先進国と途上国のCO2排出量の現状と脱炭素化対策、最新の数字でどこまで進んでる?

世界のCO2排出量は、年々増加しています。2020年は新型コロナウイルス流行による経済停滞の影響で減少したものの、2021年は増加に転じる見込みです(図1), [*1]。

図1: 世界のCO2排出量の推移(1960~2020年)
出典: 国立研究開発法人 海洋研究開発機構(JAMSTEC)「コロナ禍によるCO2等排出量の減少が地球温暖化に与える影響は限定的」(2021)
http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20210507/

しかし、世界のCO2排出量だけを見ても、どのような状況の国で排出量が多く、どのような人間の活動がCO2を多く排出しているのか分かりません。

そこでこの記事では、CO2排出量を様々な観点から検討するとともに、先進国と発展途上国、世界各国と日本の間で比較することで、CO2削減を妨げる課題や問題、CO2削減に有効な対策などを明確化し、解説していきます。

世界各国の人口・経済規模とCO2排出量

図2: 世界のCO2排出量の国別割合(2018年)
出典: 一般社団法人 日本バルブ工業会「パリ協定実現のため各国2030年目標を引上げ」(2021)
https://j-valve.or.jp/env-info/9650/

世界のCO2排出量の上位は、経済規模が大きい、または人口が多い国が占めています。

CO2排出量は、2018年時点で、多い順に中国、アメリカ、インド、ロシア、日本、ドイツとなっており、それぞれの国の人口規模と経済規模は以下のようになっています(図2, 図3), [*2]。

第1位:中国(第1位の人口規模と第2位の経済規模)
第2位:アメリカ(第3位の人口規模と第1位の経済規模)
第3位:インド(第2位の人口規模と第5位の経済規模)
第4位:ロシア(第5位の人口規模と第12位の経済規模)
第5位:日本(第6位の人口規模と第3位の経済規模)
第6位:ドイツ(第7位の人口規模と第4位の経済規模)

図3: 世界人口の国別割合(2018年)
出典: 電気事業連合会「世界のエネルギー消費と資源」
https://www.fepc.or.jp/smp/enterprise/jigyou/world/index.html

人口と経済規模がCO2排出量に影響するのは、人口が多いほど経済規模が大きい傾向があり、経済規模が大きいほどエネルギーの消費を伴う生産・流通・消費がより活発であることから当然の結果です。

増加が続くCO2排出を止めるため、世界の温室効果ガス排出量の約86%を占める159か国・地域の間で締結されたのが「パリ協定」です。

パリ協定では、温室効果ガスの排出量を可能な限り早くピークアウトさせ、21世紀後半には、排出量と森林などによる吸収量のバランスをとること(カーボンニュートラル)を目標にしています[*3]。

その実現のため、パリ協定では、全ての国が自発的に温室効果ガスの排出削減目標を設定し、提出することが義務付けられています(図4)。

例えば、2030年目標として、日本は2013年度比で46%、米国は2005年比で50~52%の温室効果ガス削減を実現すると発表しました。最もCO2排出量が多い中国は、CO2排出量を2030年までにピークアウトし、GDP当たりのCO2排出量を65%以上削減するとしています。

ただし、これらの削減目標は、それぞれの国が自発的に設定するものであり、現時点では2050年における世界全体のカーボンニュートラルを実現するものとはなっていません。

また、CO2削減が義務付けられていた「京都議定書」とは異なり、パリ協定では、CO2削減が努力目標となっているため、CO2削減の積極性が薄い国には実効性が低いという課題があります[*3]。

図4: 世界各国の温室効果ガス排出削減の2030年目標
出典: 外務省「日本の排出削減目標」(2021)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ch/page1w_000121.html

パリ協定の下、主要国では、発電などのエネルギー供給における再生可能エネルギー(再エネ)の比率増加やエネルギー消費効率の改善が進められています。

2016年までの進捗状況について、日本と英国は着実に温室効果ガスの排出量削減が進展していますが、米国は温室効果ガスの排出量が削減目標よりも多くなっています。フランスとドイツも排出量が削減目標よりも多くなっていますが、欧州としては、目標通りに削減が進んでいます(図5)。

