ガソリン価格や電気代の急激な値上がりが続いています。
暖房が日々必要な季節の燃料価格の急騰が、家計にとっても大きなダメージとなります。
エネルギーの自給率が低い日本では、今後このような燃料高騰が何度訪れてもおかしくありません。
本記事では、改めて家庭の省エネを見直してみましょう。
終わりの見えない燃料高騰
資源エネルギー庁の調査によると、2021年12月6日時点のガソリンなどの店頭価格は以下のようになっています(1リットルあたり、図1)。
図1: 12月6日時点でのガソリンなどの小売価格
出典: 資源エネルギー庁「石油製品価格調査」
https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/petroleum_and_lpgas/pl007/results.html
また、電気・ガス料金も12月には大幅に値上がりしています。地域によっては100円以上の値上がりとなっています[*1]。LNG(液化天然ガス)や石炭などの輸入価格の上昇が主な背景で、ニューヨークの原油市場では、価格の指標となる「WTI先物」が7年ぶりの高値をつけました[*2]。
燃料価格の上昇は、インフラやメーカーなどの幅広い企業活動に影響を与え、製品・サービス、身近な食品の値上がりにもつながります。
せめて家庭では省エネを進めていく必要がありそうです。
代表的な家庭の省エネ方法
省エネはどこから始めれば良いのでしょう。
まず、家庭ではどのような機器がエネルギーを多く消費しているでしょうか。その内訳は下のようになっています(図2)。
図2: 家庭部門での用途別エネルギー消費量
出典: 日本原子力文化財団「家庭部門用途別エネルギー消費量」
https://www.ene100.jp/zumen/1-2-12
暖房需要、給湯、家電・照明他が多くなっています。
ここでいう「家電・照明他」とは、洗濯機、衣類乾燥機、布団乾燥機、テレビ、VTR、ステレオ、CDプレーヤー、DVDプレーヤー・レコーダー、掃除機、パソコン、温水洗浄便座等の総合です。
寒い冬には暖房でのエネルギー使用はそう大きく減らすことはできません。そこで、他の項目について見直すところから始めてみましょう。
各種省エネの方法
では、それぞれの用途での省エネ方法をみていきましょう。
給湯器〜エコキュート・エコジョーズ
省エネ給湯器の代表としては「エコキュート」「エコジョーズ」があります。
それぞれのしくみはこのようなものです。
エコキュートは電気を使う給湯システムですが、おもに夜間の比較的電気料金の安い時間帯にお湯を沸かし、タンクに貯めておくことで電気料金の節約につながります。また、ヒートポンプを内蔵していて、大気中の熱エネルギーを取り込み圧縮したものも同時に燃料として使います。その結果、地域や使用条件によって異なりますが、一般的な電気給湯器に比べ、消費電力は約3分の1になります[*3]。また、エコキュート1台あたり、年間にCO2排出量を約500kg減らすことができるといわれており、 CO2排出量は約15%削減されます[*3]。
ただ、エコキュート導入には、沸かしたお湯を貯めておく大きなタンクが必要になります。災害時に役立つというメリットもありますが、どの家庭にもタンクが設置できるわけではありません。
そこで、もうひとつの選択肢としてエコジョーズがあります。
エコジョーズはガスでお湯を沸かしますが、お湯を貯めておくのではなく、その場でお湯を沸かすときの熱効率を上げるものです。本来ならお湯を沸かした後に外に廃棄されてしまう熱を再び給湯器内に取り込み、ガスの使用量を減らすというものです(図3)。
図3: エコジョーズの特徴
出典: 日本ガス協会「エコジョーズの概要」
https://www.gas.or.jp/gas-life/ecojozu/
また、CO2排出も減らすことができます(図4)。
図4: エコジョーズのCO2削減効果
出典: 日本ガス協会「エコジョーズの概要」
https://www.gas.or.jp/gas-life/ecojozu/
エコキュートのように大きなタンクを設置しなくても良いというメリットがあり、エコジョーズは近年、大幅に出荷台数を伸ばしており、注目されている機器でもあります(図5)。
図5: エコジョーズの普及状況
出典: 日本ガス協会「エコジョーズの概要」
https://www.gas.or.jp/gas-life/ecojozu/
家電製品〜10年で大幅に省エネ性能が向上
家電については、10年以上使っているものがあれば買い換えそのものを検討するのもひとつの手段です。
例えば照明器具の場合、電球型LEDランプは一般電球に比べて約86%の省エネ効果があります(図6)。
図6: 一般電球と電球型LEDの省エネ性能比較
