いつ・どうやって発見された? 「電気」の歴史を紐解こう

テレビやスマートフォンなどの生活家電から外にある街路灯まで、様々な場所で広く使われている電気。私たちの生活を維持していくうえで欠かせないものですが、いつ、どのように発見され、どうやって実用化されるようになったのでしょうか。

身近な電気の歴史について、日本の事情も踏まえながら、詳しくご説明します。

電気とは

電気とは、金属の線の中を飛び回る電子という小さな粒の流れのことです[*1]。

電子は、物体を構成する原子と原子を結び付けています。電子には、分子の周りを自由に飛び回れるものがあり、これを「自由電子」と言います。自由電子は普段バラバラの方向に動いていますが、決まった方向に動いて流れができると電気になります。

電気は、コイルと磁石を使って作ることができます。コイルの中で磁石を回すと、コイルに電気が発生します[*2], (図1)。

図1: 発電の仕組み
出典: 電気事業連合会「電気の基礎!」
https://www.fepc.or.jp/sp/pikaru/basic.html

実際の発電所では、蒸気や水の力でタービン(羽根車)を回し、そこにつながっている発電機によって電気が作られています。

電気の発見
古代の電気

電気の歴史は、紀元前600年頃まで遡ります。当時、古代ギリシャの哲学者であったタレスは、琥珀(こはく)が天然磁石であると知っていたと伝えられています。また、紀元前4世紀頃には、古代ギリシャのプラトンの書物「テイマイオス」に、琥珀が軽いものを引き付けることが書かれています[*3, *4], (図2)。

図2: 琥珀
出典: 一般社団法人 電気学会「電気の基本を考えてみよう」
https://www.ieej.org/denki/pdf/denki_vol03_ver02_sp.pdf, p.11

当時から、琥珀を布でこすると、ほこりを引き付けることが知られていました。しかしながら、当時はその理由を確かめる方法がなかったため、原理が解明されていませんでした[*4]。

東洋では、紀元前3世紀頃の中国の書物「呂氏春秋」で、磁石を知っていたとみられる記録があります。日本の磁石に関する最古の記録は「続日本紀」の、和銅6年(713年)に「近江から慈石を献ず」とあります[*3]。

電気の原理の発見

電気や磁気に関する認識が進んだのは17世紀です。イギリスのエリザベス一世の侍医であったウィリアム・ギルバートが、1600年に「磁石について」を出版し、磁石についてそれまで伝わっていたことを整理しました[*4] , (図3)。

図3: ウィリアム・ギルバート
出典: 一般社団法人 電気学会「電気の基本を考えてみよう」
https://www.ieej.org/denki/pdf/denki_vol03_ver02_sp.pdf, p.11

ギルバートは、同書で「琥珀のように、こすると物を引き寄せる力(静電気)と磁石が物を引き寄せる力(磁気)は異なるもの」という説を主張しました[*5]。

また、ギルバートはこの性質を「エレクトリケ」と名付けましたが、当時の書籍はラテン語で書かれたため、一般には広まりませんでした。しかしながら、17世紀にイングランドのトーマス・ブラウン卿が、この名称を英語流に「エレクトリシティ(electricity)」と表現したことで広く知られるようになりました。

その後、1752年には、アメリカ独立宣言の起草者の一人であるベンジャミン・フランクリンが「雷の正体は電気」と証明しました[*6]。

フランクリンは、凧で雷を誘導する実験を行い、雷が電気であることを証明するとともに、避雷針の発明・普及に貢献しました。その後肖像が100ドル紙幣に刻まれるほどの人物となっています。

平賀源内の「エレキテル」

「エレキテル」とは、静電気を発生させる装置のことです。元々、オランダで発明されたエレキテルは、18世紀頃に日本へ輸入され、1751年頃にオランダ人によって江戸幕府に献上されたという記録が残っています[*7], (図4)。

図4: エレキテル
出典: パワーアカデミー「第7回 医療機器応用の歴史 日本最古の電気機器『エレキテル』は、医療機器でした。」
https://www.power-academy.jp/electronics/familiar/post.html

