FAOも推奨 「ムーンショット目標5」に盛り込まれた昆虫食は食糧危機を救うスーパーフード!

FAOも推奨 「ムーンショット目標5」に盛り込まれた昆虫食は食糧危機を救うスーパーフード!

ムーンショット目標は、日本国が策定した課題解決型の野心的な目標です。
その目標は全部で7つありますが、そのうち持続可能な食糧供給に関わる「目標5」はSDGsのターゲット2「飢餓をゼロに」と重なります。
この目標を達成するために「目標5」に盛り込まれた昆虫食は、最近、世界的な注目を集めています。
それはなぜでしょうか。
FAOも推奨する、そのポテンシャルとは?

「ムーンショット目標5」とは

ここでは、「ムーンショット目標5」についてみていきます。

~ムーンショット目標とは~

まず、ムーンショット目標とはどのようなものでしょうか *1:pp.2-4。

私たちの社会には、超高齢化や少子化、地球温暖化などさまざまな重要課題があります。
それらの課題は解決するのが困難ですが、見過ごすことはできません。
一方、世界に目を向けると、「破壊的イノベーション」(非常に野心的なイノベーション)に向けた、より野心的な構想や、困難な社会課題を解決するための研究開発投資が急速に拡大しています。

そこで、国は、「困難だが実現すれば大きなインパクトが期待される社会課題等を対象とした野心的な目標及び構想」 *1:p.3 を策定しました。
それが、「ムーンショット型研究開発制度」です(図1)。

図1 ムーンショット型研究開発制度の背景と構想
出典:*1 内閣府(2020) 「ムーンショット型研究開発制度の概要」p.2
https://www8.cao.go.jp/cstp/moonshot/gaiyo.pdf

この構想は、複数のプロジェクトを国内外のトップ研究者がPM(プロジェクト・マネジャー)として指揮し、それをPD(プログラム・ディレクター)が統括するという方策をとるものです(図2)。

図2 ムーンショット型研究開発制度の概念図
出典:*1 内閣府(2020) 「ムーンショット型研究開発制度の概要」p.3
https://www8.cao.go.jp/cstp/moonshot/gaiyo.pdf

ムーンショット目標は、この制度で達成を目指す、以下の7つの目標です(図3)。

図3 ムーンショット目標
出典:*1 内閣府(2020) 「ムーンショット型研究開発制度の概要」p.4
https://www8.cao.go.jp/cstp/moonshot/gaiyo.pdf

~「ムーンショット目標5」の内容と背景~

本稿では以上の目標のうち「目標5」にフォーカスします。

図3にあるように、「目標5」は以下のようなものです *1:p.4。

「2050年までに、未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出」

冒頭でお話ししたように、これは以下のようなSDGsのターゲット2と重なります *2:p.14。

「飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する」

では、この「目標5」が掲げられた背景には何があるのでしょうか。
2050年までに世界人口は90億人を超えると推定され *3、必要な食料は現在の1.7倍に達すると予測されています *4:p.2。

さらに、気候変動が食料不安につながることが予想されています(図4)。

図4 気候変動と食料不安に関する脆弱性
出典:*5 FAO国際連合食糧農業機関(2016)「世界食料農業白書 2016年報告」p.37
http://www.fao.org/3/i6030ja/I6030JA.pdf

一番上の地図は2015年時点、真ん中の地図はCO2排出量が多く対策を講じなかった「最悪シナリオ」の場合、下の地図はCO2排出量が少なく対策を講じた場合の「最善シナリオ」の場合です。
真ん中の「最悪シナリオ」では、脆弱性が劇的に増大し、食料不安リスクが増すことが見て取れます *5:p.35。

ところが、これまでの農業は温暖化の原因である温室効果ガス(以降、「GHG])を大量に排出してきました。
FAOの推計によると、2014年における「農業・ 林業・その他土地利用」部門におけるGHG排出割合は、世界全体の人為起源の二酸化炭素排出量の14%、メタン排出量の42%に当たります。
そうしたGHG排出量は、二酸化炭素に換算して、10.6Gt(ギガトン) 、世界全体の人為起源の二酸化炭素の21.5%を占めます *5:p.38、p.39。
その最大の排出源が農業なのです *5:p.38 (図5)。

