CO2濃度の上昇による気候変動の影響への対策方法としての緩和策・適応策の重要性

CO2濃度の上昇による気候変動の影響への対策方法としての緩和策・適応策の重要性
1) CO2濃度は何を示し、どのように計測されるのか

CO2(二酸化炭素)とは海、土、大気、岩石や生物圏で交換される、生物が生存するために不可欠な物質です。植物等の独立栄養生物は太陽エネルギーを利用して、光合成によって大気中の二酸化炭素と水から炭水化物を生成します。その他の従属栄養生物は、主要なエネルギー源を光合成に由来する炭水化物に依存して生きています。

本文ではこのCO2が大気中に増えてしまうことの影響と、その対策方法である緩和策・適応策の現在における重要性について述べます。

2007年、アル・ゴア米副大統領とIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル;英Intergovernmental Panel on Climate Change)は「人為的に起こる地球温暖化の認知を高めた」ことを受賞理由としてのノーベル平和賞を受賞しました。その認知のきっかけとなったアル・ゴアのプレゼンテーションを映画化した『不都合な真実』は2006年に米アカデミー賞で長編ドキュメンタリー映画賞を受賞し、大変有名な映画となりました。映画では、米ハワイのマウナロア山で観測されているCO2濃度と共に、気温が季節変化を繰り返しながら数十年かけて上昇するシーンがあります。中でも、CO2濃度と気温が急激に上昇していくグラフ・アニメーションが目に焼き付いている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。長年のデータから読み解いた、産業革命以降の地球の姿を表したシーンです。

この地球温暖化をもたらす数種類のガスをまとめて温室効果ガスと呼びます。この受賞以降、CO2は温室効果ガスの代表格として悪者のように扱われています。

温室効果ガスとしてのCO2の特性は次の2点です。

1点目はCO2が大気を温めるという特性です。CO2はその分子の形から4.26μmと14.99μmという細かさの波長域の赤外線を吸収し、放射する特性を持っています1。この特性をもつCO2が大気中に増える(CO2濃度が高くなる)と、太陽や地球上の熱源から放射される赤外線が増え、多くの赤外線が反射している大気になります。赤外線の量が多い(強度が上がる)ほど物質はより高い温度になるため、大気も暖かい状態になります。そのため、CO2濃度が高くなると、赤外線がたくさん反射されて大気も温まり、温暖化します。度合い云々はありますが、この特性は懐疑派と呼ばれる方も否定していません。2

2点目は、CO2はそのほかの温室効果ガスに比べて寿命が長いため、一度大気中に放出されてしまうとなかなか消滅しないという特性です。CO2の寿命というのは、すなわちCO2が反応として他の物質に変わることを意味します。

例えば他の温室効果ガスであるメタン(CH4)は主に大気中のOHラジカルという物質と反応して別の物質に分解されます。OHラジカルはオゾンや水蒸気のある普通の空気で太陽光さえあればどこでも発生する可能性がありますが、産声を上げた瞬間にその他の物質と結合してしまい消滅します。メタンはどこの大気中でもOHと結合して天命を全うする可能性があり、それゆえ寿命も比較的短いです。

一方、CO2は植物や海、地中に取り込まれて大気中からは消失しますが、人間活動で主に化石燃料を使用したCO2が一度高いところに放出されてしまうと地表面に戻ってきて取り込まれるのに時間がかかります。

そのため、地表面に戻ってきたCO2を取り込むために、植物による吸収プロセスは特に重要です。CO2は植物が増える夏に多く吸収され、これによって季節的にCO2濃度が増減を繰り返します。そのため、国連機関の気候変動枠組条約(UNFCCC)は、化石燃料の使用量を抑制し、吸収源である植物や草原・森林を荒廃から守ることを目的に活動しています。

そしてそのUNFCCCは、どのようなシミュレーションを行ってみても、産業革命以前の世界の平均気温に比べて、2030年から2052年には年間平均気温が1.5℃程度上がってしまうという警鐘を鳴らしています。先進国がそうであったように、どの国も経済的に豊かになるためには、やはり化石燃料等の温室効果ガスを排出する資源をある程度使用する必要があるからです。3

1.5℃の温暖化を防ぐためには大気中のCO2の濃度を減らす必要があるので、その濃度がどの程度かを知っておくべきでしょう。正確なCO2濃度を観測する場所は自然豊かな山の上とされています。都市のような極端に濃度の高いところではなく、排出されたCO2がなるべく大気と混ざり合って拡散した状態の地球上の平均的な濃度を図るためです。最も有名な計測データに、米海洋大気庁(NOAA)や世界気象機関(WMO)が世界中に設置している観測所で計測したデータから、平均値を得て公表されたものがあります。

