太陽光パネルのメンテナンスとは? その必要性と保守点検の流れを紹介

太陽光発電は、光エネルギーを太陽光パネルにより電気に変換する発電方法です[*1]。シリコン半導体などに光が当たると電気が発生する現象を利用しています。

日本における太陽光発電システムの累計導入量は、2020年度末には71GWまで達しています。また、導入量は2030年には100GW、2050年には200GWまで増加すると見込まれています[*2]。

今後も増大することが予測される太陽光パネルですが、設置されている現場は、ほとんどが無人で管理されているため、一見メンテナンスを行っていないように見えます。しかしながら、実際には定期的な保守管理が不可欠で、メンテナンス次第で太陽光パネルの発電効率や寿命が大きく変わります。

具体的に、太陽光パネルの保守管理では、どのようなメンテナンスが行われているのでしょうか。その重要性とあわせて、詳しく説明します。

 

太陽光発電の仕組み

太陽光発電システムは、太陽の光エネルギーを吸収して直接電気に変える太陽パネル(太陽電池モジュール・アレイ)や、発電した電気を一つにまとめるための集電箱、得られた直流の電気を交流に変換するパワーコンディショナーなど様々な機器から構成されています[*3], (図1)。

図1: 太陽光発電システムの基本的構成
出典: 環境省 環境再生・資源循環局 総務課 リサイクル推進室「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第二版)」
https://www.env.go.jp/content/900512721.pdf, p.10

 

太陽光パネルメンテナンスの重要性

太陽光発電のパネル部分は、掃除機や洗濯機のように可動部分がないため故障が少ないとされていますが、メンテナンスが不要というわけではありません。なぜなら、台風など強風時の飛来物によって破損したり、劣化によって発電量が低下したりすることがあるためです[*4]。

太陽光発電量が低下する原因

  
住宅に太陽光発電システムを導入する場合、1日当たりの発電量は、電力容量が1kWの太陽光パネルで、約2.5kWh~3.8kWhとなります[*5]。

一般的に発電量は、天候や気温など気候条件によって変動するため、一時的な発電量の低下であれば問題ありませんが、メーカーが目安としている発電量を大幅に下回ることが恒常化している場合には、異常が発生していると言えます。

発電量が低下することには、様々な原因があります。例えば、太陽光パネル自体の経年劣化が挙げられますが、その度合いは太陽光パネルによっても様々で、1年ごとに発電量が低下するものもあれば、一定期間経過した時点で急激に落ちるパネルもあります。

また、太陽光パネルは屋外に設置するため、雨風の浸水や鳥のふん、ほこり、落ち葉などの堆積により故障することがあります。さらに、太陽光パネルは熱に弱いため、外気温が高いとパネルの劣化につながります。

実際、太陽光パネルの表面にある汚れを放置しておくと、年間で約1~2%発電効率が低下すると言われています[*6]。

メンテナンス実施の効果

  
メンテナンスを定期的に行うことで、先述したような発電効率低下の防止につながります。

東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社等が行った実証事業では、遠隔監視に基づく汚れや損傷の洗浄、修繕等を含む設備管理の最適化によって、発電出力が約10%改善するなど、メンテナンスの効果が実証されています[*7]。

安定的に長く太陽光発電を活用するために、太陽光パネルの定期的なメンテナンスが重要と言えます。

 

太陽光パネルの保守管理

保守点検に関するガイドライン

  
それでは、太陽光パネルは具体的にどのような流れで保守点検が行われているのでしょうか。細かい手順はメンテナンスを実施する事業者によって異なりますが、一般社団法人日本電機工業会および一般社団法人太陽光発電協会は、共同で「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」を作成・公表しており、一般的には本ガイドラインの流れで保守点検が行われています[*8]。

まず、目視による確認や機器の定期診断などの点検頻度については、太陽光発電が設置されている現場の状況に応じて決定することが求められています。具体的には、雪や風、落雷など天候の影響を受けやすい場所なのか、噴火による降灰、鳥のふんなどの影響を受けやすい場所なのかなどを考慮する必要があります。

点検頻度が確定したら、保守点検の作業計画や手順書の作成を事前に行い、点検を実施します[*8], (図2)。

図2: 保守点検の進め方(手順例)
出典: 一般社団法人日本電機工業会、一般社団法人日本電機工業会「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」
https://www.jpea.gr.jp/wp-content/themes/jpea/pdf/t191227.pdf, p.98

点検頻度は各設置場所の状況により異なりますが、本ガイドラインに記載されている参考例では、毎月1回程度の日常点検に加え、地震や台風、悪天候、火災などの後に行うことを推奨しています。また、年単位の定期点検では、日常巡視では確認できない設備の劣化や損耗などが実施され、点検により問題が見つかった場合には、機器の修理や応急処置がされます。その後、再稼働の処置を行い、点検結果を設置者へ報告するという流れになります。

