お財布にも環境にも優しい! 省エネ家電選びに役立つサイト「しんきゅうさん」って?

火力発電の燃料となるLNG(液化天然ガス)等の輸入価格が上昇したことにより、2024年10月から大手電力会社10社中8社で電気料金が値上がりします[*1]。

今後の家計の見通しが不透明ななかで、家庭でもできる取り組みが省エネ家電への買い替えです。政府は、消費電力が少なく節電につながり、環境にも優しい省エネ家電への買い替えを推進しています。

しかしながら、「どの家電がどれほどお得なのか分からない」という方もいるかもしれません。その対策として政府は現在、省エネ製品買換ナビゲーション「しんきゅうさん」など様々な施策を実施しています。

本記事では、省エネ家電に買い換えるメリットや、「しんきゅうさん」を含む省エネ家電を選ぶ際に役立つ政府の取り組みについて詳しくご説明します。

家庭におけるCO2排出量の現状

日本における2022年度のCO2排出量(部門の電気・熱配分後排出量)のうち、家庭からの排出割合は15.3%を占めています[*2], (図1)。

 

図1: 2022年度の部門別CO2排出量
出典: 全国地球温暖化防止活動推進センター「4-04 日本の部門別二酸化炭素排出量(2022年度)」
https://www.jccca.org/download/65477

家庭では、電気由来のCO2排出量が最も多くなっています。環境省の調査によると、世帯当たりの年間エネルギー種別CO2構成比のうち、電気由来のCO2排出量は1.74トンで、全体の67.2%を占めています[*3], (図2)。

  

図2: 2022年度の世帯当たり年間エネルギー種別CO2排出量・構成比
出典: 環境省「令和4年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査 資料編(確報値)」
https://www.env.go.jp/content/000212356.pdf, p.1

世帯当たりの1日の家電製品別の電力消費割合を見ると、夏季・冬季いずれもエアコン等の電力消費が最も高くなっています。次いで、冷蔵庫、照明、給湯の電力消費割合も高く、節電の際にはこれらの家電製品の省エネが大きなポイントです[*4], (図3)。

 

図3: 家庭における家電製品の1日の電力消費割合
出典: 資源エネルギー庁「省エネルギー政策について」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/index.html

省エネ家電買い替え促進の背景

先述したように、日本では、2022年度に家庭部門から全体の15.3%に当たる158,112ktものCO2が排出されました[*2]。

温室効果ガスの排出量増加は、地球温暖化につながります。そのため、地球温暖化防止に貢献できる家電製品の省エネ促進が求められています[*5]。

また、世界のエネルギー需要が急増するなかで、エネルギーの安定供給確保が課題となっています。国際エネルギー機関によると、2040年の世界のエネルギー需要は2014年比で約1.3倍に増加すると予測されています。一方で、世界のエネルギー資源の可採年数は現在の生産量を前提とすると石油は約50年、天然ガスは約51年となっています。

より効率的にエネルギーを使用することが求められるなかで、家電製品等のエネルギー消費機器のエネルギー効率は、近年大幅に向上しています[*6]。

例えば、冷蔵庫は10年前と比べると約28~35%の省エネです[*6], (図4)。

図4: 冷蔵庫の省エネ性能比較
出典: 資源エネルギー庁「機器の買換で省エネ節約」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/choice/

照明器具の電球形LEDランプは、白熱電球と比べると約86%の省エネとなっています[*6], (図5)。

図5: 照明器具の省エネ性能比較
出典: 資源エネルギー庁「機器の買換で省エネ節約」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/choice/

省エネタイプのエアコンであれば、10年前と比べると約15%の省エネとなっています[*6], (図6)。

図6: エアコンの省エネ性能比較
出典: 資源エネルギー庁「機器の買換で省エネ節約」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/choice/

省エネ家電を選ぶことは地球温暖化防止にもつながるため、政府は消費者に省エネ家電の買い替えを積極的に促しています。

省エネ家電買い替え促進に向けた政府の取り組み
トップランナー制度

政府は現在、省エネ性能の高い製品の普及を促進する様々な施策を実施しています。先述したように、家電製品等のエネルギー効率の向上はCO2排出量削減に向けて不可欠と言えます。この向上を支えている制度のひとつが「トップランナー制度」です[*6]。

トップランナー制度とは、家電製品等の省エネルギー基準を、それぞれの機器において、現在商品化されている製品のうち、最も優れている機器の性能以上にするというものです。

同制度では、対象となる機器の製造事業者や輸入事業者に対し、エネルギー消費効率の目標を示して達成を促すとともに、エネルギー消費効率の表示を求めています[*7], (図7)。

図7: トップランナー制度の仕組み
出典: 資源エネルギー庁「エネルギー消費機器製造事業者等の省エネ法規制」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/equipment/