出典:National Oceanic and Atmospheric Administration Earth System Research Laboratory
Global Monitoring Division
https://www.esrl.noaa.gov/gmd/ccgg/ggrn.php?projects%5B%5D=1

一方で、日本から打ち上げられた温室効果ガス観測衛星「いぶき」や、TCCONと呼ばれる観測所ネットワークでは、レーザーを用いて地上から宇宙空間までの平均的なCO2濃度も計測されています。この方法で計測されたCO2濃度をXCO2(カイシーオーツー)濃度と表現し、地上から60km程度までのCO2濃度の平均値をXCO2平均濃度と呼んでいます。単位はppmです。

これらのデータを使用した地球上の大気・海洋循環によるCO2の輸送プロセスも観測やモデルによって日進月歩で明らかになりつつあります。観測したデータをもとに、1.5℃の温度上昇を防ぐために、どのような現象に対して何を為すべきなのか、世界中の研究者が必死に探っています。例えば、欧州環境機関(EEA)や欧州航空安全機関(EASA)などは、航空機によるCO2の温室効果が高いという調査報告を提出しています。そのため欧州や米国では、CO2を排出しない電気飛行機も商用化されつつあり、日本でもJAXAが開発を進めています。

このように、技術の進歩はいつの時代も目覚ましく、私達の環境を守るために尽力を続けています。今後、化石燃料の使用量が0になるだけでなく、大気中のCO2濃度を大規模に減らせるような技術も開発されるかもしれません。しかし、100年後に開発されるかもしれない技術に過度な期待を寄せ、頼り切りになることは許されません。そこで、今できる技術を持ち寄り、人類共通の政策を立て、対策しましょうというのがパリ協定などのUNFCCC等の取り組みなのです。

出典: NASA, NASA Report on the Status of OCO-2 and OCO-3
https://slideplayer.com/slide/10575471/
Flaskが地上計測によるCO2濃度計測、FTSやGOSATなどがXCO2濃度計測

2) CO2濃度の変化が社会にもたらす影響

CO2濃度の上昇が影響を与え発生する事象に、植物、海洋、地球温暖化を含む気候変動等が挙げられます。

植物に対する影響として、農作物の重量や葉の面積が増えたという報告があります。5 その一方で、たんぱく質や鉄、亜鉛などの重要な栄養素の含有量が減少し、食物の栄養価に悪影響を及ぼすことも報告されています。6

またCO2は海洋に溶け、長い時間をかけて有機物や石灰岩となり循環しますが、その過程で海洋を酸性化させてしまいます。7 ただし、これまでより多くのCO2を海洋が取り込んだとしても、同じように循環して空気中へ放出するため、大気と海洋の濃度差は変わらない状態(平衡状態)のままどちらもCO2濃度が高くなっていくと言われています。7, 8

出典:U.S. Department of Energy Office of Science (2008) Carbon Cycling and
Biosequestration
https://public.ornl.gov/site/gallery/originals/Pg002_CCycle08.jpg

CO2濃度の上昇による大気への影響として、前述の通り地球温暖化があります。これらの変化は気象条件はもちろん、比較的長期の気候の変化(気候変動)ももたらします。例えば次のような影響が連なっていくケースがあります。9  

まず、海洋上に蒸発する水蒸気が凝結して通常では雨になる場所が、温暖化によって気温が高くなって大気が膨張してしまうので、雨粒にならずに多くの水蒸気を含むだけの場所になってしまいます。例えばこれまで雨が降りやすかったある海上も、湿度は高いけれども雨の降りにくい場所となり、雨になるはずだった多くの水蒸気を含んだ空気がより遠くへ運ばれます。陸地に大量の水蒸気を含んだ空気がやってきて、気圧や風向きの変化、地形の影響を受けると局地的な豪雨をもたらしたり、雨が断続的になったりしてしまいます。

さらに、その気圧差で逆に雨の降らない日数が増えて干ばつの度合いが高くなる地域が増えます。そして、それによって高温となった空気の塊(気団)が移流して最高気温の高い地域が生じます9

これらは一年単位で起きる現象ではなく、毎年変化を繰り返しながら長期に渡って気候変動と呼ばれるようになります。そのプロセスにおいて、その地域としてはデータ観測史上得たことのないような降雨や気温に関するネガティブな新記録が生まれ、異常気象と呼ばれる現象が各地で生じていきます。

