進むレジ袋有料化、環境保全のためにより有効にするには

海洋プラスチックの問題が表面化してから、日本国内でも小売店でレジ袋の有料化を進める動きが出てきました。
この動きは、環境保全の観点からはもっと有効なものにしたいところです。
ここで、実際にレジ袋の有料化がどのくらいプラスチック削減に効果があるのか、また、海外ではレジ袋についてどのような対策を取っているのかを見ていきましょう。

レジ袋有料化とその背景

海洋プラスチックごみの問題が表面化して以降、日本国内でもレジ袋について再び考え直す動きが見られています。
薄くて軽いレジ袋でもひとたび海洋に放出されてしまうと、完全に自然分解されるまでに約20年を必要とするとされていて*1、蓄積されると簡単にはなくなりません。

国内でのレジ袋有料化

環境省と経済産業省は、スーパーやコンビニエンスストアなど全ての小売店を対象に、プラスチック製のレジ袋を2020年7月から有料化することを決めました。

ここでいう有料化の対象は、このようなものです(図1)。

 

図1 有料化の対象となるレジ袋とならないレジ袋(出典:経済産業省HP)
https://www.meti.go.jp/policy/recycle/plasticbag/plasticbag_top.html

 

また、繰り返し使えるものなどについても、有料化の対象外としています(図2)。

 

図2 有料化の対象とならないレジ袋(出典:経済産業省HP)
https://www.meti.go.jp/policy/recycle/plasticbag/plasticbag_top.html

 

具体的には、
・プラスチックのフィルムの厚さが50マイクロメートル以上のもの(繰り返し使える)
・海洋生分解性プラスチックの配合率が100%のもの
・バイオマス素材の配合率が25%以上のもの
としています。

そして同時に設定されたガイドラインでは、レジ袋の価格設定は各業者が自ら設定できる一方、レジ袋を使わないことで商品の値引きをしたり、ポイントを付与することは有料化として認められない、というのが特徴です。また、1枚あたり1円未満の価格設定では有料化に含まれない、と定められました*2。

これに先んじて、4月からの有料化を決めているスーパーやドラッグストアも出てきています。

「2050年までには魚の量を上回る」海洋プラスチック

今回のレジ袋有料化の背景には、海洋ごみの問題の深刻さがあります。
中でもプラスチックごみについて、沿岸に打ち上げられたり海洋生物が大量にプラスチックごみを飲み込んでしまったりする事態が相次いでいることが、世界的な課題と認識されるようになりました。

2015年のG7エルマウ・サミットで、海洋の、特にプラスチックごみが世界的課題であることが初めて提起され、国際的な議論が加速しました。
翌年2016年のダボス会議では、「世界の海に漂うプラスチックごみの量は、実効的なアクションを取らなければ、2050年までに魚の量を上回る」との指摘を受けています。

その後、世界的な枠組みが出来上がり、2019年6月のG20大阪サミットで、「2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにする」目的を世界で共有することなり、「G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組」が承認されました。

レジ袋の有料化は、これに沿った最初の具体的政策でもあります。

レジ袋有料化の効果

レジ袋の削減は、プラスチックごみ問題だけでなく、石油製品の消費抑制の意味も持ちます。

環境省の調査では、レジ袋の有料化など配布条件の違いにより、利用客の「辞退率」が変化することがわかっています(図3)。

 

図3 レジ袋配布条件の違いによる辞退率(出典:「レジ袋有料化に係る背景について」環境省資料)
https://www.env.go.jp/recycle/y0313-03/s1.pdf p13

 