エレキテルと言えば、平賀源内。彼は文献でエレキテルを偶然発見し、見よう見まねで復元したと言われています。エレキテルは医療器具として活用され、感電すると患部から痛みが取れると言われていましたが、平賀源内が製作したものは見世物として評判を得ました。

人々の、平賀源内のエレキテルへの関心は次第に薄れていきましたが、その後、橋本宗吉(1763~1836)という人物によって電気実験器具として見直されるようになります。

ガラス管を紙でこすっただけでエレキテルと同様に静電気が発生することや、ガラス以外の多くの物質も静電気を帯びることを明らかにしました。このような功績により、橋本宗吉は、日本における電気学の開祖と言われています。

電気理論の発展
電池の発明

フランクリンによって雷が電気であることが証明されてから約40年後、カエルの神経筋のけいれんから動物電気(生物電気)を発見したのが、イタリアのボローニア大学の解剖学者ルイージ・ガルバ-ニです。彼は、けいれんが動物の体内にある電気のせいだと考えました[*4, *8]。

同発表をきっかけに、生体がなくても電気が起こることを発見したのが、イタリアの物理学者アレッサンドロ・ボルタです。1794年の英国王立学会誌で、電気を発生するのは筋肉ではなく金属そのもので、筋肉の収縮は電気による神経の興奮であるとして、ガルバ-ニの説を否定しました。

また、ボルタは、1800年に英国王立協会の年報に「異種の導電性物質の接触によって発生する電気について」という論文を掲載しています。同論文において、銅やすずなど異なった金属を湿った紙などで挟んで接触させ、それを何重にも積み重ねることによって、定常的に大量の電気を作れる「ボルタ電池」を発表し、その後の電気の進歩に大きく貢献しました[*4, *8], (図5)。

図5: ボルタ電池の発明
出典: 一般社団法人 電気学会「電気の基本を考えてみよう」
https://www.ieej.org/denki/pdf/denki_vol03_ver02_sp.pdf, p.16

発電原理の確立

ボルタ電池が発明されて以降、現在の発電の基礎となる様々な原理が確立されました。

1820年にはデンマークのハンス・クリスティアン・エルステッドが、ボルタ電池で金属線に電流を流す実験をしているとき、偶然近くにあった方位磁石の針が、かすかに振れるのを発見しました。これをきっかけに、長らく無関係と思われていた電気と磁気のつながりが明らかになってきました[*4, *9], (図6)。

図6: エルステッドの実験
出典: パワーアカデミー「フランス革命とアンペール」
https://www.power-academy.jp/electronics/science/phy002.html

同実験を発展させ、電流が流れる2本の導線に力が作用することを発見したのが、フランスのアンドレ=マリ・アンペールです[*9], (図7)。

図7: アンペールの実験
出典: パワーアカデミー「フランス革命とアンペール」
https://www.power-academy.jp/electronics/science/phy002.html

アンペールは、電線を円形にして電流を流すと、磁石と同じ現象が生じることを確かめ、分子の中に円形電流が流れることによって磁気が現れるという「アンペールの分子電流説」を提唱しました[*3]。

そして1826年、電流は電圧に比例し、抵抗に反比例するという「オームの法則」を発見したのが、ドイツのゲオルク・ジーモン・オームです[*10]。

さらに1831年、イギリスのマイケル・ファラデーは、コイルに発生する起電力(電圧)は、磁束の変化率に比例するという「電磁誘導の法則」を発見しました[*11], (図8)。

図8: 電磁誘導の実験
出典: パワーアカデミー「世界初のモーターとファラデー」
https://www.power-academy.jp/electronics/science/phy004.html

