AIの普及によって電力消費量が増える? 国内外のデータセンターの現状と各国の対策は?

国際エネルギー機関(IEA)によると、2026年の世界のデータセンターの電力消費量は、2022年と比較して2.2倍の1,000TWに拡大すると試算されています。これは、日本の年間総電力消費量に相当する規模です[*1]。

また、近年、膨大なデータ処理を伴うAIの普及により、電力消費量のさらなる増加が懸念されています。IEAによると、一般的なGoogle検索が1回あたり平均0.3Whの電力を消費するのに対し、オープンAIのChatGPTの1回のリクエストでは2.9Whもの電力を消費します。

AI等の普及によって、国内外のデータセンター関連の電力消費量はどの程度増加しているのでしょうか。また、データセンターにおける電力消費量の増加に対して、各国でどのような対策がとられているのでしょうか。詳しくご説明します。

 

データセンターとは

データセンターは、サーバやネットワーク機器を設置するために作られた建物です[*2]。

内部には、サーバを収納するラックが並び、外部と接続できる高速回線、冷却装置、大容量電源など、サーバ設置に必要な機器が整備されています[*2, *3], (図1)。

図1: データセンター構成図
出典: 国立研究開発法人 科学技術振興機構 低炭素社会戦略センター「情報化社会の進展がエネルギー消費に与える影響(Vol.2)」
https://www.jst.go.jp/lcs/pdf/fy2020-pp-03.pdf, p.2

 

データセンターの立地条件としては、電力、ネットワーク、遅延、自然災害リスクなどの要素が挙げられます[*4], (表1)。

表1: データセンターの立地条件出典: 株式会社日本政策投資銀行「~データセンター業界の最新の動向~」
https://www.dbj.jp/upload/investigate/docs/3f613b233aa36faadfa0eb987d3a4cf5_1.pdf, p.11

上記の条件をすべて満たすエリアは、日本国内では首都圏・関西圏の一部に限られており、データセンターの所在地は首都圏・関西圏に集中しています。

 

データセンター関連の電力消費の現状
世界のデータセンターを取り巻く現状

近年、世界のデータ通信量は増加し続けています。スマートフォンによる通信量が増加しており、2019年にはデータ通信量全体の15%程度を占めていますが、今後も増加傾向が続くと見込まれています[*4], (図2)。

図2: 世界のインターネットデータ通信量推移
出典: 株式会社日本政策投資銀行「~データセンター業界の最新の動向~」
https://www.dbj.jp/upload/investigate/docs/3f613b233aa36faadfa0eb987d3a4cf5_1.pdf, p.15

地域ごとのデータセンター数を見ると、2021年時点で北米に3,027棟、欧州に2,610棟、アジアに1,311棟となっています[*4], (図3)。

図3: 世界のデータセンター分布
出典: 株式会社日本政策投資銀行「~データセンター業界の最新の動向~」
https://www.dbj.jp/upload/investigate/docs/3f613b233aa36faadfa0eb987d3a4cf5_1.pdf, p.16

データセンターにかかる市場規模も拡大傾向にあります。世界の市場規模は2020年時点で499億米ドルと推定され、2028年には1,125億米ドルに達する見込みです。

データセンターを取り巻く日本国内の状況

データ通信量は、国内においても増加傾向です[*4], (図4)。

図4: 国内におけるデータ通信量推移
出典: 株式会社日本政策投資銀行「~データセンター業界の最新の動向~」
https://www.dbj.jp/upload/investigate/docs/3f613b233aa36faadfa0eb987d3a4cf5_1.pdf, p.21

2019年のデータセンタービジネスの市場規模は約2.2兆円、2025年までの年平均成長率は6.5%と、今後も拡大が続くことが予測されています。

さらに、データセンターの消費電力量も増加しています。2022年度に8,000GWhであった年間消費電力量は、2030年度には17,000 GWh、2050年度には41,200 GWhと、今後も拡大する見込みです[*5], (図5)。

図5: 国内データセンターの消費電力量推移
出典: 株式会社富士キメラ総研「国内データセンター市場におけるAI需要/地方分散/再エネ電源」
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/digital_infrastructure/0007/005_fujichimera.pdf, p.5