レジ袋を有料化した事業者では76.5%の客がレジ袋を辞退しており、現金値引きやポイント還元よりも圧倒的に辞退率が高くなっています。

今回の有料化では、レジ袋を使わない人への値引きやポイント還元は「有料化」には当てはまりませんので、一定の効果は期待できそうです。

レジ袋に対する海外の動向

諸外国での使い捨てプラスチック袋の規制は、有料化だけでなく禁止とするところも出ています。

レジ袋の有料化や禁止

まず有料化としている国や地方の場合、対象や削減目標は以下のようになっています(図4)。

<有料化・一部禁止>

対象価格削減目標など
EU指令
(2015年)
・50μm未満のもの
・衛生上必要な15μm未満のものは除外
・加盟国は、軽量のプラスチック製の袋の1人当たりの年間使用量を2019年末までに90枚以下、2025年末までに40枚以下に削減すること。
イギリス
(2015年)
・厚さ70μm以下のもの
・オンライン販売に使用されるものも含む
・物品ではなくサービスで使われるものは除外
・再利用できる50~70μmのものは除外
法定で5ペンス(10円)以上
アメリカ・ワシントンDC
(2010年)
※一部禁止
・リサイクル可能な袋以外は使用禁止
・肉や魚、処方薬、廃棄物を入れる袋などは除外
法定で5セント・レジ袋の売上は定められた割合で環境保全のために寄付
中国
(2008年)
※一部禁止
・25μm以下の非生分解性プラスチックは生産、販売、使用を禁止
・健康と食品安全のために使用されるものは除外
小売業者が設定

 

図4 諸外国のレジ袋規制(出典:「レジ袋有料化に係る背景について」環境省資料)
https://www.env.go.jp/recycle/y0313-03/s1.pdf p8-11

 

また、有料化ではなく「禁止」措置を取るところもあります。

フランスでは2016年に使い捨て(50μm未満)のプラスチック製の袋を禁止しています。ばら売り用の野菜や果物袋などを入れる、レジ袋以外のものでも、使い捨てプラスチック袋は禁止です。

禁止の除外となるのは、バイオマス原料が一定割合以上含まれ、かつ一般家庭でコンポストにすることができるものとしています。このバイオマス原料の含有量についても、今後段階的に割合を引き上げ、2025年には60%以上とする予定です*3。

カナダのモントリオールでは2018年に、衛生上必要なものを除いたプラスチック製の買物袋(50μmより薄いもの)を禁止しています*4。

ブラジルで広がるバイオプラスチック

また、サトウキビ、トウモロコシの一大生産国であるブラジルは、農業資源を生かし、バイオプラスチックへのシフトが進んでいます。

リオデジャネイロ州では2018年6月に、使い捨てプラスチック製の袋の使用を禁止する法律を公布しています*5。また、ストローに関しても2018年7月には、レストランやバーなどの飲食店で紙ストローや再利用可能な素材のストローを使用するよう義務付け、罰則も設定されています*6。

その中で、豊富な農業資源を背景に、南米最大規模の化学メーカーであるブラスケム社がサトウキビをベースにプラスチック製袋の代替材料の製造に乗り出しています*7。

ブラジルのように農業資源を豊富に持つ国が、大規模なバイオプラスチック製品の製造に乗り出すことで新しいビジネスを切り開いていくことも期待できそうです。

「消費している」という意識の向上を

廃プラスチックの削減は、今に始まった問題ではありません。

その中でもレジ袋は消費の現場では、なんとなく「自動的についてくるもの」という感覚で使われがちです。レジ袋も一つの石油工業製品であり、生産に当たっても廃棄にあたっても、環境に影響を及ぼすものを日々消費している、という意識を持つことが大切です。

レジ袋だけでなくストローやスプーン、フォークといった日常的になんとなく使っているプラスチック製品も同様です。

今回の有料化は、例えば外で弁当などを買う場合は自分でスプーンやフォークを持参することで利用量を減らす、といった「身近すぎて気づかない」ものについても気づき、考えるきっかけにしたいところです。

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参照・引用を見る

図1、2 経済産業省HPより
https://www.meti.go.jp/policy/recycle/plasticbag/plasticbag_top.html

図3、4「参考資料 レジ袋有料化に係る背景について」環境省
https://www.env.go.jp/recycle/y0313-03/s1.pdf p13、p11

*1 「海洋プラスチックについて」WWFジャパン
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3776.html

*2 「プラスチック製買物袋有料化実施ガイドライン 」環境省
https://www.env.go.jp/recycle/y0313-04/s2.pdf p7

*3、*4「参考資料 レジ袋有料化に係る背景について」環境省
https://www.env.go.jp/recycle/y0313-03/s1.pdf p9、10

*5~7 「バイオベースプラスチックの製造・販売の動き広がる(ブラジル)」JETRO
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2019/0101/6f4e5eef70ac7f0b.html

 

Photo by Weiqi Xiong on Unsplash

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