世界で急成長するオーガニック産業。そのポテンシャルと課題について。

世界で急成長するオーガニック産業。そのポテンシャルと課題について。

(画像:筆者撮影)

有機農業が環境保全のためにできること

1962年、農薬の残留性や生態系への影響などを指摘したレイチェル・カーソン氏の『沈黙の春』が出版され、世界の環境問題に対する意識に大きな影響を与えました。

日本においては、1975年に出版された有吉佐和子氏の長編小説『複合汚染』が始まりとされています。農薬問題の他、合成洗剤などの化学的な有害物質による環境汚染への関心が高まり、有機農業の運動が広まっていくきっかけとなります。

機運が高まった当時の時代背景として、戦後の上り調子だった高度経済成長がいったん落ち着き始め、逆にそれまでは置き去りにされてきた公害問題への関心の高まりがありました。

一般消費者の側からは、とかく「安全安心な食べ物」という文脈で語られることが多い有機農業ですが、今回の記事では、「食の安全」という観点からではなく、環境保全に焦点を当てて有機農業について考えてみたいと思います。

有機農業とは

そもそも有機農業とはなんでしょうか。

広義には、化学的に合成された農薬や肥料などを使わず、自然由来の(有機の)薬や堆肥などによって行われる農業をいいます。一般的なイメージはこちらに近いかと思います。

一方、狭い意味では、国が定める基準や条件を満たした農法、農産物に与えられる認証制度を指します。JAS法に基づく「有機JAS規格」をクリアし、認証を受けた農産物だけが「有機」として商品にロゴを使用することができます。

 

農林水産省では、有機認証を受けるための条件として、例えば次のような主旨の規定を設けています。[*1]

・使用が禁止されている農薬・化学肥料などが2~3年以上使われていない田畑であること

・周囲の農地から使用禁止の農薬・化学肥料が入ってこない田畑であること

・栽培期間中、使用禁止の農薬・化学肥料を使用しないこと

・一定の条件を満たした種苗を用いること

おおよそ一般的な有機のイメージの通りかもしれませんが、これ以外にも細かなルールがあり、使える資材と使えない資材、栽培管理の仕方、食品表示方法なども具体的かつ詳細に定められています。

 

では、上記の条件を満たせば「有機米」「有機野菜」として販売できるかというと、そうではありません。

国が認める認証機関に登録申請し、検査に合格して申請料を支払うことで、初めて「有機」として販売が可能になります。

 

ちなみに、「有機」としては売られていなくても、栽培方法としての条件はクリアしている農産物もあります。

そういう物は、地元の産直などで「無農薬」などとして売られているケースがよくあります。ただし、後述するように、正式には「無農薬」という表示は禁止されています。罰則規程がないので見逃されていますが、違反であることを知らずに「無農薬」と表示してしまう場面も多いようです。

関連する用語との違い

有機農業と似た用語として、「特別栽培」「エコファーマー」「無農薬・減農薬」「GAP」などがあります。これらは意味としてまったく異なるもので、簡単に違いを解説いたします。

 

〇特別栽培農産物

特別栽培農産物とは、使用禁止されている化学的な農薬や肥料の使用量を、慣行栽培(農薬や化学肥料を用いた一般的な栽培)の50%以下に減らして栽培され、確認責任者の確認を受けた農産物のことです。

 

〇エコファーマー

エコファーマーとは、土づくり、化学的農薬・肥料の使用低減など、持続性の高い農業生産方式の取り組み計画を作成し、都道府県知事から認定を受けた農業者のことです。
認定基準は、各都道府県やそれぞれの作物によって個別に設けられています。

 

〇GAP

GAPとは、Good Agricultural Practice(農業生産工程管理)の略称で、近年注目されている取組です。

農薬や資材などの適正保管、栽培方法、販売方法等の工程を管理するためのチェック項目が数十個あり、指導員からの指導を受けて認証を受けます。GAPは食品の安全に限らず、環境保全、経営管理、従業員の労働条件など、事業体としての経営管理を客観的基準に基づいて認証するものです。

