家計を圧迫する電気代高騰の原因を「電気料金のしくみ」とともに解説

はじめに

近年、電気代の上昇が家計や企業の経営に影響を与えています。円安や燃料調達コストの増加、さらに猛暑による冷房需要の拡大など、複数の要因が重なり、「電気代が高騰している」と感じる方も多いのではないでしょうか。

しかし、電気料金の仕組みを詳しく見ると、高騰にも制度や市場の動きに基づく理由が存在します。
そこで本記事では、電気代の内訳や制度などに注目し、電気代高騰の原因を整理していきます。

電気料金の仕組みと「高騰」の正体を押さえる

電気料金の「高騰」は、 ①電力量料金(使った分) の単価が上がること、または ②その単価を押し上げる調整項目が増えること を指します。家庭向け料金は大枠として、基本料金+電力量料金+燃料費調整+再エネ賦課金 で組み立てられます。
このうち「毎月変わって高い/安い」と話題になりやすいのが 燃料費調整 と、年度ごとに単価が変わる 再エネ賦課金 です(参照*1)。

また、知っておくべき知識として、電力自由化(電力の小売全面自由化)があります。
電力自由化とは、2016年4月から家庭や商店を含むすべての需要家が、電力会社や料金メニューを選べるようになった制度変更です。自由化以前は、地域ごとの大手電力が家庭向け電気の販売を担う形が基本でしたが、自由化によって新規参入が進み、料金メニューやサービスの選択肢が増えました(参照*2)。

規制料金と自由料金の違い

規制料金(経過措置料金)
いわゆる「従量電灯A/B/C」など、自由化前から続く家庭向けの従来型メニューです。料金の変更には、経済産業大臣の認可を要する仕組みになっています。

自由料金
大手電力・新電力を問わず、事業者が設計して提供する料金メニューです。託送料金など法令上の費用を踏まえつつも、料金設定自体は原則として事業者の裁量で行われ、認可は不要です。

なぜ自由化後も「規制料金」が残っているのか

小売は2016年4月に全面自由化されましたが、家庭向け(低圧)では「規制なき独占」に陥ることを避ける観点から、規制料金(経過措置料金)を時限的に残し、競争状況を見極めながら撤廃が検討されています(参照*1)。

燃料費調整制度は「どこまで上がるか」を左右する

燃料費調整制度は、火力発電の燃料(原油・LNG・石炭)の輸入価格の変動を、時間差をもって電気料金に反映する仕組みです。基準燃料価格や実績燃料価格の置き方、反映のタイミングなどが定義されています(参照*3)

ここで重要なのが 上限の扱い です。

◯規制料金の燃料費調整には、燃料価格が急騰した際の影響を和らげるため、基準時点+50%(=基準平均燃料価格の1.5倍) という上限が設定されています(参照*3)
◯自由料金は、燃料費調整に上限がないメニューが多く、燃料市況の変動が料金に出やすくなります(参照*1)。

上限があると、短期的な急騰は抑えられます。一方で、燃料高が長引く局面では、上限によって料金へ十分に反映できない期間が生まれ、後から規制料金そのものの改定(認可を経た値上げ)につながる可能性があります。
実際に2023年の規制料金改定は、燃料価格の高騰や為替の影響を背景として審査・認可が行われたものです(参照*1)。

再エネ賦課金は「別枠の単価」で、年度ごとに増減する

再エネ賦課金は、固定価格買取制度(FIT)などを通じて再生可能エネルギーの普及を促進するための費用を賄う仕組みです。再エネ賦課金は、kWhあたりの全国一律単価 が毎年度設定されます。

直近では、単価が次のように動いています(いずれも経産省発表)。

図1 2025年度の賦課金単価
出典:経済産業省ニュースリリース「再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2025年度以降の買取価格等と2025年度の賦課金単価を設定します
https://www.meti.go.jp/press/2024/03/20250321006/20250321006.html

 

  • 2022年度:3.45円/kWh
  • 2024年度:3.49円/kWh
  • 2025年度:3.98円/kWh(400kWh/月の目安で月1,592円)

つまり、再エネ賦課金は年度の算定条件で上下し、燃料費調整のように毎月動く項目とは別枠で、使用量に比例して乗る単価 です(参照*4)。この賦課金が電気代高騰の原因として注目されることがありますが、実際には燃料費など他のコストが大きく伸びた場合に比べ、その影響は限定的であるケースが多いとされます(参照*5)。

結局のところ、2022年度の電気料金上昇については、燃料輸入価格の高騰が電気料金に影響した、という整理が資源エネルギー庁の資料で示されています(参照*6)。
また、規制料金の改定(2023年6月実施)の説明でも、燃料価格高騰や為替の影響が背景として明記されています(参照*1)。

燃料価格高騰と円安がもたらした電気料金の急激な上昇
国際エネルギー価格上昇の要因

2022年のロシアによるウクライナ侵攻は世界経済に大きな影響を与え、エネルギー供給への不安が価格を押し上げる要因となりました(参照*7)。

また、欧米の需要回復やOPECプラスによる生産調整も価格上昇の要素です。コロナ禍で一時的に需要が落ち込んだ反動もあり、燃料調達の市場価格が急激に上昇しました。これにより火力発電のコストが増大し、日本を含む各国で電気料金の高止まりが起きやすくなりました。