省エネルギーラベリング制度

トップランナー基準を満たしているかどうかを自ら確認をするのは困難です。そのため政府は家庭で使用される製品を中心に、基準を達成しているかどうかを表示する「省エネルギーラベル」制度を行っています[*6], (図8)。

図8: 省エネラベルの表示例
出典: 資源エネルギー庁「機器の買換で省エネ節約」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/choice/

ラベルは、製造事業者が製品本体やカタログに表示するもので、消費者が省エネ性能の高い製品を選ぶ際の目安になります。

また、小売事業者等が省エネ性能を分かりやすく表示する「統一省エネラベル」と呼ばれるラベルで省エネ家電を比較することもできます[*8], (図9)。

 

図9: 統一省エネラベルとは
出典: 資源エネルギー庁「統一省エネラベルが変わりました」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/retail/touitsu_shoenelabel/

省エネラベルには、省エネ性能が優れている順に5.0から1.0までの41段階で表示する省エネ性能が記載されています。また、トップランナー制度における省エネ基準などをどの程度達成しているかを示す省エネルギーラベルや、年間目安エネルギー料金が表示されているため、様々な観点から省エネ家電を比較することが可能です。

省エネ製品買換ナビゲーション「しんきゅうさん」

統一省エネラベルの表示や省エネ型機器の販売促進を支援するツールとして、政府は「しんきゅうさん」と呼ばれる「省エネ型製品情報サイト」を運営しています[*9], (図10)。

図10: 「省エネ型製品情報サイト」、「しんきゅうさん」とは
出典: 資源エネルギー庁「省エネ法に基づくラベリング制度の理解と活用」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/retail/pdf/syoenelabel_katsuyo_2210.pdf, p.46

「省エネ型製品情報サイト」では、各製品ごとにエネルギー消費効率や省エネ基準達成率、代表的な機能等が示されているため、より省エネ効率の高い製品を検索することができます[*10]。

「省エネ型製品情報サイト」に登録された製品情報を、簡単に比較したり、買い替え試算を行ったりできる「しんきゅうさん」と呼ばれるサイトもあります[*9]。

最も一般的な使い方である「かんたん比較」を使うと、3つのステップで買い替え試算ができます。まず、トップページで「かんたん比較」を押し、比較したい製品を選択します[*9], (図11)。


図11: 「しんきゅうさん」の使い方1
出典: 資源エネルギー庁「省エネ法に基づくラベリング制度の理解と活用」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/retail/pdf/syoenelabel_katsuyo_2210.pdf, p.54

次に、現在使用している製品の情報を入力し、買い替えを検討している製品の情報を入力します[*9], (図12)。

図12: 「しんきゅうさん」の使い方2
出典: 資源エネルギー庁「省エネ法に基づくラベリング制度の理解と活用」https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/retail/pdf/syoenelabel_katsuyo_2210.pdf, p.55

そうすると、買い替え前後の各製品の年間消費電力量や電気代、CO2排出量、CO2吸収量が表示され、どれほどお財布や環境に優しいのか比較することができるようになります[*9], (図13)。

図13: 「しんきゅうさん」を使った製品の比較
出典: 資源エネルギー庁「省エネ法に基づくラベリング制度の理解と活用」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/retail/pdf/syoenelabel_katsuyo_2210.pdf, p.56

まとめ

本記事では、省エネ家電選択の重要性や、省エネ家電を選ぶ際に活用できる政府のラベリング制度、WEBサービスについて紹介しました。

家庭部門におけるCO2排出量削減に向けては、一人ひとりが省エネ家電に買い換えることが求められています。家電製品を今後買い換える際には、「しんきゅうさん」など様々な政府サービスを活用してみてはいかがでしょうか。

 

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参照・引用を見る

※参考URLはすべて執筆時の情報です

*1
NHK「10月電気料金 電力大手8社で値上がり 東京電力も値上げへ」
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20240829/1000108414.html

*2
全国地球温暖化防止活動推進センター「4-04 日本の部門別二酸化炭素排出量(2022年度)
https://www.jccca.org/download/65477

*3
環境省「令和4年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査 資料編(確報値)」
https://www.env.go.jp/content/000212356.pdf, p.1

*4
資源エネルギー庁「省エネルギー政策について」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/index.html

*5
資源エネルギー庁「省エネって何?」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/what/

*6
資源エネルギー庁「機器の買換で省エネ節約」https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/choice/

*7
資源エネルギー庁「エネルギー消費機器製造事業者等の省エネ法規制」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/equipment/

*8
資源エネルギー庁「統一省エネラベルが変わりました」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/retail/touitsu_shoenelabel/

*9
資源エネルギー庁「省エネ法に基づくラベリング制度の理解と活用」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/retail/pdf/syoenelabel_katsuyo_2210.pdf, p.46, p.47, p.54, p.55, p.56

*10
資源エネルギー庁「省エネ性能カタログ2023年度」https://seihinjyoho.go.jp/frontguide/pdf/catalog/2023/catalog2023.pdf?update=20240209, p.12

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