また、日々のデータからも、設備の不具合を確認することが求められています。具体的には、事前に予測された機体発電性能や他の太陽光発電システムとの比較、データ収集システムから性能の異常を示すデータを入手して検討するなど、各現場に適した異常検知手段を取り入れることが求められています。

保守点検の実施事例

  
資源エネルギー庁によると、発電量維持や安全性確保の観点から3~4年ごとに1回程度の定期点検を推奨しており、1回あたりの定期点検の相場費用は約2.8万円とされています[*9]。

自宅近くに住宅用太陽光パネルを設置している場合には、設置者が日常的に異常がないか目視で確認することは可能ですが、そうでない場合や目視では発見できないような異常を発見するために、保守点検サービスがあります。

例えば、シャープマーケティングジャパン株式会社は、シャープ製住宅用太陽光発電システムや産業用太陽光発電システムの保守・メンテナンスを行っています。シャープでは、保守・メンテナンスについて特別な教育を受けた専任者である「ソーラーテクニカルマイスター」制度を独自に設置し、専用測定器を用いて太陽光パネルの出力測定を行うことで、良否判定を行っています[*10]。

また、太陽光パネルを赤外線サーモグラフィで測定し、異常がないか確認するIR測定(赤外分光法)と呼ばれる点検も行っています。IR測定は、測定温度が均一であれば正常であり、測定温度に差が生じているときには、不具合があると判断できます[*10], (図3)。

図3: IR測定(赤外分光法)とは
出典: シャープマーケティングジャパン株式会社「太陽光発電システム保守メンテナンス」
https://smj.jp.sharp/cs/solar/

NECフィールディング株式会社は、太陽光発電の運用と保守を行うサービスを提供しています。具体的には、目視点検や電気測定など定期点検をエンジニアが実施するとともに、24時間365日体制の通報監視サービスを提供しています[*11], (図4)。

図4: NECフィールディング株式会社による保守点検サービス事例
出典: NECフィールディング株式会社「太陽光発電の運用保守をトータルにサポート!」
https://solution.fielding.co.jp/lp/solar_power_om/

また、異常が発生した場合の障害対応や部品交換、調整など監視から障害保守までトータルでのサポートを提供しています。

 

まとめ

2017年4月に施行された改正FIT法(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)では、FIT制度(固定価格買取制度)を活用する事業者に対するメンテナンスの実施が求められているなど、近年、太陽光発電システムのメンテナンスの必要性が高まっています[*12]。

また、東京都では新築住宅への太陽光パネル設置義務化の条例が成立し、2025年4月からスタートするにあたり、太陽光発電システムの導入量はさらに増えることが予想されます[*13]。

設置した太陽光パネルを効率的に運転することは、原材料など資源の有効活用にもつながります。そのためには、点検方法を検討し、日常的な目視点検やメンテナンス事業者による点検など、保守管理を適切に行うことが重要と言えるでしょう。

 

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参照・引用を見る

*1
資源エネルギー庁「太陽光発電」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/renewable/solar/index.html

*2
一般社団法人 日本電機工業会「太陽光発電の導入状況」
https://www.jema-net.or.jp/Japanese/res/solar/donyujokyo.html

*3
環境省 環境再生・資源循環局 総務課 リサイクル推進室「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第二版)」
https://www.env.go.jp/content/900512721.pdf, p.8, p.9, p.10

*4
株式会社和上ホールディングス「太陽光発電はメンテナンスフリーではない」
https://wajo-holdings.jp/media/155

*5
株式会社スマートテック「太陽光の発電量が減る? 発電効率が低下する原因と対策」
https://www.smart-tech.co.jp/column/solar-power/power-generation-efficiency/

*6
株式会社フジテックス「太陽光発電のメンテナンスはなぜ必要? 点検内容や費用についてくわしく解説」
https://energy.fjtex.co.jp/blog/maintenance-sunlight/

*7
東京ガス株式会社「共同事業会社『A&Tm』の設立について」
https://www.tokyo-gas.co.jp/news/press/20220916-01.html

*8
一般社団法人 日本電機工業会、一般社団法人 太陽光発電協会「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」
https://www.jpea.gr.jp/wp-content/themes/jpea/pdf/t191227.pdf, p.1, p.12, p.13, p.27, p.98

*9
資源エネルギー庁「太陽光発電について」
https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/063_01_00.pdf, p.73

*10
シャープマーケティングジャパン株式会社「太陽光発電システム保守メンテナンス」
https://smj.jp.sharp/cs/solar/

*11
NECフィールディング株式会社「太陽光発電の運用保守をトータルにサポート!」
https://solution.fielding.co.jp/lp/solar_power_om/

*12
株式会社日本ビジネス出版「固定価格買取制度(改正FIT法)」
https://www.kankyo-business.jp/dictionary/000193.php

*13
NHK「【Q&Aで】東京都 新築住宅に太陽光パネル設置義務化 条例成立」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221215/k10013924041000.html

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