「月面農場」にも活用! 次世代型農業「植物工場」のポテンシャルと将来展望

「植物工場」―「植物」と「工場」の組み合わせは独特な響きを伴います。
太陽と土をイメージさせる農業ですが、「植物工場」は新たな野菜(植物)栽培の手法として、そのポテンシャルの高さに注目が集まっています。

そもそも「植物工場」とはどのようなものなのでしょうか。
そのメリットは? 現状は? そして、課題と将来展望とは?

植物工場とは

食糧生産には水が大きな役割を果たすことは周知の通りです。当社が開発した技術なら、従来の野菜栽培に比べて水の使用量は1%未満で済みます。したがって、野菜を工場の環境で育てれば水を節約でき、その水を別の場所での穀物の増産に役立てられます。

まず、植物工場の定義と種類を押さえておきましょう。

~植物工場の定義~

日本生物環境工学会は、植物工場を以下のように簡潔に定義しています *1:p.7。

環境調節や自動化などハイテクを利用した植物の周年(年間)栽培システム

次により詳しい定義をみてみましょう *2-1。

施設内の温度、光、炭酸ガス、養液などの環境条件を自動制御装置で最適な状態に保ち、作物の播種、移植、収穫、出荷調整まで、周年(年間)計画的に一貫して行う生産システム

これは、農林水産省と経済産業省が連携して取り組んだ「農商工連携研究会 植物工場ワーキンググループ」の報告書(2009年4月発表)に記されている定義 *3:p.1 をわかりやすく言い換えたものです。

なお、「工場」という名前がついてはいますが、日本の産業分類上は、「農業」と定義されています *3:p.7。

~植物工場の種類~

植物工場はその施設によって以下の3つに分けられます *4:p.2。

● 人工光型:太陽光を使わずに閉鎖された施設で人工光を利用し、高度に環境を制御して周年・計画生産を行う施設

● 太陽光・人工光併用型:温室などの半閉鎖環境で太陽光の利用を基本として、環境を高度に制御して周年・計画生産を行う施設で、特に人工光によって夜間など一定期間補光している施設

● 太陽光型:温室などの半閉鎖環境で太陽光の利用を基本として、環境を高度に制御して周年・計画生産を行う施設で、人工光による補光をしていない比較的大規模な施設(*4:p.1 では、1ha以上と定義)

2009年以前は、「人工光型」のみを植物工場と捉えることが一般的でしたが、上記のように「太陽光型」も含めた定義により、そのコンセプトがより広義になりました。

その結果、現在では、従来「ビニールハウス」や「温室」と呼ばれていた施設園芸でも、高度な環境制御技術と計画・周年生産が可能なものであれば、「植物工場」と呼ばれています *7:p.34。

図1 露地栽培・従来型ハウス栽培・太陽光型植物工場
出典:*1 京都大学農学研究科(2017) 農業システム工学研究室 清水浩 「人工環境における食料生産 Vegetable Production in Artificial Environment」 p.14
https://www.usss.kyoto-u.ac.jp/uchugaku/seminar/2017/20171122_Shimizu.pdf

図2 太陽光型の栽培例:トマトの栽培(左)、いちごの栽培(中)、トマト苗生産(右)
出典:*7 独立行政法人 農畜産業振興機構「植物工場をめぐる現状と課題」 p.35
https://www.alic.go.jp/content/000127162.pdf

図3 人工光型の栽培例
出典:*1 京都大学農学研究科(2017) 農業システム工学研究室 清水浩 「人工環境における食料生産 Vegetable Production in Artificial Environment」 p.12、p.13
https://www.usss.kyoto-u.ac.jp/uchugaku/seminar/2017/20171122_Shimizu.pdf

~栽培方法~

現在、植物工場のほとんどが土を使わない養液栽培で野菜を生産しています *2-2。
養液栽培には、以下のようにいくつかの方法があります。

● 肥料を水に溶かした養液で作物を栽培する方法
● 根を養液に浸して育てる方法
● 根に養液を噴霧する方法
● 土の代わりにロックウール(人工鉱物繊維)やピートモス(植物性の泥炭の一種)、ヤシ殻などに植物を植えて育てる方法

こうした養液栽培は土壌が病害を受ける心配がなく、土を耕したり、肥料を施したり、除草したりする作業が省けます。
また、生育期間が短い作物の場合は、高い生産性が見込めます。
この養液栽培は、現在、葉物類のほかにトマトなどの果菜類でも普及しつつあります。