認証機関は様々あり、世界標準のGLOBALG.A.P.、アジア圏域のASIAGAP、日本独自のJGAPなどがあります。

 

〇無農薬・減農薬

当たり前のように使われている用語ですが、原則として、「無農薬」「減農薬」という表現は農産物販売では使用禁止されています。基準があいまいで、生産者と消費者との間で認識にずれが生じてしまうためです。

農林水産省のガイドラインでは、「節減対象農薬:栽培期間中不使用」や、「節減対象農薬:当地比○割減」といった表現をするように規定されています。

世界各国で設けられているオーガニック認証制度

日本の有機農業は、「有機JAS」という認証制度によって運用されています。同じように、海外でも国ごと、地域ごとによってオーガニック認証制度が作られています。

 

たとえばEUの有機認証では、欧州理事会規則No 834/2007 において、有機生産は、「環境のベストプラクティス、高い生物多様性、天然資源の保全、高い動物福祉基準等を組み合わせた農場管理・食品生産」と定義されています。[*2]

食の安全性よりも、環境保護、動物福祉、農村開発といった社会課題に寄与すべき取り組みとして位置づけられているようです。

有機農業は環境にやさしいのか

(画像:筆者撮影)

 

近代の農業の特徴は、機械化による省力化と大規模化、化学的に合成された農薬・肥料の使用、そして化学薬品の使用を前提とした品種の改良などが挙げられます。

科学技術の力で徹底的に合理化することで農作物の大量生産が可能となり、安価かつ安定した供給量で人々の食糧を賄ってきました。大量生産が可能になったおかげで、第二次世界大戦後は飢えに苦しむ人は少なくなりました。しかし、それと引き換えに、環境に与える負荷が問題視されるようにもなりました。

有機農業は、こうした近代農業による環境問題を解決するものとして期待されています。

環境負荷の少ない健康な土を維持する

植物は土中のさまざまな栄養分を吸収して生育します。
近代以降の慣行農業では、収量を上げるために必要な多量の栄養分を、化学肥料を投入することで補っています。

化学肥料は様々な要素で構成されていて、代表的なものがチッ素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)の3種類です。植物が必要とする三大栄養素とされ、3種すべて含まれている合成化学肥料が流通販売されています。

しかし、植物が必要とする栄養素は作目によって異なり、土壌環境も様々です。本来であれば、その土壌の栄養環境を検査してから、不足する栄養素だけを施肥することが望ましいのですが、多くの生産者が土壌診断をせずに過剰施肥するケースが多く、不要な栄養素が上乗せされて蓄積してしまいます。俗に「土のメタボ化」と言われていますが、メタボ化は根こぶ病やフザリウム病害などの土壌病害を引き起こし、結果として作物を育てるのに不向きな土地になってしまいます。

 

それに対して、有機農業では自然界のもつ生産能力を活かして作物を育てるのが基本です。有機農業を支えているのは、土づくりです。堆肥などの有機肥料、菌や微生物の分解能力を活かし、地力を上げて米や野菜を育てます。

化学肥料による土壌病害が抑えられるため、持続的な農業が可能になります。

水質汚染を防ぐ

土に蓄積した化学肥料成分に加えて、残留農薬もあり、直接的な影響として水質汚染が問題視されています。

土壌に残留した化学肥料や農薬の成分が地下水に流れ込んだり、排水路を通って河川を汚したりといった環境への影響が懸念されており、実際に調査報告もされています。

平成11年2月22日、環境基本法に基づく環境基準項目に硝酸態窒素が追加され、農業の過剰施肥が水質汚染の原因となっていることが指摘されました。[*3]

水質汚染は、農薬や化学肥料の適正使用によっていくらか改善されるとされており、実際に営農指導員や資材業者などによる指導も行われています。

しかし、農薬や化学肥料の適正利用を徹底させることは難しく、徹底できたとしても環境への影響をゼロにすることはできません。

 

