自然電力の地域還元への取り組み「1% for Community®」から生まれた「一般社団法人自然基金」のNoteに掲載(2022年12月22日)されたものを転載しています
一般社団法人自然基金(以下、自然基金)は、自然電力グループが開発した再生可能エネルギー発電所の売電収益の約1%を地域に還元するプロジェクト「1% for Community」に取り組んでいます。2022年度は、地域コミュニティを牽引する次世代リーダーの輩出を目指す「熊本リーダーズスクール」を開催。
今回は、8月25日と26日の2日間にわたって実施した、第3回福岡フィールドワークのレポート2回目です。築約50年の団地を改修したコミュニティ施設「ひのさと48」を運営する東邦レオのディレクター吉田啓助さんと、「むなかた牛」の飼料用米の栽培、飼育、精肉販売を一貫して手がける「すすき牧場」の代表・薄一郎さんのお話をご紹介します。
※「熊本リーダーズスクール」第3回 フィールドワークin福岡 レポート①
築約50年の団地が、新たなビジネスと人の架け橋の舞台に!
福岡県宗像市にある日の里団地は、1971年に完成し、最盛期には約2万人が暮らした九州最大規模の集合住宅です。2020年、老朽化が進んで人が住めなくなった一部閉鎖棟を解体し、この先50年を見据えた団地再生プロジェクト「さとづくり48」が始動しました。
閉鎖棟10棟のうち9棟を解体し、その跡地は「戸建て住宅エリア」に。残りの1棟「48号棟」はリノベーションして、コミュニティ施設「ひのさと48」として生まれ変わり、「地産地消を目指すブリュワリー」や「コミュニティ拠点となるカフェ」、「子どもたちがイキイキ成長する保育園」など、地域の交流を生むテナントが入居しています。
『さとづくり48』プロジェクトは、地元エネルギー企業の西部ガスと、グリーンインフラを提供する東邦レオ株式会社が中心となり、住宅メーカー各社と連携して進められています。東邦レオ社員であり、「ひのさと48」のディレクターを務める吉田啓助さんに話を聞きました。
「プロジェクトのコンセプトは『サスティナブルコミュニティ』。これは、コミュニティを単純な人のつながりと捉えるのではなく、コミュニティが続いていくための環境(社会システム)づくりである、ということを表しています。そして、それらを実現するために、『Culture(文化・日の里らしさ)』、『Work(仕事・職)』、『Education(地域ならではの教育)』、『Mobility(移動手段)』、『Food &Energy(地産地消)』、『Relocation(家・住み替え)』の6つのテーマを掲げ、拠点から街全体に広がる事を目指しています」
「これまでのまちづくりには、土地・建物の所有者と運営者、行政と地域と企業の間に隔たりがありました。そこでこの課題を解決するために、西部ガスさんと弊社が出資してSPC(特定目的会社)を設立。そのSPCが48号棟を購入・リノベして『ひのさと48』をつくり、西部ガスさんと弊社が共同で運営するなど、運営体制について工夫を重ねました」
「私たちの目的は、各事業の継続ではなく、この活動の継続です。そのため、それぞれの事業で収益を上げることではなく、プロジェクト全体のキャッシュフローを回すことを考えています。一つの事業に執着することなく、新しい事業をどんどん立ち上げていきます。『さとづくり48』に関わってくれた人たちと一緒に、『ひのさと48』以外の場所でも、団地&戸建てリノベ事業や、公共空間活用事業など、さまざまな事業が生まれていますよ。今後も新規事業開発を積極的に行っていき、地域課題解決×事業創出のサイクルを回していきます」
築約50年の団地を、新たなビジネスと人の架け橋の舞台へと生まれ変わらせた「さとづくり48」プロジェクト。まだスタートしたばかりのこの取り組みが、これからどのような変化を見せるのか、今後の展開が楽しみです。
「牛肉のおいしさ=牛の健康」飼料米も手作りにこだわる飼育方法とは?
1日目の行程の最後は、こだわりの飼育方法で「むなかた牛」を育てる「すすき牧場」に向かいました。近年、ブランド化が進む「むなかた牛」は赤身肉で、脂肪分が多い霜降り牛とは異なり、さっぱりしていて癖がなく、たくさん食べても胃がもたれにくいという特徴があります。
「すすき牧場」は、むなかた牛の「赤身」の旨味の品質を保つべく、飼料用米の栽培から精肉販売まで一貫して手がけています。代表の薄一郎さんは、「安心安全でおいしい牛肉を作るには、牛の食事も安全で健康であるべき」と話します。
「私たちは、ホルモン剤、抗生物質、農薬などを一切使わず、飼料用米や飼料の一部を自家栽培しています。それに、おからや菜種油粕、焼酎粕などの食品副産物を加え、可能な限り国内生産した栄養価の高い健康な餌を牛たちに与えています」
「また、『むなかた牛』を飲食店などに業務用として出荷するほか、牧場内や直営の精肉店、近郊のスーパーで販売しています。産直での販売を基本としているのは、『自分たちの肉がどこで売られているかをきちんと把握しておきたい』という想いから。消費者の手許に渡るまで、責任を持って商品を送り届けたいと思っています」
独自の飼育方法について話を聞いた後は、牧場内の広場でバーベキュー。薄さん自ら焼いてくださったお肉は、驚くほどさっぱりとした食感で、噛めば噛むほど旨味が口の中いっぱいに広がりました。参加者の皆さんは、「むなかた牛」の唯一無二の味わいに舌鼓を打ちながら交流を深めていました。
次回、福岡フィールドワークのレポート3回目は、世界遺産『「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群』見学の様子や、古民家をセルフリノベーションした農園レストラン「A.PUTEC FLEGO」オーナー夫婦のお話を紹介します。