植物工場のポテンシャル

植物工場は、国内の食料生産にも、世界的な食糧問題の改善にも貢献することが期待されています。

~国内におけるメリット~

国は、植物工場の普及・拡大を図ろうとしています *3:p.1。
それは、植物工場にはさまざまなメリットがあるためです(表1)。

表1 植物工場の主なメリット(露地栽培との比較)

 

出典:*1 京都大学農学研究科(2017) 農業システム工学研究室 清水浩 「人工環境における食料生産 Vegetable Production in Artificial Environment」 p.10
https://www.usss.kyoto-u.ac.jp/uchugaku/seminar/2017/20171122_Shimizu.pdf

以上のようにさまざまなメリットがある植物工場は、国産食材を安定的に供給するための新たな農業として、期待されています *3:p.4。

~食糧問題の解決につながる可能性~

次に、世界に目を向けてみましょう。
野菜工場は、将来的に世界の食糧危機の改善に貢献する可能性があります。

2018年に世界の栄養不足人口は8億2,160万人で、9人に1人の割合でした(図4)。

図4 世界の栄養不足人口とその割合
出典:*5 消費者庁(2020)消費者教育推進課 食品ロス削減推進室「食品ロス削減関係参考資料 (令和2年6月23日版)」 p.14
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/efforts/assets/efforts_200623_0001.pdf

今後はさらに厳しい状況が予想されています。
2019年に約77億人だった世界人口は、2050年には97億人に達すると推計されているからです(図5)

図5 世界人口の推移と推計
出典:*5 消費者庁(2020)消費者教育推進課 食品ロス削減推進室「食品ロス削減関係参考資料 (令和2年6月23日版)」 p.13
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/efforts/assets/efforts_200623_0001.pdf

野菜の生産には水が大きな役割を果たしますが、従来の野菜栽培に比べて水の使用量が1%未満で済む技術が既に開発されています。
こうした野菜工場で野菜を生産すれば、水を節約することができ、その水を別の場所での穀物の増産に使用することができます。
こうしたことから、植物工場は将来、食糧危機の改善に貢献すると考えられています *6。

植物工場の現状

次に、植物工場の現状をみます。

~植物工場の箇所数の推移~

まず、植物工場の箇所数の推移を、施設形態別にみましょう(図6)。

図6 実態調査による植物工場の箇所数の推移(2016年は2月時点、他年は3月時点)
参考:*7 独立行政法人 農畜産業振興機構「植物工場をめぐる現状と課題」p.36-表1を基に筆者作成
https://www.alic.go.jp/content/000127162.pdf

この調査では、生産物の販売を目的として運営している植物工場を対象にしています。

2016年2月時点で人工光型は191箇所、太陽光・人工光併用型は36箇所、合計で227箇所です。
それに太陽光型の79箇所を加えると、全部で306箇所になります。

なお、2016年の太陽光型が減少しているのは、それまでと調査基準が変わり、施設面積が約1ha
(10,000㎡)以上で、土ではなく養液栽培装置で栽培している大規模施設だけをカウントしているためですが、こうした大規模の太陽光型施設は増加していると推測されています *7:p.36。

また、太陽光・人工光併用型は横ばい状態であるのに対して、人工光型と太陽光型は増加傾向にあることが見てとれます。
しかし、2018年時点では、主な栽培野菜であるレタスであっても、年間7千トン程度で市場シェアは1~2%程度に過ぎません *8。
今後はシェアが拡大することも予想されていますが*8、現在、植物工場は、天候などによって露地野菜が不足した時の代替品を提供するという位置づけです *4:p.12。

~栽培面積~

次に栽培面積をみます(図7)。

図7 栽培面積別割合(カッコ内の数値は箇所数)
出典:*4 農林水産業(2017)「平成28年度 次世代施設園芸地域展開促進事業(全国推進事業) 事業報告書 (別冊2) 大規模施設園芸・植物工場 実態調査・事例調査」 p.7
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/sisetsu/attach/pdf/index-12.pdf

まず、太陽光型は、先ほどみたように、調査対象を約10,000㎡以上として調査していることもあり、10,000㎡以上の面積を合わせると90%で、大規模施設の割合が高くなっています。
このうち、40,000 ㎡以上の大部分は、最新の設備を備えた次世代施設園芸拠点ですが、次世代施設園芸拠点については、後ほど詳しくみることにします。

次に、太陽光・人工光併用型も比較的大規模な施設の割合が高いことが見てとれます。

人工光型では 500㎡未満が52%を占め、面積が狭い施設が多い傾向が見られますが、これは生産面積とは一致しません。

例えば、栽培品目のうち最も多く生産されているレタス類では、年間10回以上栽培する施設が66.7%を占めています。この割合は他の施設形態に比べて高く、同じ施設を1年間に何度も利用してレタスを生産しているため、1年間の延べ生産面積に換算すると、大半が5,000㎡以上を占めると推測されています *4:p.7。

