会の大きな課題とされています。
首都東京への一極集中は、地価の高騰や災害時のリスク、過密化によるコロナ感染など様々な問題の要因にもなっています。
とりわけ発生が想定されている首都直下地震への懸念は大きく、本質的な対策が求められています。

図2: 三大都市圏・地方圏の日本人移動者数の推移
出典: 国土交通省HP「企業等の東京一極集中の現状」https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/content/001319708.pdf, p.11

災害リスクエリア

地震や洪水、土砂災害、津波のいずれかの災害リスクの含まれる地域を「災害リスクエリア」として集計したものが下の図ですが、東京圏の広範囲に複数の災害リスクが重なるエリアが散見されます。

図3: 首都直下地震のリスク
出典: 国土交通省HP「東京一極集中の是正方策について」
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001374933.pdf, p.37

首都直下地震では、都心を中心とした地震や火災による建物被害と死者数の推測値が大きく、経済的な被害予想額も47兆円超えと予測されていることなどから、諸々の対策が急がれています(図4)。

全壊・焼失棟数(都心南部直下地震、冬夕、風速8m/s)

図4: 首都直下地震のリスク
出典: 国土交通省HP「東京一極集中の是正方策について」https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001374933.pdf, p.38 

BCP対策の遅れ

しかしながら、このような災害を想定し、事業を継続するためのBCP対策が整備されている企業は全体の3割程度にとどまっているのが実情です(図5)。

Q 本社事業所のリスク対応(BCPの策定、見直し)に関して、これまでの実績又は今後を含めた具体的な検討はありますか。

図5: 首都直下地震のリスク
出典: 国土交通省HP「東京一極集中の是正方策について」
https://www.mlit.go.jp /policy/shingikai/content/001374933.pdf, p.44

東京一極集中の是正[*2]

東京一極集中の対策としては、政府機関の地方移転や本社機能の移転促進、地方移住への支援といった東京圏からの分散化を目的とした諸々の施策が展開されています。
また、インフラや通信環境の整備などハード面でのさらなる具体化が必要であるといった指摘もされています(図6)。

図6: 各計画に記載されている東京一極集中是正に資する施策の例
出典: 内閣官房HP「東京一極集中是正に資する施策の分類」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/resilience/dai50/siryo3-1.pdf, p.7

地方移住への関心の高まり

若い世代から注目される「地方移住」

この数年間、地方移住への関心がかなり高まっています。

NPO法人ふるさと回帰支援センターでは、事業所への問い合わせや来訪者は近年飛躍的に増加し、特に40代までの若い世代が地方移住へ高い関心を示していると報告しています[*1]。

 

図7: 地方移住への関心の高まり
出典: 国土交通省HP「東京一極集中の是正方策について」
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001374933.pdf, p.62

そして2020年以降は、コロナの影響で地方移住に関心を寄せる都内在住者がさらに急増しています。
中でも特に20代、30代で関心が高まっていることは、特筆すべき点でしょう[*1] 。

 

図8: 地方移住への関心の高まり
出典: 国土交通省HP「東京一極集中の是正方策について」
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001374933.pdf, p.63

コロナ禍の働き方改革が追い風に

さらにコロナ禍の中、テレワークをはじめとする通信環境の整備が急速に進んでいることが追い風となり、人や企業の地方移転の加速が予想されています。

下の図を見ると東京圏出身者、地方出身者ともに、テレワークでの勤務がほぼ可能となった場合、約4割が引っ越しを検討したいと回答しています。

図9: テレワークの普及による移住意向
出典: 国土交通省HP「東京一極集中の是正方策について」
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001374933.pdf, p.59

新型コロナウイルス感染拡大の終息後もテレワークの利用を拡大するという企業は18%で、今の状態で利用を続けると答えた企業が53%。合計約7割がコロナ収束後もテレワークの利用を考えているとの意向が報告されています(図10)。

図10: 東京所在上場企業における今後のテレワーク利用方針
出典: 国土交通省HP「東京一極集中の是正方策について」
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001374933.pdf, p.55

