再エネ活用も! 大阪・関西万博で未来のエネルギーを感じよう

2025年4月13日に開幕した大阪・関西万博は、10月13日までの約半年間開催されます。

「未来社会の実験場」をコンセプトとした大阪・関西万博では、エネルギーの未来像を体験できる展示が多数あります。例えば、オランダのパビリオンでは、水が持つ無限の可能性に着目し、そのエネルギーを利用する最新技術を紹介しています。資源循環をテーマとした日本政府館では、万博会場内で集めたごみを微生物によってエネルギーに変換し、それを会場内で再利用する過程を展示しています。また、走りながら自動給電する最新鋭のスマートモビリティに乗って、万博会場内外を移動することもできます。さらに、持続可能な運営を目指し、万博におけるカーボンニュートラルの実現も目指しています。

この記事では、万博で体験できる最新のエネルギー技術と、万博における脱炭素の取り組みについて紹介します。

大阪・関西万博における再生可能エネルギーの位置付け

2025年4月13日から10月13日まで開催される大阪・関西万博のコンセプトは「People’s Living Lab(未来社会の実験場)」です。

大阪・関西万博では、万博会場を新たな技術やシステムを実証する「未来社会の実験場」と位置づけ、さまざまなプレーヤーによるイノベーションを誘発し、それらを社会実装していくための、Society5.0 実現型会場を目指します[*1]。

Society5.0とは、日本政府が目指す未来の社会であり、「サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会」と定義されています[*2]。

展示の集合体であったこれまでの万博とは異なり、実装型の社会実験に「参画し、共に創る」万博をコンセプトとし、企業や大学、公的機関などのプレイヤーが連携して共創的に創り上げます。

日本政府が提唱する未来社会であるSociety5.0を実現する要素として、ロボットや空飛ぶクルマなどと並んで、再生可能エネルギーの活用も含まれています[*3], (図1)。

図1: 「Peopleʼs Living Lab = 未来社会の実験場」の意義
出典: 経済産業省 2025年⽇本国際博覧会(⼤阪・関⻄万博)について」(2025)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/waso_kyogikai/pdf/010_08_00.pdf, p.5

大阪・関西万博で体験できる最新のエネルギー技術
水とエネルギーについて学べるオランダパビリオン

国土の約1/4が海面下にあるオランダは、古くから水と共存する技術や仕組みを生み出してきました。そんな水と深い関わりがあるオランダのパビリオンでは、水に含まれる無限のパワーを利用する技術を紹介しています[*4]。

このパビリオンは“A New Dawn‐新たな幕開け”と名付けられており、建物の中心にある球体は、持続可能なクリーンエネルギーと日の出を表現しています[*5], (図2)。

図2: オランダパビリオンの外観
出典: EXPO2025 オランダパビリオン」(2025)
https://www.expo2025.or.jp/official-participant/netherlands/

パビリオンに入場すると、来場者一人一人に「エネルギーオーブ」と呼ばれる球体デバイスが渡され、インスタレーションと会話しながら水の世界を探求することができます[*6], (図3)。

図3: 来場者に手渡されるエネルギーオーブ
出典: Nederlandsオランダパビリオン公式ブックレット」
https://orandaexpo2025.nl/sites/orandaexpo2025/files/files/2025-04/オランダパビリオン公式ブックレット%28JP%29%20ver.080425.pdf, p.8

パビリオン中心部の大きな球体空間に進むと、「A New Dawn(新たな幕開け)」と名付けられた、AI生成の映像がドーム状のスクリーンに映し出されています。来場者を包み込むこの映像は、限りある資源を消費し続ける人類への問いかけと、水の力を活用した持続可能な未来への可能性を描いています[*6]。

再生可能な水の力を活かす革新技術を紹介し、クリーンエネルギーを中心とした持続可能な未来を体験できるパビリオンです。

資源の循環を体感できる日本政府館

日本政府館はプラントエリア、ファームエリア、ファクトリーエリアの3つで構成されており、日本に古くからある循環の姿をさまざまな方法で表現しています。

冒頭でお伝えしたように、会場内で出たごみを微生物の力によって分解し、バイオガスとして再生する、この循環の過程をインスタレーションを通じて追体験することができます[*7], (図4)。

