低炭素社会とは?カーボンニュートラルの実現に向けた国内外の取り組みと私たちができること

低炭素社会とは?カーボンニュートラルの実現に向けた国内外の取り組みと私たちができること

産業革命以降、温室効果ガスの増加によって地球温暖化問題が深刻化しています。そのような状況下で、温室効果ガス削減のために、各国は低炭素社会作りのための取り組みを加速させています。

それでは、低炭素社会とは具体的にどのような考え方なのでしょうか。また、低炭素社会の実現に向けて、日本を含む各国では、どのような取り組みが行われているのでしょうか。

低炭素社会とは

ニュースや新聞でよく耳にする低炭素社会ですが、そもそもどういった意味なのでしょうか。

低炭素社会とは、

「温室効果ガスの排出を自然が吸収できる量以内にとどめる(カーボン・ニュートラル)社会」

のことを言います[*1]。

温室効果ガスには、メタンや一酸化二窒素など炭素以外もありますが、主な地球温暖化の原因としては二酸化炭素で、およそ60%を占めています[*2]。

実際、二酸化炭素排出量は世界平均気温上昇量と比例関係にあり、二酸化炭素排出量が増えれば増えるほど地球温暖化が進んでしまうとされています[*3]。

そのため、二酸化炭素の排出は抑えながらも、生活を維持できる理想の社会として、現在多くの国で低炭素社会実現に向けた取り組みが求められています。

低炭素社会の3つの理念

環境省は、低炭素社会を目指す上で、3つの基本的理念を念頭に置く必要があるとしています。

1つ目が「カーボン・ミニマムの実現」です。

カーボン・ミニマムとは、温室効果ガスの排出量を減らすために、あらゆる主体が省エネルギー化や資源生産性の向上を目指すという考え方です。

2つ目は、「豊かさを実感できる簡素な暮らしへの志向」です。

産業革命以降、人々は豊かさを求めて大量生産、大量消費を行ってきました。しかしながら、現在の消費生産スタイルでは、地球温暖化がますます進展してしまいます。

そのため、豊かさは維持しつつも既存の消費生産スタイルから変革を目指すという考え方が求められます。

3つ目は、「自然との共生」です。

低炭素社会の形成には、温室効果ガスの排出量を減らすとともに、森林などによる二酸化炭素の吸収も不可欠です。そのために、自然を保護し、共生していくことが重要となります。

低炭素社会に向けた海外の現状と取り組み

以上のような考え方に基づき、低炭素社会に向けて2050年までにカーボン・ニュートラルを実現すると表明する国が多くあります。

図1: 2050年までのカーボン・ニュートラルを表明した国
出典: 資源エネルギー庁「2020—日本が抱えているエネルギー問題(前編)」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/energyissue2020_1.html

カーボン・ニュートラルとは、人間活動によって温室効果ガスを吸収・削減することによって排出した分をプラスマイナスゼロにするという考え方です。先述したカーボン・ミニマムと似た考え方であり、低炭素社会実現に向けて必要な考え方となります。

このように、低炭素社会を目指す国は現在多く存在します。それでは実際に、低炭素社会を実現するため、各国では具体的にどのような取り組みが行われているのでしょうか。

ノルウェーにおける低炭素社会に向けた取り組み

環境先進国とも呼ばれるノルウェーでは、急峻な地形を利用して水力発電を行うことで、温室効果ガスの削減とともに、電力の安定供給を実現しています。

図2: 主要国の一次エネルギー自給率比較(2018年)
出典: 資源エネルギー庁「2020-日本が抱えているエネルギー問題(前編)」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/energyissue2020_1.html

実際、図2のように、ノルウェーでは国内のエネルギー需要に対して供給量はおよそ7倍と、電力の国内自給を達成しています。また、国内需要のおよそ95%を水力発電でまかなっており、自然エネルギーの有効活用によって低炭素社会を作り出しています[*4]。

