ゼロカーボンシティを表明する自治体が急増! 脱炭素化に向けた自治体の取り組み

2050年のカーボンニュートラル実現に向けては、国と自治体の連携した取り組みが不可欠といえます。

2021年10月に閣議決定された「第6次エネルギー基本計画」では、「2030年度の温室効果ガス排出46%削減、さらに50%削減の高みを目指す」というエネルギー政策の道筋が示されています。

脱炭素化に向けた野心的な目標を達成するために、日本各地の多くの自治体でさまざまな取り組みが実施されています。

地域で脱炭素化に向けた施策を進めることは、その地域の資源を活かした再生可能エネルギーを最大限導入することにつながるほか、地域経済の活性化、エネルギー自給率向上、災害時の地域レジリエンスの強化などのメリットがあり、自治体にとって有益な取り組みと言えます。

今回は、自治体が進めている脱炭素化に向けた先進的な取り組みを紹介します。

自治体が脱炭素に取り組む意義

2030年度の温室効果ガス排出50%削減の高みを目指すために、地域における脱炭素化が重要な位置付けになっています。

地球温暖化対策の推進に関する法律においても、地方公共団体の責務として、温室効果ガス排出削減に努めることとしています[*1]。

自治体が脱炭素化に取り組むことは、地域で雇用を創出し、人口減少や災害リスクなどの地域が抱えるさまざまな課題の解決にも貢献します(図1)。

図1: 地域脱炭素によって解決される地域課題
出典: 環境省「地域脱炭素ロードマップ」(2021)
https://www.env.go.jp/earth/%E2%91%A1%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E8%84%B1%E7%82%AD%E7%B4%A0%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%97%EF%BC%88%E6%A6%82%E8%A6%81%EF%BC%89.pdf, p.3

近年地震や大型台風などの自然災害リスクが高まっている日本では、自治体における防災や減災の取り組みの重要性が増しています。
地産地消のエネルギーシステムの構築を進めることで、万が一の災害・停電時にも電力供給が確保され、地域のレジリエンス強化に貢献します。
また、公共交通機関のスマート化や省エネ住宅の推進によって、生活における快適性や利便性が向上します。

自治体という生活により身近なコミュニティで脱炭素化を進めることは、市民一人ひとりが気候変動に対して当事者意識を持つきっかけになり、行動変容を促すことにもつながるでしょう。

そして、カーボンニュートラルの実現には、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーのさらなる導入拡大が不可欠です。

地方には、まだ活用されていない再生可能エネルギーのポテンシャルが眠っています。
その地域の自然環境や気候風土を活かして、自治体内で消費する電力を再生可能エネルギーでまかなうことが可能になれば、地域のエネルギー収支や経済の改善にもつながります。

さらに、地域の再生可能エネルギー活用は、現在海外から輸入した化石燃料に頼っている発電の現状を改善し、日本全体のエネルギー自給率向上に貢献します(図2)。

図2: 地域の再生可能エネルギーの活用等による地域経済への効果
出典: 環境省「脱炭素先行地域づくりガイドブック」(2021)
https://www.env.go.jp/press/files/jp/110359/117269.pdf, p.4

2021年6月、国・地方脱炭素実現会議では、自治体での脱炭素化の取り組みを進めるための工程と具体策を示した「地域脱炭素ロードマップ」を策定しました[*2]。

このロードマップでは、2020年から5年間を集中期間として設定し、2030年度までに少なくとも100か所の「脱炭素先行地域」をつくることとしています。

省エネ住宅や自家消費型太陽光発電設備などの重点対策をドミノ式に広げていくことで、2050年を待たずとも、強靭で活力あふれる地域社会を全国に実現することが狙いです(図3)。

図3: 「脱炭素ドミノ」で重点政策を全国に伝搬します
出典: 環境省 脱炭素ポータル「カーボンニュートラルとは」(2022)
https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/about/#to-how

