自然電力の地域還元への取り組み「1% for Community®」から生まれた「一般社団法人自然基金」のNoteに掲載(2022年9月8日)されたものを転載しています
一般社団法人自然基金(以下、自然基金)は、自然電力グループが開発した再生可能エネルギー発電所の売電収益の約1%を地域に還元する「1% for Community」に取り組んでいます。新しい資本循環を生み出し、地域の課題解決や地域の未来を担うリーダーをサポートしています。
2022年度は、地域コミュニティを牽引する次世代リーダーの輩出を目指す「熊本リーダーズスクール」を開催。去る6月18日、熊本県合志市にある「ルーロ合志」で第1回コンセプトワークを行いました。
講師に迎えたのは、「丸の内朝大学」など数多くの地域プロデュース・企業ブランディングを手がける、株式会社umari代表取締役・古田秘馬さんと、栃木県内に日光珈琲4店舗を展開し町全体を設計している、有限会社風間総合サービス代表取締役・風間教司さん。
経営者やNPO法人代表、農家、子育て中のお母さんなど、さまざまなバックグラウンドを持つ10名が受講したスクールの様子を、前編と後編に分けてご紹介。前編は、古田さんによるプレゼンテーションをお伝えします。
現代のプロジェクトに必要なキーワードは、「共助」「コミュニティ」「他付加価値」
古田さんは「なぜコンセプトなのか?」をテーマに、具体的にどのようにしてプロジェクトのかたちを作るのか、コンセプトはどうやって考えるのか、周りをどのように巻き込むのかについて話しました。
株式会社umari代表取締役・古田秘馬さん
東京都生まれ。慶應義塾大学中退。東京・丸の内「丸の内朝大学」など数多くの地域プロデュース・企業ブランディングを手がける。農地実験レストラン「六本木農園」や和食を世界に繋げる「Peace Kitchen プロジェクト」、讃岐うどん文化を伝える宿「UDON HOUSE」など都市と地域、日本と海外をつなぐ仕組みづくりを行う。現在は地域や社会的変革の起業に投資をしたり、レストランバスなどを手がける高速バスWILLER株式会社やクラウドファンディングサービスCAMPFIRE、再生可能エネルギー事業を手掛ける自然電力株式会社の顧問、医療法人の理事などを兼任。
冒頭、「共助のデザイン」について言及した古田さん。「人口減少が進む地域社会では、公共交通機関などのベーシックなサービスが維持できなくなっています。その解決は、行政に頼るのではなく、自分たちでなんとかしないといけない。でも1人ではできないからみんなでやる、という考え方です」と強調します。
さらに、「地域社会の成立が難しくなるこれからの時代、グローバルの対義語は、ローカルではなく、“コミュニティ”になります。プロジェクトが誰にとって価値があるのかをマニアックに考え、誰に向かってどんなメッセージを投げかけるのかが重要です」
「また、プロジェクトには、ひとつの目的だけではなく、他の価値をプラスする“他付加価値”も大事。例えば、僕らがプロデュースした『さぬきうどん英才教育キット』。うどんを作れるだけでなく、だしや日本の食文化について五感で学べる仕掛けが詰まっていて、香川県のおじいちゃん、おばあちゃんに飛ぶように売れています。おじいちゃんおばあちゃんは、このキットを通じて孫とコミュニケーションを取る時間にお金を払っているんです」と古田さん。
重要なのは目の前の課題解決ではない。その本質を見抜いた上で、“なぜプロジェクトをやるのか”を伝えること
「共助」、「コミュニティ」、「他付加価値」と、現代のプロジェクトに必要なキーワードが示された上で、コンセプトの作り方へと話が移ります。
「コンセプトを考えるときに重要なのは、単に目の前の課題を解決することではなく、その本質を見極めること。例えば、満員電車が好きな人はいないと思いますが、もしも周りの乗客が好きな女優さんだったら、毎日乗りたいと思いませんか? 満員電車が問題なのではなく、周りが全員知らない人だから、会社に行きたくないから嫌。これが課題の本質です。だったら、満員電車に合わない朝早い時間に行きたくなるように、その行く先に何があるかが重要。ここから始まったのが『朝大学』のプロジェクトです」
プロジェクトにおいては、なぜそれをやるのか、どんなメッセージでやるのかを伝えることが大事。そしてそれこそがコンセプトだと語る古田さん。
「プロジェクトでは、コンセプト(=なぜそれをやるのか)と、アイデア(=どうやってやるのか)、この2つがセット。しかし地域では、コンセプトが抜け、ゆるキャラや道の駅などのアイデアだけが一人歩きしている例がとても多いんです」
「人は、コンセプトに共感したから動く。そして、実際にコンセプトを体験して感動したらリピーターになります。仲間を集める時も、コンセプトが明確に伝わっていれば人は集まります。条件よりも、“なぜやるのか?”が非常に重要なんです」
終始、自身がプロデユースしてきた事例を織り交ぜながら、時にユーモアを絡め、コンセプトの重要性を説いた古田さん。
「大切なことはマーケティングではなく、新しい価値を言語化すること。どんな世界をどんな風につくっていきたいのか、このリーダーズスクールの中で真剣に向き合ってほしい。僕もいろんな失敗があって今がある。思いついたらやってみているうちに、コンセプトやコンテンツの精度がどんどん上がっていきます。まずはチャレンジしてみましょう」と、参加者にエールを送り、プレゼンテーションを締めくくりました。
後編では、路地裏カフェテリアの仕掛け人として知られる、風間教司さんのプレゼンテーションをご紹介します。自身のカフェ開業から地元のまちづくりを牽引するに至るまでのストーリー、そしてその中で大切にしてきたことについて、「まちづくりと小商」をテーマにしたお話です。