イタリアやEU主要国では電気料金が数倍に跳ね上がった例もあり、日本は比較的抑えられているものの、影響は避けられません。経済産業省の調査によると、2020年1月から3年後(2023年初頭)を比較すると、イタリアは3倍、EU全体も1.5倍、日本は1.3倍となっています(参照*7)。

円安と輸入物価の押し上げ効果

燃料価格の国際的な高騰に加え、円安も輸入コストを押し上げる要因です。円安は輸出産業には有利に働きますが、エネルギーや食料を輸入に頼る日本経済にとっては負担増となります。2022年から2023年にかけての為替レート変動は、輸入物価や企業物価を押し上げ、消費者物価にも上昇圧力を与えました(参照*8)。特に燃料はドル建てで取引されることが多く、円安の影響を受けやすい構造です。

結果として輸入燃料費が高騰し、電力会社は調達コストを料金に転嫁せざるを得ません。燃料費調整制度の上限規定があっても、長期的には最終的な電気料金に価格転嫁が進み、利用者は高い電気料金を負担する可能性が高まります。

企業物価・消費者物価を通じた家計への波及

企業物価は企業間で取引される財やサービスの価格水準を指し、輸入コストの上昇が企業物価を引き上げると、消費者物価(コアCPIなど)にも波及します。原油やLNGなど資源価格の上昇は、電力・ガス・水道料金への転嫁を通じて、家計の光熱費全体を増加させます(参照*8)。

猛暑・AI・データセンターが押し上げる電力需要
猛暑と家庭の電力使用量増加

他の要因として地球温暖化による猛暑の頻発や長期化により、夏場の冷房利用も電力消費を押し上げる大きな要因となっています。実際に「去年よりエアコン代が急激に上がった」と感じる方も多く、電力料金の高さを実感する人が増えています。猛暑下では冷房の継続使用が健康や安全に直結することもあり、単純な節電だけでは対応が難しい場合もあります。

AIデータセンター・半導体工場など大口需要の拡大

生成AIの普及やITサービスの拡大により、大量のデータを処理するデータセンターが急速に増えており、電力広域的運営推進機関の推計によれば、2024年度から電力需要が増加傾向に転じ、2034年度には2024年度比で5.8%増が見込まれています。また、データセンターの新設に伴う最大需要電力は、2034年度に2025年度比で約13倍になるという分析もあり、大規模な電力消費が予想されています(参照*9)。
こうした施設ではサーバーの稼働や冷却などに大量の電力が必要となり、半導体工場などIT関連の大口需要家が新規稼働すると、さらに電力消費が増加します。

家計・企業から見た「電気代高騰」の体感と負担感
家計における電気代負担の増加

日本では賃金の伸びが限定的な中、電気代の上昇が家計を圧迫しているとの声が多く聞かれます。電力・ガス取引監視等委員会のデータによると、家庭向け電気料金単価は2023年1月に前年同月比で約1.36倍に上昇しました(参照*7)。これはモデルケースで月額約2,700円の増加に相当し、猛暑など季節要因も加わると光熱費全体が大きな負担となります。

図2 電気料金単価(家庭向け)
出典:RAIDA電気代の高騰、それに伴う電力市場への影響 連載シリーズ:止まらぬ物価高(3)
https://raida.go.jp/column/4/

 

インターネット調査(全国100名対象、2024年9月実施)では、9割近い人が電気代の値上げを認識し、その大半が「不満」「大変不満」と回答しています(参照*10)。社会構造的にも、単身世帯や高齢世帯、ひとり親世帯など所得が限られた層ほど光熱費の上昇を重く感じる傾向があります。

所得階層・事業規模による影響の違い

企業においても、事業規模の小さい中小企業ほど電気代の支出比率が高く、光熱費の上昇で利益が圧縮されるリスクが大きいとされています。製造業や外食産業など電気を多用する業種では、燃料費高騰を価格に転嫁できず収益が圧迫される例も見られます。

家計の所得階層によっても影響度合いは異なります。低所得世帯ほど可処分所得に占める電気代の割合が高く、電気料金のわずかな上昇が生活に直結します(参照*8)。また、節電の余地が限られた世帯では、料金プラン見直しや省エネ機器への投資も難しく、電気代負担を減らすことが困難になる場合があります。

人々が考える「値上げの原因」と期待される対応

結局のところ、燃料価格の上昇や円安、猛暑など、複数の外部要因が電気代高騰の背景として存在していますが、調査結果では、再エネ賦課金を含む政策コストが誤解されやすく、「政策が電気代高騰の全ての元凶」と捉えられることもあります(参照*4)。
電力会社に対しては料金の透明性や、自由料金プランの分かりやすい情報提供などを期待する声も多く、こうした要望を踏まえ、家計の光熱費負担を軽減するための議論が進められています。

おわりに

電気代の高騰は複数の要素が絡み合って生じています。その中で、再エネ賦課金が過度に注目されることもありますが、データをもとに分解してみると、主な要因は化石燃料コストや需給バランスにある場合が多いです。

電気料金の仕組みを理解し、正確な情報に基づいて判断することで、適切な省エネや自家消費型エネルギー設備の導入、料金プランの見直しなど、具体的な対策を検討しやすくなるでしょう。

 

参照・引用を見る
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