また、本社機能の移転や一部移転、縮小といった配置の見直しを具体的に検討している企業は26%で、2020年に検討を開始すると答えた企業は全体の14%です。
よって、2020年以降は本社事業所の縮小を検討する割合が大きく増加する見通しとなっています(図11)。

図11:  東京所在上場企業における本社事業所の配置見直し検討
出典: 国土交通省HP「東京一極集中の是正方策について」
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001374933.pdf, p.56

移転時の懸念材料(図12)

地方移住にあたっての懸念点を見てみると、生活面では以下の点が気になるとする声が多くあがりました。

「交通の利便性」(40.2%)

「地域の人間関係」(27.7%)

「娯楽の少なさ」(24.2%)

「地域の買い物環境」(23.4%)

また、仕事面で多かった懸念事項は以下の内容です。

「収入が下がってしまう」(24.5%)

「希望にかなう仕事が見つからない」(19.3%)

 転居にあたっての生活面の気がかり(複数回答)【地方移住者】N=909

転居にあたっての仕事面の気がかり(複数回答)【地方移住者(転勤等による移住除く)】N=670                          

図12: 地方移住にあたっての気がかり
出典: 独立行政法人 労働政策研究・研修機構HP「UIJターンの促進・支援と地方の活性化」
https://www.jil.go.jp/institute/research/2016/documents/152.pdf, p.38

移住先での仕事と収入

地方移住を考える際、仕事の選択肢が狭まることを懸念する声が多く聞かれますが、テレワークの利用をはじめ、働き方の多様性による課題解決が期待されます。
また、地方移住の懸念材料として「収入の低下」が上位にあがっていますが(図12)、ここで図13を見てみましょう。

東京都の可処分所得(手取り収入)は全世帯平均で全国3位ですが、標準的な「中央世帯」の基礎支出(食・住関連の支出)が最も高いため、可処分所得と基礎支出との差額は42位。

この結果から、東京都に住む平均的所得の世帯が経済的に豊かであるとは言えない現実が垣間見えています[*1]。

図13:  都道府県別の経済的豊かさ
出典: 国土交通省HP「東京一極集中の是正方策について」
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001374933.pdf, p.66

田舎では、人と繋がれば何でもできる![*3]

地方では、仕事が終われば夜釣りに行って、釣果で晩酌。「職遊近接のパラダイス」などという声が聞こえてくるように、都会ではとても望めないような豊かな生活を送ることも可能です。

朝日新聞の記事「田舎に出て一旗揚げる! 地方移住、現状と課題は」では、東京から地方へ実際に移住した方へのお話が紹介されています。

2011年に東京から新潟県十日町市の山間部にある集落に移住した女性(32)は、当時設立準備中だったNPO法人の仕事に従事。月給は十数万円と決して多くはありませんが、ご近所さんのご縁で、農家の収穫やみそ作りにより収入を得ることができるようになったと言います。「田舎って実は、人と繋がれば何でもできるんです」と、女性は話します。彼女は隣の地区の男性と結婚し、今では自治組織の役員を担当。その一方、NPO法人の仕事も続けています。

不便さや情報格差といった地方特有の問題はインターネットの力で解決することが可能となりつつある昨今。
映画鑑賞やショッピングもインターネットで楽しめる今、このようなネット環境の整備が移住の決め手となったという人も存在します。

また、ふるさと回帰支援センターの理事長は、昔は定年後の悠々自適な暮らしを田舎に求める人が多かったが、今は地方に行って面白いことをしたい、という移住者が増えていると話します。

地域おこし協力隊

ここでは、都市部から地方に移住し、地方自治体と連携して地域おこしの支援にあたる「地域おこし協力隊」の例を見てみましょう。

「地域おこし協力隊」は、都市地域から人口減少や高齢化等の進行が著しい地域に移住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取り組みです[*4]。
2020年度、地域おこし協力隊を終えた後の移住率は約6割となり、過去最高の数字を記録しています。

図14: 地域おこし協力隊とは
出典: 総務省HP「地域おこし協力隊とは?」
https://www.chiikiokoshitai.jp/about/

ニーズと意欲  ミスマッチも[*3]