図5 「農業・ 林業・その他土地利用」部門における平均温室効果ガス排出量(CO2換算)
出典:*5 FAO国際連合食糧農業機関(2016)「世界食料農業白書 2016年報告」p.39
http://www.fao.org/3/i6030ja/I6030JA.pdf

このように、農業は地球環境に悪影響をおよぼしてきました *3:pp.1-2。
それは、生産効率を追求するあまり、森林を伐り崩して農地や牧場にすることなどによって自然を破壊し、自然資源を乱獲し、大量の化学合成肥料や農薬を使用してきた結果です。

では、持続的な食料生産や人口増加に見合うだけの食料増産をしながら、同時に地球環境の保全をしていくためには、どうしたらいいのでしょうか。

そのためには、現在のような食料生産のあり方を抜本的に見直し、自然資源が循環するような本来の食料生産システムを構築する必要があります。

そうしたシステムを構築する上で、これまで利用されてこなかった微生物や昆虫を活用することが有益だと考えられているのです。

昆虫食とは

では、なぜ昆虫食が世界的に注目されているのでしょうか。
それには明確な理由があります。

~昆虫食が注目されるようになったきっかけ~

昆虫食が世界的に注目されるようになったきっかけは、2013年に公表されたFAO(国際連合食糧農業機関)の報告書です。この報告書はオランダのワ―ゲニンゲン大学の研究グループが中心となり、まとめたものです。

そのタイトルは、“Edible insects  Future prospects for food and feed security ”(「食用昆虫 食料と飼料の安全保障に向けた将来展望」)(以下、「FAO報告書」、図6) *6。

図6 FAO“Edible insects  Future prospects for food and feed security ”
出典:*6 FAO国際連合食糧農業機関(2013)“Edible insects Future prospects for food and feed security”
http://www.fao.org/3/i3253e/i3253e.pdf

世界は、深刻な食糧問題に直面しています。
近い将来、人口の増加にともなって動物性たんぱく質の需要が増し、食糧や家畜の飼料が不足すると予測されているからです。

FAO報告書は、その問題を解決するための有力な対策がみつかったと述べています。
それが、昆虫食です。
昆虫食は栄養価が高く、家畜に比べて低コストで飼育でき、地球環境と人々の健康に貢献するというのです *6:p.xiii。
こうした昆虫食のメリットについては、後ほど詳しくお話しします。

~伝統的昆虫食の分布と食用昆虫の種類~

昆虫は太古の昔から人間の食料であり続けています。
現在もアジア、アフリカ、南米で食べられていて、約20億人の食生活の一部です *7。

図7 南アフリカの市場で売られる乾燥毛虫(左図)
ラオスで料理コンクールの為に調理された昆虫(右図)
出典:*7 FAO「昆虫の食料保障、暮らし そして環境への貢献」 左図:2ページ目、右図:3ページ目
http://www.fao.org/3/i3264it/i3264it.pdf

日本も例外ではありません。
筆者が生まれ育った長野県(諏訪地方)でも、昆虫食は伝統食の一部です。
蚕、イナゴ、ハチの子(クロスズメバチの幼虫)、ザザ虫(清流に生息する昆虫)などは、病人や妊婦の栄養食として、副菜として、お酒のおつまみとしてもポピュラーで、保存食として冷蔵庫に入れている家庭も珍しくありません。
それらは缶詰や瓶詰にされ市販されていますが、自家製の場合もあります。

昆虫食に関して、研究者が東京都内で行ったアンケート調査(以降、「アンケート調査」)があります *8:pp.170-175。
調査期間は2011年から2015年までの5年間、対象者は小学生連れの親子など家族連れがメインで、5年間で述べ900人。
出身地は半数が東京、他の半数は北海道から沖縄までのさまざまな都道府県でした。

その結果、回答者のうち昆虫食の経験者は47%、経験がない人は48%で、ほぼ同率でした。
昆虫食経験者が食べたことのある昆虫の種類と割合は、以下の図8のとおりです。

図8 昆虫食経験者が食べた昆虫の種類と割合
出典:*8 水野壮(2016)「現代の昆虫食の価値 : ヨーロッパおよび日本を事例に」(国際交流研究 : 国際交流学部紀要 / フェリス女学院大学国際交流学部紀要委員会 編)p.174

