砂糖がもたらす思わぬ環境破壊 国内外の課題を把握し生活に活かそう

砂糖がもたらす思わぬ環境破壊 国内外の課題を把握し生活に活かそう

身近な食品または調味料である砂糖。

砂糖は主にサトウキビとテンサイから作られますが、サトウキビの最大の生産国であるブラジルでは、熱帯雨林アマゾンの森林面積が減少の一途をたどっています。

また、サトウキビは、環境に良いとされるバイオ燃料やバイオプラスチックの原料にもなることから、サトウキビの栽培は今後も世界中で拡大していくことが予想されます。

この記事では、多様な形での利用が進んでいるサトウキビの栽培に伴う環境影響について解説するとともに、サトウキビ栽培を持続可能にするための認証制度についてもご紹介します。

砂糖について

砂糖は、どの家庭でも常備している、私たちの生活に不可欠な食材です。

しかし、紅茶・コーヒーなどに入れるグラニュー糖や料理に使用する上白糖といった家庭用の砂糖は、日本で消費されている砂糖の約10%に過ぎず、残りは全て業務用として消費されています。

業務用の中では、パン・菓子類と清涼飲料で全体の約60%を占め、そのほか乳製品や調味料、佃煮、漬物、薬品などにも使われています(図1)。

図1: 日本における砂糖の用途別構成比(2015年)
出典: 農林水産省「特集1 砂糖(4)」(2016)
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1611/spe1_04.html

砂糖は、熱帯・亜熱帯地域の作物である「サトウキビ」と比較的冷涼な地域の作物である「テンサイ(ビート)」が主な原料で、世界の砂糖の約80%がサトウキビから、約20%がテンサイから生産されています。

そのほか、サトウヤシやサトウカエデなどからも生産することが可能で、メープルシロップを固形化するまで濃縮したメープルシュガーはサトウカエデが原料です[*1]。

サトウキビとテンサイは日本でも生産されており、国産砂糖の割合は年間消費量約200万トンの約4割を占めます。
国産の砂糖のうち、約8割が北海道産のテンサイから、約2割が沖縄県・鹿児島県産のサトウキビから生産されています(図2)。

図2: 日本における国内産砂糖と外国産砂糖の供給量(2009年10月~2010年9月)
出典: 農林水産省「特集2 食材まるかじり(2)」(2011)
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1108/spe2_02.html

一方、日本は、国内で消費している砂糖の約6割を輸入しており、その主要輸入国はオーストラリアとタイです。
これらの国から輸入割合は大きく、オーストラリアが86.6%、タイが10.5%と2カ国だけで全輸入量の95%以上を占めます[*2]。

他方、2021年における世界の砂糖の生産量は、18,135万トンと予測されており、その割合は、第1位のブラジルが25%、第2位のインドが18%、第3位のEUが8%と、3カ国で約半分を占めます(図3)。

図3: 世界における砂糖の生産量予測(2020年10月~2021翌9月)
出典: 独立行政法人 農畜産業振興機構「砂糖の国際需給」(2021)
https://www.alic.go.jp/content/001197029.pdf, p.7

その中でもブラジルは、輸出量が約3,395万トンと突出しており、その量は全世界の砂糖輸出量の約半分にもなります(図4)。

図4: 世界における砂糖の輸出量予測(2020年10月~2021翌9月)
出典: 独立行政法人 農畜産業振興機構「砂糖の国際需給」(2021)
https://www.alic.go.jp/content/001194427.pdf, p.7

サトウキビ栽培による環境問題

アマゾンの森林破壊

次に砂糖の原料であるサトウキビ栽培による環境問題を見ていきましょう。砂糖の生産量第1位であり、世界最大の熱帯雨林アマゾンを擁するブラジルでは、森林面積が一貫して減少し続けています(図5)。

図5: ブラジルの森林面積の推移(1990年~2010年)
出典: 環境省「世界の森林と保全方法 ブラジル連邦共和国」(2012)
http://www.env.go.jp/nature/shinrin/fpp/worldforest/index4-7.html

アマゾンの森林の伐採量は、ブラジル政府による違法伐採対策や森林減少抑制策などによって、2004年の約2万7000km2から2012年の約5000km2まで減少を続け、それ以降は微増傾向でしたが、ほぼ横ばいを維持していました(図6), [*3]。