さらにオスロ市では、2050年までの温室効果ガスゼロ目標に向けて、一般車両の市の中心部への乗り入れを禁止しています。

そして代替手段としての電動自転車への補助金支給、電気自動車普及に向けたインフラ整備など、行政主導で様々な取り組みが行われています。

開発途上国における低炭素社会に向けた取り組み

開発途上国の中には、財政的な制約や、経済成長第一のために低炭素社会実現に向けた取り組みが進んでいない国もあるのが現状です。しかしながら、経済発展により環境問題にも取り組み始めるようになっている国や、自国のみでは取り組みが不可能でも、日本を含む諸外国の支援により、カーボン・ニュートラル実現に向けた取り組みを実践する国が増えてきています。

例えば、中国では低炭素社会作りに向けて、生態城と呼ばれる大規模な環境都市(エコシティー)作りが行われています。エコシティーとは、廃棄物循環システム、上下水道システムによる再生水の利用等に加え、低炭素化機器を用いて CO2を極力出さない都市のことを言います。

具体的な取り組みとしては、「公共交通機関網、スマートグリッドの整備や電気自動車等ゼロカーボンビークルの利用、住居・ビルの省エネ化、省エネ電気製品の使用による化石燃料の消費抑制のほか、太陽光発電等自然エネルギーの利用によりCO2の排出を最小限にする」取り組みです。

2010年時点で河北省保定市や広東省新圳市を含む13の都市で実施されています[*5]。

また、日本の支援により低炭素化に向けた取り組みを行う国としては、タイが挙げられます。

図3: コンビニエンスストアにおける空調・冷蔵ショーケースの省エネ
出典: 環境省地球環境局「環境インフラ海外展開の動向と支援について」
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/MOE.pdf, p.10

タイのバンコクやその近郊におけるコンビニエンスストアを対象として、空調及びショーケースを高効率の省エネ機器に代替することによってCO2排出量を削減することを目的とした事業が行われました。当事業では、日本側からファミリーマートが参加して実施されるなど、官民一体となって取り組んでいます(図3)。

このように、先進国、途上国を問わず多くの国で、広く低炭素社会作りに向けた取り組みが行われています。

低炭素社会に向けた日本の取り組み

日本でも、低炭素社会の実現に向けて、行政や企業など様々な主体が積極的な取り組みを行なっています。それでは、実際にどのような取り組みが行われているのでしょうか。

行政における取り組み

低炭素社会を作るためには、CO2を排出しない自然エネルギーの導入量を拡大する必要があります。そこで政府は、非化石エネルギー源の利用拡大に向けて「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」、通称「エネルギー供給構造高度化法(高度化法)」を制定しています。高度化法では、小売電気事業者に対して、供給する電気のうち、非化石エネルギー源による電力が占める割合を2030年までに44%にすることが求められています[*6]。

非化石エネルギー源を44%以上に後押しするため、様々な政策が実行されています。例えば、自然エネルギーの導入を促進するため、2012年から「固定価格買取(FIT)制度」がスタートしました[*7]。FIT制度とは、自然エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度です[*8]。FIT制度によって、太陽光発電を筆頭に、風力発電や水力発電、地熱発電、バイオマス発電施設について、2020年12月末時点で9,405.5万kW分認定を受けています(図4)。

図4: FIT制度認定状況
出典: 資源エネルギー庁「固定価格買取制度 情報公開用ウェブサイト」
https://www.fit-portal.go.jp/PublicInfoSummary

また、2018年5月には、非化石価値取引市場(JEPX)が創設されるなど、自然エネルギーの更なる促進に向けた制度が導入されています。非化石価値取引市場(JEPX)とは、FIT電源由来のエネルギー源調達を証明する手段として創設された市場であり、これによって44%目標の達成を後押しようとしています。

図5: 非化石価値取引市場について
資源エネルギー庁「非化石価値取引市場について」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/seido_kento/pdf/044_03_02.pdf, p.2

民間企業による取り組み

行政のみならず、民間企業による取り組みも多く行われています。

例えば、製薬会社のエーザイ株式会社では、低炭素社会形成に向けて、研究開発や生産活動、営業活動など様々な側面からCO2の削減に取り組んでいます(図6)。

図6: 国内グループのCO2排出量
出典: エーザイ株式会社「低炭素社会形成への取り組み」
https://www.eisai.co.jp/sustainability/environment/low-carbon/index.html