また、人工光型は小規模の場合、立地場所を選ばず、さまざまな場所に設置可能です。
筆者も、比較的大きな病院で、待合室の片隅に人工光型が設置されているのを見たことがあります。栽培されているのはレタスで、収穫されたレタスは病院食に使っているという説明が掲示されていました。

以上のように、種類によって栽培面積は異なりますが、生産性や設置場所などのポテンシャルは必ずしも規模の大きさに比例するわけではありません。

植物工場の課題

ここでは、引き続き現状をみながら、主な課題を確認していきたいと思います。

~栽培品目のバリエーション~

まず、栽培品目はどうでしょうか。

図8 植物工場の主な栽培品目
出典:*4 農林水産業(2017)「平成28年度 次世代施設園芸地域展開促進事業(全国推進事業) 事業報告書 (別冊2) 大規模施設園芸・植物工場 実態調査・事例調査」 p.8
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/sisetsu/attach/pdf/index-12.pdf

図中のスプラウトとは、種子の中にある栄養だけで成長した発芽したばかりの状態の野菜で、「発芽野菜」とも呼ばれます。カイワレ大根やそば、ブロッコリーなどがその代表的なものです *2-2。

図8をみると、太陽光型で最も割合が高いのは果菜類で75%ですが、その中心はトマトやパプリカなどです。
太陽光・人工光併用型では、バラなどの花きが41%と最も多く、次いでレタス類が24%です。
人工光利用型では、レタス類が89%と、その大半を占めているという特徴があります *4:p.8。

このように、現在は人工光型を中心に比較的栽培が簡単で、収穫量が安定的なレタス等の葉菜類が多いという状況ですが、低価格を実現するためにも、さまざまなニーズに対応するためにも、より多くの品目を栽培するノウハウが必要です *3:p.7。

~経営状況とコスト~

次に経営状況をみます(図9)。

図9 植物工場の経営収支
出典:*4 農林水産業(2017)「平成28年度 次世代施設園芸地域展開促進事業(全国推進事業) 事業報告書 (別冊2) 大規模施設園芸・植物工場 実態調査・事例調査」 p.12
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/sisetsu/attach/pdf/index-12.pdf

太陽光型は黒字か収支均衡している割合が74%、太陽光・人工光併用型は65%で、安定した経営をしているところが多いことが窺えます。
一方で、人工光型は黒字か収支均衡の割合が 50%です。

では、コスト面で問題となるのはどのようなことでしょうか(図10)。

図10 コスト面での課題
出典:*4 農林水産業(2017)「平成28年度 次世代施設園芸地域展開促進事業(全国推進事業) 事業報告書 (別冊2) 大規模施設園芸・植物工場 実態調査・事例調査」 p.21
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/sisetsu/attach/pdf/index-12.pdf

太陽光型と太陽光・人工光併用型では人件費が一番の課題となっていることから、今後、省力化に向けてより効率的な経営に取り組む必要があるでしょう。

太陽光・人工光併用型と人工光型では、水道光熱費が82%、76%と最も高い数値を示しています。これは特に照明や冷却などでのエネルギー消費が多いことが原因で、コスト削減のための大きな課題です。

設備投資による減価償却も少なくない割合を示しています。

以上のように、植物工場では、人件費、エネルギー消費、設備費(減価償却費)が3大コス
トとして認識され、その低減が課題です *4:p.17。

~化石燃料削減への取り組み~

エネルギー消費に関連して、化石燃料削減への取り組み状況をみたいと思います
以下の図11は、バイオマスなどの地域資源エネルギーを活用しているかどうかの回答結果です。

図11 地域資源エネルギーの活用による化石燃料の削減について
出典:*4 農林水産業(2017)「平成28年度 次世代施設園芸地域展開促進事業(全国推進事業) 事業報告書 (別冊2) 大規模施設園芸・植物工場 実態調査・事例調査」 p.17
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/sisetsu/attach/pdf/index-12.pdf

この図から、バイオマスなどの地域資源エネルギーの活用に取り組んでいる植物工場は少なく、化石燃料や電力会社からの電気供給に依存していることが窺われます。

現在、人工光型植物工場で使われている主な光源は、蛍光灯、ナトリウムランプ、LEDランプの3種類です。
このうち、蛍光灯やナトリウムランプは低コストで設置でき、多くの植物工場で使用されていますが、エネルギーロスが多いといわれています *2-3。