余談ですが、気温が高すぎると太陽光発電の発電効率が悪くなる影響もあります。10

このように、気候変動や体験したことのない異常気象は農業やインフラ等の直接的な影響だけなく、間接的にも社会への悪影響を及ぼします。

3) CO2の排出を抑制する技術や政策「緩和策」の動向と自然エネルギーの役割

これまで述べたようなCO2濃度の上昇、気候変動、社会への悪影響といった悪循環への対策方法として、次の2つが主に挙げられます。1つ目は、直接的に温室効果ガスを減らすための技術や政策である「緩和策」です。2つ目は、気候変動が生じても生活への影響を最小限に抑える技術や政策です。

さらに、最近はレジリエンスという、気候変動に伴ってその地域で経験したことのないような異常気象に見舞われたとしてもすぐに回復できるような技術や政策・都市計画なども議論が深められています。

緩和策の方から見ていきましょう。温室効果ガスの排出量を削減する技術や方策として、例えば次の2種類が挙げられます。1つ目は最も排出量の多い火力発電所等をカーボンニュートラルな自然エネルギー(太陽光や水力、風力やバイオマス等)へ転換する技術や政策です。2つ目は、暖房器具を灯油等の化石燃料源から自然エネルギー源に切り替える技術や政策です。自動車等のガソリンを自然エネルギー源とする電気自動車に切り替える技術や政策なども代表的な緩和策の一つです。

地球の平均気温を2050年までに1.5℃上昇させないために、何を為すべきか。

国際的な緩和策の目標として、IPCCは世界の全エネルギー供給量のうち自然エネルギーの供給割合を2050年までに80%程度へ普及させないといけないとする分析結果をまとめています。11  その目標に向けてUNFCCCの締約国会議(COP)では各国の具体的な目標設定の発表と進捗状況、それぞれの地域や国への提言などを議論しています。それでもすでに述べた通り、1.5℃を達成するのが難しい見方が浸透している状況です。12 その理由の一つに、国家や企業、投資家が緩和策にいくら投資すれば良いかが具体的にわかっていないとの指摘があります。

そこで、米政府の下に設置された地球変動研究プログラム(USGCRP)では、米国における気候変動の影響で受ける被害額の推定結果を公表しました。米国は、2100年に地球全体の年間平均気温が4.5℃程度上昇するシナリオ(RCP8.5)*において、2090年時の年間被害額が主要22部門で5000億ドル程度に到達すると試算しています。主要部門を除く全体像としては最悪2兆ドルに昇り、GDPの11%程度にもなるというデータもあります。その緩和策として、化石燃料のエネルギー源から自然エネルギー源へと代替が行われ、2100年に同平均気温が2.5℃上昇するシナリオ(RCP4.5)*に移行できた場合には、2090年の年間被害額は3000億ドル程度に抑えられるという分析結果が得られました。すなわち2000億ドルも被害額が緩和されるという試算です。13 しかし同時に、3000億ドルもの被害額が生じてしまいます。そのため、緩和されたRCP4.5のような気候変動下においても、さらに被害を緩和するような適応策が必要になります。

出典:第4回気候評価(Fourth National Climate Assessmen:NCA4
https://nca2018.globalchange.gov/downloads/NCA4_Ch29_Mitigation_Full.pdf

4) 気候変動に適応する「適応策」の動向と自然エネルギーへの適応技術

国連では、例えばUNFCCCにおいてAC(適応委員会、Adaptation Committee)と呼ばれるグループが適応策のアプローチをまとめています。また同時に国連環境計画(UN Environment)では、日本の環境省が参画している世界適応ネットワーク(GAN, Global Adaptation Network)が世界各地域の適応状況や政策・ビジネスの状況を収集し、組織や人的ネットワークの構築を進めています。

このような国際的な動きのなかで、適応策を実施しなかった場合の異常気象や災害、気候変動による人間の健康、インフラ、農業への影響を含めた被害額が推定される動きもようやく出てきました。まずは米国において、3)の気候変動による被害のうち、どの程度インフラ等の整備が必要になるのか、大規模にまとめた論文が2019年、Nature Climate Change誌上で発表されました。それによれば、例えば米主要部門22のうち、沿岸、道路、鉄道の3部門だけでもそこで挙げられている緩和策を行うことで、RCP4.5シナリオにおいて約1000億ドルもの被害額緩和が見込まれると推定されています。すなわち3)で示された、緩和策によって削減された被害額(3000億ドル)をさらに約3割削減することが可能になります。14 それでも2000億ドル程度の被害額が想定されてしまうといった言い方もできる状況です。

日本ではまだこのような適応策に対する被害額の削減効果は試算されていない状況です。しかし、2018年に気候変動適応法が成立し、各分野および各地方自体が気候変動に対する適応計画「地域気候変動適応計画」を策定努力することが義務付けられました15。そのために、地域の適応情報収集・提供等を行うセンター機能を担う体制を確保する必要があることが決まっています。さらに、災害の多い日本において、気候変動下でこれまで体験したことのないような被害が想定されることも、国土交通省の委員会で認められました。そのため、日本でも徐々に気候変動による被害想定額、緩和策と適応策に必要な投資額が都道府県レベルで推定されるようになると想定されます。具体的な緩和策・適応策としての技術や政策の議論が活発化していくことが期待されます。

