自然電力が提供する実質自然エネルギー100%の電気「自然電力のでんき」のブログに
掲載(2017年5月19日)されたものを転載しています
前回は自然電力が地域還元事業に初めて取り組んだ「合志農業活力プロジェクト」について、その実施地域である合志市の副市長にお話を伺いました。今回は「合志農業活力プロジェクト」で自然電力が出会った地域のチャレンジャーたちをご紹介します。
プロジェクトで地域に還元されたお金は、どんな思いを持つ人たちに届いているのでしょうか。
行政との連携で農家の所得向上を目指す生産者直売所
「合志農業活力プロジェクト」では、太陽光発電事業による配当金の一部を基金に集約して「攻めの農業」のための助成を行っています。2015年度の助成事業のひとつが、農産物販路拡大支援事業です。
この事業では、合志産のニンジン・トマト・長ねぎ・ゆず胡椒等を活用。東京都内の「EJ JUICE & SOUP」(現在閉業)でコールドプレスジュースとスープ用のブロスに加工して販売しました。生産物の仕入れで協力したのが「クラッシーノマルシェ」。一般社団法人クラッシーノこうしが運営する生産者直売所です。
高尾 昨年度のニンジンはジュースを飲んでいただいたお客さんにも好評でした。今後も引き続き、クラッシーノさんと連携をして地域の「攻めの農業」に取り組んでいきたいと思います。
自然電力株式会社 太陽光開発部 高尾康太
自然エネルギーの発電所をつくるプロジェクトを推進しながら、地域還元事業も担当。
一般社団法人クラッシーノこうし 総務部マネージャー 安武俊輔
合志市の農家出身。地域の農家の生産物販売歴は15年以上。「クラッシーノマルシェ」の運営主体がクラッシーノこうしに移行する前の、自治体直営当時から直売所運営に関わる。
http://www.klassino-koshi.jp/index.html
安武さん そうですね、地域の農業強化にご一緒いただいて心強いです。私たちクラッシーノこうしは、ビジネスでの利益追求もしながら公的な目線も強く持っている組織。理事長は合志市市長です。たとえば健康的で付加価値の高い地域づくりを目的として、農家さんの所得をもっと上げていくことを考えています。
そのために私たちは小売の立場として、生産者に意見をフィードバックしたり、商品開発用の作物を生産依頼しています。売れるものを作っていただいて、農家さんがもっと儲かる地域にしていきたいんです。
末永さん 農家さん個人個人に対して市は直接はお手伝いを請け負えないので、商社機能を持つクラッシーノさんと連携をしているんですよ。クラッシーノさんが間にはいることで合志市ブランドとしての商品開発も可能になります。合志市のPRもしていただいているんです。
合志市 政策部 末永舞
「合志農業活力プロジェクト」は20年間。自身が定年退職するくらいまで続く長期のプロジェクトであること、行政が基金を作って利益を生み出していくことが新鮮で「すごい」と感じている。
末永さん 合志市は特産品をこれからもっと強化していきたいと考えています。たとえば近隣ではスイカといえば植木、大津は芋で、菊陽は人参とか、スターの農産物があるんですね。一方で合志市はいろいろ広く売り出していくという方法だったんです。農家さんが技術を磨いて多様な野菜を作ってきて。おかげで、コンパクトなまちですけど大抵の野菜は何でもそろっているんです。
今は商品開発も手探りなので、特にチャレンジ精神が強くて協力していただける農家さんにピンポイントで相談をしたりしています。これから商品開発を成功させて、ゆくゆくは「売れるのでこれを作ってください!」と広く募集できたら、と考えています。
安武さん 地域に認められて、地元の人に日常で買っていただけて、それから遠くの大きなマーケットでも売れるようになったらいいですね。そんな商品をつくりたい。
末永さん 商品開発は未来のためのチャレンジ。そのために使える、用途が柔軟なお金があるというのはいいですね。行政では一般的に、ハイリスクハイリターンな投資的なことにお金を使うのは難しいんです。そんな予算をたとえば100万円でもつくるのはとても難しいし、翌年度に繰り越すなんてとんでもない、というのが普通です。