脱炭素先行地域は、住宅街などの住生活エリア、商業施設や大学のキャンパスなどのビジネス・商業エリア、農村や離島などの自然エリアなど多様なエリアが想定されています。

農山村では、ダムや地熱資源、バイオマスエネルギー、漁村では洋上風力や波力発電の活用など、エリアごとの特性に合わせた取り組みをおこないます。

このようなエネルギー政策を背景に、日本全国で2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロに取り組むことを表明した地方自治体、「ゼロカーボンシティ」が増加しています。
実質排出量ゼロとは、人間活動による温室効果ガスの排出量と森林等の吸収源による除去量との間の均衡を達成し、合計をゼロにすることです。

2022年2月現在では、東京都・大阪府・横浜市をはじめとして、40都道府県、365市、20特別区、144町、29村の合計598自治体が「ゼロカーボンシティ」を表明しています[*3]。
ゼロカーボンシティを表明する自治体は、近年急激に増加しており、表明自治体総人口は1億1,523万人に達しています(図4)。

図4: ゼロカーボンシティ表明自治体人口・数の推移
出典: 環境省「2050年 二酸化炭素排出実質ゼロ表明 自治体」(2022)
https://www.env.go.jp/policy/zero_carbon_city/01_ponti_20220228.pdf

ゼロカーボンシティ表明自治体では、脱炭素に加えてその地域特有の課題解消のために、街の特性や気候条件などを活かしたさまざまな取り組みをしています。

脱炭素に向けた自治体の取り組みについて、それぞれ違った特徴のある3事例を取り上げて紹介していきます。

東松島市スマート防災エコタウン

「東松島市スマート防災エコタウン」は、復興事業と合わせて「環境未来都市」づくりを進めている宮城県東松島市と、スマート住宅を推進する企業が官民一体となって進めるプロジェクトです。

既存の電力網だけに依存せず、自営の送配電線や太陽光発電設備、蓄電池などを組み合わせたマイクログリットと呼ばれる地産地消型エネルギーネットワークで、東日本大震災の経験をもとに防災面に特化しています。

災害に強い街づくりをコンセプトに、災害によって停電が発生した場合も、防災調整池に設置されたミドルソーラーやバイオディーゼル非常用発電機によって発電した電気を自営線を使って周辺の病院や公共施設に供給できる仕組みになっています(図5)。

図5: 東松島市スマート防災エコタウン システム概要図
出典: 一般社団法人「スマート防災エコタウン」
http://hm-hope.org/?page_id=286

バイオディーゼル非常用発電機により災害発生後72時間以内には普段通りの電力供給が可能で、停電が長引く場合は避難所となる集会所向けに大型蓄電池から電力を供給します(図6)。


図6: 東松島市スマート防災エコタウン 非常時のレベル別給電イメージ
出典: 東松島市復興政策部「『復興』と『エネルギー地産地消型のまちづくり』」
https://www.env.go.jp/press/y0618-05/mat05_1.pdf, p.20

エリア内のメガソーラーや住宅用太陽光、地域低炭素発電所によって、エコなエネルギーを地産地消し、温室効果ガス削減にも貢献します。

むつざわスマートウェルネスタウン

千葉県睦沢町が進める「むつざわスマートウェルネスタウン」は、脱炭素に加えて、定住人口減少を解決することを目的としたプロジェクトです。
睦沢町は、千葉県を中心に広がる南関東ガス田の水溶性天然ガスの採取エリアです(図7)。

図7: 千葉県における水溶性天然ガスの採取地域
出典: 国土交通省北海道開発局「むつざわスマートウェルネスタウンにおける地元産ガス100%地産地消システム構築事業」(2019)
https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/ki/renkei/splaat000001t1v6-att/splaat000001t1z9.pdf, p.2

