用途が拡大するダンボール 持続可能性と環境への影響は?

現代の私たちの生活に必要不可欠な包装・梱包用品であるダンボールは、郵便や宅配便、引越といった身近な用途のみならず、企業間取引のあらゆる物流過程で使用されています。

また、東京オリンピックの選手村に導入されて話題となったダンボールベッドは、災害時の避難場所でも使用されており、ダンボールの用途の幅を広げるものとなっています。

こうした用途の多様化に加え、昨今ではコロナ禍に伴う巣ごもり需要で、通販・宅配の利用が増大し、ダンボールの生産量はさらに増えているように思えます。

多量のダンボールを使用することに、地球温暖化や環境への影響はないのでしょうか。

ダンボールについて

ダンボールは、主に包装材・梱包材として使用されている紙製品です。

ライナと呼ばれる表裏の板紙で中芯となる波形の板紙を挟み込み、三角形が連なる「トラス構造」を形成しています(図1)。
この構造こそが、ダンボールが軽量かつ頑丈な理由で、電波塔や鉄橋の柱などにも採用されています[*1]。

図1: ダンボールの構造(トラス構造)
出典: 全国段ボール工業組合連合会「段ボールのしくみ」
https://zendanren.or.jp/content/structure/

ダンボールの用途

ダンボールは、引越しやネットショッピングの梱包用品、家具や家電製品などの包装用品として目にすることが多く、内容物を保護しながら、安全に運搬するために無くてはならない存在です。

しかし、ダンボールは、私たちが普段目にしない企業間取引の物流過程でこそ使用量が多く、近年著しく増加した通販・宅配や、引越のダンボール使用量は、合計しても全使用量の約5%に過ぎません[*2, *3]。

ダンボールが実際に多く使用されているのは、加工食品(約41%)と青果物(約10%)などといった食品の物流過程です[*2, *3]。
これらの食品は、工場や生産地からスーパーマーケットなどの小売店へ配送されますが、その過程で大量のダンボールが消費されているのです。

次にダンボールが多く使用されているのは、電気器具・機械器具(約7%)の輸送です。産業機械や自動車の部品を中心に、工場から工場への輸送過程に多くのダンボールが用いられています。
そのほか、日用品や衣料品、薬品など小売店に並べられる商品のほとんどは、その物流過程でダンボールが使用されています[*2, *3]。

また、このような包装・梱包以外にも、近年ではダンボールの用途の幅が拡大しており、例えば以下のような使い道があります。

  • 木材パレットの代わりに使用される、使い捨ての輸出用ワンウェイ荷役台[*4]。
  • 環境性能の高さから、発泡スチロールの代替として使用される緩衝材[*5]。
  • アルミシートを表面に貼って加工したダンボール製空調ダクト[*6]。
  • ダンボール製の家具やおもちゃ[*5]。
  • 災害時の避難所で使用するダンボール製のベッドや床敷き、間仕切りなど[*7], (図2)。

図2: ダンボール製のベッドと間仕切り(模擬展開実施時)
出典: 国土交通省 近畿地方整備局「感染症リスクを考慮した水害時の避難計画作成ガイドライン~水害と感染症の複合的な『難』を避ける分散避難~」(2020)
https://www.kkr.mlit.go.jp/river/bousai/ol9a8v0000033okf-att/guideline_suigaihinan_kansenshyo.pdf, p.17

特に、東日本大震災でも多く活用されたダンボールベッドは、エコノミークラス症候群などの健康被害の防止に役立ち、床面からの粉じん対策にも有効です[*7]。
コロナ禍の2020年7月に起きた豪雨では、熊本県の避難所などで使用され、感染症の蔓延を防止する効果があったという報告があります[*8]。

ダンボールのリサイクル

図3: ダンボールのリサイクル循環
出典: 全国段ボール工業組合連合会「段ボールは、人にも環境にもやさしい優れた包装資材です。」
https://zendanren.or.jp/image/shiryo04-1.pdf, p.3

役目を終えたダンボールは、古紙回収事業者によって回収された後、製紙工場とダンボール工場でリサイクルされて新しいダンボールに生まれ変わります(図3)。

ダンボールは、ほぼ100%リサイクル可能な紙資源です。ダンボールを含めた板紙全体のリサイクル率は約93%に及びます。ダンボールの表面に使用されるライナも中芯も共に板紙のため、回収されたダンボール古紙をはじめ、雑誌や新聞、模造紙、台紙などの様々な古紙から製造されています[*9, *10]。

ダンボールの高いリサイクル率は、家庭や企業での適切な分別による高いダンボール回収率が寄与しており、その回収率は、輸入されたダンボールも含め、2020年実績で96.1%にも達します[*11], (図4)。

図4: ダンボールの回収率推移(2004~2020)
出典: 全国段ボール工業組合連合会「3R推進自主行動計画」
https://zendanren.or.jp/3r/followup-2.html