有機農業では化学的に合成された農薬や肥料は禁止されていて、使用が認められているのは自然界に由来する物質からできた農薬、肥料だけです。環境負荷が少なく、水質の改善が期待される生産方法です。

生態系を豊かにする

土壌、水系の汚染は生態系にも大きく影響します。

病害虫防除のための農薬は、虫、魚、微生物を汚染し、棲み処を奪います。もちろん、それらを捕食する鳥や野生動物にも大きな影響を及ぼします。

また、過剰施肥による化学肥料の残留は、特定の植物やプランクトンだけを異常繁殖させ、生態系のバランスを崩すことがあります。河川が流れ込む海で赤潮が大量繁殖するのも、農業排水が原因の一つであるとされています。

筆者が直接農業者に聞いたところによると、あくまで本人の実感ではありますが、30~40代の若手農家ですら子供のときと比べて虫や魚がいなくなっていると口をそろえて言います。

 

生態系への影響は、いずれ人間にも及びます。

現代では、農薬の改良が進み、生産者の意識も改善傾向にあるため、健康リスクはまったくないとの報告もありますが、一方で、残留農薬の蓄積は、本人よりも子供の世代で影響が出るという意見もあり、結論は難しいところです。

生活排水や工業廃水などの影響も大きいのですが、生態系を豊かで多様なものにするために、有機農業が貢献することは少なくないでしょう。

 

オーガニック市場とSDGs

世界ではオーガニック産業が急成長している

世界のオーガニック市場は2000年以降、大きく成長を続けています。

世界の有機食品売上額は、2006年で400.2億ドルだったのが、5年後の2011年には640.9億ドルで1.5倍に増加し、10年後の2016年には890.7億ドルと2倍以上になっています。

売上額ベースで世界のシェア率を見てみると、アメリカが46%と群を抜いて多く、次いでドイツ11%、フランス8%、中国7%の順で続きます。

1人当りの年間消費額になると、上位からスイス(274ユーロ)、デンマーク(227ユーロ)、スウェーデン(197ユーロ)という順で、さらにその下にも中央~北ヨーロッパ地域が続いています。ちなみに日本は8ユーロにとどまり、世界平均の11.3ユーロを下回っています。

https://www.maff.go.jp/primaff/koho/seminar/2019/attach/pdf/190726_01.pdf
(資料引用元:農林水産省生産局農業環境対策課「有機農業をめぐる我が国の現状について」(令和元年7月26日 農林水産政策研究所公開セミナー「EUの有機食品市場の動向と有機農業振興のための戦略」[*4])p4

オーガニック市場とSDGs

オーガニック市場が伸びている背景には、食の安全に対する関心は当然として、環境保全、倫理的課題への関心(フェアトレード、動物愛護、スローフード)などが動機として考えられます。

特に、2000年以降に成人を迎えている「ミレニアル世代」は、様々な研究機関が指摘しているように、経済的な成功よりも社会に対する影響力を生きるモチベーションとする傾向にあり、ESG投資にも積極的で、環境問題にも関心が高い世代であるという調査結果が出ています。[*5]

近年のオーガニック市場の急成長にはSDGsへの取り組みも関係していると考えられます。有機農業は以前のような環境汚染だけの問題ではなく、日本の農水省がSDGsの達成目標として掲げているように[*6]、「すべての人々の健康」「持続可能な消費と生産」「気候変動への対策」「環境問題・生物多様性」といった多面的な取組としても捉えられています。

こうした機運の中で、製品やサービスを提供する企業としても、SDGsに取り組まない企業は顧客にも働き手にも選ばれなくなる時代となっており、単純に企業の社会的責任としてだけでなく、競争力強化を目的として社会貢献事業に取り組む企業が増えています。

 

このように、環境対策をはじめとする社会貢献への意識の高まりから、地球環境への負荷が懸念される農薬や化学肥料に頼らないオーガニックを支援する傾向があり、今後もこの動きは続くものと考えられます。

世界のオーガニックが集う大規模見本市「BIOFACH」

https://www.biofach.de/en/news/photos/foto-uri-title-6cl8l5t3tc_photo
(画像引用元:NuernbergMesse)