この現象は、電流と磁気の相互作用で、電線に電流が流れると電線のまわりに磁気が生じ、磁気が電線のまわりで変化すると電線に電流が流れるというものです[*3]。

これにより、電気から磁気、磁気から電気を発生させることができるようになりました[*4]。

同法則は、モーターや発電機のほか、Suicaのような電子カードの原理にもなるなど、私たちが現在電気を使ううえで重要な原理と言えます[*11]。

電気の実用化
電信機の発明

多くの科学者の努力によって、電気と磁気の性質がかなり正確に分かるようになったことで、信号を伝えるための手段として電気が使われるようになりました[*4]。

1837年、アメリカのサミエル・モールスは、イギリスからの帰路、船上で行われた「電磁石」の実験で、カチカチと音を立てて鉄片が電磁石につくのを発見しました[*12]。

モールスは、この原理を応用し、「電磁気電信機」を発明しました。この機械は、受信側で電磁石の力で受信した符号を紙テープに記録することができます[*13], (図9)

図9: 電磁気電信機の仕組み
出典: 日本無線株式会社「第3回 電気通信のはじまり」
https://www.jrc.co.jp/casestudy/column/03

この機械で情報を伝送するには、あらかじめ送信側と受信側の回路を接続しておくことが必要です。送信側の電鍵を押すと断続的に電流が流れ、電線を経由して受信側に伝送されることで、遠く離れた場所でも情報を伝達できるようになりました。

日本にこの技術が入り、東京・横浜間で公衆電報が開始されたのが1869年(明治2年)のことです。1875年(明治8年)には、長崎・函館間でも電信が開通しました[*4, *14]。

その後、1876年には、電話機がアレグザンダー・グラハム・ベルによって発明されました。日本で電話交換業務が始まったのは、東京・横浜間で1890年(明治23年)とされています[*4]。

発電機・モーターの発明

1832年、フランスのヒポライト・ピクシーによって、最初の交流発電機が発明されました。この発電機は、下のハンドルを回すと上のコイルが回転し、磁力によって電気が発生する仕組みです[*15]。

1860年代後半以降、それまで産業革命をけん引してきた蒸気機関の代用になるほど大量の電力が供給できる、実用的な直流発電機の開発が進みました[*4]。

例えば1866年に、ドイツのヴェルナー・フォン・ジーメンスによって発明されたのが、自励式自動発電機と呼ばれる発電機です。また、1873年には、ベルギーのゼノブ・グラムが実用発電機を開発しました[*15]。

発電機が実用化されたことで、電気エネルギーを機械エネルギーに変換して利用するモーターの開発も進みました[*4]。

1888年には、アメリカのニコラ・テスラが交流モーターを発明しました[*15]。

テスラによる発明以前も、「グラム発電機」と呼ばれる、発電機とモーターの機能を併せ持った直流電流の発電装置は存在していました[*16], (図10)。

図10: グラム発電機と二相交流モーター
出典: 大阪ガス株式会社「エジソンが恐れた天才発明家テスラが生み出した『交流の仕組み』」
https://services.osakagas.co.jp/portalc/contents-2/pc/ijin/1271579_38939.html

しかし、直流電流であるグラム発電機は、モーター回転時に火花を発するため、エネルギーの損失が発生していました。

そこで、テスラは、直流電流よりもコストがかからず、利用者が扱いやすい電圧に変圧できる「二相交流モーター」と呼ばれる交流電流の発電装置を発明しました。その後1893年に、シカゴ万博やナイアガラの滝での発電事業に交流電流が採用されると、世界中が交流電流の活用へ大きくシフトしていきました。

白熱電球の発明

白熱電球というとトーマス・エジソンが有名ですが、それ以前には、イギリスで1878 年にスワンという人物が、炭素フィラメント電球の製造を成功させています[*4]。

しかしながら、この電球は長時間の使用に耐えられませんでした。そこでエジソンは、1879年、綿糸を素材にした炭素繊維をフィラメントにした白熱電球を作り、40時間の連続点灯に成功しました[*4], (図11)。

図11: トーマス・エジソン(左)とエジソン型電球(右)
出典: 一般社団法人 電気学会「電気の基本を考えてみよう」
https://www.ieej.org/denki/pdf/denki_vol03_ver02_sp.pdf, p.24