図6: アマゾン地域での年間森林伐採面積(1988年~2018年)
出典: 一般社団法人 環境金融研究機構「アマゾン流域の森林伐採、再び増加へ。6月は前年同月比6割増。ボルソナロ政権の「資源開発政策」を反映か(RIEF)」(2019)
https://rief-jp.org/ct12/91437

しかし、ブラジルの政権交代による政策転換やコロナ禍の経済を優先する政策などによって、アマゾンの森林破壊が再び進行しています[*4, *5]。

このような森林破壊の原因の一つにサトウキビの栽培地域の拡大があります。

とは言え、ブラジル政府が何もしなかったわけではなく、アマゾン熱帯雨林地域やパラグアイ川上流地域、生物多様性の宝庫であるパンタナール湿地帯などをサトウキビの作付けを禁止する、作付け制限地域に指定しています(図7)。

図7: ブラジルにおけるサトウキビの作付け推進地域と制限地域
出典: 独立行政法人 農畜産業振興機構「ブラジルさとうきび産業の情勢 ~砂糖・エタノールの需給状況と最近の業界動向~」(2010)
https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_000178.html

しかし、サトウキビ畑や大豆畑の拡大に伴い、元々その場所で農場や牧場を営んでいた農場主や牧場主が、玉突きのようにアマゾン地域の南部や南東部に侵入して農地開発を進め、アマゾンの自然環境を脅かしているのです[*6]。

タイの焼き畑による大気汚染[*7]

また、タイでは、サトウキビの収穫作業を効率化するために行われてきた焼き畑が、大気汚染を引き起こすとして問題となっています。

サトウキビは可食部(糖を含む部分)が茎であることから、生産者は収穫時期を迎えたサトウキビを覆う大量の葉を除去して製糖業者へ納品することが必要となります。

小規模な生産者が多いタイでは、サトウキビの収穫機械であるハーベスタを導入している農場が少なく、サトウキビの茎だけ残るように燃やしてしまう生産者が後を絶たないのです。

このような状況を受け、タイ政府は2019年、2022年までに焼き畑の割合を5%以下に抑制する計画を発表しました。

その計画では、小規模農家向けに小型で低価格なハーベスタの導入を支援するほか、サトウキビ畑の大規模化を促進して、大型ハーベスタの導入を推進することも盛り込んでいます。

それにより、焼き畑による大気汚染の低減、焼けてしまっていたサトウキビの削減による品質向上、効率化によるサトウキビ農家の収益増加などが期待できるとしています。

日本の南西諸島における富栄養化による生態系破壊[*8]

日本の鹿児島から沖縄にかけて連なる南西諸島でも、サトウキビ栽培による環境破壊が起きています。

これらの島々の周囲には、1970年代まで裾礁と呼ばれる海岸から裾のように延びて沿岸を縁取るように発達したサンゴ礁があり、その縁の内外にたくさんのサンゴと海洋生物が繁殖していたといいます。

しかし現在、縁の外側ではサンゴを見ることはできますが、縁の内側ではサンゴはおろか生き物もほとんど見ることはできません。

その原因となったのが、サトウキビ栽培で使用された過剰な肥料です。

肥料を含んだ雨水が海に流れ込んだり、肥料を含んだ地下水などが海岸や海底から湧き出したりしたことで、周囲の海が富栄養化し、サンゴが減少・死滅してしまったのです。

その島々の一つである与論島では現在、本当に必要な時期にだけサトウキビへ肥料を与える取り組みを始め、海に流れ込む肥料の削減を図っています。

これは、サトウキビが成長段階によって、栄養を多く吸収する時期があったり、ほとんど栄養を吸収しない時期があったりすることから考え出されたものです。

そして、類似した状況にある他の島々でも活用できるよう、この知識を纏めた「サトウキビカレンダー」を制作し、その普及を図っています。

バイオ燃料とバイオプラスチックの現状と課題

バイオ燃料について

ブラジルの森林破壊が進んでいる理由の一つとしてサトウキビの栽培を挙げましたが、ブラジルのサトウキビは、砂糖の原料としてよりもむしろバイオエタノールの原料として栽培されることが多くなっています(図8)。