出典: 資源エネルギー庁「省エネ型機器の現状」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/choice/
また、2009年と2019年の製品を比較した場合、冷蔵庫は約40~47%の省エネ性能、テレビは約42%の省エネ性能を持っています[* 5]。
10年で省エネ性能が大きく進化しているのです。
また、家電には省エネ性能を表す「統一省エネラベル」が表示されています(図7、図8)。
図7, 図8: 家電製品の統一省エネラベル
出典: 資源エネルギー庁「家庭用省エネ性能カタログ2020」
https://seihinjyoho.go.jp/frontguide/pdf/catalog/2020/catalog2020.pdf, p.3, p.4
家電製品の省エネルギー性能を星の数で表し、併せて、省エネルギーラベルと年間の目安電気料金を表示しています。
買い換えの際には、これらをしっかりチェックして商品を選ぶことをおすすめします。
暖房機器の上手な使い方
冬の省エネとしては、「熱を逃さない」ことも大切です。
例えば、エアコンの場合は運転効率が下がらないようにフィルターを月2回ほどの目安でこまめに掃除する、暖かい風が必要な所にのみ届くよう風向を調節する、といったことが必要です。また、室外機の近くにものを置いてしまうと運転効率が下がりますので注意しましょう。
厚手のカーテンを使う、窓に断熱シートを貼るといった工夫も効果的です。
また、暖房機器は温度設定を少し下げるだけで大きな省エネにつながります。主な暖房器具で設定温度を21℃から20℃に下げるだけで、年間で大幅な節約、CO2排出量削減につながります(外気温6℃、1日9時間使用の場合)[* 6]。
・エアコン=原油換算13.38リットルの節約、CO2排出量を25.9kg削減
・ガスファンヒーター=原油換算9.45リットルの節約、CO2排出量を18.3kg削減
・石油ファンヒーター=年間で灯油10.22リットル節約、CO2排出量を25.4kg削減
なお、各暖房機器によるCO2排出量(二酸化炭素トン)はこのようになっています(図9)。
図9: 最も良く使う暖房機器別の世帯当たり年間CO2排出量(戸建て)
出典: 環境省「家庭からの二酸化炭素排出量の推計に係る実態調査全国試験調査 結果の概要(確報値)」(2016)
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg/kateitokei/chosa33.pdf, p.55
温暖化防止への取り組みは家計にもつながる
この秋以降の燃料高騰には多くの人が驚いたことでしょう。
一方で温暖化防止のために省エネ家電を使おうという運動は以前からあるものです。早い段階から対策をしておけば、エネルギー自給率の低い日本でも、家計の負担を少しでも軽くすることに繋がるのです。
機器の買い換えなどは一時的に負担になりますが、長い目で見て計画する必要があります。
温暖化防止と節約は、表裏一体の関係にある時代になっているのです。
参照・引用を見る
*1
NHK「電気・ガス料金 12月も値上がり 4か月連続 LNGなど高騰が要因」(2021)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211028/k10013325651000.html
*2
日本経済新聞「原油、7年ぶり高値」
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO76839670R21C21A0MM0000/
*3
ヒートポンプ・蓄熱センター「ますます広がるエコキュート」
https://www.hptcj.or.jp/Portals/0/data0/hp_ts/pamphlet/(r)%E3%81%BE%E3%81%99%E3%81%BE%E3%81%99%E5%BA%83%E3%81%8C%E3%82%8B%E3%82%A8%E3%82%B3%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%88.pdf, p.1
*4
資源エネルギー庁「省エネ型機器の現状」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/choice/
*5
環境省「ヒートアイランド現象による環境影響等に関する調査業務」(2010)
https://www.env.go.jp/air/report/h22-05/03-1.pdf, p.33
*6
資源エネルギー庁「省エネレッスン」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/howto/airconditioning/index.html#2