オフグリッドなら「住まい」はもっと自由になる 「Ecocapsule」が示す未来の住居の可能性

この特集はgreenz.jpと自然電力が共につくっています(greenz.jpより転載)

 

雄大な自然の中に佇む、卵のようなカプセル。近未来的な光景に少し目を丸くしてしまいますね。でも実はこれ、既に日本からの購入も可能な、移動式のマイクロハウスなんです。

その名も「Ecocapsule(エコカプセル)」。特徴は、なんといっても、電気も、水も、既存の供給網に頼らない完全なオフグリッドで自給自足できること! スロバキアに拠点をおくデザインスタジオ「nice&wise」が、2015年にプロトタイプを発表した後、国際的な投資を受け、来年から世界各地への量産販売を予定しています。

最終試作品として限定生産される50台のプレオーダーの受付がすでに開始され、注目を浴びている「Ecocapsule」。この小さなカプセルには、どんな工夫がつまっているのでしょうか?

まず目をひくのは、シンプルで美しい内装。折りたたみ式のダブルベッドに、テーブル、収納スペースが確保され、コンパクト空間ながら、大人2人は快適に過ごせるそう。

まるでホテルの1室のよう。床暖房まで完備され、寒い環境でも安心です。

内装や外装は、好みに合わせてカスタマイズも可能。オプションとして小型洗濯機なども組み込めます。

生活に必要なキッチン、シャワー、トイレも完備。そして、年間を通して十分な電力を確保できる2.6m2のソーラーパネルと750Wの風力発電機、水を確保するための床下雨水タンクが備えられています。

つまり、太陽光と風力のハイブリッド住宅。カプセル上部にソーラーパネル、風車の2つが備え付けられ、日照りのない日でも風力発電でまかなえるため安心です。万一、両方の電力源が絶たれても、4日間は生活できるバッテリーも搭載されているほか、溜め込んだ電力で、電気自動車の充電も可能です。

また、床下雨水タンクの水は、高度な濾過技術で雑菌を99.998%取り除くため、飲み水としても問題ありません。

気になるトイレは、カセット式で、容器を取り外して、溜まった汚物をトイレなどに流すことができます。量産版では、電気熱で汚物を少量の灰のみに変えられる「燃焼式トイレ」の導入も予定され、さらに便利になりそうですね。

でもそれならば、キャンピングカーでもいいのでは?という気もしますよね。ですが、このカプセルのもう一つのポイントは、設置できる場所の自由度といえるでしょう。

全長4.45m×全幅2.55m×高さ2.25mと、標準輸送コンテナに入る仕様のため、世界各国に比較的安価に輸送することができます。このカプセルはモビリティの高さも特徴で、屋根にフックがついているのでクレーンで吊るして移動するのも容易。車輪もついているので、トレーラーハウスのように車で牽引もできます。近くの海岸から、遠く離れた島国、ビルの上など、文字通りどこにでも簡単に置くことができるのです。

こうできるのも、既存の供給網に頼らないオフグリッドだからこそ。その気になれば、どこだって生活の拠点にできるカプセルの開発の意図を、創設者のTomas Zacek(以下、トーマスさん)は、こう語ります。

この商品の意図はシンプルだよ。自立して、自然の中に住むのを可能にすること。オフグリッドだから、生活のために電気代や、水道代を払う必要がない。どんな場所でも、自由に暮らせるんだ。

「Ecocapsule」の中に座るトーマスさん©Fotogalerie.pravda.sk

確かに、庭に置けばプライベートスペースにもなり、建設現場の作業員の拠点として購入する企業も見受けられるなど、その使用方法は無限大。

とはいえ、やはり一般人にはなかなか手が届かないのも事実です。現在のカプセルの販売価格は、79.900ユーロ(約1070万円)、日本ではスロバキアからの輸送料込みで約850万円(出典元)と、それだけのお金があれば、家も建つし、キャンピングカーにソーラーパネルを設置できるのでは、とも考えられます。

しかし、このカプセルが改めて示すのは、オフグリッドによる、これまでの予想を超える「自由」の可能性ではないでしょうか。トーマスさんは、「このカプセルを世界中で見かけるようになるのが夢」と話し、同社のホームページには「販売を重ねることで費用対効果を改善し、将来的にはなるべく多くの人に手が届く価格を目指す」と記されています。

世界的に電気自動車が急増するなか、近い未来に、充電機能もある、この「Ecocapsule」のような「住居」を後ろに引いて、快適なノマド生活を楽しむ人も増えるかもしれません。自分だけの小さな別荘で、地球に優しいバカンスだって楽しめます。

「Ecocapsule」が普及した社会。あなたは何を思い描きますか?

参考情報:Ecocapsule, nice&wise, Designboom, YouTube, EMIRA

 

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