図8: サトウキビの用途別生産量と砂糖生産量の推移(2013年~2019年)
出典: 独立行政法人 農畜産業振興機構「ブラジルのサトウキビ・砂糖の生産見通し」(2018)
https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_001818.html

バイオエタノールは、生物資源(バイオマス)から生産された再生可能エネルギーである「バイオ燃料」の一つで、サトウキビやテンサイのほか、トウモロコシやサツマイモ、ムギなどからも製造されます[*9]。

ガソリンの代替品として自動車用燃料などに広く利用されており、ブラジルではガソリンの約半分、米国ではガソリンの約10%がバイオエタノールに代替されています[*10]。

植物が原料のバイオ燃料は、環境に良いとされていますが、それは、生産段階で大気中からCO2を吸収しているため、利用段階でCO2を排出しても、全体としてCO2を増加させない「カーボンニュートラル」な燃料であると位置付けられているからです(図9), [*11]。

図9: 化石燃料(左)とバイオ燃料(右)の利用によるCO2の増減
出典: 国立研究開発法人 国立環境研究所「バイオ燃料」(2017)
https://tenbou.nies.go.jp/science/description/detail.php?id=107

しかし、CO2を持続的に吸収している森林を破壊してバイオ燃料を生産しても、本来森林に吸収されるはずだったCO2が大気中に残ってしまうことになるので、CO2の削減には繋がりません。

また、バイオ燃料は、原油価格が高騰すると、その割安感から需要が高まり、食料・飼料価格の高騰を招く傾向があります。

実際、2006年から2008年には、原油価格の高騰によって小麦・トウモロコシ・大豆の市場価格が最大3倍近くまで跳ね上がり、これらを原料とする加工食品やこれらを飼料とする畜産品の価格が上昇し、さらにはバイオ燃料の原料となる穀物への転作によって様々な農作物の価格も上がりました[*12]。

バイオプラスチックについて

サトウキビは、「バイオプラスチック」と呼ばれる生物由来のプラスチックの原料としても利用されています。

バイオプラスチックは、有限な化石燃料を原料とせず、種類によっては生分解性(自然界で水と二酸化炭素にまで分解される性質)を持つプラスチックです。

バイオプラスチックもバイオ燃料と同じく、カーボンニュートラルとされていますが、森林破壊や食料との競合の問題など、バイオ燃料と同じ課題を抱えています[*13]。

有望性も課題もあるバイオプラスチックですが、今の所、その生産量は、2019年で211万トン、2024年の予測でも242万トンとプラスチックの全生産量である約3億トン(2015年)に対して1%にも達していません(図10)。

そのため、プラスチックの海洋汚染やマイクロプラスチックの問題など、プラスチックに関する課題を解決するための代替物となるのは、まだまだ先の話というのが現状です[*14]。

図10: 世界のバイオプラスチックの製造能力(2018年~2024年)
出典: 環境省「バイオプラスチックを取り巻く国内外の状況~バイオプラスチック導入ロードマップ検討会参考資料~」
http://www.env.go.jp/recycle/mat052214.pdf, p.6

サトウキビ栽培の持続可能性向上を目指した認証制度

世界自然保護基金(WWF)は、上記のように、多くの問題・課題があるサトウキビやその関連製品(砂糖、バイオエタノール、バイオプラスチックなど)に対して、社会的・環境的・経済的な持続可能性の改善を目的に、サトウキビ栽培を対象としたBonsucro認証を2005年に開始しています。

Bonsucro認証では、例えば、以下のような認証基準を設定して審査し、農家や製糖企業に認証を与えています[*15]。

  • 労働者の最低年齢:15歳以上
  • 賃金:法定最低賃金と同等以上
  • 窒素及びリン肥料の施用:年間120kg/ha以下
  • 砂糖1kg当たりの水消費量:20kg以下
  • サトウキビ1kg当たりの水消費量:130kg以下
  • サトウキビ1トン当たりの輸送エネルギー:50MJ以下