図5: 主要国の温室効果ガス(GHG)削減の進捗状況(2016年)
出典: 経済産業省「「パリ協定」のもとで進む、世界の温室効果ガス削減の取り組み① 各国の進捗は、今どうなっているの?」(2019)
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/pariskyotei_sintyoku1.html

先進国と発展途上国のCO2排出量

日本や欧州各国などのCO2排出量は、完全に目標通りというわけではありませんが、削減が進んでいます。

その一方、中国やインド、ブラジルなどでは、CO2排出量が増加し続けています(図6)。

図6: 主な国のCO2排出量の推移(1990~2018年)
出典: 環境省「co2_emission_2018」(2020)
http://www.env.go.jp/earth/201222_co2_emission_2018.pdf, p.5

しかし、インドとブラジルは、一人当たりのCO2排出量がそれぞれ1.71トンと1.94トンと少なく、その量は日本の8.55トンと比べると5分の1ほどです(図7)。

CO2の総排出量は多いものの、一人当たりのCO2排出量は少ない国は、インドやブラジルのほか、インドネシアやメキシコなどがあります(図2, 図7)。

これらの国は、経済発展が続いており、今後もCO2排出量が増加していくと考えられますが、発展途上国に自助努力のみでCO2の排出削減を求めるのは無理があります。

図7: 主な国の一人当たりのCO2排出量(2018年)
出典: 環境省「co2_emission_2018」(2020)
http://www.env.go.jp/earth/201222_co2_emission_2018.pdf, p.2

また、各国のCO2排出量には、輸入製品の生産過程で排出されるCO2はカウントされておらず、近年、先進国がCO2排出量が大きい工場などを発展途上国へ移転したことで、発展途上国のCO2排出量が増大しているという側面があります[*4]。

そのため、CO2を製品生産国の排出量としてカウントする現行の「生産ベースCO2排出量」に対して、CO2を製品消費国の排出量としてカウントする「消費ベースCO2排出量」にも注目する必要があります(図8)。

図8: 消費ベースCO2排出量の考え方
出典: 経済産業省「CO2の排出量、どうやって測る?~“先進国vs新興国”」(2020)
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/co2_sokutei.html

そこで、消費ベースCO2排出量から生産ベースCO2排出量を引いたものを「貿易に体化されたCO2排出量」として注目すると、中国などのCO2排出量が大きい国は輸出製品の生産によってCO2排出量が増大し、製造業を他国に依存している欧州は製品を輸入することで中国などのCO2排出量を増大させていることが分かります(図9)。

図9: 主な国・地域のCO2の正味輸入量(2000~2014年)
出典: 経済産業省「CO2の排出量、どうやって測る?~“先進国vs新興国”」(2020)
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/co2_sokutei.html

従って、先進国は、発展途上国がCO2排出を抑えつつ経済発展も進めていけるように支援していくことが必要です。

そのための枠組みが国連気候変動枠組条約(UNFCCC)で、先進国の義務として途上国への資金供与や省エネ技術の移転推進などが定められています[*5]。

その一つに、温室効果ガス削減・緩和と気候変動の影響への対処・適応を支援するために設立された多国間基金「緑の気候基金(Green Climate Fund: GCF)」があります。

GCFでは、アジア太平洋地域やアフリカなどの貧困国を中心に、洪水や干ばつなどの気候変動に対応可能なインフラ整備や省エネプロジェクトなどへの投資、自然エネルギーの導入支援などが行われています[*6]。

日本も、様々な途上国支援を打ち出しており、GCFには米国に次ぐ15億ドルの拠出を表明しました。また、「二国間クレジット制度」を利用した、発展途上国への低炭素技術の移転なども行っており、発展途上国のCO2削減に貢献するとともに、日本のCO2排出量の削減目標に活用しています[*7]。