先ほどみたように、植物工場ではエネルギー消費コストが高く、その削減が大きな課題ですが、コスト面だけでなく地球環境への悪影響を低減するためにも、よりクリーンなエネルギーの活用が望まれます。

海外の取り組み

植物工場の起源は、1957年に遡ります *2-2。
デンマークのクリステンセン農場で、サラダ用のスプラウトの一貫自動生産を行ったのが世界初の植物工場の事例だとされています。太陽光・人工光併用型でした。

~植物工場先進国オランダの取り組み~

ここでは、植物工場先進国オランダの最近の取り組みをみます *9:p.3。

オランダでは、LED光源への切り替えを積極的に推進するために、LEDの本格的な栽培実験が2008年~ 2009年頃からスタートしました。
例えば、Philips社は、ヨーロッパを中心に100社以上の生産者との実験栽培を通じて、世界中のデータを蓄積しています。
そのうち人工光型では、10数社と実験栽培に取り組み、省エネや収量増、 労働コスト削減などの効果測定を実施しています。

この他にもさまざまな企業によって、研究・開発が行われています(図12)。

図12 オランダの企業によるLEDに関する研究・開発
出典:*9 農林水産省「オランダにおける 人工光利用型植物工場事例」 p.5
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sanki/pdf/kaisi1.pdf

オランダのトップ・メーカーの中には、世界中で稼働・導入事例を増やしてデータを収集・分析しながら、コンサルティング業務として最適なソリューションを提供している企業もあります(表2)。

表2 オランダのトップ・メーカーによる取り組み

出典:*9 農林水産省「オランダにおける 人工光利用型植物工場事例」 p.4
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sanki/pdf/kaisi1.pdf

また、オランダでは、集約された施設に出荷センターが併設されています。
この出荷センターによって、流通コストを削減するとともに、生産状況をスピーディーかつ正確に把握して、有利な販売に生かしています *10:p.22。

国内の取り組みと将来展望

最後に国内の取り組みと将来展望をみたいと思います。

~月面農場への活用~

JAXA宇宙探査イノベーションハブは、2019年、「月面農場ワーキンググループ検討報告書 第1版」を発表しました *11-1。

このワーキンググループは、将来、宇宙で地産地消型の持続可能な食料生産をすることを目的に、月面を想定した植物工場「月面農場」の実現に向けて、さまざまな検討をするために2017年に結成されました。

以前から、JAXAには、植物工場関連の企業や大学から、宇宙農場や月面農場への応用に関する提案が多く寄せられていました *11-2:p.4。
そこで、最先端の植物工場技術を導入して月面農場システムを構築するためにさまざまな検討を行い、今後は月面農場だけでなく、地上における植物工場にもイノベーションを起こすような研究活動を目指しています。

図13 月面農場のイメージ:6人規模(左図)、100人規模(右図)
出典:*11-2 JAXA国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(2019)「月面農場ワーキンググループ検討報告書 第1版」 p.98
http://www.ihub-tansa.jaxa.jp/files/%E6%9C%88%E9%9D%A2%E8%BE%B2%E5%A0%B4%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%97%E6%A4%9C%E8%A8%8E%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8%E3%80%80%E7%AC%AC%EF%BC%91%E7%89%88.pdf

実は、現在、植物工場で使われている LEDと多段式養液栽培は、もともと宇宙向けのイノベーションを応用したものです。

LEDはNASAが省電力に着目して、宇宙での利用を進めたことがはじまりです。それが地上での植物工場にも有益な技術として普及しました。

多段式養液栽培も、限られた栽培面積でいかに収穫量を上げるかという宇宙での栽培方法として研究・開発されたものが、植物工場にも活用されました。

宇宙は、面積、電力、労働時間などに制約があります。
そうした場面で生かせる技術は、地上の植物工場用の装置開発にも生かせるはずです。
さらに、月面農場のために開発する技術は、地球上の極限環境での食料生産にもつながることが期待されています。

~課題に対する国内の取り組み:次世代施設園芸拠点~

先ほどみたように、日本での植物工場にはまだ解決しなければならない課題があります。
国はそうした課題解決のために、オランダの取り組みを参考にして、地域資源によるエネルギー供給から生産、調製・出荷までを一貫して行う次世代施設園芸拠点を設け、植物工場を推進していこうとしてます。
その目的は、コスト削減を実現し、地域における雇用を増やし、植物工場による所得を増加させることです *10:p.20。

国が推進する次世代施設園芸拠点は以下の10箇所です(図14)。

図14 植物工場(次世代施設園芸)拠点(2017年時点)
出典:*12 一般社団法人日本施設園芸協会「次世代施設園芸・植物工場:次世代施設園芸拠点」
http://plantfactory-japan.com/02next_generation/index-2.html