図4: 日本館の展示コンセプト
出典: Jpan pavilion Expo2025「Overview 日本館について」
https://2025-japan-pavilion.go.jp/overview/

廃棄物から生成されたエネルギーが日本館を稼働させており、まさに「生きたパビリオン」と言えるでしょう。

また、万博内には、メタネーション実証設備もあり、ごみから生成したバイオガスからCO2を取り出し、再生可能エネルギー由来の水素と反応させることで、未来の都市ガス「e-メタン」を製造する様子を見学することもできます[*8], (図5)。

図5: カーボンリサイクルファクトリー 大阪ガスメタネーション実証設備
出典: EXPO2025 The city gas of the future: e-methane 未来の都市ガス『e-メタン』」(2025)
https://www.expo2025.or.jp/future-index/green/methanation/

「e-メタン」は燃焼するとCO2を発生しますが、製造する際に使用するCO2と同量であるため、大気中のCO2量を増加させないカーボンニュートラルな燃料です。

市街地と万博会場を結ぶ水素燃料電池船「まほろば」

大阪の市街地と夢洲・万博会場をつなぐ「まほろば」は、クリーンエネルギーとして注目される水素で動く水素燃料電池船です[*9], (図6)。

図6: 水素燃料電池船「まほろば」
出典: 資源エネルギー庁「未来のエネルギー技術が集結!大阪・関西万博の見どころをチェック ~太陽光・水素編」(2025)
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/expo2025_01.html

「まほろば」は、岩谷産業株式会社が開発した「燃料電池」と「蓄電池」のハイブリッドで航行する日本初の客船で、水素と空気中の酸素しか使わないので、運行中はCO2をほとんど排出しません。エンジン駆動の大きな振動や音、燃料のにおいなどもないため、快適な乗り心地を実現しています。

「まほろば」は万博会場へのアクセスとして、万博会場「夢洲(ゆめしま)」、ユニバーサルシティポート、大阪市街地の中之島を結んで遊覧航行します。

走りながら自動給電する最新EVバス

大阪・関西万博では、来場者の移動をよりクリーンにスマートにするため、移動用モビリティとして、最新鋭のEV(電気)バスが走行します。約100台のEVバスには、万博会場内外のルートで乗車することができます。

一部のEVバスでは、ドライバーが不要のレベル4自動運転や走行中自動給電などの新技術を融合させ、大規模な技術実証をおこないます[*10], (図7)。

図7: 走行中給電の活用
出典: EXPO2025 「EVバス」
https://www.expo2025.or.jp/future-index/smart-mobility/evbus/

EVバスは、万博来場者の輸送だけでなく、「エネルギー効率改善・脱炭素」の実現を目指す未来のモビリティです。

大阪・関西万博の脱炭素の取り組み

大阪・関西万博では、運営においてSDGsを達成するための持続可能方針指針である「EXPO2025グリーンビジョン」を策定しています。目指すべき方向として以下の3つを掲げており、再生可能エネルギーの活用や3Rの実践などを通じて、脱炭素や生態系の保全に取り組みます[*11]。

  1. 省CO2・省エネルギー技術の導入や再生可能エネルギー等の活用により、温室効果ガス排出量の抑制に徹底的に取り組む。
  2. リデュース(Reduce)、リユース(Reuse)、リサイクル(Recycle)、可能な部材等を積極的に活用する3R、また再生不可能な資源を再生可能な資源に代替するリニューアブル(Renewable)に取り組み、資源の有効利用を図る。 
  3. 沿岸域における生態系ネットワークの重要な拠点として、会場内の自然環境・生態系の保全回復に取り組む。

このグリーンビジョンにもとづき、大阪・関西万博では開催期間やその前後における温室効果ガスの排出量を省エネや再生可能エネルギーの活用によって削減し、カーボンニュートラルの実現を目指しています。また、先進的な再生可能エネルギーを徹底利用し、温室効果ガス排出削減に取り組むとともに、来場者にも、脱炭素社会の具体的なイメージを提示します。

さらに、取り組みのひとつとして、会場の空調に地下の帯水層蓄熱と海水冷熱を利用する設備の導入し、各パビリオンに冷熱を供給します。大阪平野が地中熱活用のポテンシャルが高いエリアであることを活かして、2本1組の井戸を使い、冬季にためておいた冷熱を夏に冷房などに活用し、使用後は地下水にもどす帯水層蓄熱を実装します[*12], (図8)。

