「太陽光じゃなくて太陽熱」?  太陽熱を利用した再生可能エネルギーとは?

太陽のエネルギーを利用した再生可能エネルギーと聞いて、多くの方が真っ先に思い浮かべるのは太陽光発電ではないでしょうか。しかし実は、太陽のエネルギーを利用した再生可能エネルギーには、太陽光だけでなく、太陽の熱を利用した「太陽熱利用システム」もあります。

近年、オフィスや住宅、公共施設など幅広い建物で導入されている太陽熱利用システム。実際には、どのように活用されているのでしょうか。また、太陽熱利用システムは環境性能の高いエネルギーとされていますが、具体的にどれほど環境に良いのでしょうか。

一方で、太陽熱利用システムには普及に向けた課題が山積しています。どのような課題があり、課題の解決に向けた新技術の開発状況はどうなっているのでしょうか。

 

太陽熱利用システムとは

太陽熱利用システムとは、太陽の熱を使って温水や温風を作り、給湯や冷暖房に利用するシステムであり、再生可能エネルギーの一種です[*1], (図1)。

図1: 太陽熱利用システムの概要
出典: 資源エネルギー庁「太陽熱利用システム 1. 太陽熱利用システムとは」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/attaka_eco/system/index.html?msclkid=34a05d23b95b11ec83e44ab856100981

2017年度の家庭部門の1世帯当たりのエネルギー消費量は、暖房が25.7%、給湯が29.1%と、半分以上が熱需要となっています[*2], (図2)。

図2: 家庭部門におけるエネルギー消費量用途別割合
出典: 資源エネルギー庁「平成30年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2019) 第2節 部門別エネルギー消費の動向」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2019html/2-1-2.html

暖房や給湯などの熱需要を太陽熱利用システムで賄うことによって、光熱費やCO2排出量の削減につなげることができます。そのため、現在では熱需要の高い戸建住宅のほか、ホテルや、病院、福祉施設など業務用建物でも太陽熱利用システムの導入が進んでいます。

 

主な太陽熱利用システムの仕組み

太陽熱利用システムには、太陽熱によって温められた水をお風呂などのお湯としてそのまま使う「太陽熱温水器(自然循環型)」や、集熱器で集めた熱を蓄熱槽に運び、蓄熱槽で水を暖めてお風呂やキッチンなどで使う「ソーラーシステム(水式)」、集熱器で集めた熱を使って空気を暖め、暖房として利用する「ソーラーシステム(空気式)」など様々な方法があります[*3], (図3)。

図3: 主な太陽熱利用システム
出典: 一般社団法人ソーラーシステム振興協会「太陽熱を賢く活用して、省エネ、ZEH化へ。」
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/climate/renewable_energy/ne2/taiyonetu/sunrise/h28_1.files/H28kyuto_SH.pdf, p.3

 

太陽熱利用システムと太陽光発電の違い

太陽光発電と名前は似ていますが、太陽の光から電気を生み出す太陽光と異なり、太陽熱利用システムは太陽の熱をダイレクトにエネルギーとして使用するという点で全く異なる性質を持ちます。

また、エネルギーの利用用途やエネルギー効率、パネルの標準設置面積など様々な点で違いがあります[*4], (図4)。

図4: 太陽熱利用システムと太陽光発電の違い
出典: 東京都環境局「太陽熱で地球にやさしい暮らしを」
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/climate/renewable_energy/ne2/taiyonetu/taiyonetu.html

太陽熱利用システムは、太陽光発電と同様にパネルを使用しますが、単位面積当たりの標準的な供給エネルギーは、太陽光発電は130kWh/m2であるのに対し、太陽熱利用システムは600kWh/m2です。そのため、供給エネルギー量が同じ場合、太陽熱利用システムの方がパネルの設置枚数は少なくなります[*5]。

また、太陽熱利用システムのエネルギー効率も、太陽光発電のそれと比べると高く、太陽光発電は7~18%であるのに対し、太陽熱利用システムは40~60%と大きな差があります。

具体的には、集熱面積60平方mの業務用太陽熱利用システムを導入した場合、1台あたり年間約5千Lの原油節約に相当すると言われています。

 

