個人でも使える! 省エネ家電購入などに使える補助金には何がある?

2024年7月には、電力大手10社の電気料金が前月と比べて値上がりするなど、消費者にとって厳しい状況が続く電力事情[*1]。

電気料金を抑えるためには、エアコンや冷蔵庫など電力消費が多い家電製品の節電に取り組むことが効果的ですが、家庭内でできる節電にも限界があります。

省エネ性能の高い家電を使用することでも電気料金を抑えられますが、消費者にとっては購入費用が大きな負担となります。そこで国や自治体は家庭部門の省エネを後押しするため、省エネ性能の高い家電や設備を購入する際の補助事業を実施しています[*2]。

2024年7月現在、国によってどのような補助事業が行われているのでしょうか。自治体が実施する独自の補助金と併せて、詳しくご説明します。

電気料金をとりまく現状
上昇傾向にある電気料金

東日本大震災以降から上昇傾向にある電気料金ですが、2022年度の家庭向け電気料金は、2010年度比で約59%上昇し、産業向けについては約92%も上昇しています[*3], (図1)。

図1: 電気料金平均単価の推移
出典: 資源エネルギー庁「2.経済性」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/energy2023/02.html

冒頭でも紹介したとおり、直近の電気料金も上昇傾向にあります。2024年7月の電気料金は、電力大手10社で前の月と比べて値上がりしており、10社中8社でこれまでのモデルとなる料金と比較すると、最も高い水準となります[*1]。

例えば、値上げの際に国の認可が必要な「規制料金」は、使用量が平均的な家庭で、東京電力が392円上がって8,930円、関西電力が468円上がって7,664円となっています。

電気料金値上がりの背景

電気料金は、燃料価格等の変動によって左右されます。東日本大震災以降は、LNG輸入価格など燃料価格の高騰によって電気料金が高騰しました。また、近年では、ウクライナ情勢をめぐる国際社会の緊張の高まりを受け、燃料価格が高騰しています[*3], (図2)。

図2: 燃料価格の推移
出典: 資源エネルギー庁「2.経済性」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/energy2023/02.html

2024年7月の値上がりについては、政府が物価高騰対策として実施してきた電気料金への補助金を6月請求分でいったん終了したことが主な原因です。専門家によると、原油価格が2023年末頃から上昇傾向となっており、それと連動してLNG価格も上昇することで、今後も電気料金が上昇する可能性があるとしています[*1]。

国が実施する「住宅省エネ2024キャンペーン」

このような電気料金の上昇に対して、政府は様々な施策を実施しています。その一つが、家庭部門の省エネを推進する「住宅省エネ2024キャンペーン」です[*2]。

「住宅省エネ2024キャンペーン」は、住宅の断熱性の向上や高効率給湯器の導入等の住宅省エネ化を支援する以下の4つの補助事業の総称です[*2, *4], (図3)。

図3: 燃料価格の推移
出典: 国土交通省、経済産業省、環境省「住宅省エネ2024キャンペーン スタートしました!」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/3sho_shoene_reform_A4.pdf, p.2

4つ目の「賃貸集合給湯省エネ2024事業」は、補助対象者が賃貸集合住宅のオーナー等となりますが、それ以外の3つの事業は個人の住宅で設置する際に活用できます。そこで今回は、この3つの補助事業について見ていきましょう。

子育てエコホーム支援事業

「子育てエコホーム支援事業」は、子育て世帯や若者夫婦世帯による高い省エネ性能を有する新築住宅の取得、住宅の省エネ改修等に対して補助を行う制度です[*5], (図4)。

図4: 子育てエコホーム支援事業の概要
出典: 国土交通省「子育てエコホーム支援事業の概要」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001739177.pdf

長期優良住宅を新築する場合には1戸当たり100万円、ZEH水準住宅を新築する場合には80万円の補助を受けられます。

長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた住宅のことで、長期に使用するための構造及び設備を有していることなど5つの措置が講じられている住宅を指します[*6], (図5)。

図5: 長期優良住宅とは
出典: 一般社団法人 住宅性能評価・表示協会「長期優良住宅認定制度の概要について」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001597440.pdf, p.1

ZEHとは、「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略で、断熱及び省エネ性能の向上等によって1年間で消費するエネルギー量が概ねゼロ以下となる住宅のことです[*7], (図6)。

図6: ZEHとは
出典: 株式会社三菱UFJ銀行「ZEH(ゼッチ)住宅とは? 地球に優しい家を建てるメリットとお金の話」
https://www.bk.mufg.jp/kariru/jutaku/column/037/index.html

また、住宅を省エネ改修する場合には、子育て世帯・若者夫婦世帯であれば1戸当たり30万円、その他の世帯であれば20万円を上限に補助を受けることができます[*5]

なお、同補助事業は事業者が申請するため、住宅の購入者による申請は不要です。

先進的窓リノベ2024

「先進的窓リノベ2024事業」は、高い断熱性能を持つ窓への改修費用の2分の1相当等を補助する事業です。補助上限は200万円であり、リフォーム事業者が申請するため、購入者が申請する必要はありません[*8], (図7)。

図7: 先進的窓リノベ2024事業の概要
出典: 環境省「先進的窓リノベ2024事業の概要」
https://www.env.go.jp/content/000211445.pdf

住宅の建て方、設置する窓の性能と大きさ、設置方法によって補助額が変化し、窓の工事と同一の契約であれば、ドアが補助の対象となる場合もあります[*9]。

給湯省エネ2024

「給湯省エネ2024事業」は、家庭のエネルギー消費で大きな割合を占める給湯分野における省エネを実現するため、高効率給湯器の導入を支援する補助事業です[*10. *11], (図8)。