図8: 帯水層蓄熱のイメージ
出典: 公益社団法人 2025年日本国際博覧会協会「大阪・関西万博の概要と脱炭素に関する取り組み」(2025)
https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/8420/17_04_shiryou3.pdf, p.14

また、一部のパビリオンのスタッフが着用する「スマートウェア」の背中には、薄くて軽い次世代型太陽電池、ペロブスカイト太陽電池が貼り付けられています。ペロブスカイト太陽電池によって作業着に備え付けられたファンを回したり、スマートフォンを充電することができます[*9], (図9)。

図9: ペロブスカイト太陽電池を搭載したスマートウェア
出典: 資源エネルギー庁「未来のエネルギー技術が集結!大阪・関西万博の見どころをチェック ~太陽光・水素編」(2025)
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/expo2025_01.html

ペロブスカイト太陽電池はバスターミナルの屋根にも設置され、夜間のLED照明に利用されます。

ほかにも、大阪・関西万博をきっかけとして脱炭素に向けた個人の行動変容を促す、EXPOグリーンチャレンジという取り組みもあります。マイボトル持参や食べ残しゼロ、ゴミ拾いなどの7つのチャレンジメニューからCO2削減量を換算し、アプリを通じてポイントを獲得することができます[*13], (図10)。

図10: EXPOグリーンチャレンジとは
出典:大阪府「EXPOグリーンチャレンジアプリ
https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/799/060321shiryou4-1.pdf, p.3

EXPOグリーンチャレンジは、万博の会期が終了しても、脱炭素に向けた行動が生活のなかで当たり前となり、「万博のレガシー」として残っていくことを目指す取り組みです。

大阪・関西万博で未来のエネルギーを感じよう!

大阪・関西万博は、脱炭素社会の実現を後押しする最新のエネルギー技術にふれることができる貴重な機会です。また、万博ではカーボンニュートラルの実現を目指して、持続可能な運営に取り組んでおり、次世代太陽電池や水素などのクリーンなエネルギーが活用されています。

未来社会のエネルギーを一足先に体験できる大阪・関西万博に、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

 

参照・引用を見る

※参考URLはすべて執筆時の情報です

*1
大阪府「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」(2025)
https://www.pref.osaka.lg.jp/o030010020/bampaku_suishin/2025expo/index.html

*2
内閣府「Society 5.0」
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/

*3
経済産業省 「2025年⽇本国際博覧会(⼤阪・関⻄万博)について」(2025)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/waso_kyogikai/pdf/010_08_00.pdf, p.5

*4
Nederlands 「2025 年大阪・関西万博でお会いしましょう」
https://nlplatform.com/osaka-expo-japan

*5
EXPO2025 「オランダパビリオン」(2025)
https://www.expo2025.or.jp/official-participant/netherlands/

*6
Nederlands「オランダパビリオン公式ブックレット」
https://orandaexpo2025.nl/sites/orandaexpo2025/files/files/2025-04/オランダパビリオン公式ブックレット%28JP%29%20ver.080425.pdf, p.8, p.13, p.14

*7
Jpan pavilion Expo2025「Overview 日本館について」
https://2025-japan-pavilion.go.jp/overview/

*8
EXPO2025 「The city gas of the future: e-methane 未来の都市ガス『e-メタン』」(2025)
https://www.expo2025.or.jp/future-index/green/methanation/

*9
資源エネルギー庁「未来のエネルギー技術が集結!大阪・関西万博の見どころをチェック ~太陽光・水素編」(2025)
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/expo2025_01.html

*10
EXPO2025 「EVバス」
https://www.expo2025.or.jp/future-index/smart-mobility/evbus/

*11
EXPO2025 「EXPO 2025 グリーンビジョン(概要版)」(2025)
https://www.expo2025.or.jp/wp/wp-content/uploads/20250326_greenvision_summary.pdf, p.2

*12
公益社団法人 2025年日本国際博覧会協会「大阪・関西万博の概要と脱炭素に関する取り組み」(2025)
https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/8420/17_04_shiryou3.pdf, p.14

*13
大阪府「EXPOグリーンチャレンジアプリ」
https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/799/060321shiryou4-1.pdf, p.3

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