太陽熱利用システムのメリット

戸建住宅や事務所など様々な建物で活用が推進されている太陽熱利用システムには、様々なメリットがあります。

まず、太陽エネルギーには以下のような特徴があります。

  1. 化石燃料と異なり枯渇するおそれが少なく、永続的に利用が可能
  2. 日射量の地域差はあるが、どこでも利用が可能
  3. 二酸化炭素を排出しないため環境に良い
  4. 化石燃料などと異なり、エネルギー源そのものにコストはかからない[*6]。

また、太陽熱利用システムの導入メリットとしては、前章で述べた省エネ性のほかに、経済性が高いという点が挙げられます。

実際に、機器代や設置費用、配管工事費の合計750万円のシステムを導入した長野県の教育施設では、液化石油ガス燃料使用時と比較して、年間光熱費が約47万円削減されたと報告されています。

 

太陽熱利用システム導入の現状と事例

導入の現状

世界全体で見ると、太陽熱の生産エネルギーは、風力に次いで第2位と大きなシェアを占めており、新エネルギーの主流となっています[*3], (図5)。

図5: 世界における太陽熱の供給量
出典: 一般社団法人ソーラーシステム振興協会「太陽熱を賢く活用して、省エネ、ZEH化へ。」
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/climate/renewable_energy/ne2/taiyonetu/sunrise/h28_1.files/H28kyuto_SH.pdf, p.4

一方で、国内においては、1980年の「太陽熱温水器」の年間設置台数約80万台をピークに年々減少しています[*7], (図6)。

図6: 太陽熱温水器・ソーラーシステム設置実績
出典: 一般社団法人ソーラーシステム振興協会「太陽熱温水器・ソーラーシステム設置実績」
https://www.ssda.or.jp/energy/result/

しかしながら、2014年の太陽熱利用システム設置台数を国別に比較した別のデータを見ると、日本は世界11位と依然として多く導入されており、主要な再生可能エネルギーと言えます[*3]。

 

太陽熱フィールドテスト事業における導入例

国内では市場が伸び悩む太陽熱利用システムですが、政府は環境性能の良い太陽熱利用システムの普及を今後積極的に目指すとしており、様々な施設において実証事業が行われています。

例えば、新エネルギー・産業技術総合開発機構は、事業者が新たに太陽熱利用システムを導入する際に、事業費の1/2を負担する代わりに、同機構が運転データを収集・分析に活用する「太陽熱フィールドテスト事業」を行っています[*8], (図7)。

図7: 太陽熱フィールドテスト事業情報の概要
出典: 資源エネルギー庁「太陽熱フィールドテスト事業情報 事業の概要」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/attaka_eco/ft/index.html

平成18年度以降、計63カ所で事業が実施されており、公共施設や工場、宿泊施設などで導入されています[*9]。

例えば、長野県長野市にある「むさしや食品有限会社新工場」では、給湯・洗浄用水の加温のために導入された太陽熱利用システムによって、灯油換算で年間3,210L削減、コストは年間約27万円削減、CO2排出量は年間8t分削減されたと報告されています[*10], (図8)。

図8: むさしや食品有限会社新工場
出典: 資源エネルギー庁「太陽熱フィールドテスト事業情報 導入事例」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/attaka_eco/ft/jirei.html

また、東京都に所在する八丈ビューホテルも給湯のため導入された太陽熱利用システムによって、灯油換算で年間2,700L削減、コストは年間約17万円削減、CO2排出量は年間6.7t分削減されたと報告されています[*10], (図9)。

図9: 八丈ビューホテル
出典: 資源エネルギー庁「太陽熱フィールドテスト事業情報 導入事例」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/attaka_eco/ft/jirei.html

 

戸建住宅で活用される太陽熱利用システム

事業所建物のみならず、戸建住宅でも多く活用されている太陽熱利用システム。東京都では、長寿命環境配慮住宅モデル事業として、東京都府中市に太陽熱利用システムが設置された16戸の戸建住宅、「ソーラータウン府中」を調査したところ、一般的な戸建住宅や高性能住宅と比較しても、エネルギー消費量が少なく、環境負荷が少ないことが報告されています[*11], (図10)。

図10: ソーラータウン府中におけるエネルギー消費量
出典: 東京都都市整備局「光熱費が安い快適なエコ住宅を目指そう-長寿命環境配慮住宅モデル事業報告書の概要-」
https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/juutaku_seisaku/pdf/eco.pdf, p.5