企業のデータセンター投資も活発化しています。例えばAmazon Web Serviceは、2023年から2027年の5年間に、日本国内向けだけでも2兆2,600億円の投資を計画しています。また、Microsoftは2024年4月、国内におけるAI等の強化を目的に約4,400億円を投資すると発表するなど、今後もデータセンターの増加が見込まれています[*5], (表2)。

表2: メガクラウド企業の国内データセンター投資計画出典: 株式会社富士キメラ総研「国内データセンター市場におけるAI需要/地方分散/再エネ電源」
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/digital_infrastructure/0007/005_fujichimera.pdf, p.4

Microsoftは2023年10月、自然電力株式会社と愛知県犬山市の太陽光発電プロジェクトにおいて、20年間のバーチャルPPA(再生可能エネルギー発電所から供給される電力から、環境価値のみを切り離して行う取引)を締結しました[*6]

Googleも2024年5月、自然電力株式会社と千葉県印西市における太陽光発電プロジェクトのバーチャルPPAを結ぶなど、メガクラウド企業による再生可能エネルギー導入に向けた取り組みが活発化しています[*7]。

 

データセンターにおける電力消費増加への対策

データ通信量の増大に伴い、国内外でデータセンターの消費電力量が増加しており、カーボンニュートラル等を見据えた環境配慮への要請が高まっています[*4]。

そのため、各国ではデータセンター建設に対する環境規制や、データセンターにおける再生可能エネルギーの導入が進んでいます。

電力消費増加に対する各国における施策

近年、データセンター建設が活発化しているアイルランドやドイツ、中国、アメリカなどでは、建設の際により厳しい環境条件を設定する規制が導入されています[*8]。

例えば、データセンターの一大集積地となっているアイルランドは、2026年の同国の電力需要の32%がデータセンター由来になると予測されており、環境に与える影響も懸念されています。そのため、アイルランドのエネルギー・水規制当局は、2021年、電力網への新規データ接続を制限するなど、規制を強化しています。

また、ドイツでは、住宅地におけるデータセンター許認可の制限や、再生可能エネルギー等の活用をデータセンターに義務付けるなどの措置を導入しています。

民間企業による環境への取り組みも活発化しています。例えば、アイルランドに本社を置くEchelon社は、100MW規模の大型データセンターを洋上風力由来の再生可能エネルギーで運用しています[*9]。

具体的には、グレートブリテン島西方の洋上風力発電所から直接の電力供給を受けることで、100%再生可能エネルギー調達を実現しています[*9], (図6)。

図6: アイルランドEchelon社における取り組み事例
出典: 環境省「データセンターによる再エネ利活用の促進に関するアニュアルレポート」
https://www.env.go.jp/content/000146667.pdf, p.59

電力消費増加に対する日本の対策

日本では現在、関東や関西など特定の地域にデータセンターが集中しており、これらの地域は電力が不足する傾向にあるため、データセンターの分散化が重要なカギとなります[*5], (図7)。

図7: 国内データセンターの地域別構成比
出典: 株式会社富士キメラ総研「国内データセンター市場におけるAI需要/地方分散/再エネ電源」
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/digital_infrastructure/0007/005_fujichimera.pdf, p.7

政府が発表した「デジタル田園都市国家構想」では、データセンター関連の取り組みの一つとして、データセンターの分散立地を促進しています。

また、分散立地と併せて、データセンターにおける再生可能エネルギー活用促進のため、「データセンターのゼロエミッション化・レジリエンス強化促進事業」を実施しています。本事業では、地域の再生可能エネルギーを活用したデータセンターの新設に伴う機器の導入支援や、既存データセンターの省エネ設備の改修等に対する補助を行っています[*10], (図8)。

図8: データセンターのゼロエミッション化・レジリエンス強化促進事業の概要
出典: 環境省「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金『データセンターのゼロエミッション化・レジリエンス強化促進事業』」
https://rcespa.jp/wordpress/wp-content/uploads/8_R05hosei-R06_DC_setsumeisiryou_20240419.pdf, p.3

