自治体がつくる地域の会社。ドイツのシュタットベルケとは?

自然電力が提供する実質自然エネルギー100%の電気「自然電力のでんき」のブログに
掲載(2020年8月28日)されたものを転載しています

 

こんにちは、編集部(「自然電力のでんき」blog編集部)です。

今日は、地域経済とインフラを考えるうえで日本でも注目されている、ドイツのシュタットベルケについて学んでいこうと思います。

※本テーマは、「ながの電力株式会社主催 ホクサイアカデミーONLINE」でのお話をもとに記事化しています。ながの電力株式会社は、自然電力のグループ会社で、小布施町をベースに「人と自然エネルギーが心地よくつながるまち」を掲げエネルギーの地産地消を目指しています。「ホクサイアカデミー」は自然エネルギーを身近に感じてもらうことを目的としてながの電力㈱が不定期で開催しているワークショップです。今回は初のONLINEイベントでした。

旅する自然電力のでんき – voyage to renewable world –

今回、お話を伺ったのは、吉岡大地さん。ドイツのフライブルク大学で、持続可能な社会における再生可能エネルギーと都市計画について学んでおり、現在は休学されて自然電力グループの未来創造室の事業に携わっています(※インタビュー当時)。

それでは早速、伺っていきましょう!

公有化された会社?シュタットベルケとは?

シュタットベルケ(STADT WERKE)とはドイツ語で「シュタット=街・町」「ベルケ=仕事、製作所、工場」という意味があり、日本語で直訳すると都市公社(町の事業)とも言われています。法的に明確に定められているわけではありませんが、一般的にシュタットベルケは公有の株式会社であり(地元の自治体が株式の過半数を保有)、総合的なインフラ関連サービスの運営を行う事業モデルを持ちます。つまり電力やガス、熱、交通などの公共サービスを提供する自治体が保有する株式会社のことをシュタットベルケといいます。

インフラサービスのなかでもとりわけエネルギー(電気、ガス、熱供給)は売り上げのなんと77%(!)も占めており、他の事業の赤字を補填しているそうです。

電力自由化が進む日本では、地方創生やまちづくりなどの文脈でこのシュタットベルケのモデルが今、注目されています。

なぜ多くのシュタットベルケがあるの?メリットは?

出典:VKU Figures, data and facts for 2019

シュタットベルケはドイツ全土に1474社が存在しています(2018年12月時点)。これだけの数があるとドイツの各市場でも多くのシェアを占めることとなり、電力小売事業では61%、ガス小売事業では67%、水道事業では実に86.4%がシュタットベルケによって運営されています。

公企業でありながら経済的に大きなプレイヤーとなっているわけです。

ホールディングス会社のような仕組みになっているシュタットベルケでは、黒字子会社や赤字子会社、新規事業会社などを複合的に保有しているため、プールや図書館など赤字になりやすい事業を黒字の事業で利益補填することで、安定的で質の高い公共サービスを提供することができます。

また、筆頭株主である自治体の政策を反映しやすく、利益を地域内に還元することで地域が潤う、さらに雇用の創出につながる、などのメリットがあります。

電気部門ではどんなメリットがある?~ハンブルク市のケース~

それでは、最後に具体的な事例としてドイツ北部の経済中心地「ハンブルク市」の電力事情についてご紹介したいと思います。

ハンブルク市は2000年頃、もともと市が保有していた「電力・地域暖房・ガス」の公益事業体の利権を外部に委託したものの、20年に一度の配電網営業委託契約の更新期間を迎えたこともあり、9年後の2009年、保守党と緑の党による市政府は「ハンブルグ・エネルギー」という地域新電力を立ち上げました。

ドイツ第二の都市といわれるほど大きな都市でもあり、現在は、顧客数が14万人、電源も太陽光と風力発電とで約35GWもの発電量があります。

ハンブルク市に限ってということではありませんが、再公有化には多額の買い取り資金が発生するため、こういった大きな決断をする際は必ず「住民投票」が行われ、勝つことが必要とされています。

では、再公有化によるメリットはどんなものが挙げられるのか、という点については、一般的にシュタットベルケの利益の7~9%は配電事業によるものであり、再公有化により配電網のあげる利益が自治体にとって大きな歳入となります。

また、配電網に関わる様々なプレイヤーを自治体の責任下に置くことで、配電網の管理を効率化できたり、地域の事情にあった改修ができるなどもメリットです。

今回はドイツのシュタットベルケについて、吉岡さんに学びました。日本で同様に導入しようとなると、難しい部分もあるかもしれませんが、地域に還元されていく仕組みは非常に勉強になりますね!

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参照・引用を見る

京都大学大学院 経済学研究科 再生可能エネルギー経済学講座
http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/renewable_energy/stage2/pbfile/m000179/REEKU_DP005.pdf

VKU(ドイツ地方公共事業協会)  https://www.vku.de/fileadmin/user_upload/Verbandsseite/Ueber_Uns/VKU_ZahlenDatenFakten_2019_EN.pdf

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