ダンボールのリサイクルには、金属や樹脂のリサイクルのように高温にして溶解させるなどの特に環境負荷の大きい工程がありません。
また、ダンボールを構成する主原材料は、ダンボール原紙と糊です。古紙と、古紙に対して数%の割合のパルプ(木材)と、コーンスターチ(トウモロコシ)を原料とする糊が使われており、仮にリサイクルされず放置されても全ての材料が土に還ります[*12]。

ダンボールの生産に伴うCO2排出量

自然由来の持続可能な資源から作られるダンボールですが、生活や産業に必要不可欠なものである分、生産量が多く、それに伴い一定量のCO2も排出されます。

ダンボールの生産量は、日本全体で年間約140億m2を超え、1m幅の段ボールにすると地球355周分にも相当します[*13]。
ダンボールの生産に伴うCO2排出量は、全国段ボール工業組合連合会の算出によれば、352.3g/m2となり、2020年のダンボール生産量の約141.9億m2に対して493万トン、日本のCO2総排出量11億4,900万トンの約0.4%にあたります[*14, *15, *16]。
これは、製紙業全体のCO2排出量である1,873万トンの内、約26%と比較的小さい割合です[*17, *18]。

実際に、下の図8のように、ダンボールは他の紙類に比べて生産に伴うCO2排出量が少なく、紙類の中では地球温暖化に対する影響が小さい資材といえます。

図5: 紙の生産に伴う種類別CO2排出量
出典: 日本製紙連合会「板紙主要品種のLCIデータについて」(2007)
https://www.jpa.gr.jp/file/release/20070925025704-1.pdf, p.6

ダンボールの生産に伴うCO2排出量をさらに削減していくために、ダンボールのリデュース(減量化・軽量化)も進められており、その平均的な重量は1994年から2020年で約9%減少しています(図6)。

図6: ダンボールの重量推移(1994~2020)
出典: 段ボールリサイクル協議会「第三次自主行動計画と実績」
http://www.danrikyo.jp/publics/index/104/

増加傾向にあるダンボール需要と減少傾向にある紙類需要

ダンボール需要は、企業間の物流が活発化するほど増大するため、経済の動向に密接に関係します。

ダンボールの生産量は、リーマン・ショックによる2009年の急減を経て、その後は景気拡大とともに堅調に推移していましたが、消費税増税などの影響から2019年に再び減少へ転じ、新型コロナの感染拡大が始まった2020年にも減少傾向が続いていました[*19, *20], (図10)。

しかし、2021年は、巣ごもり需要の追い風などから、ダンボールの生産量は上昇傾向にあり、2022年も同様の傾向が続く見込みです[*3]。

図7: ダンボールの生産量と前年比の推移(2001~2022)
出典: 全国段ボール工業組合連合会「2022年(令和4年)段ボールの需要予測」(2021)
https://zendanren.or.jp/data/pdf/siryo/2022yosoku.pdf, p.2

このように、ダンボールの生産量は景気に左右されるという側面があるものの、増加傾向にあります。

一方で、紙・板紙の生産量は、デジタル化の普及や経済の低迷などによって全体として減少していることから、その原料となる古紙の消費量も減少が続いています(図8)。

図8: 日本における紙・板紙の生産量と古紙の利用率・消費量(1970~2020)
出典: 公益財団法人 古紙再生促進センター「数字で見る古紙再生」
http://www.prpc.or.jp/recycle/number/

そのため、日本では、2000年頃から古紙回収量が古紙消費量を上回るようになり、同時期から製紙産業が盛んとなった中国や東南アジア各国に古紙を輸出するようになりました[*21], (図9)。

図9: 日本における古紙の回収量・消費量・輸出量(1970~2020)
出典: 公益財団法人 古紙再生促進センター「数字で見る古紙再生」
http://www.prpc.or.jp/recycle/number/

しかし、古紙の輸出増加は、輸送に費やされる燃料などを考慮すると、最善の状態というわけではありません。

古紙という資源を国内だけで循環させるため、世界的に高い水準にある古紙回収率に比べて、平均的な水準にある古紙利用率を上げていくことが必要です(図10)。

図10: 世界各国における古紙の回収率・利用率(2019)
出典: 日本製紙連合会「世界の中の日本」
https://www.jpa.gr.jp/states/global-view/index.html

ダンボールの原料となる古紙の回収率の維持や利用率の向上には、企業も個人も今まで以上にダンボールを有効活用し、再利用に取り組んでいかなければなりません。

企業は、上述したダンボール製の家具やおもちゃのように、既存の枠にとらわれず、ダンボールの用途を拡大していくことが期待されます。

例えば、近年では、使用済みの製品や素材に新しい価値を付加してモノを生み出す「アップサイクル」に注目が集まっており、ダンボールの強度や軽量性、柔軟性などを活かしたダンボール財布なども考案されています[*22] (図11)。