年齢に関する特徴をみると、初めての昆虫食ではイナゴを食べる人が多く、イナゴは未就学児を含め広い世代にわたって食べられています。

ここで、世界に目を向けてみましょう。
世界では、1,900種類以上の昆虫類が食べられています *6:p.xiii。
FAO報告書にある食用昆虫の種類と割合をみてみましょう(図9)。

図9 食用昆虫の種類と割合
出典:*7 FAO(2013)“Edible insects Future prospects for food and feed security ”*6:p.xiii
のデータを基に筆者作成
http://www.fao.org/3/i3253e/i3253e.pdf

なお、FAO報告書では、生物学的な分類基準でいうと主に「目」レベルによって分類されていますが、図9の凡例に挙げたのは、その分類での代表的な昆虫の名前です。
例えば、「カブトムシ」は甲虫を代表して表しています。
この図から、多様な昆虫食の世界が見えてきます。

~昆虫を食べる理由と見た目に関する意識~

ここで、先ほどのアンケート調査にもどり、昆虫を食べる理由に関する調査結果をみます(図10)。

図10 昆虫を食べる理由
出典:*8 水野壮(2016)「現代の昆虫食の価値 : ヨーロッパおよび日本を事例に」(国際交流研究 : 国際交流学部紀要 / フェリス女学院大学国際交流学部紀要委員会 編)p.171

この図をみると、一番割合の高い「新しい味覚に挑戦したい」と次の「話のタネに挑戦したい」というエンタテ―メント的な理由を挙げた人の割合は次第に減少しています。
一方、「食糧危機に備えて必要だ」、「メディアで目にした(FAO報告書を含む)」という理由を挙げた人の割合は増加傾向にあることから、昆虫食に対する意識の変化が読み取れます。

食糧危機を救う食材としての昆虫食のメリット

ここでは、深刻な食糧問題の解決策としての昆虫食に注目したいと思います。

そうした観点からみると、昆虫食は、環境、経済、健康、社会の各側面で多くのメリットがあります。
順にみていきましょう。

~環境面・経済面のメリット~

まず、環境面、経済面でのメリットをみます。
ここでは、昆虫食をこれまでの畜産食用肉と比較してみます。

まず、昆虫を飼育するためには、飼料が少なくてすみます。
以下の図11は、コオロギと鶏肉、豚肉、牛肉の飼料変換効率を比べたものです。

図11 コオロギと畜産食用肉の飼料変換効率
出典:*8 水野壮(2016)「現代の昆虫食の価値 : ヨーロッパおよび日本を事例に」(国際交流研究 : 国際交流学部紀要 / フェリス女学院大学国際交流学部紀要委員会 編)p.161

今後、家畜・家禽に与える穀物飼料の値段が上昇し、2050年には2010年に比較して牛肉、豚肉、家禽の価格は約30%上がると予測されています *8:p.159。
一方、昆虫は、飼料変換効率がいいだけでなく、その餌も生活廃棄物(食材、食品廃棄物、堆肥など)で、水も少なくてすむため、経済的です。

また、昆虫は人間向けの食用としてだけでなく、家畜・家禽や養殖魚、ペットの飼料としても活用できます *8:p.175。

次に、昆虫が出すGHGは、家畜より少量です。
例えば、ミールワーム(ゴミムシダマシの幼虫)が排出するGHGは豚に比べて10〜100分の1だと言われています *7:1ページ目。

農業におけるGHG排出のうち、最も割合が高いのは、牛など反芻家畜の消化管内発酵(げっぷ、
おなら)で、全体の40%、その他、家畜の糞尿も3%ほどに上ります。

図12 農業における排出源別GHG排出割合(CO2換算) 2014年
出典:*5 FAO国際連合食糧農業機関(2016)「世界食料農業白書 2016年報告」p40
http://www.fao.org/3/i6030ja/I6030JA.pdf

さらに、昆虫を養殖する場合、畜産ほどには土地を必要としません *7。

~健康面でのメリット~

次に健康面でのメリットをみましょう。

まず、昆虫は良質なたんぱく質が豊富で、たんぱく質を精製することも可能です。
また、ミネラルやビタミンも含まれています。
脂肪酸も多く含み、栄養不良の子どものための栄養補助食品としての用途もあります *7。

表1 昆虫類と畜産肉の栄養素

出典:*8 水野壮(2016)「現代の昆虫食の価値 : ヨーロッパおよび日本を事例に」(国際交流研究 : 国際交流学部紀要 / フェリス女学院大学国際交流学部紀要委員会 編)p.160から筆者、抜粋

