今までと何が違う? 改正省エネ法を3つのポイントから解説

2020年10月、日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを目指すことを宣言しました[*1]。

カーボンニュートラルの実現に向けては、再生可能エネルギーの活用等によるエネルギーの脱炭素化とともに、産業部門など需要サイドにおける省エネの推進が不可欠です[*2]。

政府は、事業者による省エネを促進させるため、「省エネ法」を制定しています。省エネ法はこれまで何度も改正されてきましたが、2023年4月1日に「改正省エネ法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)」が施行されました[*3, *4]。

改正された省エネ法は、既存の省エネ法と何が違うのでしょうか。また、改正に伴い事業者には、どのような対応が求められるのでしょうか。詳しくご説明します。

 

省エネ法とは

省エネ法は、一定規模以上(原油換算で年1,500kl以上のエネルギーを使用)の事業者に対して、エネルギーの使用状況の報告を義務付けるなどの規制を課す法律です[*5]。

省エネ法が直接規制する分野は工場・事業場及び運輸分野であり、一定規模以上の事業者は、そのエネルギー使用量を国に届け出て、特定事業者等の指定を受ける必要があります[*5], (図1)。

図1: 省エネ法が規制する分野
出典: 資源エネルギー庁「省エネ法の手引き 工場・事業場編」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/media/data/shoene_tebiki_01.pdf, p.2

また、個別の工場や事業場等の単位でエネルギー使用量が年1,500kl以上である場合は、各々がエネルギー管理指定工場等の指定を受けることが求められます。

指定を受けた事業者は、毎年度定期報告書及び中長期計画書の提出が義務付けられます。また、事業者は中長期的に見て年平均1%以上のエネルギー消費原単位(エネルギー使用量を、生産量や売上高などエネルギー消費と関係のある量で除した値)の低減などの目標を設定する必要があります[*5], (表1)。

表1: 事業者全体としての義務出典: 資源エネルギー庁「省エネ法の手引き 工場・事業場編」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/media/data/shoene_tebiki_01.pdf, p.4

 

改正省エネ法のポイント

2050年カーボンニュートラルの実現に向けては、省エネの取り組みを促進するとともに、再生可能エネルギーなど非化石エネルギーの導入を進めることが不可欠です[*6]

また、太陽光発電などの導入量が増加する中で、電力供給量の変動に応じた電力需要の最適化を行う必要があります。

そこで政府は、これらの課題を解決するため、2023年4月1日に改正省エネ法を施行しました[*6], (図2)。

図2: 省エネ法の改正について
出典: 資源エネルギー庁「省エネ法の改正(令和4年度) 改正省エネ法のポイント」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/overview/amendment/

エネルギーの使用の合理化

1つ目の改正のポイントは、省エネ法における「エネルギー」の定義を拡大した点です。具体的には、これまで化石エネルギーのみであったエネルギーの使用合理化の報告対象を、非化石エネルギーを含む全てのエネルギーに拡大しました[*6, *7], (図3)。

図3: エネルギーの使用の合理化の報告対象範囲の拡大
出典: 資源エネルギー庁「省エネ法の改正(令和4年度) 改正省エネ法のポイント」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/overview/amendment/

近年、非化石エネルギーの導入が拡大していますが、再生可能エネルギーには一定の供給制約があります。例えば、太陽光や風力は、発電量が天候によって左右されてしまうため、そのコントロールが難しいのが現状です[*8]。

さらなる非化石エネルギーの導入拡大に向けては、需要側による対策も不可欠です。そこで、改正省エネ法では、事業者はエネルギー消費原単位等を算出する際、非化石エネルギーも含めたエネルギー使用量で算出するよう義務付けています[*9], (図4)。

図4: エネルギー消費原単位等の算出方法
出典: 資源エネルギー庁「令和4年度 第1回工場等判断基準WG改正省エネ法の具体論等について」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/sho_energy/kojo_handan/pdf/2022_001_04_00.pdf, p.19

算出時に非化石エネルギーも含むことで、化石エネルギーに留まらず、エネルギー全体の使用を合理化することを目指しています。

非化石エネルギーへの転換

2つ目の改正のポイントとしては、一定規模以上の事業者に対して、非化石エネルギーへの転換の目標に関する中長期計画の作成及び使用状況等の定期報告を義務付けた点です[*6], (図5)。

図5: 非化石エネルギーへの転換に向けた特定事業者等の義務
出典: 資源エネルギー庁「省エネ法の改正(令和4年度) 改正省エネ法のポイント」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/overview/amendment/

先述したように、改正前は非化石エネルギーを報告対象から除外していたため、非化石エネルギーへの転換を促進するための積極的な評価ができていませんでした。そこで、転換を進める事業者の取り組みを評価し、産業全体での転換を進めるための施策として、非化石エネルギーへの転換等に関する報告が義務付けられました[*7]。

