自然エネルギーで電気自動車を充電! AIとの連携により需要に対応

近年、地球温暖化対策の観点から二酸化炭素排出量の少ない電気自動車に注目が集まっています。
一方で電気自動車を走行させるための電力をつくる際に二酸化炭素が発生するため、本当は環境に良くないのでは?と不安を感じる人もいるでしょう。

しかし、自然エネルギーを利用した発電設備による電力によって電気自動車への充電を行うことで、この不安は解消できます。
すなわち、電気自動車と自然エネルギーはセットである、と私たちはとらえています。

そこで今回は、近年需要が高まっている電気自動車と自然エネルギー、そしてAIとの関係について紹介します。

電気自動車・プラグインハイブリッド自動車の普及

近年、二酸化炭素やメタンガスなどの温室効果ガスによる地球温暖化が問題となっているため、温室効果ガス排出量の少ない自動車の普及が望まれています。
温室効果ガス排出量の少ない自動車というと、電気自動車(EV)の他、プラグインハイブリッド自動車(PHV)・燃料電池自動車(FCV)・ハイブリッド自動車(HEV)などの次世代エコカーがそれにあたります。

まずは、次世代エコカーについて説明します。電気自動車はバッテリーに蓄えられた電力によってモーターを動かし走行するため、二酸化炭素を排出しません。そして、プラグインハイブリッド自動車およびハイブリッド自動車は電気のみまたは電気とガソリンの併用で走行可能なので、ガソリン車に比べ二酸化炭素の排出量が減らせます。また、燃料電池自動車は水素と酸素の化学反応によって発生した電力で走行するため、温室効果ガスを排出しません。

そして近年、地球環境負荷の少ない次世代エコカーの普及に向けて、多くの自治体が活動を始めました。例えば大阪府では「2台に1台をエコカーに」を目標として、2020年度に電気自動車31,000台、プラグインハイブリッド自動車22,000台の保有を目指し、次世代エコカーの展示やPRなどの推進活動を続けています。

そして各自治体の次世代エコカーの普及活動により、日本国内の次世代エコカーの販売台数は大きく増加します
2016年には28,868台であったのに対し、2017年には倍近くの58,920台が販売されました。

急速充電施設の需要が高まっている

さて、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車には電力の供給を行う急速充電施設が不可欠です。プラグインハイブリッド自動車は電欠になってもガソリンを使用して走行を続けられますが、電気自動車は電気がなければ走行できません。

そして、近年の次世代エコカーの普及によって、多くのガソリンスタンドや商業施設などで電気自動車用の充電設備が見られるようになりました。しかしながら、未だに急速充電施設が十分に設置されていない地域もあります。

経済産業省のEV・PHVロードマップ検討会「都道府県別 急速充電器設置数」によると、充電設備の設置密度は都道府県別にみるとバラつきが見受けられます。このため、日本国内すべての地域にバラつきなく充電設備を設置することが近年の課題となっています。

太陽光発電の余剰電力で自動車を充電

各地への充電設備の設置が課題となる一方で、自宅や事務所に設置された太陽光発電による余剰電力を利用して電気自動車を充電するシステムが注目されています。

電気自動車普通充電設備と太陽光発電の連携

例えば、パナソニックは、電気自動車普通充電設備と太陽光発電を連携させたシステムを開発しました。同社は家庭向けの電気自動車用充電設備「ELSEEV hekia S」を開発しており、「ELSEEV hekia S」はHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)である「AiSEG2」と連携しています。

「AiSEG2」はAIソーラーチャージという機能を兼ね備えており、「AiSEG2」に搭載されたAIが天気予報の情報を取得し、太陽光発電による翌日の余剰電力を予測します。そして、余剰電力で電気自動車の充電が可能であると判断すると、自動制御によって深夜から早朝にかけては深夜電力で充電し、昼間は余剰電力で充電します。

太陽光発電のコスト低下により普及が見込める

太陽光発電にかかるコストは年々低下しています。米国の調査会社Bloomberg New Energy Financeによる2017年の調査では、ついに最も効率の良い状態における太陽光発電の発電コストがガス火力発電よりも低い結果となりました。日本では送配電網の接続制限や厳しい技術要件のため、平均コストを比較すると太陽光発電はガス火力発電よりも高くなっています

しかし、日本でも自然エネルギーの導入拡大に向けた取り組みが進んでいます。経済産業省資源エネルギー庁によると、2012年に太陽電池発電設備に関して、工事計画届出や使用前安全管理審査の対象となる範囲が「出力500kw以上」から「出力2000kw以上」に緩和されました。このような規制緩和により、太陽光発電を導入する企業も増えていくでしょう。

また、太陽光発電は技術面でも向上しており、今後ますますコスト削減が可能となります。実際に、資源エネルギー庁によると、太陽光発電のシステム費用は年々減少しています。2012年は51.7万円/kwであるのに対して、2017年には36.3万円/kwにまで減少しました。

つまり、近い将来、従来のガス火力発電よりも太陽光発電などの自然エネルギーによる電力の方がコストパフォーマンスが良くなることは間違いありません。この経済合理性の高さから、太陽光発電を始めたとした自然エネルギーの普及が見込めるでしょう。

次世代エコカーの二酸化炭素排出量

ここで、確かに電気自動車やプラグインハイブリッド自動車は走行中の二酸化炭素の排出は少ないですが、発電の際に大量の二酸化炭素が排出されるため決してエコとはいえない、という意見も見受けられます。

確かに発電の過程では二酸化炭素を排出します。特に火力発電は化石燃料(石炭・石油・天然ガス)を燃やすことでエネルギーを産出するため、発電時に多量の二酸化炭素を排出します。しかし、自然エネルギーを利用した発電では、発電にのみ関して言えば二酸化炭素排出量はゼロといえるでしょう。