次に、昆虫は家畜・家禽に比べて、感染症リスクが低いことが挙げられます。
牛海綿状脳症(BSE)や鳥インフルエンザ「H1N1」のような動物から人間に伝染する病気が伝染する危険度が低いのです *7。

~社会面のメリット~

最後に社会的なメリットとして、産業として有望であることがあることが挙げられます。

ビジネスとして考えた場合、昆虫の採集や養殖、加工、販売は、小規模なら低コストで設備費も安く、資本が少なくてすみます。
また、粉末、ペースト状に加工することも容易です。
そのため、先進国でも発展途上国でも昆虫食ビジネスの起業チャンスは豊富だといえます *7。
こうしたビジネス面については、後で詳しくみることにします。

以上のように、昆虫食には、多くのメリットがあり、食糧問題を解決するための対策として、非常に高いポテンシャルを秘めています。

海外の動向

FAO報告書が発表されてからというもの、ヨーロッパを中心に、世界各国で昆虫食への積極的な取り組みが見られます。
ここでは、ヨーロッパの動向を中心にみていきます。

~ヨーロッパの取り組み~

EUでは、2015年11月25日に新たな新規食品規則として「規則(EU)2015/2283」が採択され、2018年1月1日に発効しました。
この中で、昆虫食は「新規食品(Novel Food)」として認められました *9:p.7。
これによって昆虫食は食品として法的な裏付けを得、自由に取り引きできることになりました。

また、EFSA(欧州食品安全機関)は食用昆虫に関するリスクアセスメントを実施するためのデータを収集しています。

図13 オランダ:ミールワーム工場(左図)・スペイン:飼料用アメリカミズアブ(右図)
出典:*7 FAO「昆虫の食料保障、暮らし そして環境への貢献」 左図:1ページ目、右図:2ページ目
http://www.fao.org/3/i3264it/i3264it.pdf

FAO報告書を中心になってまとめたワーゲニンゲン大学があるオランダでは動きがはやく、2008年にVENIK(昆虫養殖協会)が設立され、国内外の市場関係者、シンクタンク、NGOとのネットワークを構築しています。
また、専門家や消費者、メディアに対して食用昆虫に関する情報提供を行いながら、食用昆虫の生産ラインを規定するなど、社会制度を整備し、昆虫食の普及活動をしています *8:162。

フランスでは、2010年にFFPIDI(フランス昆虫養殖・加工・販売業連盟)が結成されました。
2014年には昆虫養殖業に関するシンポジウムが開催され、130の事業団体が参加しています。

ベルギーでは2014年からトノサマバッタをはじめとする数種類の昆虫を食品として認可し、昆虫を使ったハンバーグを販売しています。

このように、伝統的には昆虫食を受入れてこなかったヨーロッパが、今や昆虫食への取り組みを牽引しているのです。

~韓国の取り組み~

韓国も昆虫食を推進しています。
韓国政府はミールワームをはじめとする数種類の昆虫を食品として追加し、昆虫養殖の事業者に対しては農業者として税制優遇を講じるなどの支援を行い *10:p.17、2020年には昆虫食品産業を年間、2千億ウォン超(2020年9月16日時点で約180億円に相当)に成長させる方針です *8:p.161。

日本の動向と取り組み事例

文部科学省が定める「日本食品標準成分表」には、イナゴ佃煮とハチの子缶詰が記載されています。このことは、日本では既に昆虫食が社会的に食品として認められていることを意味します *8:p.175。

では、昆虫食をめぐる新たな動きをみてみましょう。

~フードテックとの関連~

昆虫食に注目しているのは、ムーンショット型研究開発制度だけではありません。
2020年、農林水産省は、食に関する最先端技術である「フードテック」の研究会、「農林水産省フードテック研究会」を立ち上げました。

それは、今後、タンパク質の需要が世界的に増加していくとの予測をふまえ、タンパク質の安定的供給を確保するためには、フードテックを推進させる必要があると判断しているからです *10:p.6。