睦沢町で採取される天然ガスは一酸化炭素や不純物を含まないメタン99%のエネルギーです。この天然ガスは都市ガスとして供給されています。

この天然ガスを最大限に活用し、定住人口増加のための定住賃貸住宅を整備したのがむつざわスマートウェルネスタウンです。

むつざわスマートウェルネスタウンは、住宅ゾーンと道の駅で構成され、この都市ガスを燃料に電気をつくるガスコージェネレーションシステムと太陽光、太陽熱を活用します。

図8: むつざわスマートウェルネスタウン 事業イメージ
出典: 関東経済産業局「事例:千葉県睦沢町」
https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/chiikiene/data/03mutsuzawaenergy.pdf, p.1

ガスコージェネレーションの排熱は道の駅の温泉施設に利用することで、地元産天然ガスを100%使い切ります。
電力は自営線で供給されるので、非常時にもエネルギー供給を継続することが可能で防災面でも優れています。

富山市コンパクトシティ

富山県富山市で進められている脱炭素の取り組みは、「富山市コンパクトシティ」です。

ゼロカーボンシティ宣言をしている富山市では、CO2排出削減や行政コスト軽減を目的とした「公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくり」を実施しています(図9)。

図9: 富山市が目指す「お団子」と「串」の都市構造
出典: 富山市「富山市エネルギービジョン」(2021)
https://www.city.toyama.toyama.jp/data/open/cnt/3/23229/1/01energyvisionhonpen.pdf?20210730183641, p.11

富山市では移動手段の約8割を自動車が占めており、その依存度の高さからCO2排出量などの環境負荷が課題となっていました。このような背景もから公共交通の活性化、沿線エリアへの居住推進、中心市街地の活性化の3つを主柱としてコンパクトシティの取り組みを実施しています。

コンパクトシティの取り組みはすでに10年以上経過しており、公共交通利用者増加などの成果が出ています。

環境モデル都市、環境未来都市、SDGs未来都市に選定されている富山市では、ネクストステージとしてさらなる脱炭素に取り組みます(図10)。

図10: 第3次富山市環境モデル都市行動計画において掲げた将来像
出典: 富山市「富山市エネルギービジョン」(2021)
https://www.city.toyama.toyama.jp/data/open/cnt/3/23229/1/01energyvisionhonpen.pdf?20210730183641, p.5

富山市の再生可能エネルギー導入ポテンシャルの合計は40.9億kWhであり、導入実績量の20.1億kWhのおよそ2倍になっています[*4]。
今後は特に導入ポテンシャルの高い、太陽光発電、中小力水力発電、バイオマス発電の拡大を図ります。

まとめ

2050年にカーボンニュートラルを実現させ、深刻化している気候変動を緩和するためには、国と自治体が一丸となって早急に脱炭素化に取り組むことが重要です。

地方自治体では、その自治体独自の強みや地理的条件などを活かしたさまざまな取り組みがおこなわれています。
エリアが限定される自治体単位だからこそ実現できる、先進的な取り組みも多くあります。
地域脱炭素をすすめることで、その地域の魅力を再発見することにつながり、大都市圏への一極集中の是正にもつながるでしょう。

2022年現在、日本の大半の都道府県・市町村がゼロカーボンシティ宣言をおこなっており、お住まいの自治体でも脱炭素化の施策がすでに始まっているかもしれません。

自治体の脱炭素化の取り組みは今後も拡大が進み、より多様化が進んでいくことが予想されます。いま自分が住んでいる街や気になる街の取り組みを調べてみてはいかがでしょうか。一人ひとりが参加できる脱炭素化の取り組みや、引っ越し先候補の基準の一つになるかもしれません。

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参照・引用を見る

*1
e-gov 法令検索「地球温暖化対策の推進に関する法律」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=410AC0000000117

*2
環境省「脱炭素先行地域づくりガイドブック」(2021)
https://www.env.go.jp/press/files/jp/110359/117269.pdf, p.3

*3
環境省「2050年 二酸化炭素排出実質ゼロ表明 自治体」(2022)
https://www.env.go.jp/policy/zero_carbon_city/01_ponti_20220228.pdf

*4
富山市「富山市エネルギービジョン」(2021)
https://www.city.toyama.toyama.jp/data/open/cnt/3/23229/1/01energyvisionhonpen.pdf?20210730183641, p.22

 

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