エジソンは、電球をさらに長寿命にするため、フィラメントの原材料の研究を継続しました。その時に採用されたのが、京都の石清水八幡宮の竹です。

日本では、1878年(明治11年)3月25日に、虎ノ門にあった東京大学工学部の前身である工部大学校の講堂で、初めて「アーク灯」と呼ばれる電灯が点灯しました[*17]。

しかしながら、これはその日に開かれた祝賀会に参加した一部の出席者だけしか見られませんでした。一般の人が初めて電灯を見たのは、その4年半後の1882年(明治15年)11月1日に、東京電灯会社が銀座二丁目で点灯させた街灯とされています[*17], (図12)。

図12: 東京銀座通電気点灯
出典: 一般社団法人 電気学会「電気とは何だろう」
https://ieej.org/denki/pdf/denki_vol01_ver02_sp.pdf, p.8

まとめ

その後日本では、発電所が登場し、電灯やエレベーター、電車など様々な場面で電気が利用されるようになりました[*18]。

普段何気なく使っている電気は、今回紹介してきたように多くの人々による研究や開発によって実用化に至っています。これを読んで、電気について改めて考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

 

参照・引用を見る

※参考URLはすべて執筆時の情報です

*1
パナソニックホールディングス株式会社「電気っていったい何?」https://holdings.panasonic/jp/corporate/sustainability/citizenship/pks/library/001electricit/ele016.html

*2
電気事業連合会「電気の基礎!」
https://www.fepc.or.jp/sp/pikaru/basic.html

*3
一般財団法人 中部電気保安協会「電気の歴史 年表」
https://www.cdh.or.jp/info/electric/foundation3/07.html

*4
一般社団法人 電気学会「電気の基本を考えてみよう」
https://www.ieej.org/denki/pdf/denki_vol03_ver02_sp.pdf, p.11, p.12, p.15, p.16, p.17, p.18, p.19, p.22, p.23, p.24, p.25

*5
中部原子力懇談会「摩擦を科学し『電気』の命名者となった女王の侍医」https://www.chugenkon.org/public/great/236.html

*6
中部原子力懇談会「命がけで『雷=電気』を検証した”建国の父”」
https://chugenkon.org/public/great/310.html

*7
パワーアカデミー「第7回 医療機器応用の歴史 日本最古の電気機器『エレキテル』は、医療機器でした。」https://www.power-academy.jp/electronics/familiar/post.html

*8
一般財団法人 電気安全環境研究所 電磁界情報センター「第4回:動物電気」
https://www.jeic-emf.jp/public/web_mag/news_letter_1/news_letter_04.html

*9
パワーアカデミー「フランス革命とアンペール」
https://www.power-academy.jp/electronics/science/phy002.html

*10
パワーアカデミー「水の性質とオームの実験」
https://www.power-academy.jp/electronics/science/phy003.html

*11
パワーアカデミー「世界初のモーターとファラデー」
https://www.power-academy.jp/electronics/science/phy004.html

*12
一般社団法人 電気学会「私たちの身近にある電気」
https://www.ieej.org/denki/pdf/denki_vol02_ver02_sp.pdf, p.4

*13
日本無線株式会社「第3回 電気通信のはじまり」
https://www.jrc.co.jp/casestudy/column/03

*14
株式会社北陸電設「電気の歴史 日本編」
https://hokusetu.co/denmame/denmame-e000155.php

*15
株式会社北陸電設「発電機・モーターの歴史」
https://hokusetu.co/denmame/denmame-e000157.php

*16
大阪ガス株式会社「エジソンが恐れた天才発明家テスラが生み出した『交流の仕組み』」
https://services.osakagas.co.jp/portalc/contents-2/pc/ijin/1271579_38939.html

*17
一般社団法人 電気学会「電気とは何だろう」
https://ieej.org/denki/pdf/denki_vol01_ver02_sp.pdf, p.7, p.8

*18
電気事業連合会「電気の歴史(日本の電気事業と社会)」
https://www.fepc.or.jp/enterprise/rekishi/index.html

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