この研究会の中間とりまとめでも、今後、昆虫食産業を支援する方向性について述べられています *10:p.17。

このように、日本でも今や昆虫食は国家レベルの関心事です。

~大学発ベンチャーの事例~

JOICオープンイノベーション・ベンチャー創造協議会という組織があります。
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)に事務局を置くこの協議会は、民間事業者の「オープンイノベーション」の取組みを推進し、イノベーションの創出と競争力の強化を目的とする活動を行っています *11-1。

このJOICがNEDOとの共催で行った「第35回 NEDOピッチ」には、昆虫食関連のベンチャー企業が登壇しました。
その中から、大学発ベンチャーの取り組みを2例、ご紹介します。

1例目は、愛媛大学発のベンチャー企業です。
世界に先駆けて昆虫の機能性に着目し、ヤママユガ(天蚕:野生のカイコ)の幼虫カイコから免疫活性化物質を抽出した、飼料用サプリメントを開発しました *11-2、*12 (図14)。

図14 ヤママユガの幼虫と免疫活性化物質シルクロース(矢印)
出典:*12愛媛大学「昆虫を原料とした次世代型機能性養殖用飼料の開発」
https://www.ehime-u.ac.jp/data_study/data_study-12727/

このサプリメントは養殖魚の飼料用サプリメントで、2016年から販売され、養殖魚の免疫力維持のために使用されています。
ビジネスとしても順調で、現在、国内最大手の飼料会社に全面採用され、またブリ養殖のトップブランドからも認められて、順調に売上を伸ばしています *13-1:<57-1:16>。

2例目は徳島大学発のベンチャー。
こちらは、フタホシコオロギの完全自動化飼育システムの開発による大量生産と、ゲノム編集技術を用いた品種改良を目的とした取り組みです *11-2、*14 (図15)。

図15 食用コオロギの大量生産と食用利用促進の取り組み
出典:徳島大学「研究クラスター:食用コオロギの機能性検証と生産システムの社会実装」
https://cluster.tokushima-u.ac.jp/new-cluster-list/718.html

この取り組みのきっかけとなったのは、例のFAO報告書です *13-2:<49-57>。
これまでみてきたような昆虫のメリットに着目し、食糧問題の解決のために、完全循環型タンパク質生産システムを世界に先駆けて事業化することを目指しています。
具体的には、図15の左下の部分にあるように、食品副産物や食品の食べ残しなどを活用した餌の開発を行い、資源を回し、循環させていきます。

さらに、機能性についての研究も発展させて、糖尿病予防・改善効果、肥満予防なども視野に入れ、高付加価値の昆虫加工食品も開発します *11-2、*14。

以上のように、現在、日本でも、ベンチャーを中心として、昆虫食への先駆的な取り組みが広まりつつあります。

~街角にも登場した昆虫食~

現在、昆虫食は街角にも登場しています。

世界初の蚕専門、昆虫食スタートアップ企業が京都大学との共同研究によって開発した、高栄養価な次世代型フードがあります。
原材料は、もちろん蚕。

同企業は、2020年1月、期間限定で東京表参道に店舗をオープンし、ハンバーガー、スープ、スナック、ケーキを提供しました *15(図16)。

図16 蚕を原料に使ったハンバーガー、スナック、ケーキ
出典:*15 PR TIMES(2020)「世界初の「蚕」専門の昆虫食スタートアップが「シルクフードラボ」表参道にオープン!日本発の代替タンパク質で世界の食料問題解決に挑む」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000052502.html

商品化にあたっては、単に昆虫食というだけでなく、味にも徹底的にこだわり、試行錯誤を重ねて「美味しい」を追求しているとのことです。

別の昆虫食スタートアップ企業は、酒造会社の協力を得てコオロギを原材料としたビールを開発し、2020年3月、期間限定で渋谷に出店しました。
タンパク質を多く含むコオロギはビールに強いうまみをもたらします *16。

以上のように、最近は街角にも昆虫食が登場していますが、こうした動きは、昆虫食が日常的なものとして日本社会にも浸透していくプロセスかもしれません。

今後の課題

これまでみてきたように、昆虫食は食糧問題への対策として、さまざまなメリットがあります。
ただ、今後、昆虫食を普及させていくためには、解決しなければならない問題もいくつかあります *7:3ページ目。

それは、以下の5点に集約されます。

● 昆虫養殖の量産技術と量産体制を確立すること
● リスクアセスメントの方法を改善すること
● 昆虫食品や飼料の安全性を確認・確保すること
● 法律の整備
● 消費者に対する啓蒙と普及活動