しかし中には、地方への移住がスムーズにうまくいかないケースも見受けられます。
同じく朝日新聞の記事「田舎に出て一旗揚げる! 地方移住、現状と課題は」では、地方への移住がうまくいかなかった事例も挙げられています。

2017年のデータでは、任期中に退任した隊員約200人のうち約3分の1は、隊員と地域との希望が合致しない「ミスマッチ」が原因としています。
この問題について、総務省から委託を受けて現役隊員をサポートをする藤井裕也さん(32)は、隊員と受け入れ自治体の双方に課題があると言います。

例えば、東北地方のある牧場で情報発信業務を受け持った隊員が、赴任早々様々な提案をしたものの、牧場側から「何も知らずに何ができる?」と言われ関係が悪化。
この場合、まず自治体に隊員と牧場との間を取り持つ努力が足りなかったと藤井さんは指摘します。

こういった問題を解決するためには、双方の理解が得られるよう自治体が関係者間の十分な議論を促すなど、より充実したサポートが求められます。

逆に、隊員に地域から学ぼうという姿勢が薄く、一方的に「変えてやる」と意気込んで反感を買うケースも少なくないのだそうです。
藤井さんは「協力隊に応募する際は、役場に『自分に何をして欲しいのか』を聞くべきです。そして地域を訪ね、地元の人や先輩隊員と話しましょう。泊まりで行って、飲みながら語り合えば、見えてくるものもあるはず」と、両者の課題に言及しています。

2021年度には「地域おこし協力隊インターン」を新たに創設。この中では、隊員としての実際の活動や生活がより具体的にイメージできるよう、数週間から数か月の間、実際に地域おこし協力隊と同様の活動に従事することが可能です[*4]。

地方自治体の制度や仕事探し

プレ移住の「おためしナガノ」や多拠点生活も[*5]

最近では地方移住のほかに、都市か地方かといった二者択一ではなく、その両方に足場を置く多拠点生活のスタイルなど、様々な地方とのつきあい方が生まれています。

コロナ禍でテレワークがスタンダードになった今、どこに住みどのようなスタイルで暮らしを立てるかを、より自由に考えられる時代になりつつあります[*3]。また、話題のワーケーションを含め、移住促進のための補助金や制度を整備している自治体が増えてきました。

「おためしナガノ」は、長野県を「仕事場」にしたいIT関連の法人や個人が、最大約5か月の「おためし」を利用できる県の政策で、オフィス利用料や引越し代、交通費等が補助されます。
この企画にはこれまで毎年、ひと組3人で12組程度の募集がされてきました。

いきなり、移住やサテライトオフィスを開設することなどをためらう時には、5か月間の「プレ移住」にトライすることもひとつの方法でしょう。また、都市と地方の両方に足場を置く「多拠点生活」のスタイルなど、様々な「田舎」とのつきあい方が生まれています。

どこに住み、どんな仕事で暮らしを立てるかを、より自由に考えられる時代になりつつあります[*3]。

地方移住や起業のための補助金[*6]

ここでは地方移住を考える人や、地方での起業、就業をする方への国の補助金制度をご紹介します。

◇起業支援金
地域の課題に取り組む「社会性」「事業性」「必要性」の観点をもった起業(社会的起業)を支援。最大200万円。

◇移住支援金
地域の中小企業等への就業やテレワークで移住前の業務の継続や社会的起業等をする移住者を支援。最大100万円(単身の場合は最大60万円)。

◇起業支援金 + 移住支援金
地方へ移住して社会的事業を起業した場合。最大300万円(単身の場合は最大260万円)。

上記の詳しい内容は、各道府県や市町村に問い合わせることも可能です。

リモート市役所で移住情報をゲット![*7]

長野県佐久市では2021年に、日本初となる行政主導のオンラインサロンを開始しました。
ビジネスチャット「Slack」を使い、移住や暮らしの相談などに対応するリモート市役所では佐久市への移住以外の相談も可能です。
「子育て課」「魅力はどこ課」「写真課」など移住に関する複数の課があるチャット市役所は、参加をせずにやりとりを見るだけの利用も可能で参加者の本音トークに触れることができます。

