コンバインドサイクル発電とは?世界と日本の火力発電の取り組みと動向の違いを確認しよう

コンバインドサイクル発電とは?世界と日本の火力発電の取り組みと動向の違いを確認しよう

コンバインドサイクル発電とは、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた、火力発電の発電方式の一つです。

従来の火力発電よりも発電効率が高く、CO2排出量も少ないことから日本の火力発電の主力となりつつあります。
さらに、燃料電池と組み合わせたトリプルコンバインドサイクルや石炭火力の高効率化を実現する石炭ガス化複合発電の開発も進められています。

一方で世界では欧州を中心に、CO2排出量の多い火力発電を廃止する動きが進んでいます。
世界と逆行しているように見える日本の火力発電政策ですが、今後どのように変わっていくのでしょう。

この記事では、コンバインドサイクル発電の技術進化と日本と世界の火力発電の将来像についてお伝えします。

コンバインドサイクル発電の仕組みと特徴

火力発電には燃料を燃やして水を沸騰させ、その蒸気でタービンを回す方式と、燃料を燃やして発生させた燃焼ガスによってガスタービンを回す方式の2つがあります。

これらの2つの方式では、タービンを回すための蒸気や燃焼ガスはそのまま捨てられていました。

コンバインドサイクル発電とは、捨てられてしまう熱を上手に活用するためにガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた二重の発電方式です。
まずガスタービンを使って発電し、ガスタービンから出る排気ガスの熱を利用して、蒸気タービンで発電します。
燃料はLNG(液化天然ガス)であることからガスタービンコンバインドサイクル発電とも呼ばれます。

次の図1は、ガスタービンコンバインドサイクル発電の仕組みです。

図1: ガスタービンコンバインドサイクル発電の仕組み
出典: 東京都環境局 「ガスタービンコンバインドサイクル発電の概要」
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/climate/tochi_energy_suishin/index.files/2_GTCC.pdf, p.14

コンバインドサイクル発電は、ガスタービンで発生した排熱を有効利用していることから従来の発電方式と比較して熱効率が高くなります。
熱効率とは、投入した燃料の熱エネルギーがどの程度電力に変換されたのかを示す割合のことです。

従来の火力発電の熱効率が40%強であるのに対し、すでに実用化されている1500℃級のコンバインドサイクル発電の熱効率は59%となっています[*1]。

次の図2は1500℃級のコンバインドサイクルの熱精算図です。
ガスタービン単独では排熱されていた61%の排熱から20%が回収されるので、熱効率は59%に向上します。

図2: 1500℃級コンバインドサイクル発電の熱精算図
出典: 国立環境研究所 環境展望台「コンバインドサイクル発電」
https://tenbou.nies.go.jp/science/description/detail.php?id=10

蒸気タービン単独の火力発電で使用していた化石燃料も不要になるため、同じ燃料で従来の火力発電よりも多くの電気を発電することができます。
そのため、従来の火力発電と比較してCO2排出量が少なくなるのがメリットです。

また、コンバインドサイクル発電は小型の発電機を組み合わせて大きな出力を得ることから、短時間での起動・停止が可能です。
従来の火力発電が定格出力に達するまでに約3時間かかるのに対して、コンバインドサイクル約1時間と、1/3以下のスピードを持っています[*1]。

電力需要の変動に素早く対応することにも長けており、自然エネルギー大量導入時の調整力としても期待されます。

コンバインドサイクル発電はガスタービンを使用するため燃料はLNGですが、石炭を用いたコンバインドサイクル発電の開発も続けられています。固体の石炭ではガスタービンの燃料にはなりませんので、石炭をガス化させるガス化炉を用います(図3)。

図3: 石炭ガス化複合発電(IGCC)の構成例
出典: 国立環境研究所 環境展望台「コンバインドサイクル発電」
https://tenbou.nies.go.jp/science/description/detail.php?id=10

石炭ガス化複合発電(IGCC: Integrated coal Gasification Combined Cycle)は、ガスタービンコンバインドサイクル発電と同様に熱効率が高く、CO2排出量削減に貢献します。