これらの課題を克服しつつ、食糧危機という厳しい課題のソリューションとして昆虫食を推進していくことが望まれます。

\ 自然電力からのおしらせ /

日本や世界で起こっている様々な問題を知ること、
そして、シェアして周りに広めることが
未来を変える一歩になります。

▶︎今日からできる4つのこと。「Take Action」まとめ

参照・引用を見る

*1
内閣府(2020) 政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付 未来革新研究推進担当
「ムーンショット型研究開発制度の概要」(2020年7月)https://www8.cao.go.jp/cstp/moonshot/gaiyo.pdf

*2
外務省(2015)「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」(仮訳)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/000101402.pdf

*3
FAO国際連合食糧農業機関(2020)“Insects for food & feed”
http://www.fao.org/edible-insects/en

*4
農林水産省(2020)「【ムーンショット目標5】」(2020年5月)
https://www8.cao.go.jp/cstp/moonshot/concept5.pdf

*5
FAO国際連合食糧農業機関(2016)「世界食料農業白書 2016年報告」
http://www.fao.org/3/i6030ja/I6030JA.pdf

*6
FAO国際連合食糧農業機関(2013)“Edible insects Future prospects for food and feed security ”
http://www.fao.org/3/i3253e/i3253e.pdf

*7
FAO国際連合食糧農業機関「昆虫の食料保障、暮らし そして環境への貢献」http://www.fao.org/3/i3264it/i3264it.pdf

*8
水野壮(2016)「現代の昆虫食の価値 : ヨーロッパおよび日本を事例に」(国際交流研究 : 国際交流学部紀要 / フェリス女学院大学国際交流学部紀要委員会 編)

<エビデンスキャプチャ>

https://docs.google.com/document/d/1KmT4BjHbMzG8COwhtChQ3lIE-6Cuxbz4t20igMLFqE0/edit

*9
日本貿易振興機構(ジェトロ)(2018)ロンドン事務所「EUにおける新規食品 (Novel Food)規制」
(2018 年12月) p.7
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2018/90cbe8dc7fd1f1cb/eu_novelfood.pdf

*10
農林水産省(2020)「農林水産省フードテック研究会 中間とりまとめ」(2020年7月)https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/kihyo01/foodtech_kenkyukai_torimatome.pdf

*11-1
JOICオープンイノベーション・ベンチャー創造協議会「JOICについて」
https://www.joic.jp/joic.html

*11-2
JOICオープンイノベーション・ベンチャー創造協議会「NEDOピッチ登壇企業 第35回 アグリ・水産ベンチャー特集」
https://www.joic.jp/nedo_pitch_sub/The-35-Times.html

*12
愛媛大学「昆虫を原料とした次世代型機能性養殖用飼料の開発」
https://www.ehime-u.ac.jp/data_study/data_study-12727/

*13
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のyoutubeチャンネル「第35回NEDOピッチ(アグリ・水産ベンチャー特集)」(2020年2月9日最終更新)
https://www.youtube.com/playlist?list=PLZH3AKTCrVsUvD4Sv31RyTbSL0lFs76UG

*13-1
「愛媛大学発ベンチャー 世界に先駆けて昆虫の機能性に着目して『シルクロース』を商品化」https://www.youtube.com/watch?v=9_x5ISrWBog&list=PLZH3AKTCrVsUvD4Sv31RyTbSL0lFs76UG&index=4&t=330s

*13-2
「二タホシコオロギによる持続可能な完全循環型動物性タンパク質生産システムを世界に先駆け事業家を目指す。」
https://www.youtube.com/watch?v=9UmM91mGny4&list=PLZH3AKTCrVsUvD4Sv31RyTbSL0lFs76UG&index=6&t=0s

*14
徳島大学「研究クラスター:食用コオロギの機能性検証と生産システムの社会実装」https://cluster.tokushima-u.ac.jp/new-cluster-list/718.html

*15
PR TIMES(2020)「世界初の「蚕」専門の昆虫食スタートアップが「シルクフードラボ」を表参道にオープン!日本発の代替タンパク質で世界の食料問題解決に挑む」(2020年1月17日 09時50分)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000052502.html

*16
日本経済新聞(2020)「昆虫食スタートアップ、コオロギでビールにうまみ」(2020/2/25 18:15)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56015700V20C20A2L83000/