“電力自由化”で再生可能エネルギーを選択できるのか?

この記事は『おしえて!アミタさん』(アミタ株式会社)に掲載(2018年5月22日)されたものを転載しています

 

“電力自由化”によって、多くの電力会社や電力メニューが登場しました。その中には、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー(以下「再エネ」という)を供給している電力会社や電力メニューもあります。今回は、電力自由化で再エネを選んで購入することについて考えていきます。

再エネの種類と高まるニーズ

再エネは、「再生可能」という名前にあるように、石油・石炭や天然ガスのように地下資源を掘り出して、1度燃やしてしまえば、2度と使えなくなるエネルギー源ではなく、地球がある限り何度でも利用可能(=再生可能)なエネルギー源のことです。具体的には、太陽光や風力の他に、地熱、水力、バイオマスなどがあります。ただし、バイオマスは、木などの生物資源をエネルギー源とするため、その生物資源が持続可能な形で生産される場合には“再生可能”と言えます。

こうした再エネは、そのままでは使い難いので、電気にして使うことが多く、日本でも全電力のうち約15.3%(2016年度)は、再エネによって発電されています(そのうち7.5%は大型水力)。(経済産業省資源エネルギー庁『エネルギー白書2017』より)

環境対策に熱心な企業であれば、再エネを選んで買いたい、それを顧客にPRしたいと考えるのは当然ですし、それによって、社会の再エネを増やしていくことができます。こうしたニーズもあり、一部の小売電気事業者も再エネを電源とする電力メニューを販売しています。

再エネを選ぶ際にまず確認したい“電源構成比”

再エネを選ぶ際に確認したいポイントの1つに、「電源構成比」があります。電源構成比とは、小売電気事業者が供給する電力もしくは電力メニューの電力が、どういった電源種別で構成されているのかを割合で示したものです。

電源構成比の開示は、法的に義務化されていないので、公表していない小売電気事業者もありますが、再エネをウリにしている会社は開示しているケースが多いです。これをみれば、購入した電気がどういった発電方法でどこから供給されたのかを知ることができます。

おさらい:電気は、結局まざっているのでは?

電源構成比の図を見ていて再エネの発電所でできた電気も、火力の電気も原子力の電気も、結局は電線で混ざっているのではないか? 再エネの電気を選ぶとはどういうことなのか? という疑問が出てくるかもしれません。この点は、第1回でも説明したとおり、電線を流れる物理的な電気ではなく、取引上の電気として、再エネ由来の電源と需要家を紐付けて考えることが可能な仕組みとなっています。

それでもやはり物理的にも再エネを使いたい、という場合には、自社の建物の屋根や空いている土地に太陽光発電設備を導入して、直接その電気を使うことも可能ですね(自家消費)。設備コストがかなり下がってきているため、自家消費の場合に従来の電気代よりも安くなるケースも多くなっています。

FIT電気は、再エネだけど、環境価値はない?

さて、本題に戻りましょう。なぜ、電源構成比の確認が必要なのか。
それは、再エネにも様々な種類があるからです。中でも、FIT電気が利用されている場合は気を付ける必要があります。

そもそもFIT電気とは、2012年に開始したFIT(「再生可能エネルギーの固定買取価格制度」)に基づき交付金を得ている、再エネを電源とした電気のことを指します。FITは再エネ普及を行うため、一般電気事業者に再エネで発電された電気を一定期間、固定価格で買い取ることを義務付けた国の制度です。しかし、これらの買い取り費用は電力会社が負担するのではなく、「再エネ賦課金」として、すべての電気利用者から徴収されています。

よって、FIT制度に基づき設置された再エネ発電所の電気(FIT電気)の「再エネ」であるという価値は、再エネ賦課金を支払っている全ての人に帰属する、と考えられ、これらのFIT電気は、「再エネ価値を謳ってはならない」というルールとなっています。

すると、企業がFIT電気を買っていても、「再エネを使っている」とPRすることはできないということになります。このように発電方法が再生可能であっても、環境価値が認められないケースがあります。

FIT電気の環境価値は、“非化石証書(再エネ指定)”で取得可能!

では、FIT電気を選択するメリットはないのでしょうか。安心してください。

FIT電気の環境価値を活用する仕組みとして、2017年4月から「非化石証書」が利用されています。
非化石証書は、国の制度に基づくもので、「非化石」という言葉にも表れているように、化石燃料由来でない “CO2排出量ゼロ”の電源として、「再エネによるFIT電気」と「原子力発電の電気」が持つ環境価値を切り出し証書としたものです。この証書の中には、FIT電気の環境価値のみを指定して購入できる証書があり、「非化石証書(再エネ指定)」と呼ばれています。これらを付けた電気であれば、「実質再エネ」と言えるようになっています。

つまり、非化石証書が100%分付いた電気を買えば、「弊社は、実質再エネ100%の電気を利用しています」とPRすることができるのです。なお、非化石証書を扱うことができるのは小売事業者のみとなっています。したがって、非化石証書を付けた電気が欲しい場合は、そのようなメニューを販売している小売事業者のサービスを選ぶことになります。

非化石証書が付いていれば、それでいいのか?

しかしながら、非化石証書付きの電気には、注意すべき点もあります。

例えば、石炭火力の電気1,000kWhに非化石証書(再エネ指定)1,000kWhを付けて「実質再エネ100%」と謳う場合はどうでしょうか。これらは実は制度上は問題ないのです。ただし、そのコミュニケーションを目にした消費者や取引先は、理解しがたいと感じるかもしれません。

また、日本のFIT電気には、再エネと言っても、パームオイルによる発電も含まれています。こうした電力は、例えば、「RE100」*というグローバル企業によるムーブメントでは、再エネとして認められていません。

*「RE100」:国際環境NGOの「The Climate Group」が2014年に開始した、企業が使用電気の100%を再エネに変えていくイニシアチブであり、現在、欧米を中心に131の企業が参加しています。「RE100」に対応する電気については、今後の回で説明します。(参照:「RE100」HP

非FITやグリーン電力証書といった方法も!

非化石証書以外にも「環境価値」を謳うことのできる電力があります。

例えば、小売電気事業者がFIT制度を使っていない再エネ発電所から調達している電力を扱っていれば、非化石証書がなくても「環境価値」付きの電力を買うことができます。これは、「非FIT」とも言われており、現状、FIT電気に比べると量的には少ないですが、存在します。今後、再エネ発電設備のコストが下がっていくにつれ、増えていくと考えられます。

さいごに

電力自由化によって、再エネを選んで買えるようになりました。

ただし、再エネと言っても、さまざまな方法によってその価値が付けられており、価格や意味合いも異なります。電力小売事業者ごとの事業運営方針などの特徴も多様です。様々な選択肢がある中、自社の環境対策の方針や再エネ電気を購入する目的に合わせて選択することが大切になるといえます。

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