本事業を活用して再生可能エネルギーを活用したデータセンターの構築等を行った事業者も既に多く存在します[*11]。

例えば、群馬県富岡市に所在する株式会社アガタは、データセンターの最大消費電力に対して、最大発電時電力が大幅に上回る大規模な太陽光発電を設置しました[*11], (図9)。

図9: 株式会社アガタによる取り組み
出典: 環境省「R3-5年度補助事業の紹介」
https://www.env.go.jp/content/000077975.pdf, p.3

併せて、発電した電力を蓄える蓄電池を導入したことにより、再生可能エネルギーの効率的な利用を実現しました。その結果、年間571トンのCO2削減を達成するなど、環境問題の解決にも貢献しています。

なお、1世帯の平均電力消費量に対する年間のCO2排出量が2トン程度とされているため、約285世帯分のCO2排出量を削減していることになります[*12]。

 

まとめ

AI等の活用の広がりにより、国内外で今後も増え続けるデータセンターにおける電力消費量。各国政府はデータセンターの新たな建設に対して環境規制を課すなど対策を行っていますが、増大する電力需要に対しては、再生可能エネルギーのさらなる活用が不可欠です。

 

今後は、データセンターの分散立地を進めつつ、各地域の再生可能エネルギーを活用することが、環境への影響を抑えながら電力消費量の増加に対応するためのカギとなるでしょう。

 

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参照・引用を見る

*1
株式会社日本経済新聞社「データセンター電力消費急増 2026年は日本1年分に匹敵」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR24EXI0U4A120C2000000/

*2
株式会社エヌ・ティ・ティピー・シーコミュニケーションズ「データセンターとは?クラウドとの違い・メリット・料金体系を紹介」
https://www.nttpc.co.jp/column/data_center/data_center.html

*3
国立研究開発法人 科学技術振興機構 低炭素社会戦略センター「情報化社会の進展がエネルギー消費に与える影響(Vol.2)」
https://www.jst.go.jp/lcs/pdf/fy2020-pp-03.pdf, p.2

*4
株式会社日本政策投資銀行「~データセンター業界の最新の動向~」
https://www.dbj.jp/upload/investigate/docs/3f613b233aa36faadfa0eb987d3a4cf5_1.pdf, p.11, p.15, p.16, p.17, p.21, p.46

*5
株式会社富士キメラ総研「国内データセンター市場におけるAI需要/地方分散/再エネ電源」
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/digital_infrastructure/0007/005_fujichimera.pdf, p.4, p.5, p.7, p.8, p.9

*6
自然電力グループ「自然電力、マイクロソフトとバーチャルPPAを締結」
https://www.shizenenergy.net/2023/10/13/seg_vppa_microsoft/

*7
自然電力グループ「自然電力、Googleと長期的な太陽光発電契約を締結」
https://www.shizenenergy.net/2024/05/24/se_signs_ppa_google/

*8
株式会社日本経済新聞社「世界でデータセンター建設制限 電力網への負荷深刻」
https://www.nikkei.com/prime/ft/article/DGXZQOCB1312L0T10C24A2000000

*9
環境省「データセンターによる再エネ利活用の促進に関するアニュアルレポート」
https://www.env.go.jp/content/000146667.pdf, p.58, p.59

*10
環境省「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金『データセンターのゼロエミッション化・レジリエンス強化促進事業』」
https://rcespa.jp/wordpress/wp-content/uploads/8_R05hosei-R06_DC_setsumeisiryou_20240419.pdf, p.3

*11
環境省「R3-5年度補助事業の紹介」
https://www.env.go.jp/content/000077975.pdf, p.3

*12
一般社団法人 環境エネルギー事業協会「CO2 1トン・1kg削減はどのくらいかを分かりやすく解説」
https://ene.or.jp/2023/05/24/co2-1%e3%83%88%e3%83%b3%e3%83%bb1kg%e5%89%8a%e6%b8%9b%e3%81%af%e3%81%a9%e3%81%ae%e3%81%8f%e3%82%89%e3%81%84%e3%81%8b%e3%82%92%e5%88%86%e3%81%8b%e3%82%8a%e3%82%84%e3%81%99%e3%81%8f%e8%a7%a3%e8%aa%ac/

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