 

毎年1回、有機専門の国際見本市「BIOFACH」がドイツ・ニュルンベルクで開催されています。1990年から始まり、2020年で31回目を数えるイベントで、2019年には約3000社が出展し、5万人以上が来場しています。[*7]

生鮮食品だけではなく、冷凍品や加工食品、飲料の他、化粧品といった非食料品など、世界中から製品と出展者が集まり、メーカーとバイヤー、行政やメディアなどのプラットホームとなっています。

2019年には、JETRO(独立行政法人日本貿易振興機構)がジャパンパビリオンを設置し、日本茶、味噌、醤油などを扱う企業が参加しました。

 

日本の有機農業

日本でも食の安全や環境への配慮などから有機への関心は近年高まっています。しかし、外国と比べるとなかなか伸びていないのが現状です。

日本の有機農業を伸ばすためには?

日本の有機農業を伸ばすためには、現在指摘されている様々な課題をクリアする必要があります。

(画像:筆者撮影)

消費者の意識改革

現在店頭に並んでいる野菜の価格は、農薬や化学肥料などの力で安定的にたくさん生産できるようになってきた結果です。

一方の有機農業では、除草、防除、土づくりなど、農薬や化学肥料を使わない分、慣行農業よりもずっと大変な手間がかけられています。当然ながら、慣行栽培の野菜と有機野菜とを同じ商品として比較すると、当然有機野菜が高くなります。

しかし、有機農産物には「自然環境を守る」「安全安心な野菜を作る」ための労力が価格に含まれているため、同じ商品とはいえない部分があります。
つまり、有機農産物を買うことには、「地球環境の保全」「子供たちの健康維持」など、未来への投資の要素も含まれているのです。

欧米では消費者として当然として捉えられているこういった消費意識が、いくらかでも日本に浸透することで、有機市場は拡大していくものと考えられます。

販売支援

決定的に足りていないのは、有機農業の市場です。

日本で多くの生産者が行っている慣行栽培では、集出荷先として一般的なのは農業協同組合(JA)、それから集出荷業者です。しかし、有機農業においては、販売先として最も多いのは消費者への直接販売で、農協・集出荷業者よりも多くなっています。[*8]

つまり、有機農業の販売は生産者自らの営業努力に任されていることがわかります。農家は農産物栽培のプロであり、販売、営業活動を得意とする人はあまり多くありません。集出荷で大量に販売を担う業者が求められています。

生産性の向上

日本の農業の課題点として、狭小な農地、所有者が入り組んだ田畑、湿潤な気候などが挙げられます。日本は山が多くて農業のできる平地が狭く、大規模で効率的な農業経営ができません。
また、農地の所有者が入り組んでいるため、農薬・化学肥料を使用している生産者が近隣にいると、風や用水路などを通して入り込んできてしまうという問題があります。
さらに日本の湿潤な気候では、病気や虫が発生しやすく、農薬なしでは栽培が難しいと言われます。

これらの課題は、ICT技術を導入したスマート農業、農地の集約、有機農業の栽培技術の確立と習得など、今後の取り組みによってクリアしていけるものと期待されます。

生産者の資金援助

農林水産省では、有機農家を支援するための補助金事業がいくつか用意されています。
例えば、令和2年度には次のようなメニューが設けられています。[*9]

 

・有機農業新規就農者技術習得支援事業

・有機農地集約化試行支援事業

・オーガニックビジネス実践拠点づくり事業

・オーガニックビジネス拡大支援事業

・産地間・自治体間連携支援事業

・国産有機農産物バリューチェーン構築推進事業

 

新規就農者や慣行農業からの転換者のための研修費や、販路拡大のための経費などが補助されます。

 

農家にとって、農薬を使わない有機農業というのは、うまく育つのかどうかわからない大変な挑戦です。こうした公的な補助事業は有機農業を目指す生産者を後押しする取り組みであるといえます。