日本原子力文化財団による「各種電源別のライフサイクルCO2排出量」によると、石炭火力・石油火力・LNG火力・LNG火力(コンバインド)を利用した発電時には約500~900g-CO2/kWhの二酸化炭素が排出されています。一方で、太陽光・風力・原子力・地熱・中小水力を利用した発電時に発生する二酸化炭素はゼロであるという結果が示されています。

太陽光発電と次世代エコカー

さらに家庭の太陽光発電を利用して次世代エコカーに充電する場合、普段は余剰電力を使い、梅雨の時期などに太陽光の発電量が減少気味の時でも、夜間の安い電力で充電すると経済的です。

つまり、太陽光・風力などの自然エネルギーによって発電した電力を電気自動車やプラグインハイブリッド自動車に充電し走行した場合、次世代エコカーは経済合理性があり、かつエコであるといえるでしょう。

このため、パナソニックのAIソーラーチャージ機能をはじめ、各家庭や事業所における電気自動車の充電に太陽光等の自然エネルギーを利用できるシステムの需要が高まっているのです。

自然エネルギーを利用した発電におけるAIの役割

太陽光発電におけるAIの役割は余剰電力の予想だけではありません。

AIによる太陽光発電設備の異常検知

例えば、住友電気工業は、太陽光発電所の発電量を最大化するために、AIを搭載した異常検出装置を開発しました。太陽光発電において安定した発電を維持するためには、電力低下の原因となる異常を検知し、早急に復旧作業を行う必要があります。

そこで太陽光発電システムとAIを連携させることで、AIが計測した電力値から異常を自動判定し、異常原因を通知できるようになりました。このように、AIを用いた高度な異常検知機能によって、発電ロスの最小化、運用管理コストの削減が可能となったのです。

AIによる異常検知機能は風力発電設備にも

さらにAIによる故障予知技術は、風力発電にも利用されています。風力発電設備のメンテナンスを行う際は風車を停止しなければなりません。当然、風車の停止中は発電が行えないため、メンテナンスの停止時間をできるだけ短くすることが電力の安定供給には重要です。

先ほどの太陽光発電の異常検知機能と同様に、風力発電においてもAIが異常の予兆を検知します。そのため、深刻な異常が発生する前にメンテナンスを行えることになり、設備の利用率を向上させられます。

自然エネルギーを電気自動車の充電に利用

そして現在、太陽光発電や風力発電と電気自動車の充電器を組み合わせた自然環境に配慮した発電・充電施設の設置に期待が高まっています。例えば、電気自動車で買い物に出かけた人が商業施設などに設置された急速充電施設で買い物中に充電できると大変便利でしょう。さらにその急速充電施設が太陽光発電や風力発電によって発電された電力を使用していれば、環境にも優しいといえます。

このように自然エネルギーによって発電された電力を電気自動車の充電に使用すれば、より環境に優しい社会が生み出せるでしょう。

自然エネルギーを快適に使える社会のために

さて今回は、近年需要が高まっている電気自動車とAI、そして自然エネルギーとの関係を紹介しました。電気自動車やプラグインハイブリッド自動車などの次世代エコカーには、車体へ充電するための充電施設の設置が不可欠です。

そして、太陽光発電や風力発電を利用した急速充電施設の設置も推進されており、AIの導入によりこれらの発電設備のメンテナンスも容易になってきました。そのため、自然エネルギーを利用した電気自動車充電施設に、ますます期待が高まっています。

このように、電気自動車の普及と、AIと自然エネルギーを組み合わせて利用した充電施設の充実は、私たちの生活をより便利に豊かにしてくれるでしょう。

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参照・引用を見る

見出し①【電気自動車・プラグインハイブリッド自動車の普及】の出典元

出典:一般財団法人 次世代自動車振興センター「大阪府次世代自動車充電インフラ設置に描係るビジョン」
http://www.cev-pc.or.jp/kiso/panf/12.pdf

出典:一般財団法人 次世代自動車振興センター「EV等 販売台数統計」
http://www.cev-pc.or.jp/tokei/hanbai3.html

見出し②【急速充電施設の需要が高まっている】の出典元

出典:経済産業省 製造産業局 自動車課「平成28年度 EV・PHVの充電インフラに関する調査」
http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H28FY/000026.pdf

出典:経済産業省 「EV・PHVロードマップ検討会」
http://www.meti.go.jp/press/2015/03/20160323002/20160323002-3.pdf

見出し③【太陽光発電の余剰電力で自動車を充電】の出典元

出典:パナソニック「「HOME IoT」の中核機器「AiSEG2」を機能強化」
https://news.panasonic.com/jp/press/data/2018/10/jn181005-1/jn181005-1.html

出典:日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」
http://www.ene100.jp/www/wp-content/uploads/zumen/2-1-9.jpg

出典:自然エネルギー財団「連載コラム 自然エネルギー・アップデート」
https://www.renewable-ei.org/activities/column/20170526.html

出典:経済産業省資源エネルギー庁
http://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2013html/3-3-1.html

出典:資源エネルギー庁「電源種別のコスト動向等について」
http://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/025_01_00.pdf

見出し④【自然エネルギーを利用した発電におけるAIの役割】の出典元

出典:住友電工「太陽光発電所の発電量を最大化” AIを搭載した異常検出装置の開発を完了」
https://sei.co.jp/company/press/2018/12/prs108.html

出典:国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100939.html

出典:ニッサンモーター「電気自動車が走る環境に優しい街」
https://www.nissan-global.com/JP/TECHNOLOGY/OVERVIEW/eco_town.html

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