環境保護にも有効活用可能なドローン 日本と世界の事例から見るそのポテンシャルとは

環境保護にも有効活用可能なドローン 日本と世界の事例から見るそのポテンシャルとは

一昔前までは、ヘリコプターでしか撮れなかった上空からの映像を手軽に撮影できるドローン。
そのドローンは、今や農業や測量、災害対応といった様々な分野で欠かせないツールとなっています。
森林火災の消火支援や被災後の植林支援、大気や水質の調査などに対する活用も始まっており、環境保護・保全活動への貢献が期待されています。

ドローンがこれまでどのように利用されてきたのか、また今後どのような応用の可能性があるのかについてご紹介していきます。

ドローンについて

ドローンとは、遠隔操作が可能な無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)のことです。
特に、ヘリコプターのように、垂直離着陸やホバリングが可能な回転翼機型ドローンは、滑走路が不要で狭小空間においても飛行が可能であることから、民間の様々な分野での利用が拡大しています[*1](図1)。

図1: 回転翼機型ドローン
出典: 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構「NARO Technical Report No.5 特集 ドローン」(2020)
https://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/files/naro_technical_report_no5.pdf, p.6

ドローンの利用法としてまず思いつくのは、空撮による映像撮影です。
通常のカメラでは撮影できない視点からの映像は、テレビ番組や映画、スポーツ中継などのエンターテインメント分野で多用されています(図2)。

図2: スポーツで活用されているドローンの空撮
出典: 一般社団法人 全国無人航空機飛行技能適正評価監視機構「スポーツ分野におけるドローンの活用」
https://www.javoa.or.jp/case/sports.php

ドローンは農業にも活用されており、稲作では農薬散布をする場合、ドローンで行うことがすでに標準的になりつつあります。
さらに、稲の生育状況や病害虫・雑草の発生状況をドローンで調査し、クラウドで管理することで、低コスト化・高品質化・収穫量増加を図った先端的農業も実施されています[*2](図3)。

図3: ドローンを活用した先端的農業
出典: 国立研究開発法人科学技術振興機構 (JST) 「ドローン技術の現状と課題およびビジネス最前線」(2017)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/59/11/59_755/_pdf, p.760

そのほか、測量や災害対応の分野などでも実用化が進んでいます。
膨大な時間と費用が掛かる複雑な土地に対しても、ドローンからのレーザー照射によって安価で精度の高い測量が可能になっています(図4)。

断崖絶壁や崩落の危険性がある土地など、人が調査するには難しい場所でもドローンは有効です[*3]。

図4: ドローンを活用した測量
出典: 一般社団法人 全国無人航空機飛行技能適正評価監視機構「地形調査におけるドローンの活用」
https://www.javoa.or.jp/case/survey.php

ドローンによって、地震による道路・橋梁の崩壊や豪雨による堤防の決壊などを迅速に把握することが可能となっています。

2016年4月の熊本地震や2015年9月の関東・東北豪雨でも通行できなくなった被害箇所の撮影に使用されており、より的確な避難指示や救助活動に繋がる有効性の高い利用法の模索が続いています[*4]。

さらに、ドローンを活用した荷物の輸送やダム・橋梁などのインフラに対する設備点検を行うための技術開発も進んでおり、コスト削減や作業者の安全性の面から早期に導入されることが期待されています[*5, *6]。

世界における環境保護分野でのドローンの活用

世界の先進国では、環境保護分野においてもドローンの活用が始まっています。
例えば、アメリカでは、すでにドローンが森林火災の消火活動の際に活用されています。

アメリカのカリフォルニア州では、毎年のように森林火災が発生しており、2020年には、東京都の面積の約8倍にも及ぶ約1万6187平方キロメートルもの森林が消失しました[*7]。
このような火災現場において、遠隔操作されたドローンは、リアルタイムに火元と延焼の位置情報を収集し、消防士へ情報を提供することが可能です。それにより、消防士の消火活動の支援及び二次災害の防止に役立てることができます[*8]。

さらに、炎を封じ込めるため、ドローンから爆発物を投下して、事前に火災の燃料となる木々を燃やしてしまうという試みも行われています[*9]。

また、オーストラリアでは、森林火災後の荒廃した土地にドローンで苗木の種を蒔く試験が開始されています。
植林は従来、苗木を栽培した後に手作業で行われていました。しかし、ドローンを活用することで、人の手では植えられない場所や莫大な費用がかかる広範囲な地域でも、早期かつ容易に森林の再生ができるとされています[*10]。

さらに、ドローンによって、火災で消失した地域の野生動物を調査し、救助する試みも行なわれています。
2020年のオーストラリアの大規模火災では、コアラの生息地の4分の1が消失しました。この火災後、飢餓状態に陥ったコアラを発見して保護するため、熱検出機を搭載したドローンが活用されました(図5)。

図5: ドローンによるコアラの検出(左は夜間、右は昼間)
出典: The Conversation「Heat-detecting drones are a cheaper, more efficient way to find koalas」(2020)
https://theconversation.com/heat-detecting-drones-are-a-cheaper-more-efficient-way-to-find-koalas-140332

環境アセスメントへのドローン活用を目指した取り組み

大規模な事業の実施に必要な環境アセスメントに対する、ドローンの活用を目指した取り組みも始まっています。
環境アセスメントとは、開発に伴う環境に対する影響を事前に調査し、予測・評価を行うことです。

道路や鉄道などの公共事業、大規模建築物やレジャー施設などの民間の大規模事業、廃棄物処理施設や上下水道施設などの環境への影響が大きい事業が対象で、法や条例に定められている必須の手続きです[*11, *12]。
例えば、火力発電からは、硫黄酸化物(SOX)や窒素酸化物(NOX)、煤塵などが排出されます。そのため、火力発電を建設する際には、稼働前の大気濃度を調査し、稼働後にはどの程度の濃度になるか予測・評価しておくことが必要です。