なお、二国間クレジット制度は、途上国支援による温室効果ガスの排出削減の成果を「クレジット」として相手国と分け合うことができる制度です(図10)。

図10: 二国間クレジット制度の仕組み
出典: 環境省「二国間クレジット制度 (Joint Crediting Mechanism (JCM))の最新動向」(2016)
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/mechanism/jcm_dev1602_1.pdf, p.2

日本のCO2排出源と部門別CO2排出量の他国との比較

2050年のカーボンニュートラルを実現するためには、先進国自体もさらなるCO2削減が必要です。

従って、先進国は、自国のどのような活動がどのくらいのCO2を排出しているのかを見極め、CO2の排出源となっている活動の各々に対策を講じていくことが必要となります。

日本の直接的なCO2排出量(電気・熱配分前排出量)は、発電所などのエネルギー転換部門が42%で最も多く、製造業が中心の産業部門が27%、自動車や鉄道、航空機などによる人・物の輸送を行う運輸部門が19%を占めます(図11左図)。

図11: 日本の部門別CO2排出量(2019年)
出典: 環境省「温室効果ガス排出量(確報値)について」(2019)
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-mrv/emissions/yoin_2019_zentai.pdf, p.6

そのため、まずは、発電に伴うCO2排出の削減に注力するのが順当です。

しかし、日本は、東日本大震災を経験したことから、欧州や米国と比べて電源構成における原子力発電の比率が小さく、CO2の排出源となる石炭や天然ガスなどの割合が大きいという課題があります(図12)。

また、再エネで発電した電気を固定価格で買い取る「固定価格買取制度(FIT)」の導入によって、太陽光発電を中心に再エネの比率が高まっていますが、FITの買取費用の増大に伴い、電気料金を通して国民負担が増大しているのも問題です[*8]。

図12: 主な国・地域の電源構成(2017年)
出典: 経済産業省「令和元年度国内における温室効果ガス排出削減・吸収量認証制度の実施委託(環境性能の高い製品・サービス等に関する調査)」(2020)
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000065.pdf, p.8

発電所などが生産した電力は産業部門や家庭部門で消費されるため、発電に伴うCO2排出量を電力の消費者側に配分した際のCO2排出量(電気・熱配分後排出量)も重要です。

その場合、CO2排出量は、多い順に産業部門、運輸部門、小売業や飲食業などのサービス業が中心の業務その他部門、家庭部門となります(図11右図)。

日本における産業部門のCO2排出量が多いのは、欧州や米国に比べて、2次産業の割合が高いためです(図13)。

しかし、上述したような、工場の発展途上国への移転は、自国のCO2の排出削減には繋がるものの、地球全体ではCO2排出量を増やす可能性があります。

図13: 主な国・地域の2次産業の割合(2017年)
出典: 経済産業省「令和元年度国内における温室効果ガス排出削減・吸収量認証制度の実施委託(環境性能の高い製品・サービス等に関する調査)」(2020)
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000065.pdf, p.7

その点、日本は、製造業を高い割合で自国に維持し、全業種でLED照明やコージェネレーションシステムの導入、鉄鋼業でエネルギー効率の高い「実用化段階の最先端技術(Best Available Technology: BAT)」の導入などに取り組み、CO2排出削減を実現してきました。

その結果、日本は、世界最高水準の省エネを達成しましたが、省エネ余地が小さくなってきており、新たな省エネ技術の開発が喫緊の課題です(図14), [*9, *10]。

図14: エネルギー消費効率の世界各国との比較(2018年)
出典: 経済産業省「2050年カーボンニュートラルの実現に向けた需要側の取組」(2021)
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/sho_energy/pdf/030_01_00.pdf, p.9

一方、運輸部門のCO2排出量削減は、これまで自動車の燃費向上やハイブリッド自動車の普及などによって実現してきました。
今後は、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド(PHV)、燃料電池車(FCV)の普及などによってCO2排出削減を進める予定です(図15)。