図14をみると、これらの拠点のうち7カ所で木質バイオマスを導入し、化石燃料からの脱却を図っていることがわかります。

~次世代施設園芸団地~

最後に国が描く次世代施設園芸団地のイメージをみてみましょう(図15)。

図15 次世代施設園芸団地のイメージ
出典:*10 農林水産省「農業生産額をめぐる提案について:参考2:日本の植物工場を海外に売り込み」 p.21
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/NextGenerationHorticulture/pdf/siryou_4-3.pdf

この構想では、人工光型植物工場に、苗の供給センターと出荷センターを併設すること、先端技術を導入し遠隔管理によって大規模な施設の環境を制御すること、地域資源である木質バイオマスをエネルギー源とすることなどが盛り込まれています。

~さらなるポテンシャル~

植物工場はテクノロジーによって環境を制御します。
先ほどみたように、現在、生産されているのはレタスなどの葉菜類が中心ですが、実験室レベルではほとんどの野菜が生産可能です *1:p.76。

また、これまでの実験から、植物工場では栄養価が高い野菜が栽培できることがわかっており *1:pp.20-22、今後は、高機能な野菜、医薬品やサプリメントの原料となる野菜など、露地栽培では作れない野菜を生産し、露地野菜との差別化を図ろうとする試みも始まっています *1:p.16。

さらに、今後、AI、ICT、ロボットの活用も加速するとみられています *7:p.43。

植物工場は今後ますます進化し、これからの食糧生産に寄与することが期待されます。

 

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参照・引用を見る

*1
京都大学農学研究科(2017) 農業システム工学研究室 清水浩 「人工環境における食料生産 Vegetable Production in Artificial Environment」
https://www.usss.kyoto-u.ac.jp/uchugaku/seminar/2017/20171122_Shimizu.pdf

*2-1
農林水産省「特集 野菜をめぐる新しい動き 植物工場の可能性(1)
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1002/spe1_01.html

*2-2
同(4)
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1002/spe1_04.html

*2-3
同(3)
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1002/spe1_03.html

*3
経済産業省(2009)農商工連携研究会「植物工場ワーキンググループ報告書」
https://www.meti.go.jp/policy/local_economy/nipponsaikoh/090424-01.pdf

*4
農林水産業(2017)「平成28年度 次世代施設園芸地域展開促進事業(全国推進事業) 事業報告書 (別冊2) 大規模施設園芸・植物工場 実態調査・事例調査」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/sisetsu/attach/pdf/index-12.pdf

*5
消費者庁(2020)消費者教育推進課 食品ロス削減推進室「食品ロス削減関係参考資料 (令和2年6月23日版)」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/efforts/assets/efforts_200623_0001.pdf

*6
NATIONAL GEOGRAPHIC(2014)「NEWS:食糧危機を救う? 日本の野菜工場」(2014年7月18日)
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/9497/

*7
独立行政法人 農畜産業振興機構「植物工場をめぐる現状と課題」( 一般社団法人日本施設園芸協会 技術部長 土屋和)
https://www.alic.go.jp/content/000127162.pdf

*8
農林中金総合研究所(2018)「農中総研 調査と情報 (第68号):レポート農林水産業 普及期を迎えた植物工場産レタス」
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/nri1809re5.pdf

*9
農林水産省「オランダにおける 人工光利用型植物工場事例」
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sanki/pdf/kaisi1.pdf

*10
農林水産省「農業生産額をめぐる提案について:参考2:日本の植物工場を海外に売り込み」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/NextGenerationHorticulture/pdf/siryou_4-3.pdf

*11-1
JAXA国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 宇宙探査イノベーションハブ(2019)「月面農場ワーキンググループ検討報告書の公開について」(2019年5月31日)
http://www.ihub-tansa.jaxa.jp/Lunarfarming.html

*11-2
JAXA国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(2019)「月面農場ワーキンググループ検討報告書 第1版 (Report of Lunar Farming Concept Study Working Group 1st)」
http://www.ihub-tansa.jaxa.jp/files/%E6%9C%88%E9%9D%A2%E8%BE%B2%E5%A0%B4%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%97%E6%A4%9C%E8%A8%8E%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8%E3%80%80%E7%AC%AC%EF%BC%91%E7%89%88.pdf

*12
一般社団法人日本施設園芸協会「次世代施設園芸・植物工場:次世代施設園芸拠点」
http://plantfactory-japan.com/02next_generation/index-2.html

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