その調査の段階においてドローンは、様々な場所・高度の大気を手軽に測定できることから、有用性が高いとされています[*13]。実際、ドローンを使った大気に対する調査の実証実験が行われており、例えば、埼玉県ではドローンによる光化学スモッグの調査が実施されています(図6)。

図6: ドローンを活用した光化学スモッグ調査
出典: 埼玉県庁「ドローンを活用した光化学スモッグ調査(第2弾)  全国初! 深夜から翌朝の、未知の時間帯を解明」(2019)
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0001/news/page/2019/0723-01.html

ドローンによって湖沼の水質調査を行う試みも始まっています。

鳥取県では、湖沼の上空からの航空撮影によって赤潮・アオコなどによる水質異常の発生状況を調査し、従来の船上での水上調査よりも詳細な情報を得ています[*14]。

また、絶滅が危惧されている鳥類の調査や森林の生態系を左右するコウモリ種の調査なども行われています[*15, *16]。

ドローンの技術的・制度的課題

多様な利用法があるドローンですが、以下のような技術的課題がまだあります[*2]。

  • GPS電波がない環境下でのプログラムに従った自律飛行
  • 高速飛行中の衝突回避
  • 指定位置への正確な着陸

これらの技術的課題が制度的課題にも紐づいてきます。例えば、人体と衝突する危険性がまだ否めないことから、有人地帯での目視外飛行は法的に認められていません[*17]。もしこの点が解決されれば、街中での荷物輸送をドローンが行う日もやってくるでしょう。

実現には、第三者に対する安全性を確保するため、有人地帯に存在する全てのドローンの識別や運航の管理などが不可欠です(図7)。

図7: ドローンの運航管理システム
出典: 特許庁「平成30年度 特許出願技術動向調査報告書 ドローン」(2018)
https://www.jpo.go.jp/resources/report/gidou-houkoku/tokkyo/document/index/30_05.pdf, p.4

また、環境保護分野においても、さらなる省力化を進めるためには、人間による制御や監視が不要な自律的な運用が必要であり、ドローン運航管理システムの早期実現が期待されます。

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参照・引用を見る

*1
国立研究開発法人科学技術振興機構 (JST)「VTOL型ドローンの研究開発―次世代ドローンの実現に向けて」(2016)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/isciesci/60/10/60_437/_pdf, p.25

*2
国立研究開発法人科学技術振興機構 (JST)「ドローン技術の現状と課題およびビジネス最前線」(2017)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/59/11/59_755/_pdf, p.756, p.760

*3
一般社団法人 全国無人航空機飛行技能適正評価監視機構「地形調査におけるドローンの活用」
https://www.javoa.or.jp/case/survey.php

*4
一般社団法人 全国無人航空機飛行技能適正評価監視機構「災害対策分野におけるドローンの活用」
https://www.javoa.or.jp/case/disaster.php

*5
特許庁「平成30年度 特許出願技術動向調査報告書 ドローン」(2018)
https://www.jpo.go.jp/resources/report/gidou-houkoku/tokkyo/document/index/30_05.pdf, p.3

*6
一般社団法人 全国無人航空機飛行技能適正評価監視機構「設備点検・警備分野におけるドローンの活用」
https://www.javoa.or.jp/case/security.php

*7
Bloomberg「米カリフォルニア州の山火事深刻化-今年の被災面積、過去3年分超」(2020)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-10-05/QHOONBT0G1KW01

*8
U.S. DEPARTMENT OF AGRICULTURE (USDA)「Drones Provide Eye-in-the-Sky to Help Fight Fires」(2019)
https://www.usda.gov/media/blog/2019/07/09/drones-provide-eye-sky-help-fight-fires

*9
University of Idaho「Great Balls of Fire」(2019)
https://www.uidaho.edu/cnr/about/feature-stories/mnrdrone

*10
RESET「AirSeed: Do Fleets of Drones Hold the Answer to Reforesting Australia’s Devastated Outback?」(2020)
https://en.reset.org/blog/airseed-do-fleets-drones-hold-answer-reforesting-australias-devastated-outback-02122020

*11
環境省「環境アセスメント制度のあらまし」
http://assess.env.go.jp/files/1_seido/pamph_j/pamph_j.pdf, p.1

*12
一般社団法人 日本環境アセスメント協会「JEAS 中長期ビジョン(2018~2027)―未来を切り拓く環境アセスメント―」(2018)
https://jeas.org/wp-content/uploads/photos/1264.pdf, p.5

*13
京都大学防災研究所「ドローンによる機動的大気環境観測手法の開発」(2018)
https://www.dpri.kyoto-u.ac.jp/nenpo/no61/ronbunB/a61b0p32.pdf, p.582-583

*14
鳥取県庁「ドローンリモートセンシングの活用に向けて」
https://www.pref.tottori.lg.jp/secure/1061376/annual_report_56_1_1.pdf, p.1

*15
一般社団法人 九州環境管理協会「鳥類調査におけるドローン技術の適用性の検討」
https://keea.or.jp/pdf/knakyokanri/47/vol_47_08.pdf, p.44

*16
経済産業省「陸上風力発電事業による生態系への環境影響評価の手法と課題 報告書」(2019)
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H30FY/000628.pdf, p.62

*17
内閣官房内閣広報室「無人航空機のレベル4の実現のための新たな制度の方向性について」(2020)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kogatamujinki/kanminkyougi_dai15/siryou1.pdf, p.1