それに向けて民間においても、これまでに体験したことのない異常気象や災害等に備えて、自然エネルギー源の発電システムについて、適応策やレジリエンスのような大きな概念に至らないまでも、個別の適応技術やレジリエントな運用体制を構築することが必要です。

世界でも日本でも、気候変動に対するビジネスはブルーオーシャンです。緩和策としてのインフラ・コンサル技術の構築や展開だけでなく、適応技術等の導入によって少なくとも気候変動による被害額の緩和が各企業で必要になってきます。今現在において積極的に適応技術構築の事例を持つことは、受けるはずだった自社の経済的な打撃を緩和できるだけでなく、ESG投資を受けるために必要な気候変動の影響が少ないことを開示できます。さらに、他企業よりも一歩先へ進んだ適応ノウハウを持つことでさらなるビジネスチャンスを掴める可能性が得られるでしょう。

CO2濃度の上昇によって影響を受ける気候変動の緩和策・適応策は研究者や一部の行政官・政治家レベルの対応が中心でした。それが現在では上述のように、ビジネスレベルの対応へフェーズが移りつつあります。これらの気候変動に対する緩和策・適応策は、私たちにとってどこか遠い世界のテーマではなく、民間レベルで取り組む必要のある非常に重要な位置付けとなってきているのです。

参照・引用を見る

1.Mohanty, Manasi & Pal, Bhatu. (2015). Modeling & Simulation of Fluid Flow Behaviour during CO2 Sequestration in Coal Structure Using Comsol Multiphysics. Volume-4.

2.丸山 茂徳(2008) 科学者の 9 割は 「地球温暖化」 CO2 犯人説はウソだと知っている.

3.IPCC(2018) Global Warming of 1.5 ºC
<https://report.ipcc.ch/sr15/pdf/sr15_spm_final.pdf>

4.European Aviation Safety Agency(2019) 2nd European Aviation Environmental Report (EAER)
<https://www.easa.europa.eu/eaer/>

5.Zhu, Z. et al. (2016) Greening of the Earth and its drivers. Nat. Clim. Chang. 6, 791-796.

6.Evich, Helena Bottemiller; Johnson, Geoff (2017). “The great nutrient collapse. The atmosphere is literally changing the food we eat, for the worse. And almost nobody is paying attention”. Politico.
<https://www.politico.com/agenda/story/2017/09/13/food-nutrients-carbon-dioxide-000511>

7.Landschützer, P., Gruber, N., Bakker, D. C. E., Stemmler, I. & Six, K. D. (2018) Strengthening seasonal marine CO2 variations due to increasing atmospheric CO2. Nat. Clim. Chang. 8, 146–150.

8.S. Department of Energy Office of Science (2008) Carbon Cycling and Biosequestration
<https://public.ornl.gov/site/gallery/originals/Pg002_CCycle08.jpg>

9.Peng, Q., Xie, S.-P., Wang, D., Zheng, X.-T. & Zhang, H. Coupled ocean-atmosphere dynamics of the 2017 extreme coastal El Niño. Nat. Commun. 10, 298 (2019).
< https://www.nature.com/articles/s41467-018-08258-8>

10.Tonui, J. K., & Tripanagnostopoulos, Y. (2008). Performance improvement of PV/T solar collectors with natural air flow operation. Solar energy, 82(1), 1-12.

11.IPCC(2018) Global Warming of 1.5 ºC
<https://www.ipcc.ch/site/assets/uploads/sites/2/2019/02/SR15_Chapter4_Low_Res.pdf>

12.Warren, R., Price, J., Graham, E., Forstenhaeusler, N. & VanDerWal, J. (2018) The projected effect on insects, vertebrates, and plants of limiting global warming to 1.5°C rather than 2°C. Science, 360 (6390), 791-795.

13.地球変動研究プログラム, 第4回気候評価(Fourth National Climate Assessmen:NCA4)https://nca2018.globalchange.gov/downloads/NCA4_Ch29_Mitigation_Full.pdf

14.Martinich, J. & Crimmins, A. Climate damages and adaptation potential across diverse sectors of the United States. Nat. Clim. Chang. 9, 397–404 (2019).

15.環境省<https://www.env.go.jp/press/105165.html>

 

注記

*国立環境研究所<https://www.nies.go.jp/whatsnew/20181121/20181121.html>の値を参照