事業者は、次のフローチャートに基づき、目標の設定及びそれに向けた計画・報告を行うこととなります[*5], (図6)。

図6: 非化石エネルギーへの転換に向けたフローチャート
出典: 資源エネルギー庁「省エネ法の手引き 工場・事業場編」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/media/data/shoene_tebiki_01.pdf, p.12

まず、全事業者は使用した電気全体に占める非化石電気の比率について、目標の設定、それに向けた計画の策定、実績値の報告を行う必要があります。

また、業種ごとにエネルギーの使用方法等が異なるため、その使用割合にも差があります。このような観点から、非化石エネルギーの目標については、事業者ごとの実態を踏まえて設定することが重要です[*9]。

鉄鋼業やセメント製造業、石油化学業など特定の業種(5業種8分野)については目安が設定され、その目安に対しての目標設定及び報告等が求められています[*5]。

一方で、特定の業種以外については、業種ごとに目標設定及びそれに向けた計画・報告を任意で行うこととしています。

電気の需要の最適化

3つ目のポイントは、電気の需要の最適化に向けて、一定規模以上の事業者に対して、電力の需給状況に応じたDR(ディマンド・リスポンス)の実績報告を義務付けた点です[*6], (図7)。

図7: 電気の需要の最適化に向けた報告範囲の拡大
出典: 資源エネルギー庁「省エネ法の改正(令和4年度) 改正省エネ法のポイント」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/overview/amendment/

DRとは、電気を使う需要家が、使う量や時間をコントロールすることで、電力需要のパターンを変化させることです[*10]。

先述したように、太陽光などの再生可能エネルギーは天候等によって発電量の変動が大きくなるため、電力会社のみの取り組みだけでは需給バランスを調整するのが困難になってきています。

そこで、改正省エネ法では、電力需給ひっ迫時に電力需要を抑制させる「下げDR」や、再生可能エネルギー余剰時等に電力需要を増加させる「上げDR」の実績報告を課しています。具体的には、事業者にDR実施日数を定期報告書に記載することを求めています[*5, *6], (図8)。

図8: DR実施日数のカウント方法
出典: 資源エネルギー庁「省エネ法の手引き 工場・事業場編」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/media/data/shoene_tebiki_01.pdf, p.14

 

まとめ

以上の改正点に留意しつつ、事業者は中長期計画書や定期報告書の作成を行う必要があります。なお、改正省エネ法に基づく中長期計画書の提出は2023年度、定期報告書は2024年度からとなります。書き方等については、資源エネルギー庁のホームページを確認してみると良いでしょう[*5]。

また、2024年度提出分の定期報告書から、省エネ法に基づく各事業者の取り組みを誰でも閲覧できる任意開示制度が開始予定です[*11], (図9)。

図9: 省エネ法における任意開示制度
出典: 資源エネルギー庁「定期報告書の任意開示制度」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/overview/disclosure/

各事業者の省エネの取り組みを知る機会として、活用してみてはいかがでしょうか。

 

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参照・引用を見る

*1
環境省「カーボンニュートラルとは」
https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/about/

*2
資源エネルギー庁「2030年エネルギーミックスにおける省エネ対策の現状と今後について」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/sho_energy/pdf/031_09_00.pdf, p.3

*3
経済産業省「『エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する基本方針』が閣議決定されました」
https://www.meti.go.jp/press/2022/03/20230317004/20230317004.html

*4
資源エネルギー庁「時代にあわせて変わっていく『省エネ法』」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/ondankashoene/shoenehoukaisei.html

*5
資源エネルギー庁「省エネ法の手引き 工場・事業場編」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/media/data/shoene_tebiki_01.pdf, p.2, p.3, p.4, p.11, p.12, p.14, p.57

*6
資源エネルギー庁「省エネ法の改正(令和4年度) 改正省エネ法のポイント」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/overview/amendment/

*7
近畿経済産業局「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)の改正について」
https://www.kansai.meti.go.jp/E_Kansai/page/20230105/08.html

*8
資源エネルギー庁「再エネの大量導入に向けて~『系統制約』問題と対策」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/saiene/keitouseiyaku.html

*9
資源エネルギー庁「令和4年度 第1回工場等判断基準WG改正省エネ法の具体論等について」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/sho_energy/kojo_handan/pdf/2022_001_04_00.pdf, p.5, p.19, p.27

*10
資源エネルギー庁「これからの需給バランスのカギは、電気を使う私たち~『ディマンド・リスポンス』とは?
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/dr.html

*11
資源エネルギー庁「定期報告書の任意開示制度」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/overview/disclosure/

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