◇佐久市HP「リモート市役所」

https://www.city.saku.nagano.jp/outside/citypromotion/salon/?gclid=EAIaIQobChMIypOwi4OK7wIVwlBgCh24wAIGEAMYAyAAEgJyEfD_BwE

住み続けられるまちづくりを[*8]

図15: だれもがずっと安全に暮らせて、災害にも強いまちをつくろう
出典: UNICEF HP「SDGs17の目標」
https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/11-cities/

 

SDGsによるまちづくりと、若者の意向

SDGsのゴール11の3では、「2030年までにだれも取り残さない持続可能なまちづくりをすすめる」としています。

また、同じくゴール11のaでは「国や地域の開発計画を強化して、都市部とそのまわりの地域と農村部とが経済的、社会的、環境的にうまくつながりあうことを支援する」とあります。

それではここで、首都圏に人が集中する理由について見てみましょう。
図16、図17を見ると、東京圏への転入超過数の多数を10代後半と20代の若者が占め、進学や就職がきっかけになっているケースが多いと考えられます。

図16: 東京圏の転入超過数
出典: 国土交通省HP「東京一極集中の是正方策について」
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001374933.pdf, p.7

新しい風を呼び込む「移住者」への期待[*3]

朝日新聞の記事「田舎に出て一旗揚げる! 地方移住、現状と課題は」には、移住者に対する地方の方の期待の声も述べられています。

新潟県十日町市の山間部にある池谷集落を訪ねると、82歳のベテラン農家、曽根武さんが「みんな移住した若者を信頼している。夢に近づくため、もっと来て欲しい」と語りました。

夢とは「地域の復活」です。

一時13人まで減った集落は今、23人に。盆踊りも再開することができました。
集落には以前、「よその人」への抵抗感があったと言います。
それが、2004年の中越地震で被災し、ボランティアの助けを借りる中で皆の意識が変わっていきました。

「だまされないか?」「どうせすぐいなくなる」。そんな都会の人への警戒心は、通い続ける人たちと一緒に汗を流すうちに消えたと言います。

下の図からもわかるように、若い世代が上京を決意した理由は進学以外に「東京への憧れ」や「地元や親元を離れたかった」とあげる若者も多く、特にこの点は女性で高くなっています。

Q.あなたが東京都に上京するときに考えていた目的や理由は何ですか。(東京圏以外出身:18~34歳)

図17: 東京都で暮らし始めた理由・目的
出典: 首相官邸HP「東京一極集中の動向と要因について」
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/meeting/senryaku_kensyou/h31-1-28-shiryou4.pdf, p.26

地方の課題としてあげられることが多い閉塞感には「移住者」という新しい風が吹き込まれることでの好循環が期待されます。

故郷を巣立った若者が「また戻りたい」と思えるまちづくりや東京一極集中への対策が、活気ある未来に繋がることは間違いないでしょう。

 

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参照・引用を見る

*1

国土交通省HP 「東京一極集中の是正方策について」
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001374933.pdf, p.4, p62, p63, p66

*2

内閣官房HP「東京一極集中是正に資する施策の分類」https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/resilience/dai50/siryo3-1.pdf, p.7

*3

朝日新聞DEGITAL HP「田舎に出て一旗揚げる! 地方移住、現状と課題は」
https://www.google.co.jp/amp/s/www.asahi.com/amp/articles/ASM1R4TS5M1RULZU00H.html

*4

総務省HP「地域おこし協力隊とは?」
https://www.chiikiokoshitai.jp/about/

*5

株式会社CREEKS(令和2年度長野県おためしナガノ運営業務受託事業者)HP「おためしナガノ」
https://otameshinagano.com/

*6

内閣官房・内閣府 総合サイト「地方へ移住しよう 地方で起業しよう」
https://www.chisou.go.jp/sousei/shienkin_index.html

*7

佐久市HP「リモート市役所」
https://www.city.saku.nagano.jp/outside/citypromotion/salon/?gclid=EAIaIQobChMIypOwi4OK7wIVwlBgCh24wAIGEAMYAyAAEgJyEfD_BwE

*8

UNICEF HP「SDGs17の目標」
https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/11-cities/