図11: ダンボール財布
出典: 東京都立大学産業技術大学院大学「第135回コラム「アップサイクルって何?」」(2021)
https://aiit.ac.jp/research_collab/column/206.html

個人にもできることがあります。

例えば、ダンボールを廃棄する際、ステープル(止め金)などの金属、プラスティック、食品などの異物を取り除くことで、再利用率の向上に寄与することができます。
特に、通販・宅配のダンボールに貼付された伝票は、リサイクルできないカーボン紙・ノーカーボン紙などが用いられている場合があるので、必ず取り除きましょう[*23]。

環境負荷が小さく持続可能な資源であるダンボールを今後も広く利用していくため、国・企業・個人は上記の取り組みをより一層進めていくことが大切です。

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参照・引用を見る

1.
全国段ボール工業組合連合会「段ボールの構造(トラス構造)」
https://zendanren.or.jp/content/structure/truss.html

 

2.
全国段ボール工業組合連合会「部門別消費(次工程投入)動向(2021年/令和3年)確報」
https://zendanren.or.jp/data/pdf/shohi_doko/kakuhou03.pdf, p.1

 

3.
全国段ボール工業組合連合会「2022年(令和4年)段ボールの需要予測」(2021)
https://zendanren.or.jp/data/pdf/siryo/2022yosoku.pdf, p.1, p.2

 

4.
全国段ボール工業組合連合会「機能性段ボールのご紹介」
https://zendanren.or.jp/content/feature/special.html

 

5.
全国段ボール工業組合連合会「よくあるご質問」
https://zendanren.or.jp/content/faq.html

 

6.
一般社団法人 日本建設機械施工協会「ダンボールダクト」(2009)
https://jcmanet.or.jp/bunken/kikanshi/2009/06/037.pdf, p.37

 

7.
全国段ボール工業組合連合会「段ボールが社会のためにできること」
https://zendanren.or.jp/content/feature/contribute.html

 

8.
内閣府「小此木内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和3年4月13日」(2021)
https://www.cao.go.jp/minister/2009_h_okonogi/kaiken/20210413kaiken.html

 

9.
全国段ボール工業組合連合会「段ボールはリサイクルの優等生」
https://zendanren.or.jp/content/recycle/

 

10.
全国段ボール工業組合連合会「段ボールの軽量化とリサイクル」
https://zendanren.or.jp/content/history/weight-saving.html

 

11.
全国段ボール工業組合連合会「段ボールのリサイクルにご協力ください」
https://zendanren.or.jp/content/recycle/cooperation.html

 

12.
全国段ボール工業組合連合会「段ボールは持続可能な自然に還る包装材です」
https://zendanren.or.jp/content/feature/sustainable-sub.html

 

13.
全国段ボール工業組合連合会「段ボール情報館」
https://zendanren.or.jp/content/

 

14.
全国段ボール工業組合連合会「段ボールの製造エネルギー原単位及びCO2排出量原単位について」(2008)
https://zendanren.or.jp/image/shiryo02.pdf, p.5

 

15.
全国段ボール工業組合連合会「2020年版 段ボール統計年報」(2021)
https://zendanren.or.jp/data/pdf/toukei/toukei2020.pdf, p.4, p.5

 

16.
環境省「2020年度(令和2年度)の温室効果ガス排出量(速報値)について」(2021)
https://www.env.go.jp/press/110272.html

 

17.
日本製紙連合会「2021年度カーボンニュートラル行動計画(低炭素社会実行計画)フォロ-アップ調査結果(2020年度実績)」(2021)
https://www.jpa.gr.jp/file/release/20210921045730-1.pdf, p.5

 

18.
日本製紙連合会「紙・板紙」
https://www.jpa.gr.jp/states/paper/index.html

 

19.
全国段ボール工業組合連合会「2009年(平成21年)段ボールの需要予測」(2009)
https://zendanren.or.jp/data/2009juyo0220.pdf, p.1

 

20.
全国段ボール工業組合連合会「2021年(令和3年)段ボールの需要予測」(2020)
https://zendanren.or.jp/data/pdf/siryo/2021yosoku.pdf, p.1

 

21.
公益財団法人 古紙再生促進センター「数字で見る古紙再生」
http://www.prpc.or.jp/recycle/number/

 

22.
東京都立大学産業技術大学院大学「第135回コラム「アップサイクルって何?」」(2021)
https://aiit.ac.jp/research_collab/column/206.html

 

23.
公益財団法人 古紙再生促進センター「古紙に出してはいけない!! リサイクルできない紙類」
http://www.prpc.or.jp/wp-content/uploads/Prohibitive_materials.pdf, p.1, p.2

 

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