しかし、EVとPHVに関しては電力が燃料となるため、電源構成の再エネ比率が低い日本では、それほど大きなCO2削減効果が得られないという問題があります。

そのため、日本においては、電源構成における再エネ比率の増加も両輪で進めることが必要です[*10, *11]。

図15: 日本における2019年の次世代自動車の新車販売実績と2030年までの普及目標
出典: 経済産業省「2050年カーボンニュートラルの実現に向けた需要側の取組」(2021)
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/sho_energy/pdf/030_01_00.pdf, p.41

家庭のCO2排出源と地球温暖化対策

家庭部門のCO2排出量も全体の15%と決して小さいわけではありません(図11右図)。

家庭部門のCO2排出量は、燃料種別だと、電力が66%と突出しており、多い順に都市ガス、灯油、LPGと続きます。用途別では、照明・家電製品が45%と最も大きく、暖房用と給湯用も各々約20%を専有しています(図16)。

そのため、家庭部門のCO2排出量を減らすには、電力消費の削減に取り組むことが重要です。

図16: 日本の家庭部門の燃料種別排出量(左図)と用途別排出量(右図)(2019年)
出典: 環境省「温室効果ガス排出量(確報値)について」(2019)
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-mrv/emissions/yoin_2019_zentai.pdf, p.125

とは言え、家庭部門のCO2排出量は、これまで、家庭用機器の効率化や震災後の節電意識の向上などによって減少し続けてきました(図17)。

これらの成果は、トップランナー制度などの政府の施策や省エネ機器を開発してきた企業の努力、個人の節電に対する努力などによって実現してきたものです[*10]。

図17: 世帯当たりエネルギー消費量の推移(1990~2019年)
出典: 環境省「温室効果ガス排出量(確報値)について」(2019)
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-mrv/emissions/yoin_2019_zentai.pdf, p.128

しかし、政府は、2013年から2019年の間に23.3%減少したCO2排出量を、2030年には2013年度比で約66%まで削減する必要があるとしています。その目標に向け、新築住宅に対するZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の推進や省エネ性能の高い設備・機器の導入促進などを図る予定ですが、個々人の様々な取り組みも必要です[*12]。

自転車や公共交通機関をなるべく利用するようにしたり、家電製品の買い替えの際には電力消費が小さいものを選んだりするなど、節電に繋がる行動を取るようにしましょう。

 

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参照・引用を見る

1.

独立行政法人 日本貿易振興機構(JETRO)「IEA、2021年の世界のCO2排出量増加を警告」(2021)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/04/98087ae6ee483b20.html

2.

一般財団法人 国際貿易投資研究所(ITI)「国際比較統計」(2021)
http://www.iti.or.jp/stat/4-001.pdf, p.1

3.

経済産業省「今さら聞けない「パリ協定」 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~」(2017)
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/ondankashoene/pariskyotei.html

4.

経済産業省「CO2の排出量、どうやって測る?~“先進国vs新興国”」(2020)
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/co2_sokutei.html

5.

経済産業省「国連気候変動枠組条約(UNFCCC)とパリ協定の関係について」
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/global2/pdf/UNFCCC.pdf, p.0

6.

経済産業省「緑の気候基金(GCF)について」
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/global2/gcf/gcf.pdf, p.2, p.4, p.12, p.14, p.15, p.16

7.

環境省「途上国向け低炭素技術イノベーション創出事業」(2017)
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/biz_local/h29pamph/05.pdf, p.47

8.

経済産業省「2020―日本が抱えているエネルギー問題(前編)」(2020)
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/energyissue2020_1.html

9.

環境省「温室効果ガス排出量(確報値)について」(2019)
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-mrv/emissions/yoin_2019_zentai.pdf, p.77

10.

経済産業省「2050年カーボンニュートラルの実現に向けた需要側の取組」(2021)
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/sho_energy/pdf/030_01_00.pdf, p.14, p.16, p.25, p.26, p40, p.41, p.42

11.

経済産業省「電気自動車(EV)は次世代のエネルギー構造を変える?!」(2020)
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/ondankashoene/ev.html

12.

環境省「地球温暖化対策計画(案)」(2021)
https://www.env.go.jp/council/06earth/y0620-8b/mat03-2.pdf, p.41, p.42

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