2019年の報告では、全世界の25%のサトウキビ畑、約1300万トンの砂糖が同認証を取得しているとのことです[*16]。

しかし、日本では、Bonsucro認証を受けた製品を目にすることはほぼありません。

そのため、何気なく購入した砂糖や、環境に良いとして利用したバイオ燃料やバイオプラスチックが森林破壊などの原因となっていたということもあり得ます。

そのようなことを回避するためには、手間の掛かることですが、自分たちが利用しているものがどのように生産・輸送されたのかを確認することが大切です。

ただし、お菓子に使用されている砂糖などの加工食品の原材料については、大手や環境問題に力を入れている一部の食品会社以外にトレーサビリティはなく、会社に直接問い合わせてもトレーサビリティの情報を取得できないことがあります[*17]。

しかし、商品としての砂糖やバイオプラスチックなどは、ほとんどの場合でトレーサビリティの情報を確認できるので、生産地の歴史や輸送会社の情報を調べてみるのも良いかもしれません。

このような取り組みの積み上げこそが、生産・輸送を担う国や企業の環境対策の改善に繋がっていくのではないでしょうか。

また、インターネットなどで情報を集めると、Bonsucro認証を取得した材料で製品開発を行っている企業も見つかりますので、これを機会に探してみてはいかがでしょうか。

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参照・引用を見る

1.

精糖工業会「砂糖の基礎知識」
https://seitokogyokai.com/knowledge/

2.

独立行政法人 農畜産業振興機構「砂糖の国際需給」(2021)
https://www.alic.go.jp/content/001197029.pdf, p.16

3.

環境省「世界の森林と保全方法 ブラジル連邦共和国」(2012)
http://www.env.go.jp/nature/shinrin/fpp/worldforest/index4-7.html

4.

一般社団法人 環境金融研究機構「アマゾン流域の森林伐採、再び増加へ。6月は前年同月比6割増。ボルソナロ政権の「資源開発政策」を反映か(RIEF)」(2019)
https://rief-jp.org/ct12/91437

5.

世界自然保護基金(WWF)「コロナ禍で森林破壊は悪化したか?」(2021)
https://www.wwf.or.jp/staffblog/news/4599.html

6.

丸山浩明「ブラジルのバイオ燃料生産とその課題」(2012)学校法人 立教大学
https://rikkyo.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=6334&item_no=1&attribute_id=18&file_no=1, p.70, p.71

7.

独立行政法人 農畜産業振興機構「タイにおける砂糖産業の動向」(2019)
https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_001986.html

8.

世界自然保護基金(WWF)「農地からサンゴ礁を守る!サトウキビカレンダーを作成」(2018)
https://www.wwf.or.jp/activities/activity/3783.html

9.

国立研究開発法人 国立環境研究所「バイオエタノール」(2017)
https://tenbou.nies.go.jp/science/description/detail.php?id=6

10.

NPO法人 国際環境経済研究所「バイオ燃料の現状と将来(1)」(2020)
https://ieei.or.jp/2020/10/expl201027/

11.

国立研究開発法人 国立環境研究所「バイオ燃料」(2017)
https://tenbou.nies.go.jp/science/description/detail.php?id=107

12.

国立国会図書館「食料と競合しないバイオ燃料」(2008)
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_1000564_po_0627.pdf?contentNo=1,p.2

13.

環境省「バイオプラスチックを取り巻く国内外の状況~バイオプラスチック導入ロードマップ検討会参考資料~」
http://www.env.go.jp/recycle/mat052214.pdf, p.4, p.14, p.15

14.

国立研究開発法人 国立環境研究所「プラスチック資源循環とマイクロプラスチックを巡る化学物質管理に資する研究展開」(2020)
https://tenbou.nies.go.jp/science/institute/region/presentation/regionalERsymposium_20200213_rev.pdf, p.6, p.7, p.10

15.

環境省「国際的な環境認証および指標の状況」
https://www.env.go.jp/policy/env-disc/com/com_pr01/mat04_2.pdf, p.5

16.

経済産業省「バイオマス燃料の安定調達・持続可能性等に係る調査」(2019)
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H30FY/000087.pdf, p.69

17.

自然電力株式会社「万一、食品事故が起こったら? 私たちの健康を守る食品トレーサビリティの仕組みを知ろう」(2020)