生産者の意識改革

有機農業についての意識改革は生産者にも必要だとする意見もあります。

もともと戦後の農業は農薬や化学肥料の使用を前提とした品種改良や営農指導が行われてきました。その恩恵として、日本国民は安定した食糧生産に胃袋を支えられ、飢えを気にせずに経済活動ができていたという経緯があります。

そのため、有機農業を実践してきた生産者の中にも、「自分もかつてそうだったけど、『農薬を使わないと農業はできない』という思い込みが農家にはある」という声があるように、農薬を使わないことに否定的なベテラン農家もいます。

生産者にとっても、十分な知識や情報が共有されていないところに課題があるようです。

 

それでも有機に取り組むのはなぜか。

なかなか日本で広まらない中でも、有機農業にこだわり続けてきた生産者は、どういった志をもって取り組んでいるのでしょうか。

「消費者の信頼を得るため」が1位

2015年に農水省が実施したアンケートの中で、有機農業等に取り組む動機として最も多かったのが「消費者の信頼感を高めたいため」、次いで「より良い農産物を提供したいため」でした。

農家もすべての作目を有機で育てられるとは限りません。必要な時には農薬を使用することもあります。有機栽培に取り組んでいる生産者として認知されることで、たとえ認証を取得していない作目があっても「この農家さんが作っているなら安心」という判断指標を消費者に与えられるのです。

 

その他、「有機栽培等を実践している理由」のアンケートの結果は以下の通りです(複数回答可)。[*10]

・消費者の信頼感を高めたいため(66.4%)

・より良い農産物を提供したいため(60.0%)

・地域の環境や地球環境を良くしたいため(35.6%)

・需要が多い(消費者が求めていると思う)ため(29.1%)

・農薬・肥料などのコスト低減のため(29.1%)

・行政、JA、周辺の農業者等に勧められたため(21.3%)

・自身の健康のため(21.1%)

・販売価格が高いため(15.3%)

・その他(5.1%)

絶滅した野生の鳥を再びこの空に――「コウノトリ育む農法」(兵庫県豊岡市)

https://www5.city.toyooka.lg.jp/stork/10505/
(画像引用元:豊岡市フォトライブラリー)

 

日本国内においては、兵庫県豊岡市の「コウノトリ育む農法」の取り組みが有名です。[*11]

かつて日本の各地で見られていたコウノトリは、戦後の経済成長に伴う環境の変化とともに激減し、1971年、国内で野外繁殖したものは絶滅しました。
その後、日本最後の1羽が生息していた兵庫県豊岡市では、コウノトリが安心して暮らせる環境づくりを目指し、取り組みの一つとして「農薬に頼らない米作り」を始めます。生産者、JA、行政が一体となって「コウノトリ育む農法」を体系化し、技術を地域に普及させていきます。

「コウノトリ育む農法」等の環境改善策により、地域の水田の生態系は回復しはじめ、2005年、人工飼育で育てられたコウノトリが初めて自然界に飛び立ち、2007年には43年ぶりに野外でひなが誕生、2019年春現在で160羽を数えるまでに繁殖しています。[*12]

この環境改善の取り組みとして始まった「コウノトリ育む農法」で栽培されたお米は「コウノトリ育むお米」としてブランド化され、取り組みに賛同する生産者は今も増え続けています。

 

(まとめ)消費者も生産者も有機のすばらしさはよく知っている

山形県では有機認証を受けている事業者数が全国5位の156戸あり(平成30年3月31日現在[*13])、積極的に有機農業に取り組んでいる地域の一つです。

筆者は幾人かの有機農家に直接話を伺ったことがありますが、彼らに共通しているのは環境汚染への強い問題意識です。

年齢層によっても若干意識の違いが見られます。60~70代の有機農家は、「環境汚染」や「食の安全」を政治的、社会的問題と捉える「反骨の精神」で有機農業に励んできました。

次の世代である30~50代の若手農業者は、政治的な主張はやや抑えられ、豊かな自然に対するシンプルな愛着、化学的物質に対する生理的な拒否反応、などが目立ちます。インターネットやSNSで消費者との距離が近づいたこともあり、「顔の見える消費者」の反応にやりがいを感じてモチベーションを維持している人も多いようです。