だけど自然電力さんとのプロジェクトでは、地域で生まれたお金を地域に循環させながら、長期的で挑戦的な取り組みができます。これはすごいことだと感じています。
安武さん 合志市の農業環境は比較的恵まれていると思います。若い後継者がUターンしてきて、代替わりをしているところも多いんですよ。生産者の高齢化が各地で課題になっているなかで、合志市の農業には未来へのエネルギーがあると思います。地元でチャレンジするそんな彼らを、これからも私は応援していきたいです。
新規作物に挑戦し若手も育成する農家
続けて訪ねたのは、コールドプレスジュース用にニンジンやショウガを提供した農家「山本野菜」さんです。
山本野菜 山本春喜
熊本の農大を卒業後、父親の農家を継いで就農。若手農家の指導を積極的に行う。以前、熊本県「4Hクラブ県連」も務める。
山本春喜さん 父親はスイカや生姜、米を作っていました。ですが私は新しいことに挑戦したいと思って、品種を増やしました。これまで通りの農業では、規模も大きくなりにくいと感じていたんです。そこでメロンやセロリ、大玉トマトも作るようになりました。
自然電力さんに使ってもらったニンジンは、もともとは生姜の土地を休ませるために作りはじめました。当初はハウス生姜を作っていたのですが、種の価格が上がってきて種も自分たちで作るために露地生姜をはじめたんですよ。ところが生姜は一回収穫したら次は3年から4年生姜作りを休まないと土壌によくないので、間で人参をつくりはじめたんです。
山本野菜 山本智衣
大学卒業後は石材の輸入会社に勤務。玉名市にUターン後に春喜さんと結婚し農業を始める。農産物の加工商品を製造販売する「ZINGIBER(ジンジベル)」の代表も務める。2016年9月から加工をスタートし、今後はネット販売も計画。
山本智衣さん このあたりはもともとトマトも作っていなかったんです。それで「はじめてみようか」といって作ってみると、どんどん売れたんですよ。
山本春喜さん この地域は寒いので作るのが難しくて、技術が必要なんです。私は農大にも行かせてもらっていたので、仲間に相談しながら試行錯誤して作ることができました。そして今度は私が地域の若手に教えているんですよ。
山本春喜さん 地域の農業を活性化したいんです。若いもんが何を作っても売り先がちゃんとあって、収益が残っていくようなシステム作りにこれからは挑戦したい。ひと山でいくらの農産物じゃなくて、高単価の商品としてあつかわれるようにしていきたいです。
農業は一次産業といわれますが、まちづくりでもまさに「一次」で根幹だと思います。一次産業が活性化しないと、地域はまわらんと思うんですよ。商店が増えるのもいいことですが、やはり食べ物がないと。そうじゃないといかんと思うんです。
山本智衣さん 安さだけでなく、頑張っていいものを作ったらその分がきちんと評価してもらえるようになってほしい。若い農家さんたちは、やっぱり売り先を一生懸命探しています。
山本春喜さん 自然電力さんと、販路確保を一緒にできたら嬉しいですね。
高尾 私たちは2016年度から2017年度と続けて、クラフトビールの開発に取り組んでいるんです。まだ試験醸造段階なのですが、合志市の生産物を使ったビールを作ろうとしていて、生姜ビールなどもいいかもしれませんね!
マンゴーの地域ブランド化を目指す農業関連企業
クラフトビールの試験醸造を続ける中で、自然電力と合志市はこの時、合志市のマンゴーを使ったビールを試作していました。原料は合志市にマンゴー生産を広めた方から主に購入。今回はその試作ビールを持って生産者さんを訪ねました。
友枝マンゴー農園 友枝哲男
友枝マンゴー農園で生産したマンゴーをグループの有限会社友枝農業資材で販売。グループの西日本ナーサリー耕業株式会社では苗を生産している。
高尾 ラベルも含めて試作段階なのですが、合志市のマンゴーを隠し味に感じるビールを作りました。今日は友枝さんのマンゴー作りについてお話をお聞かせいただけますか?