次の図4は燃料ごとのCO2排出係数の比較です。
CO2排出係数とは、1kWhの発電量に対し排出するCO2量の数値のことです。

コンバインドサイクル発電の石炭火力とLNG火力はどちらも、従来型と比較してCO2排出が抑えられていることがわかります。

図4: 燃料種ごとのCO2排出係数
出典: 環境省 「電気事業分野における地球温暖化対策の 進捗状況の評価結果について(2020)」
https://www.env.go.jp/press/files/jp/114277.pdf, p.36

火力発電をめぐる海外の動向や政策

2016年に発行されたパリ協定では、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすることを目標としています[*2]。

パリ協定を受けて、先進国だけでなく途上国も温室効果ガス削減に向けてさまざまな政策を実施しています。
気候変動の対策の一環として、世界各国では火力発電の中でも特にCO2を多く排出する石炭火力を廃止する流れがあります。

図5はIEA(International Energy Agency 国際エネルギー機関)が2020年に発表した、2040年までの世界の電源別発電電力量の変化です。

図5: 2000年〜2040年の世界の電源別発電電力量の変化
出典: 日本原子力産業協会 「世界エネルギー見通し2020年版(2020)」
https://www.jaif.or.jp/cms_admin/wp-content/uploads/2020/12/weo_2020, p.16

公表政策シナリオとは、これまでに発表された目標や政策を全て反映したシナリオのことです。

IEAの予測によると今後は風力・太陽光が電力供給の中心となり、CO2を多く排出する石炭火力は大幅に減少する方向です。
世界の発電電力量自体は増加の見通しですが、各国が表明する温暖化対策を実行すれば石炭、LNG、石油を含む火力発電の割合は低下します[*3]。

欧州主要国では、気候変動対策としてすでに石炭火力の廃止を発表しています。

図6: 主要国の石炭火力政策(概要)
出典: 経済産業省「海外の石炭火力政策動向について(2020)」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/sekitan_karyoku_wg/pdf/004_04_00.pdf, p.1

ドイツでは2038年、イギリスでは2025年、フランスでは2022年までに石炭火力の廃止を予定しており、廃止に向けた法律も制定されています。

産炭国であるドイツでは石炭火力は主要エネルギー源の一つでもあり、2017年時点においても電源構成の約38%と日本や欧州の他の国と比較しても高い割合となっています(図7)。

図7: 欧州各国の電源構成(2017)
出典: 経済産業省「海外の石炭火力政策動向について(2020)」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/sekitan_karyoku_wg/pdf/004_04_00.pdf, p.2

石炭火力への依存度が高いドイツですが、2038年までの全廃を目指して、今後段階的に廃止していく方針です。
他の国のように非効率で老朽化した古い火力発電所を廃止していくのではなく、全ての火力発電所が廃止の対象となっています。

イギリスでは、GHG(温室効果ガス)実質ゼロに向けたシナリオを設定しており、2025年までに石炭火力の廃止を発表しています(図8)。

図8: イギリスのGHG実質ゼロに向けたシナリオ
出典: 経済産業省「欧州電気事業の最近の動向(2020)」
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/denryoku_platform/pdf/009_02_00.pdf, p.9

GHG実質ゼロを実現するために、2050年には再生可能エネルギーが電力構成の中心になることが想定されています。
火力発電は、CO2回収・貯留付き火力や水素を用いた調整用火力など、環境に配慮された発電方法のみとなります。

またアジアの各国でも、石炭火力から脱却する動きがあります。

日本と中国、そして韓国は海外石炭火力融資の大半を占めており、国際的な批判を受けています[*4]。
このような背景もあり、韓国では国内石炭火力の劇的な削減を表明しています。
2034年までに30年以上稼働している石炭火力停止の方向で、全石炭火力の半分以上が停止することになります(図9)。

図9: 韓国の国内石炭火力の劇的な削減
出典:環境省 公益財団法人 自然エネルギー財団「アジアで進む脱石炭火力の動き(2020)」
https://www.env.go.jp/earth/資料3-4自然エネルギー財団提出資料及び質疑回答.pdf, p.4

またベトナムやインドネシアなどの東南アジア各国でも、石炭火力から自然エネルギーに転換する動きがあります。

インドネシアでは、石炭火力の新設は2020年がピークで2028年以降は新設しない方向であることを表明しています。
そして、20年以上経過した石炭火力は自然エネルギーで代替していく方針です[*4]。