 

また、有機農業まではできなくても、慣行農業に取り組んでいる農家の多くが、「出来ることなら農薬を使わずに農業をやりたい」と話しています。

自分の田畑も自然環境も、汚されることを良しとする農家はいません。それに、そもそも農薬も化学肥料もタダで使えるわけではありません。使わなくて済むものなら、使いたくないのです。

 

有機農業は、人の健康や地球環境を劇的に改善するものではありません。そのため、有機農業の効果に懐疑的だったり、毛嫌いする人も少なくないようです。

しかし、土壌や水質の改善で魚や鳥が戻ってきたという事例報告もあり、可能性を秘めている取組みであることは間違いありません。

日本の有機農業は世界と比較するとまだまだ出遅れていますが、耕地面積に比して0.5%という数値は、まだまだ伸びしろがあることも意味しています。

世界の市場が拡大していることも考えると、日本の有機農業と環境保全への取り組みは大きなポテンシャルを抱えているといえます。

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▶︎今日からできる4つのこと。「Take Action」まとめ

参照・引用を見る

[*1] 農林水産省HP「有機農産物の日本農林規格」(p1-5)
https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/attach/pdf/yuuki-31.pdf

[*2] 「欧州における有機食品規制調査」(日本貿易振興機構(ジェトロ) パリ事務所 農林水産・食品部 農林水産・食品課 ) (p6)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2018/7bcbe706058911cc/201803rp.pdf

[*3]農林水産省「Ⅱ 環境保全型施肥のポイント 1 基本的な考え方」(p1)
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_sehi_kizyun/pdf/2-1.pdf

[*4]農林水産省生産局農業環境対策課「有機農業をめぐる我が国の現状について」(令和元年7月26日 農林水産政策研究所公開セミナー「EUの有機食品市場の動向と有機農業振興のための戦略」)(p4)
https://www.maff.go.jp/primaff/koho/seminar/2019/attach/pdf/190726_01.pdf

[*5] 経済産業省:「SDGs 経営/ESG 投資研究会報告書」(2019年6月)(p19)
https://www.meti.go.jp/press/2019/06/20190628007/20190628007_01.pdf

[*6] 農林水産省生産局農業環境対策課「有機農業をめぐる我が国の現状について」(令和元年7月26日 農林水産政策研究所公開セミナー「EUの有機食品市場の動向と有機農業振興のための戦略」)(p3)
https://www.maff.go.jp/primaff/koho/seminar/2019/attach/pdf/190726_01.pdf

[*7] Nürnberg Messe Japan:BIOFACH
https://nm-japan.com/2553/

[*8] 農林水産省大臣官房統計部「平成27年度 農林水産情報交流ネットワーク事業 全国調査 有機農業を含む環境に配慮した農産物に関する意識・意向調査」(p2)
https://www.maff.go.jp/j/finding/mind/pdf/yuuki_27.pdf

[*9] 農林水産省HP「令和2年度持続的生産強化対策事業のうち有機農業推進総合対策の公募について」
https://www.maff.go.jp/j/supply/hozyo/seisan/200210_6.html

[*10] 農林水産省 大臣官房 統計部「平成27年度 農林水産情報交流ネットワーク事業 全国調査 有機農業を含む環境に配慮した農産物に関する意識・意向調査」(p4)
https://www.maff.go.jp/j/finding/mind/pdf/yuuki_27.pdf

[*11] コウノトリと共に生きる豊岡
http://toyooka-kounotori.com/wp/torikumi/nougyou/

[*12] 生協パルシステム「KOKOCARA」
https://kokocara.pal-system.co.jp/2019/08/05/rice-farming-with-stork/

[*13] 農林水産省HP「有機食品等の認定事業者、格付実績、ほ場面積」
https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/attach/pdf/yuuki_old_jigyosya_jisseki_hojyo-51.pdf