また、東京都の試算によると、太陽熱の導入により、1世帯当たり年間2.5万円~2.9万円の光熱費(ガス代)と、年間0.4~0.6tのCO2排出の削減が期待でき、環境負荷の低減に大きな効果を発揮できるとされています[*12], (図11)。

図11: 太陽熱利用システム導入による光熱費と CO2排出量の年間削減効果(集熱器面積が 4 m2の場合)
出典: 東京都環境局「実例!太陽熱導入ガイドブック~太陽熱という選択、その活用方法~」
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/climate/renewable_energy/ne2/taiyonetu/taiyonetu.files/guidebook.pdf, p.105

 

太陽熱利用システムの課題と新技術の開発状況

このように、導入後の高い経済性が魅力の太陽熱利用システムですが、一方で、イニシャルコスト面などの課題もあります[*13], (図12)。

図12: 太陽熱利用システムの課題
出典: 資源エネルギー庁「太陽熱利用システム 3. 導入状況と今後の見通し」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/attaka_eco/system/mitoushi.html

家庭向け太陽熱利用システムの導入費用は20~80万円ですが、耐久年数が費用回収年数と同じ15年ほどのため、光熱費の節約効果が期待しにくいというデメリットがあります[*14]。

こうした現状の中、イニシャルコストの低減などに向け、新技術の研究・開発が行われています。例えば、車部品メーカーであるマルヤス工業は、自社技術を転用し、太陽熱を使った給湯システム事業に参入しています[*15]。

マルヤス工業の主力であるエンジン関連部品の技術を生かしたシステム開発により、設置費用は約25万円と価格が抑えられ、ガス料金は約3割削減。そのため、6年前後で設置費用も回収できるとされています。

今後は、コスト低減、パネルの集熱率向上など技術革新を行政や事業者が一体となって進めるとともに、環境性能や経済性のメリットを広く周知させることが、太陽熱利用システムの普及のカギとなるでしょう。

 

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参照・引用を見る

*1
資源エネルギー庁「太陽熱利用システム 1. 太陽熱利用システムとは」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/attaka_eco/system/index.html?msclkid=34a05d23b95b11ec83e44ab856100981

*2
資源エネルギー庁「平成30年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2019) 第2節 部門別エネルギー消費の動向」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2019html/2-1-2.html

*3
一般社団法人ソーラーシステム振興協会「太陽熱を賢く活用して、省エネ、ZEH化へ。」
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/climate/renewable_energy/ne2/taiyonetu/sunrise/h28_1.files/H28kyuto_SH.pdf, p.3, p.4, p.5

*4
東京都環境局「太陽熱で地球にやさしい暮らしを」
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/climate/renewable_energy/ne2/taiyonetu/taiyonetu.html 

*5
資源エネルギー庁「太陽光発電との違い」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/attaka_eco/df/index.html

*6
株式会社長府製作所「太陽熱利用給湯システム」
https://chofu.co.jp/products/solar/supply/index.html?msclkid=349f041fb95b11ecadd51c4aee6298af

*7
一般社団法人ソーラーシステム振興協会「太陽熱温水器・ソーラーシステム設置実績」
https://www.ssda.or.jp/energy/result/

*8
資源エネルギー庁「太陽熱フィールドテスト事業情報 事業の概要」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/attaka_eco/ft/index.html

*9
資源エネルギー庁「太陽熱フィールドテスト事業情報 設置事業者情報」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/attaka_eco/ft/gyousha.html

*10
資源エネルギー庁「太陽熱フィールドテスト事業情報 導入事例」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/attaka_eco/ft/jirei.html

*11
東京都都市整備局「光熱費が安い快適なエコ住宅を目指そう-長寿命環境配慮住宅モデル事業報告書の概要-」
https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/juutaku_seisaku/pdf/eco.pdf, p.5

*12
東京都環境局「実例! 太陽熱導入ガイドブック~太陽熱という選択、その活用方法~」
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/climate/renewable_energy/ne2/taiyonetu/taiyonetu.files/guidebook.pdf, p.105

*13
資源エネルギー庁「太陽熱利用システム 3. 導入状況と今後の見通し」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/attaka_eco/system/mitoushi.html

*14
株式会社オルタナ「普及停滞する太陽熱利用、後発エネルギー設備相手に苦戦」
https://www.alterna.co.jp/15951/

*15
日本経済新聞「エンジン技術を住宅に転用 トヨタ系、太陽熱給湯に参入」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD158Q30V10C22A3000000/

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