コンバインドサイクル発電の技術進化と電源構成の将来像

前述の通り、エネルギーの低炭素化、脱炭素化を目指すため、世界ではCO2を多く排出する火力発電を減らしていく流れがあります。
特に石炭火力に関しては全廃の方向で、国際開発銀行や欧州の民間金融機関では投資枠を制限する動きもあります[*5]。

一方でエネルギー資源が乏しい日本では、石炭は資源量が豊富であることや採掘できる地域が分散されていることから、安定供給や経済性の面に優れた燃料として評価されてきました[*6]。

このような背景から、国際的な批判を受けつつも、日本では現状の石炭火力やLNG火力の高効率化を進めて、安定供給と経済性と環境負荷低減をバランスさせながら活用することが目指されています。

火力発電の高効率化には、さまざまな次世代技術があります。
コンバインドサイクル発電からさらに発展させ、燃料電池と組み合わせたトリプルコンバインドサイクルの実用化を目指す動きがあります(図10)。

図10: 次世代火力発電技術の高効率化、低炭素化の見通し
出典:経済産業省「次世代火力発電に係る技術ロードマップ案(2016)」
https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment/jisedai_karyoku/pdf/006_05_00.pdf, p.30

トリプルコンバインドサイクル発電が実用化されれば、LNG火力で63%程度、石炭火力で55%程度の発電効率が実現できます。
そして日本では火力発電の高効率化と並行して、再生可能エネルギーの導入を拡大していく方針です。

2021年10月に発表された第6次エネルギー基本計画では、2030年には現在電源構成の主力である火力発電を4割程度に下げ、再生可能エネルギーを36%〜38%まで引き上げることを目標としています(図11)。

図11: 2030年度におけるエネルギー見通しのポイント
出典:経済産業省 資源エネルギー庁「エネルギー基本計画の概要(2021)」
https://www.meti.go.jp/press/2021/10/20211022005/20211022005-2.pdf, p.12

まとめ

現状の日本では安定供給と経済性、そして環境への配慮から、火力発電を活用する方向でコンバインドサイクル発電などの高効率化技術を推進しています。コンバインドサイクル発電は高効率であるだけでなく、柔軟な出力調整が特徴で調整力としての役割も持っています。

しかし、火力発電は高効率化が進められていても、太陽光や風力などの自然エネルギーと比較するとCO2を多く排出することに変わりありません(図12)。

図12: 各種電源別のライフサイクルCO2排出量
出典:電気事業連合会HP 「各種電源別のライフサイクルCO2排出量」
https://www.fepc.or.jp/smp/nuclear/state/riyuu/co2/index.html

そのため先進国だけでなく東南アジアなどの新興国や発展途上国においても、石炭火力の全廃を含む火力発電自体の縮小がすすめられています。
そして、石炭火力の代替として自然エネルギーの導入が拡大され、脱炭素化の実現を目指しています。

今後、日本のCO2削減目標達成のためには、やはり世界の流れを見ても自然エネルギーの早期導入拡大と、石炭火力発電所を廃止した場合の安定的な電力供給に向けた議論やテクノロジーの発展が鍵となるでしょう。

参照・引用を見る

*1
国立環境研究所 環境展望台「コンバインドサイクル発電」https://tenbou.nies.go.jp/science/description/detail.php?id=10

*2

経済産業省資源エネルギー庁「今さら聞けない「パリ協定」 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~(2017)」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/ondankashoene/pariskyotei.html

*3
資源エネルギー庁「日本が抱えているエネルギーの問題(2016)」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/shared/pdf/energy_in_japan_for_school_2.pdf, p.11

*4
環境省 公益財団法人 自然エネルギー財団「アジアで進む脱石炭火力の動き(2020)」
https://www.env.go.jp/earth/資料3-4自然エネルギー財団提出資料及び質疑回答.pdf, p.3, p.8

*5
経済産業省資源エネルギー庁「なぜ、日本は石炭火力発電の活用をつづけているのか?~2030年度のエネルギーミックスとCO2削減を達成するための取り組み(2018)」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/qa_sekitankaryoku.html

*6
経済産業省「非効率石炭火力のフェードアウト を巡る状況について(2020)」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/sekitan_karyoku_wg/pdf/001_05_00.pdf, p.8