図8: 給湯省エネ2024事業の概要
出典: 資源エネルギー庁「高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金の概要」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/housing/data/koukouritsukyutoki_gaiyou.pdf, p.1

ヒートポンプ給湯機、ハイブリッド給湯機、家庭用燃料電池が補助対象であり、補助の基本額はそれぞれ1台8万円、10万円、18万円となっています[*10]。

基本額に加え、一定の要件を満たすと補助額が加算されます。

ヒートポンプ給湯機の場合、インターネットに接続可能で、翌日の天気予報等に連動することで昼間の時間帯に沸き上げをシフトする機能を持つ場合、加算額は2万円となります。また、補助要件下限の機種と比べて、5%以上CO2排出量が少ないもので、おひさまエコキュートに該当するものなどは、4万円加算されます[*12]。おひさまエコキュートとは、太陽光発電の余剰電力を活用したヒートポンプ給湯機であり、光熱費の削減が期待できます[*12], (図9)。

図9: おひさまエコキュートとは
出典: 資源エネルギー庁「対象機器の詳細 エコキュート」
https://kyutou-shoene2024.meti.go.jp/materials/ecocute.html

 

自治体独自の省エネ関連の補助金

国による補助事業だけでなく、自治体によっては独自の省エネ関連事業を実施しています。今回は、東京都と横浜市の省エネ家電購入時に活用できる補助金について見ていきましょう。

東京都が実施する「東京ゼロエミポイント」

東京都では、設置済みのエアコン、冷蔵庫、給湯器、照明器を、省エネ性能の高い機器に買い換えた都民に東京ゼロエミポイントを付与する「家庭のゼロエミッション行動推進事業」を実施しています[*13], (図10)。

図10: 家庭のゼロエミッション行動推進事業の概要
出典: 東京都「事業の概要」
https://www.zero-emi-points.jp/system/index.html

東京ゼロエミポイントは、ポイント数に応じた商品券やLED割引券に交換することができます[*14], (図11)。

図11: 東京ゼロエミポイントによって交換できる商品券及びLED割引券
出典: 東京都「東京ゼロエミポイントとは」
https://www.zero-emi-points.jp/about/index.html

 

ポイント付与数は、購入した家電の省エネ性能等によって異なります。例えば冷房能力が2.2kW以下のエアコンで15,000ポイント(2023年4月1日以降購入分)、2.4~2.8kWで18,000ポイント、3.6kW以上であれば23,000ポイント(LED商品券1,000円分+商品券22,000円分)付与されます。

横浜市が実施する「エコハマ」

横浜市では、節電効果の大きいエコ家電の本体購入価格(税抜)の20%(1台あたりの上限3万円)分を還元する「エコハマ」を実施しています[*15], (図12)。

図12: 「エコハマ」とは
出典: 横浜市「エコハマ」
https://ecohama.city.yokohama.lg.jp/

同事業は、登録店舗で対象製品を購入・設置後、対象製品の本体購入価格に応じて「エコハマPay」ポイント又は商品券が還元されるキャンペーンです。

家電の省エネ性能を表示した統一省エネラベルにおいて一定の基準を満たすエアコン、冷蔵庫、LED照明器具が対象となります[*15], (図13)。

図13: 「エコハマ」における対象製品
出典: 横浜市「エコハマ」
https://ecohama.city.yokohama.lg.jp/

まとめ

国や自治体は、省エネの推進に向けて様々な補助事業を実施しています。例えば、今回紹介してきた事業以外にも、埼玉県が家庭の省エネ設備導入促進に向けた補助金を交付しています[*16]。

お住まいの自治体にも補助金制度があるか確認し、国の制度等と併せて申請することを検討してみてはいかがでしょうか。

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参照・引用を見る

*1
NHK「7月請求の電気・ガス料金 大手全社が値上げ 今後の見通しは?」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240530/k10014465861000.html

*2
国土交通省、経済産業省、環境省「住宅省エネ2024キャンペーン」
https://jutaku-shoene2024.mlit.go.jp/about/

*3
資源エネルギー庁「2.経済性」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/energy2023/02.html

*4
国土交通省、経済産業省、環境省「住宅省エネ2024キャンペーン スタートしました!」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/3sho_shoene_reform_A4.pdf, p.2

*5
国土交通省「子育てエコホーム支援事業の概要」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001739177.pdf

*6
一般社団法人 住宅性能評価・表示協会「長期優良住宅認定制度の概要について」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001597440.pdf, p.1

*7
株式会社三菱UFJ銀行「ZEH(ゼッチ)住宅とは? 地球に優しい家を建てるメリットとお金の話」
https://www.bk.mufg.jp/kariru/jutaku/column/037/index.html

*8
環境省「先進的窓リノベ2024事業の概要」
https://www.env.go.jp/content/000211445.pdf

*9
環境省「先進的窓リノベ2024事業 事業概要」
https://window-renovation2024.env.go.jp/about/

*10
資源エネルギー庁「給湯省エネ2024事業 事業概要」
https://kyutou-shoene2024.meti.go.jp/about/

*11
資源エネルギー庁「高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金の概要」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/housing/data/koukouritsukyutoki_gaiyou.pdf, p.1

*12
資源エネルギー庁「対象機器の詳細 エコキュート」
https://kyutou-shoene2024.meti.go.jp/materials/ecocute.html

*13
東京都「事業の概要」
https://www.zero-emi-points.jp/system/index.html

*14
東京都「東京ゼロエミポイントとは」
https://www.zero-emi-points.jp/about/index.html

*15
横浜市「エコハマ」
https://ecohama.city.yokohama.lg.jp/

*16
埼玉県「【令和6年度】家庭における省エネ・再エネ活用設備導入補助金」
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0503/hojyokin2.html

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