友枝さん うちは農業資材と苗を売っている会社で、マンゴーを作りはじめたのは18年ほど前。宮崎でマンゴーを食べて、熊本でもできないかと思ったんですよ。新たにマンゴーで地域の農家の方たちが潤えばいいなと。それで導入するとうまくいって、20軒くらいまでに増えたのは嬉しかったですね。
それでもハウスの暖房コストがかかったり、マンゴーの価格がなかなか高くつかなかったりで、やめていく農家さんも増えてしまいました。今はうちを含めて4軒くらい。マンゴー栽培については今でも決して儲けが大きいものではないのですが、マンゴー栽培が好きで、美味しいと言っていただけることが嬉しくて続けているんです。
うちのマンゴーは、よそに味覚では負けていないと思うので、あとはブランドだと思っています。
友枝さん 合志の農家はですね、生産技術は高いんですよ。土壌条件が近隣に比べても不利な分、いいものを作れるように技術を向上させてきたからですね。わたしもこれからもっと上手に作って、宮崎のブランドマンゴーと比べても美味しいと言われるブランドを作りたいですね。そうしてまた合志のマンゴー生産を盛り上げたいです。
売れるビールの開発で地域貢献を目指すブルワリー
最後に訪れたのは、クラフトビールの醸造・開発を目指す飲食店経営者。クラフトビール醸造所を、自身の経営するレストランに併設して立ち上げようとしている株式会社ダイヤモンドブルーイングの鍛島(かしま)さんです。「合志農業活力プロジェクト」からはクラフトビールのレシピ開発資金の一部が助成されています。
株式会社ダイヤモンドブルーイング 代表取締役 鍛島悠作
熊本市出身。20代で世界一周し現地の人とお酒で仲良くなった経験から、世界中どこでも飲まれているビールの面白さに気づく。スリランカやインドでのマグロ貿易業を経て、ビヤホールを立ち上げる。ビールで世界を変えることを目指す。
鍛島さん 海外でビジネスをしたくて、台湾の貿易会社に勤めて、水揚げされた中でいいマグロを築地に送るという仕事をしたこともありました。今は肉に合うビールの開発に夢中になっています。近い将来にはWAGYU用のビールを作って海外に売るつもり。チャレンジはとことんしたいタチなんです。
鍛島さん 自分は小さいころからエネルギーが放出していて(笑)10代の頃はバイクを乗り回すのがすごく楽しくて、金髪に眉毛なしで高校に行ったりしていました。16歳の時には警察に捕まって、少年鑑別所で半年過ごしたんです。そこで価値観ががらっと変わって、再スタートしました。
更生施設から出て最初に太陽を見た時には、本当に泣きましたね。施設では太陽は見れなくて。当たり前に感じていていた太陽は当たり前じゃなかった。どん底からのこの話はスタッフにもしていて「俺でもやり直せたから、おまえたちも未来を信じればきっとうまくいくよ」って伝えています。
今はそんなエネルギーを商売に向けて、自分だけじゃなく関わる人みんながよくなればいいなという考え方でやっています。商売というのは、税金を払うことが一番の社会貢献だと僕は思うんですよ。法人税を払えば、福祉環境が良くなったりして地域に貢献できます。きちんとお金を儲けて、地域に税金として還元する。そういう商売をしていきたいと思っています。
鍛島さん だから自然電力さんから地域還元プロジェクトでビールを一緒に作ろうという話を聞いた時には、「楽しい人たちが来たな!」と思いました。自分の役割はもちろん、売れるビールを開発することです。地域のものを使って売って儲ければ、さらに地域に還元できる。これはおもしろいですよね。売れるためには、きちんと美味しいものを作ります。
いかがでしたか?自然電力の「100%自然でんき」の産地でお話を伺ったみなさんは、地域のことを思ってチャレンジをしている方たちでした。この取材を通して自然電力のスタッフが地域の人たちとつながっていく様子を見ていると、これからもっと「合志農業活力プロジェクト」のローカルコミュニティが育っていく予感がします。
もしもこんな発電所がもっと増えて、たくさんのチャレンジが地域に生まれたら、日本の地域がますますおもしろくなるはず。「エネルギーから世界をかえる」自然電力のでんきを、あなたも応援してみませんか?