具体的には、EAファーマ福島事業所でのコ・ジェネレーションシステム(熱源によって電気と熱を同時に作り出すシステム)の導入によるCO2排出量の削減や、各国の現地工場における太陽光発電の導入を行なっています。

また、オフィス系職場における空調の温度設定管理や不要時の消灯、長時間離席時の電源オフなど節電、デマンドコントローラーの設置によるピーク電力管理などによりCO2排出量の削減に努めるとともに、営業車をハイブリッド車へ切り替えるなどにより、低炭素社会実現に向けた取り組みを継続的に行なっています。

図7: 営業用車両からのCO2排出量
出典: エーザイ株式会社「低炭素社会形成への取り組み」
https://www.eisai.co.jp/sustainability/environment/low-carbon/index.html

低炭素社会作りに向けた取り組みを行なっている企業は多数ありますが、次に二輪車などを製造するヤマハ発動機株式会社の事例を見ていきます。

ヤマハ発動機では、生産活動や物流におけるCO2排出量削減を行うとともに、製品から排出されるCO2の排出量削減に取り組んでいます。

例えばヤマハ発動機では、「燃費・環境性能」を高めたエンジン設計思想BLUE CORE(ブルーコア)を掲げて、エンジンの改良を行っており、2050年までに販売台数当たりのCO2排出量を2010年比50%削減するとしています。

図8: 販売台数当たりのCO2排出量目標
出典: ヤマハ発動機株式会社 「「低炭素社会」の実現に向けて」
https://global.yamaha-motor.com/jp/profile/csr/environmental-field/low-carbon-society/#sec-01-03

実際、2019年には、2010年と比較して既に13.1%削減できており、今後も目標に向けた取り組みが行われていくとされています(図8)。

低炭素社会に向けて私たちのできること

ここまで、各国政府や企業の取り組みについて見てきました。しかしながら、低炭素社会を実現するためには、政府や企業のみならず、私たち一人ひとりが低炭素社会作りに向けた取り組みを実践することが不可欠です。

具体的には、温室効果ガス排出の少ないエコ商品の購入や、近場に行く場合に自動車ではなく自転車や徒歩などで行くなどが考えられます。また、企業全体としての取り組みも重要ですが、所属する職員一人ひとりの節電意識も不可欠です。実際、エーザイ株式会社では2016年から2019年にかけて、空調の温度管理設定や不要時の消灯、長時間離籍時の電源オフなどの取り組みにより、オフィス活動由来のCO2排出量を3,600トンから2,737トンまで減らすことに成功しています[*9]。

政府や企業の取り組みだけに任せるのではなく、一人ひとりが環境に良い選択をすることが、低炭素社会の実現の鍵となるでしょう。

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参照・引用を見る

*1

環境省「低炭素社会づくりに向けて(論点整理)」
https://www.env.go.jp/earth/info/pc071211/jp.pdf, p.5

*2

日本原子力文化財団「「原子力・エネルギー」図面集 温室効果ガスの地球温暖化への寄与度」
https://www.ene100.jp/zumen/2-1-2

*3

地球環境研究センター「なぜ低炭素社会が必要かー気候変動リスク管理の観点からー」
https://www.nies.go.jp/event/sympo/2014/files/program_genko/2014_slide_a02.pdf, p.8

*4

マイ大阪ガス「低炭素社会の実現に向けて世界をリードするノルウェー」
https://services.osakagas.co.jp/portalc/contents-2/pc/w-energy/report/201802/index.html

*5

杉本勝則「低炭素革命-世界の動向と日本~我が国の低炭素革命に必要とされるもの~」
https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2010pdf/20101201057.pdf, p.65

*6

資源エネルギー庁「さまざまなエネルギーの低炭素化に向けた取り組み」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/ondankashoene/co2sakugen.html

*7

資源エネルギー庁「再生可能エネルギーの歴史と未来」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/saiene/saienerekishi.html

*8

資源エネルギー庁「固定価格買取制度とは」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/surcharge.html

*9

エーザイ株式会社「低炭素社会形成への取り組み」
https://www.eisai.co.jp/sustainability/environment/low-carbon/index.html